視聴会も終わり、デリバリーで用意した食べ物などが余ったので他のアイドル達もオフィスに来ることになった。
「……どうしよう、未央ちゃん。全然わかりません!」
「うーん、こればっかりは未央ちゃんもパスで。しぶりんは?」
「私は、別にいいよ。プロデューサーに任せてるから」
一生懸命資料に目を通している島村卯月と本田未央とは別に渋谷凛はピザに手を付ける。
「ズルいです、凛ちゃん」
「これが先を行く者の余裕か……しまむー、付いてこい!」
「――はっ、はい!?」
卯月はよくわからないが凛に襲い掛かる未央に続く。
「――ちょっと、未央! そこは――ダメだから!」
「ここか? ここがええのんか?」
「な、なんだかドキドキします!」
未央が凛の身体をくすぐり始めたわけだがその光景はなかなか直視し辛い。
「しまむー! 増援を求む!」
「ダ、ダメだから――アハハッ――や、やめて……」
「美波ちゃん、私はどうすればいいんでしょうか!?」
「――えっ!? 私?」
どうしていいかわからなくなった卯月に新田美波は助けを求められたがどうしていいかわからない。
「参加すればいいのよ」
代わりに速水奏が答える。その顔は、いたずらをする子供のようだ。
「そ、そうですか? 奏さんが言うなら、私も頑張ります!」
「――えっ!? 卯月!? そこは――」
未央とは反対側から卯月が凛を襲う。挟まれる形でくすぐられる凛の助けを求める声と笑い声が部屋中に響き渡る。
「元気だにゃ~」
「ハピハピだにぃ~」
前川みくと諸星きらりは、疲れた脳を休めるように甘い物を口に運んでのんびりしている。
「異界の書物(なんて書いてあるんでしょう?)」
「うーん。よくわかんないや」
神崎蘭子と多田李衣菜の二人も資料に目を通すがさっぱりわからない。そもそも興味はあるけど内容を理解しようともしてない。
「ねーねー、アーニャちゃんはわからないの?」
「英語は、ちょっと。русский。ロシア語ならわかります」
赤城みりあとアナスタシアも読んではいるが、ページをパラパラと簡単に眺めているだけだ。
「なんだか騒がしくなったわね」
奏は、この光景を楽しそうに眺めている。最近よく顔を出すようになったから見慣れてはきたが賑やかなものだ。
「でも、私は今が好きです」
「そうね。美波さん」
二人は、この中でも静かにお茶をしている。ここだけ別の場所のようだ。
「でも、今思ったのだけど。美波さんの以外も見て見たかったわね。自分の事なんて普通はわからないから」
結局、見たのは美波の情報だけ。他の人間の名前もあったので見ようと思えば見られない事はない。
「ねぇ、プロデューサーさん。私のも見ていいかしら?」
既にデスクに戻り、仕事を始めている武内に聞く。
「先ほどと同じところだけならかまいません。それ以外だと、いろいろと書かれていますので見ない方がいいと思います」
「あらっ? もしかしてよくないこととか書かれているのかしら?」
「――いえ、そういうわけでは……ただ、書いてあることを意識してしまうと良くならずに悪くなる場合もあります。他者からの評価は、良くも悪くも影響を与えますので」
「そう、なら他は見ないようにするわ」
武内の下に行き、ノートパソコンを借りる。一応、自分で操作できるところまでは操作してもらってから。
「禁断の書物が封印されしパンドラの箱(私のもあるんですよね?)」
「私のもあるのかな?」
資料よりも面白そうな物が現れたので、蘭子と李衣菜がやって来る。
「美波さんは、平均よりも上だったけど。二人は、自信がある?」
奏は、二人に忠告する。仮に下だったらショックを受けるかもしれないから。
「ど、どうしよう……あうぅ……」
「へ、へぇ~、まあ私だから自信はあるけど……今回はやめておこうかな~」
「ヘタレにゃ」
蘭子と李衣菜の二人は、大人しく空いている席へと座る。
「じゃあ、私でいいわね」
奏は、操作をして自分の情報を出す。その後は、モデルをクリックして比べてみる。
「奏さんは、体力以外は上ですね」
「そうね。体力に関しては、確かに問題はあるかもしれないわ」
「でも、ヴィジュアルとかは高いですね」
美波のグラフが平均して高いとするなら、奏の場合は体力面が低く、その代わりヴィジュアル面が高い。
「モデルの仕事などが影響しているのかしら?」
「いやー、奏ちゃんは雰囲気だと思うなー」
「汝の纏う雰囲気は魔性の如き(大人っぽいです)」
李衣奈と蘭子の意見は的を射るものだ。ヴィジュアル面は、個人の魅力をどれだけ引き出せているかが重要になっている。年齢に対して不相応の大人のような妖艶な魅力はかなり優位に働いている。
「でも、それなら美波ちゃんも負けてないにゃ。シンデレラ・プロジェクトのエロス担当にゃ!」
「エ、エロス!?」
「美波ちゃんは、大人のみりょくでーメロメロでうらやましにぃー。きらりんもみんなをハピハピでメロメロにしたいなぁ~、うっきゃーはずかしぃ!」
「そうね。美波さんも私以上に色気があるものね」
「милый。美波は、可愛いです」
話を聞いていたアナスタシアが参加する。
「ありゃ? アーニャちゃんは別意見だ?」
「片翼を担う者か(ラブライカとしてですか?)」
それからしばらく美波について話し合われることになる。主にアナスタシアが中心に。
(アーニャちゃん……)
アナスタシアが美波の秘密を公の場で公開しているわけだが、なかなか止めるタイミングを掴めずに美波は辱めを受け続ける。
♢♢♢♢♢
「プロデューサーさん」
後部座席から卯月が声を掛けてくる。今日は、ニュージェネレーションの3人を家まで送る事になった。既に未央と凛は家に送った後だ。
「なんでしょうか?」
「あの、最近忙しそうだなって思って。私達のために頑張ってくれてるのは嬉しいですけど、自分の事も見て下さいね?」
「気を使って頂いてありがとうございます」
「気になりますよ。プロデューサーさんが何をしているのか私にはわかりませんけど、大変なんだって事はわかります! 何かあったら言って下さいね、私頑張りますから!」
卯月の言葉に嬉しい反面照れ臭くもなる。
「島村さんの方は大変ではありませんか? レッスン内容も様子を見ながらではありますが増えています。負担になっていたら言って下さい」
「それは、大丈夫です! プロデューサーさんやトレーナーさんが考えてくれていますから! ……でも、勉強の方が少し」
鏡越しに卯月と目が合う。
「今度、私でよければ見ますが?」
「本当ですか!? ご迷惑じゃないですか?」
「皆さんのサポートが私の仕事ですから気にしないで下さい。時間は何時頃がいいですか?」
「ちょっと、待ってください!」
卯月は、鞄からスケジュール帖を取り出して確認する。
「明後日はダメですか?」
「かまいませんよ。それでは、時間を決めましょう」
「はいっ! 島村卯月! 勉強も頑張ります! ……苦手ですけど、えへへ」
それからは勉強会の時間を話し合う。その後は、残りの僅かな時間を好きなように楽しむ。
短いからおまけパートを書こうと思った。
でも、誰を書こうか悩んで書けなかった。
本編と関係ないから誰書くか悩むんだよね。