プロジェクト・クローネのプロデューサー   作:変なおっさん

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第3話

「――プロデューサー!」

 

オフィスの扉が勢いよく開き、渋谷凛が部屋へと入って来る。

 

「――どうかしましたか?」

 

凛の勢いを受けて、思わず席から立ち上がる。ちなみにオフィスは、シンデレラ・プロジェクトのアイドル達の待機場所の隣にある。プロジェクト・クローネのプロデューサーになった際に元の場所へと戻る事になった。

 

「――どうかしたじゃ――ッ――」

 

理由はわからないが、凛に睨まれる。急いでいたからか頬が紅潮している。

 

「申し訳ありません。何があったのか話して頂けませんか? 正直な所、心当たりがありません」

 

また何かしてしまったのか? 最近の出来事を思い出す。

 

「プロデューサー」

 

「はい」

 

「……加蓮と奈緒と……話をしたよね?」

 

「……はい。それがどうかしましたか?」

 

聞き返すが、凛から言葉が返ってこない。代わりに凛の顔が赤く染まる。

 

(北条さんと神谷さんと話した事……)

 

初めて彼女達と話したのは昨日の事だ。加蓮の提案で、ハンバーガーショップで食事をした。話した内容は、シンデレラ・プロジェクトの事や凛に関する事。

 

「……なにか、渋谷さんに対して失礼な事を言ってしまいましたか?」

 

自分の記憶にはない。しかし、人によっては違う事もある。

 

「そ、それは……」

 

なぜか凛の反応が悪い。先ほどの勢いも今は見る影もない。

 

「話して頂けませんか?」

 

聞いておかなければいけない。今後、彼女達と関わっていくために。

 

「……やっぱり、なんでもない」

 

凛は、そう言うとその場から立ち去ろうとする。

 

「――待ってください!」

 

思わず凛を追いかけ、その手を掴む。

 

「私は、もう後悔したくはありません! ですから、教えてください! なにが渋谷さんを此処に来させたのか?」

 

「――ちょ、ちょっと……」

 

「――すみません!」

 

掴んでいた手を離す。

 

「……今思えば、大した事じゃないから……別に……」

 

「渋谷さん……」

 

「……そんな目で見ないでよ……本当に大したことじゃないから……」

 

凛がしおらしくなる。

 

「……ねぇ、プロデューサー。昨日の話の内容は憶えてる?」

 

「正確かどうかまではわかりませんが、シンデレラ・プロジェクトと渋谷さんのお話をさせて頂きました。そこで、渋谷さんに対して何か失礼な事を言ってしまいましたか?」

 

「……違う……言ってない……」

 

凛の口から小さな言葉が零れる。

 

「加蓮と奈緒に……いじられた……その、いろいろと」

 

「いじられた?」

 

「プロデューサーが……褒めてたって……感謝してるって……それで……」

 

静かに凛の言葉を待つが、それ以上は出てこない。

 

「……一つだけ聞かせて下さい。渋谷さんにとって、これから私と共にやる上で問題になる事ですか?」

 

なにがあったかはわからない。この様子だと、おそらくだが話してはくれないだろう。

 

「……問題にはならないよ……嬉しかったし。でも――もうダメ! これ以上は、無理ッ!」

 

凛は、勢いよく部屋から飛び出していく。

 

「……何かしてしまったのでしょうか?」

 

一人残され、自分が話した事を思い出す。

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

「――おっ! おかえり、しぶりん」

 

「……ただいま」

 

隣にある待機場所に戻って来た凛は、空いている未央の隣に座る。

 

「急にどうしたの? なんだか、すごい勢いだったけど?」

 

「……なんでもない」

 

凛は、未央から顔を背ける。その顔は、赤い。

 

「――凛ちゃん! 私が相談に乗りますよ!」

 

様子を見ていた卯月が凛の所に来る。

 

「これでもお姉さんですから頼ってください!」

 

「……そういえば、そうだったね」

 

「そういえばって、なんなんですか!」

 

「いやーしまむーは、可愛いから年上だってこと忘れちゃうからね」

 

「だよね」

 

一応、凛や未央よりも卯月の方が年上だ。

 

「もう、二人ともー!」

 

「怒っても可愛いよ、しまむーは。それで、どうしたの?」

 

「……別に大したことじゃないよ」

 

「でも、プロデューサーに関係する事だよね?」

 

「そうですね。『プロデューサー』って言ってましたから」

 

先ほど、この部屋でスマホをいじっていた凛が、いきなりプロデューサーの名前を叫んで出て行った。

 

「……もしかして、この前の話?」

 

未央の言葉に卯月だけではなく、他のメンバー達の視線も集まる。

 

「……凛ちゃん、話してくれませんか?」

 

内容によっては、これからの事にも繋がる。

 

「……だから、本当に大した――」

 

部屋にいるアイドル達からの視線を感じる。

 

「しぶりん。私もそうだけど、みんな気にしてるんだよ? これからどうなるのかなって。だから話してくれない?」

 

未央の声はとても優しい。

 

「凛ちゃん」

 

反対側からは、卯月が。

 

「――からかわれたの……」

 

「……からかわれた?」

 

「プロデューサーが私を褒めてたってからかわれただけ! ……だから、この前のとは関係ない……」

 

声と共に凛の姿が小さくなる。ついでに顔は真っ赤だ。

 

「なんだそんなこと? しぶりんがプロデューサーに褒められて照れただけ?」

 

「――わ、悪い! ……恥ずかしかったんだから」

 

主に加蓮からだが、昨日の武内との会話の内容で凛をからかっていた。

 

「いやー恥ずかしいのはわかるけど、あんなに勢いよくプロデューサーの所に行かなくても……」

 

「でも、安心しました。何かあると思いましたから」

 

卯月だけではない。他のメンバーもホッとしている。

 

「――それで、しぶりん。どんな内容だったの?」

 

「――えっ?」

 

「――私、気になります!」

 

凛は、未央と卯月に詰め寄られる。

 

「どんな感じに褒められたの?」

 

「教えてください、凛ちゃん」

 

それから、他のメンバーも加わり一部始終を話すことになった。その後、プロデューサーの誤解も解けたが、しばらくの間、凛と武内が顔を合わせる事はなかった。

 





短くてすみません。
試しで書いているので少し短いのが続くかもしれません。
言葉遣いなどおかしな点があれば言って下さい。お願いします。

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