プロジェクト・クローネのプロデューサー   作:変なおっさん

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第42話

《おまけパート⑨》今回は、少し練習も兼ねています。好きだけど書くのが大変なアイドル達なんで。

 

《邂逅編》

 

「我が友が選びし至宝の供物。禁断の果実に真紅の秘薬を加え……食べてもいい?」

 

「どうぞ」

 

今日は、346プロダクションにある噴水広場で神崎蘭子と昼ご飯を食べることになった。普段から一人で頑張る事の多い蘭子への御褒美になるわけだが、丁度外回りの途中にお気に入りのハンバーグ屋があり、ハンバーガーを持ち帰りで買ってきた。今日は、蘭子のお気に入りのこの場所で食べる。

 

「……やっぱり、美味しい」

 

食べるのは今回が初めてではない。お互いにハンバーグが好きなのでたまに一緒に食べている。

 

「今日は、ケチャップとハンバーグソースの二つを用意してあります」

 

「わがとも……」

 

蘭子の目がキラキラする。

 

「他にポテトも買ってあります」

 

「欲深き者には神罰が下る……」

 

「神崎さんは、レッスンも受けられています。この程度なら問題ないと思います」

 

「我が友が言うのであるならば……」

 

彼女も女性なので気になるのだろう。武内から見れば成長期であり、運動もしているので気にする必要はないと思う。

 

「太古から地に根付きし黄金の息吹も甘美なり」

 

「此処のは、ハンバーグに合う物を選んでいるそうですからね。ハンバーガーに使われているソースを付けると美味しいですよ」

 

「破滅への誘いの音が聞こえる……」

 

悩みながらも蘭子はハンバーガーとポテトを口に運ぶ。

 

「――ふっ、瞳を持つ者も所詮はその程度のものか」

 

何処からか声が聞こえる。

 

「プ、プロデューサー……」

 

蘭子は、何処からか聞こえてきた声に怯え、武内の服の袖を掴む。

 

「落ち着いて下さい」

 

とりあえず状況を確認する。昼間から幽霊が出るとは思えない。今日は雲一つない晴天だ。

 

「ボクを探しているのかい?」

 

再び声が聞こえ、そちらの方を見る。そこには、蘭子とあまり変わらないぐらいの少女がいる。

 

「貴女は?」

 

「ふっ、名前なんて大した意味はないさ。この世界で生きていく上で必要ではあるが、それだけではボクを表す事はできないからね」

 

状況はわからないが幽霊ではないようだ。

 

「神崎さん。幽霊などではないようです」

 

武内に言われ、武内を盾にするように覗き見る。

 

「本当だ……汝は、何処の世界から参られし者か?」

 

「君ならわかると思ったけど、ボクと同じ世界が見える君なら。それとも、既に君はこの世界に囚われてしまったのかい?」

 

何者かはわからないが蘭子を挑発しているようだ。

 

「我が名は魔王ブリュンヒルデ。何人たりとも我が魂を縛る事などできぬ」

 

「本当にそうかい? その口に付いている証を見てもそう言えるかな?」

 

蘭子は、指で自分の口元を拭う。

 

「その刻印が全てを物語っている」

 

蘭子の指には、食べた時に付いたケチャップが付いている。

 

「真紅の秘薬!?」

 

「君ともあろうものが世界の目があると言うのにそんな醜態を晒すとはね」

 

「くっ……汝は何者だ、答えろ!」

 

「二宮飛鳥。もし君とボクの道が交わればまた出会う事もあるだろう。もっとも、魂がそうさせるだろうけどね」

 

そう言うと、二宮飛鳥は立ち去る。

 

「我が力にも匹敵するだけの存在がこの世界に……異世界からの旅人よ、また相見えようぞ!」

 

よくわからないが時間もないので残りを口に運ぶ。

 

次回予告(嘘)。

 

運命に導かれし少女たちは再び交差する。次回、「ボクは、君と運命を共にする者さ」を御期待ください!

