プロジェクト・クローネのプロデューサー   作:変なおっさん

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第18話

双葉杏と塩見周子が話し合った次の日。武内の下を訪れた周子にライブへの参加を懇願されることになる。

 

「――お願いプロデューサー。あたしも皆と一緒にLIVEに出たい! レッスンも仕事も頑張るからさ! お願いあたしも参加させてください!」

 

周子は深々と頭を下げる。

 

「……わかりました」

 

予想はしていたので問題はない。問題があるとすればこれからだろう。

 

「――本当に!? ありがとう、プロデューサー! 頑張るよ、あたし!」

 

周子は喜んでいるが確定したわけではない。

 

「塩見さん。これから私と一緒に美城常務の所に行ってもらえませんか? 塩見さんは、私の担当ではありませんのでライブに出す場合は、常務からの許可が必要となります」

 

「……それがないとダメなの?」

 

「はい。ただ、おそらく許可は出るとは思います」

 

「……許可が出るなら問題ないよね? ふぅー安心したー。もしダメならどうしようかと思ったよー」

 

「ですが、今から参加になると本当に大変な事になります。今まで経験したことがないほどに苛烈を極める事になるでしょう。それでも参加されますか?」

 

「やる。もう決めたからね。シューコちゃんは、一度決めたらやる子だから。その辺は任せてよ」

 

「……わかりました。では、少しだけ時間を頂きます。美城常務からの許可をもらいに行きますので」

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

「――なるほど。これを行うと?」

 

美城常務に周子を加えた上での企画書を渡す。周子が加わる可能性も考えて予め製作していたのですぐに提出はできた。

 

「君が何をしていたかは問わないが、彼女はやる気なのだな?」

 

「――はい。お願いします」

 

周子は、常務に頭を下げる。

 

「問題はない。やる気のある者を止める理由もない。精々努力し、結果を出してもらいたい」

 

「――はい。ありがとうございます」

 

「それでだ。君は、彼女をどうする?」

 

「……どうする、ですか?」

 

「――なに、別におかしな事ではないだろう? これだけの事をするのであるならば誰かがサポートをする必要がある。預けているスタッフでもできない事もないが……保証はできない。塩見。君は、それでいいのか?」

 

「――えっと、それは……」

 

周子は、チラリと武内を見る。

 

「担当をプロデューサーにしてもいいということでしょうか?」

 

「他に適任がいれば別だが?」

 

「……プロデューサーがいいです」

 

「そういうことらしいが、どうする?」

 

「……私としてはかまいません。やらせて頂きます」

 

「では、この話は以上だ。結果を期待している」

 

二人は、美城常務の部屋から外に出る。

 

「……なんだか担当になったみたいだけど……大丈夫?」

 

「まだ、余裕はありますので問題はありません」

 

「そっか、なら安心だねー。よろしくね、プロデューサー。シューコちゃんを立派なアイドルにしてよね」

 

「そうですね。一緒に頑張りましょう」

 

「……でもさ、あたしが参加するのわかってたんだね」

 

「塩見さんに協力すると決めた時から考えてはいました」

 

「……そーか。なるほどねー」

 

周子は、近づいて武内を下から見上げる。

 

「これは、クローネの皆が落とされる気持ちもわかるね。頼りにしてるよ」

 

周子は、そう言うと楽しそうに先を歩く。

 

「ほら、早く行こうよ! これからやらなきゃいけない事がいっぱいあるんだからさー、プロデューサー」

 

「そうですね」

 

武内は、先に行く周子を追いかけるように足を進める。ただ、やはり気にはなる。

 

(なぜ、こんなにも甘いのでしょうか?)

 

プロジェクト・クローネのプロデューサーになってから美城常務からのあたりが弱い。それはそれでいいのだが――

 

(……今は前を向きましょう)

 

考えてもわからない。今は、先を歩くアイドルを見ていよう。

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

周子を加えてレッスンが行われるようになった。

 

「疲れたーん。もうむりー」

 

レッスンを終え、報告を兼ねて武内のオフィスに来た周子は、報告よりも先にソファーに倒れる。

 

「周子。報告が先だよ!」

 

渋谷凛から言葉が飛ぶが周子は、顔だけを武内に向ける。

 

「あたしを見ればわかるよね、プロデューサー」

 

「……そうですね」

 

最初の頃は付いて行き見ていたが大変では済まない内容だった。北条加蓮、鷺沢文香の二人と共にレッスン場から此処まで背中に背負って運んだぐらいだ。3人とも限界までやるので心配になる程に。

 

「まったくだらしないな、周子は」

 

「私の肩を借りてる奴のセリフには思えないな」

 

先にレッスンをやっていた者の意地だろうか? 神谷奈緒の肩を借りても北条加蓮は虚勢を張っている。

 

「……疲れましたー」

 

「……そうですね」

 

「……Я хочу отдохнуть」

 

橘ありすと鷺沢文香は、今にも倒れそうな程にふらついている。アナスタシアに関しては、日本語を話せないぐらいに朦朧としている。

 

(厳し過ぎますか)

 

当人達は知らないが、実は必要以上のメニューをこなしている。これに関しては、美城常務からの命令で今後の為に様子を見ながらレベルを上げるように言われている。彼女達は、知らない間に徐々に上の方へと移動しているのだ。おかげで、今度行われるライブだけ見ればあと少しと言ったところだろう。

 

「……皆さん。もしお辛いようでしたら少し内容を見直しますが?」

 

「――それって、私達が力不足ってこと?」

 

