プロジェクト・クローネのプロデューサー   作:変なおっさん

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第27話

今日は、実験内容の確認をするためにオフィスで視聴会を開くことにした。参加者は、新田美波、諸星きらり、前川みく。それにシンデレラ・プロジェクトの待機場所に呼びに行った時に居た速水奏が話を聞いて参加することになった。オフィスにテレビなどの機材。長くなるので、デリバリーで食事なども用意しておいた。

 

「ふにゅぅー、きらりんにはむっずかしいにぃ」

 

「みくも、ちょっと……」

 

きらりとみくは、実験中の映像を見ながら武内がまとめた資料などを見ているが難しくて疲れたようだ。どちらもアイドルとしてのキャラとは違い、普段は真面目に学校に通っている優等生だ。それでも英文で書かれ、専門性の高い物だと理解は難しい。

 

「難しいですね」

 

「そうね」

 

美波と奏も同じように読んでいる。こちらは、まだ頑張っているようだ。美波は、シンデレラ・プロジェクトのリーダーとしての意地。奏は、プロジェクト・クローネの一員としての誇りだろう。

 

「できる限りまとめてはみましたがこれが限界です。知り合いの方にも聞いてはいきますが他も考慮してやる方が良いかもしれません」

 

「他に何かあるの?」

 

「きらりんにも教えてほしいにぃ、Pちゃん」

 

まだ資料に目を通している二人は、視線だけをこっちに向ける。

 

「限界までの見極めはやはり時間が掛かります。これからも注意してやっていきますのでいずれはできるかもしれません。ただ、いつになるかもわからないものに縋っていても駄目だと思います。そこで、できる限り形で見ていきたいと思います」

 

「何を形にするの?」

 

「にょわ~、きらりんにもわかりやすくおなしゃー」

 

「簡単に言えば数値化です。本来なら機材なども必要なのですが他に方法も浮かびませんので」

 

武内は、ノートパソコンを操作し、幾つかの画面を見せる。

 

「これは、トレーナーの方で取っている皆さんの情報になります。トレーナーの方達は、これと実際の動きを見ながらレッスン内容を考えていきます。先ずは、自由に見て下さい」

 

ノートパソコンを真ん中に居る美波の前に置く。

 

「説明してくれないとわかんないよー、Pちゃん」

 

4人は、とりあえず画面を見て見たがいろいろと数字とグラフがあるだけでどう見ればいいかがわからない。

 

「失礼します」

 

武内は、美波の後ろの方に回り込み、美波に指示を出す。

 

「新田さん。その下の方をお願いします。その中に名前がありますので、新田さんのをクリックしてください」

 

「こうですか?」

 

言われるがままに操作すると、美波の情報が出る。

 

「これが私のですか?」

 

「はい。新田さんが346プロダクションに在籍してからの情報が入っています。今回必要なのは、レッスンとトレーニング内容の項目になります。今回は、レッスンと書かれているところをお願いします」

 

「はい」

 

操作をすると、新しい画面が表れる。

 

「これが、美波ちゃんの情報なの?」

 

「ん~、よくわかんないにぃ?」

 

「そこにあるモデルと書かれている所をお願いします。それをクリックすると現在の346プロダクション内のアイドルの平均と一般的なアイドルの情報が重ねて表示されます」

 

「わかりました」

 

美波が操作をするとグラフに別の物が重なるようにして表れる。

 

「この新たに表示された物が一般的な基準です。基本的なプログラムなどはこれを下に考えられています」

 

「美波さんは、全体的に上なのね。一つも下にないわ」

 

「凄いにゃ! さすが、美波ちゃん!」

 

「うきゃぁー! 美波ちゃんすっごおーい!」

 

「ありがとう……」

 

他の三人から褒められて嬉しい。ただ、今の位置は皆の真ん中になるので照れても逃げ場がない。

 

「見て頂いている通り、既に新田さんは基準よりも上にあります。ただ、これにボーカルなどの要素なども含まれますので一概には判断できません。ダンスだけならともかく、歌いながらですと別物になりますので。トレーナーなどの評価や他にもいろいろとあるものを吟味すると今の皆さんの実情が表れます。これとは別に機材などで肉体の情報を取る物もありますが、そちらを利用するにはもう少し実績が必要になります」

 

既に簡単な物ではあるがトレーナーの方で数値などの形にはしてくれている。これらを機材も使わずに目測やプログラムだけで評価や判断をするのがプロである彼らであり、できないのが素人である自分である。

 

「今も既にこれらを参考に行ってはいますが、結果は皆さんも知っての通りです。ただ、これ以上の物も現状ではないでしょう。それで、もう一度検討して考えたのを用意しておきました」

 

デスクの方に行き、用意していた物を持って戻る。

 