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

《LIPPS①》

 

プロジェクト・クローネのプロデューサーも兼任してからしばらくすると美城専務から新たなユニットを担当するように言われた。内容は、プロジェクト・クローネのアイドルに新しく選んだアイドルを加えて新しいものを創り出すプロジェクト。ユニットの名前は、『LIPPS』。クローネからは、速水奏、塩見周子、宮本フレデリカの3人。346プロダクションでも指折りの人気を誇る城ヶ崎美嘉。そして、新人アイドル一ノ瀬志希を加えて作られることになった。

 

武内がオフィスに出勤すると志希がソファーで寝ている。武内の予備の上着を布団代わりにして。志希の担当になってからはよく見る光景だ。

 

「起きて下さい、一ノ瀬さん」

 

寝ていても起きていてもかまわないので声だけ掛けて自分のデスクへと向かう。

 

「ふわぁ~、よく寝たー」

 

わざとらしい欠伸をして志希は身体を起こす。

 

「ちゃんと起こしてよー」

 

志希から苦情の声が上がるが応える事はできない。狸寝入りをしている時に起こすと抱きつかれるからだ。たまに本気で寝ている時もあるが無害なので先ほどのような対応をしている。

 

「今日も早いですね」

 

「うん、早いよー。今日は、4時には来たかな? 暇だったから此処で遊んでたんだよー」

 

「あまり上手くはいかなかったのですか?」

 

志希が此処に早くに来る理由は幾つかあるが暇な時は上手く行かなかった時が多い。彼女は、アイドルではあるが研究者でもある。その証に白衣を普段から身に着けている。

 

「そうなんだよねー、考えてたのとは違ったんだー。それでストレス解消でキミの上着をクンカクンカしてたの! 今日もナイススメル!」

 

自分の上着を目の前で嗅がれるのも慣れてはきた。彼女は、においに興味があるらしくその分野を研究している。どういうわけか自分のにおいが好みらしく隙あらばにおいを嗅いでくる。

 

「今日は、LIPPSでレッスンがあります。それまでは、休んでいてください」

 

「だったらキミのにおいを嗅がせてほしいな~。そしたらコロってグウグウするから」

 

期待の目で見られるがいろいろとまずい。本当に。前に抱きつかれている状態でにおいを嗅がれている所を見られた時は一騒動あった。

 

「ダメです」

 

「もう、ケチだな~。でも、キミのにおいが嗅げ無くなるのも嫌だしー、志希ちゃんを虜にするなんて悪い男だね、コノコノ~」

 

志希はそう言うと寝転がり、上着に顔を埋めてにおいを嗅ぎ始める。

 

「クンカクンカ、いい匂い、いい匂い~。なんでこんなにいいのかな~なんでかな~」

 

楽しそうにしているので自分の仕事に――

 

「――これは?」

 

武内が仕事の支度をしていると小さな小瓶を見つける。

 

「おっ!? 見つけちゃった? んふ~、それはね! 志希ちゃん発明の香水だよ~。ちょっと試してみてよ!」

 

「香水ですか?」

 

たまにだが試作品の実験に付き合う事もある。

 

「今日のは凄いよ! 『ネムネム君』って名前にしたんだけどどうかな?」

 

「ネムネム……もしかして、睡眠効果があるのですか?」

 

そうだとしたらまずい。会社に来て早々寝るとかはあってはならない。

 

「残念だけど、ブッブー。ネムネム君は、キミの代わりに寝てくれるんだよ。早い話が気つけ薬かな?」

 

「そうなんですか」

 

代わりに寝ると言うのはわからないが、眠気覚ましのようなものなのかもしれない。

 

「……一つだけ聞いていいですか?」

 

ある疑問が浮かぶ。

 

「なにかな~? あたしのスリーサイズはもう知ってるよね? もう、エッチなんだから!」

 

話が進まなくなるので本題に入る。

 

「これは、嗅ぐだけで効果があるのですか?」

 

「そうだよ。なんてったって香水だからね、えっへん! それがどうかしたの?」

 

「一ノ瀬さんも嗅がれたのですか?」

 

「それはそうだ……ああ、だから眠くないのか。テヘッ」

 

上着から顔を出す志希を見て、今日はレッスンが始まるまではこのままなんだなと思う。志希とのアイドルとプロデューサーの関係は始まったばかりだ。

 




最近、おまけが多いけど許して。

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