「これは、由々しき事態だよ!」
「由々しき事態なんだよ!」
大槻唯と宮本フレデリカは、真剣な表情で速水奏に抗議する。
「……何が?」
いきなりプロジェクト・クローネの待機場所に二人で来たと思ったら、こんな感じになった。別に二人もクローネの一員なので問題はないが、面倒事なんだと思う。
「カナデちゃん、そんなんじゃダメだよー! 見てよ、ほら」
唯が部屋の中を見るように促す。
「……何かあるの?」
特に普段と変わりがない。
「あるんじゃなくて、ないんだよー! たまに顔出すと誰も居ない時もあるんだよー!」
「この前なんてー、フレちゃんとゆいちゃんしか居なかったんだよー」
二人が言いたいことはわかった。
「……つまり、寂しいの?」
「そうそう! 遊びに来たのに誰も居ないとか、ゆいがまんできなーい!」
「アタシも遊びたーい!」
「そうは言っても無理な話よ? 最近、皆忙しくなってきたもの。それは、貴方達も同じでしょう?」
「むー、確かにそうだけど……」
「どうするの? もう終わっちゃうよー?」
「えー、せっかくカナデちゃんが居るから一緒に遊びたい!」
唯とフレデリカは、一生懸命考え始める。
「ゆい、良い事思いついた!」
「わーお! 教えて~」
「あっちの方に行けばいいんだ! みんな行ってるみたいだし、大丈夫っしょー」
「うーん、ありかもねー。じゃあ、いこっか☆」
「……迷惑掛けないようにね」
奏は、二人にそう言葉を掛け、読んでいた雑誌に戻ろうとするがジッと見られる。
「……えっ? カナデちゃんは、行かないの?」
「うそ~、いっしょに行こうよ~楽しいよ?」
「特に行く理由もないから」
「理由かー。フレちゃん、なにかある?」
フレデリカは、わざとらしく悩んでみる。
「フレちゃん良い事思いついたよ!」
「ホントに? やったね、フレちゃん!」
「いえ~い!」
二人は、ハイタッチを交わす。
「……何を思いついたの?」
「あっちとこっちで勝負しよー。シンデレラとクローネで☆」
「いいね、おもしろそー! カナちゃんもクローネで参加しようよー? ねーってばー」
「……勝負をするって、何をするの?」
「んー、普通に勝負してもおもしろいけど、もう一つほしいのかー」
「カナちゃんよくばりさんだねー」
唯とフレデリカは、更に考え込む。
「だったら、賭けちゃおうよ!」
唯が何かを思いついたようだ。
「たしかさー、プロデューサーさんがどっちも担当してるでしょー? それを賭けて戦うなんておもしろくない? ミカちゃんやキラリちゃんの話だとすごそうな感じだし」
彼女が言うミカとキラリは、アイドル城ヶ崎美嘉と諸星きらりの事である。3人は、他でよく仕事をしたり、遊んだりしている。
「アタシも聞いた事あるよ! シューコちゃんが話してたかな? ……うん、話してたよ、たぶん。 楽しいって!」
「――ちょっと、貴方達!?」
奏の言葉も聞かずに二人は、シンデレラ・プロジェクトの下へと向かう。
♢♢♢♢♢
「――と言う訳で、勝負に来たよー!」
「しょうぶ! しょうぶ!」
唯とフレデリカは、いきなり扉を開けるとシンデレラ・プロジェクトに勝負を申し込む。
「……よくわかんないけど――勝負を挑まれた!? どうしよう! しまむー?」
「――えっ!? えっと……頑張ります! ……よくわかりませんけど、頑張ります!」
一番近くに居た本田未央と島村卯月がよくわからないがソファーから立ち上がり向かい合う。
「おっ!? どうやら、やる気みたいだね」
「フフン! フレちゃんとゆいちゃんコンビに勝とうだなんて~1万年は早いねー」