凛に睨まれる。

 

「――それはダメ。プロデューサーでも、それだけは許さないからね」

 

加蓮も凛に続く。

 

「あたしもやるって決めたからさー。それはなしのほーこーで」

 

「私も……せっかくここまでやってるから今更変えるのはやだな」

 

周子も奈緒も反対のようだ。

 

「……私は、大丈夫です」

 

「私もこの程度なら」

 

「Не сдавайтесь。諦めません」

 

文香、ありす、アナスタシアも同じ意見だ。

 

「……そうですか。では、もう言いません。頑張りましょう」

 

各々からライブへと向けた声が出るが、内緒に少しだけ変えておくとする。まだ彼女達の道は遥か遠くまで続いているのだから。

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

「それで、最近調子はどうなの?」

 

「まーまーかな」

 

双葉杏と周子は、武内Pのオフィスでだらけている。周子は、漫画を。杏は、ゲーム機を手に持っている。

 

「ふふっ、創世の日は近い(あと少しで完成です)」

 

その横では、神崎蘭子がスケッチブックに絵を描いている。

 

「ねー、杏ちゃん。かな子ちゃんて和菓子とかは作れないの?」

 

「どうかなー。お汁粉とかなら作れるんじゃない?」

 

「クッキーも美味しいけど和菓子が食べたいな」

 

「隣に居ると思うよ」

 

「う~ん、めんどくさいなー」

 

今日は、個人でやっている杏と蘭子が此処を使う事になっている。周子は、元から中に居た。静かなので寝るには最適なのだそうだ。

 

「――できた!」

 

蘭子は、描き終わったのでプロデューサーの下へと持って行く。

 

「我が友よ!」

 

「……なんでしょうか?」

 

「古き都に住む東方の禍々しき妖狐(周子ちゃんをイメージしました)」

 

蘭子が描いたのは、今度の周子のライブの衣装だ。周子にどんな衣装を着たいか聞いたところ、同じプロジェクト・クローネの速水奏から蘭子が自分の衣装を考えていると聞いていた。それで、丁度傍に居たので頼んだのだ。

 

「……狐ですか?」

 

蘭子は、うんうんと頷く。

 

「蘭子ちゃんから見たシューコちゃんのイメージは、狐かー。コンコーン。和菓子とお茶がほしいコーン」

 

「そこは、油揚げにしておけば?」

 

「……良いと思います。先方に送っても?」

 

「ほんとに? やった!」

 

蘭子は、満面の笑みで喜ぶ。

 

「ねーあたしは見れないの?」

 

「それは、ダメ! 我がグリモワールは、選ばれし資格者だけが英知を授けられる(見てもいいのは、プロデューサーだけなんです!)」

 

「残念だなー、まーいっか。できたら見れるし」

 

周子がクッキーに手を伸ばした時、部屋の扉が急に勢いよく開く。

 

「――プロデューサーさん!」

 

橘ありすが手に何かを持って武内の下へと駆ける。

 

「見て下さい!」

 

「これは、イチゴ……いえ、チョコレートですか?」

 

ありすが持ってきたお皿の上には、ピンク色のチョコで作られたイチゴがある。

 

「この前、文香さんと一緒にかな子さん達と作ったんです。それで……プロデューサーさんに食べてほしくて持ってきました」

 

「あ~、そう言えばかな子ちゃんが言ってたなー」

 

「あたしの分とかあるん?」

 

「あっちにあるんじゃないかな?」

 

「甘美なる一時(甘くて美味しかったです!)」

 

「じゃあ、めんどーだけど行くかー」

 

周子は、渋々隣の部屋へと行く。

 

「それでは、頂きます」

 

ありすに期待の目で見られながらイチゴのチョコを口に運ぶ。

 

「……中にイチゴが入っているのですね」

 

チョコレートフォンデュで、果物を使う場合があるがそれに近い味がする。ただ、チョコもイチゴの甘さがあるので二つのイチゴの味が口に広がる。

 

「最初は、イチゴのチョコレートで何か作る予定だったんですけど、かな子さんがイチゴを中に入れてみたらって言ってくれたんです!」

 

「チョコレートでコーティングする物がありますがこれもそうなんですね。美味しいですよ」

 

「――本当ですか!? やりました!」

 

ありすは、満面の笑みで喜んでくれる。

 

「すみません、プロデューサーさん。文香さんとかな子さんに報告に行かないといけませんので、また後で来ますね!」

 

隣に居るのであろう鷺沢文香と三村かな子の下へと来た時と同じように急いで戻っていく。

 

「なんだか賑やかだねー」

 

「そうですね」

 

「でも隣は、もっと賑やかだよ。最近じゃ、クローネの人達も居るからね。そろそろ引越ししたいよね。杏は、ベッドとかほしいし」

 

「引っ越しですか……」

 

プロジェクト・クローネのプロデューサーになる時に元の場所へと戻る事になった。自分とシンデレラ・プロジェクトのアイドル達を分ける為に。

 

「流石に難しいですね」

 

「じゃあ、仕方ないね。こっちで休もう。おやすみ」

 

杏は、ゲームを止めて横になる。

 

(賑やかですか)

 

仕事の量も増えたが、それと同じように担当のアイドルも増えてきた。彼女達が問題なくアイドルをやれるように考えて行かなければいけない。

 






フレ、唯を一緒に出してギャグにするか?
唯に美嘉姉と他を合わせるか?
フレちゃんをシリアスにするか?
悩むよね。

とりあえず、少し絡みを挟んで考えます。

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