「これは、レッスンとは別にお願いする形になります。基本的には、基礎力の向上になります。身体を休める事も大事ですのでレッスンなどがない時などにやってみてください。私やトレーナーが居なくてもできるものを選びましたので問題はないと思います。ただ、わからない事などがあれば言って下さい」

 

美波、きらり、みくの三人に渡す。さすがに途中参加の奏の分まではない。

 

「意外と簡単な内容なんだね?」

 

「これならきらりんでもできそうだにぃ」

 

「これで大丈夫なんですか?」

 

「やって頂くとわかりますが普段使われていない部分を使う事になります。ただ、バランスよくやって頂かないといけませんので、やる場合は全てお願いします。それと、各自で内容が違いますので紛失した場合などは言って下さい」

 

これからしばらくはこのメニューを行う事になる。もちろん、実験はこれからも続く。

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

《おまけパート④》本編とは関係ないです。書きたいだけです。

 

「――お邪魔しまーす」

 

城ヶ崎美嘉が部屋へとやって来る。今日は、妹である莉嘉と一緒に家まで送る事になっている。

 

「お疲れ様です、城ヶ崎さん。まだ莉嘉さんの方は時間が掛かりますのでこちらでお待ちください」

 

「そう……じゃあ、失礼しようかな」

 

美嘉は、ソファーに座る。

 

(どうしよう……これって二人っきり!?)

 

てっきり莉嘉が居ると思って安心していたら、まさかの二人きりになった。

 

「ね、ねぇ、そういえばなんだけど――」

 

とりあえず何か話そう。そうじゃないと間が持たない。

 

「――ほら、最近みんなに会ってるんだってね? 楓さんとか、菜々ちゃんとか、幸子ちゃんとかが話してたよ! 一緒にお酒とか、ご飯食べたって!」

 

(どうしよう! なんだかおかしいよ、アタシ!)

 

意識し過ぎて言葉遣いが変な感じになる。だって仕方がない。アイドルと関わらないように裏方に回っていた。美嘉を含めて担当だったアイドル達とも距離を取っていた。最近は、莉嘉を通して関われるようにはなった。でも、昔みたいにはいかなかった。そんな時に昔のように他の人達が一緒に過ごせたと聞いたら意識もする。変な意味じゃなくて。変な意味じゃなくて!

 

「そうですね。皆さんと久しぶりに御一緒しましたね」

 

「そ、そうだよね、うんうん。でもさー、なんでアタシには声が掛からないのかな? こうして居るのに?」

 

(何言ってるの、アタシ!? これじゃあ、卑しい女見たいじゃない……ああ、最悪)

 

「……確かにそうですね。城ヶ崎さんには、いろいろと普段から助けて頂いていますから」

 

(莉嘉……お姉ちゃんはダメだったよ……)

 

「――この後何処かに行きますか?」

 

「……ふへぇ? 行くの? どこか?」

 

「時間も遅いですし、家まで時間も掛かりますので」

 

「そ、そうだよねー、いい時間だもんねー。……本当に行くの?」

 

「やめておきますか? 家の方で用意をされているかもしれませんので」

 

「ああ、うん、それは……大丈夫かな? うん、大丈夫だと思うな! 今日は、忙しいとか言ってた気がするし!」

 

(連絡しておかなきゃ)

 

「では、何処に行きましょうか?」

 

「ええっと、それは……どこがいいの? どこでもいいよ?」

 

「それなら莉嘉さんに決めてもらいましょう」

 

「うん、それがいいよ! 疲れてるのは莉嘉だしね! アタシは別にど――」

 

「――Pくん! 疲れたよー!」

 

美嘉の言葉を遮るように莉嘉が部屋に入ってくる。

 

「お疲れ様です」

 

「聞いてよ、Pくん。今日ね――あれっ? お姉ちゃん居たんだ?」

 

莉嘉の目には、うなだれるようにしている美嘉の姿がある。気のせいでなければ部屋に入った時に動いた気がする。

 

「……ああ、うん、居たよ。お疲れ、莉嘉」

 

美嘉の声は明らかに疲れている。

 

「そっか。ねぇ、Pくん! アタシ、おなか空いたよぉー。どっか連れてって!」

 

「いいですよ。今、城ヶ崎さんとも話していましたので」

 

「ホント!? やったー! ねえねえ、どこ行く? それとも、もう決まった? それかーアタシが決めていい?」

 

「莉嘉が決めていいよ」

 

「じゃあね、じゃあね。うーんと、どこにしようかなー」

 

無邪気に喜ぶ莉嘉の姿を見て少し羨ましく思う。もう少し莉嘉のように素直になれたらもっと早く昔のように戻れたのかもしれない。

 


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