「――待つにゃ!」
前川みくが間に割って入る。
「いきなり意味がわかんないにゃ! 説明を求めるにゃ!」
「……説明?」
「……勝負の?」
「――えっ? ないの?」
みくの言葉に二人は、困った顔をする。
「――二人とも、待って……」
二人を追いかけてきた奏がやっと追いつく。
「やったにゃ! 常識人が来てくれたにゃ!」
「――えっ? どうかしたの?」
奏は、みくに手を取って歓迎され困惑している。
♢♢♢♢♢
奏が、二人の代わりに説明をして状況を理解した。
「つまり、プロデューサーを賭けて勝負したいと?」
「それは、ダメです! プロデューサーを賭けに使っちゃ!」
「えー、良いアイディアだと思ったのにー」
「残念だねー」
二人は、計画が失敗して拗ねる。
「もう、帰りましょう? 確か、差し入れにマカロンを貰ったはずだから」
「マカロンか……ん?」
唯の目にテーブルに置かれているお菓子の数々が映る。
「お菓子のバイキングでもやってるの? フレちゃんもお呼ばれしていい?」
「――えっと、いいですよ。どうぞ、食べてみてください」
お菓子を作った一人であろう三村かな子が二人を誘う。
「おおっ! やったじゃん! マカロンは、今度にしよう!」
「お菓子のまんかいなんたらやないか~い、だね☆」
「――ちょっと、二人とも!」
奏の言葉も聞かずに空いている席に唯とフレデリカは座る。
「紅茶ですけど、飲みますか?」
かな子の隣に座っていた緒方智絵里が紅茶の入れ物に手を掛ける。
「砂糖甘々で~」
「アタシも~」
「わかりました。待っててくださいね」
智絵里は、嫌な顔もせずに二人の分を淹れ始める。
「……もう、帰っていいかしら?」
「――えっ!? 二人を置いて帰っちゃうの?」
「基本的には無害なはずだから。ごめんなさい、少し相手をしてあげて。飽きたら帰ると思うから」
「……大変なんですね」
卯月の言葉が嬉しいような、悲しいような。
「そうね……楽しいのだけど、少しね。あとは、任せていい?」
「……もう居着いちゃってるからいいよ」
未央の言葉通り、唯とフレデリカはお菓子を選びながら食べている。
「これって、手作りなんだー。凄すぎだねーカナコちゃんはー。ねえ、キラリちゃんのオススメとかある?」
「きらりんのオススメは、これだよぉ~。甘くてすっごく美味しくてはっぴはっぴになれるにぃ☆」
「これと、これもキープしーとこ」
「ああ、ズルいー。アタシもキープするー」
「みりあもー」
フレデリカと競うように城ヶ崎莉嘉と赤城みりあもお菓子を自分のお皿に取り始める。
「……そうみたいね。じゃあ、何かあったらその時は連絡して」
奏は、疲れたように元来た道を帰っていく。
「なんだか大変そうにゃ」
「……うちも変わんない気はするけどね」
「そうかにゃ?」
みくの言葉にどう返すか悩む。
「まあ、いいじゃん。それよりも、シンデレラ・プロジェクト流のもてなしってやつを見せてあげないとね。島村卯月隊員!」
「はっ、はいっ!」
「あの二人をもてなして、シンデレラ・プロジェクトの力をみせるんだ!」
「――わかりました! 頑張ってもてなします!」
卯月は、頑張ってもてなす為に既にお菓子争奪戦にまで発展している戦場へと向かう。
「未央ちゃん……」
「しまむーは、試練を乗り越えて強くなるんだよ、うんうん」
新しく参加した卯月を加え、他のシンデレラ・プロジェクトのアイドルも参加し始めている戦いは、渋谷凛がレッスンを終えて帰るまで続くことになる。
SS形式で書き直そうか少し悩んだ。
ギャグは台本形式の方が書きやすい