騒音部の一行   作:川端アイモ

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はじめまして川端アイモと申します。いわゆるパロディ大好き人間が好き勝手に書いた妄想です。
少しばかり長くなりますがご気分を害されない事を祈るばかりです。


サイレンとナイト

ここはとある大学の軽音サークルの部室。

今は何時だろうか?講義の合間に集まって演奏しようものなら辺り一帯から苦情が来る。

別名「騒音部」と呼ばれ忌み嫌われていた……

その為、生徒会や大学の事務から他の部活の邪魔にならない様にひどく遅い時間からしか練習を許されて無かった。

 

「な~そろそろ飯にしようぜ~」

そう仲間に投げかけるのはベース兼部長の宗一であった。

 

「なにを言うとんねぇ! まだまだワシは歌い足らんわい!」

広島訛りのこの男はヴォーカルの大吉……皆んなからはラッキーと呼ばれてる。

 

「落ち着けラッキー……素数だ、素数を数えるんだ。孤独な数字は勇気をくれる。」

相変わらず何を言ってるのかさっぱりなのがリード・ギターの俊介、某神父様と同じで素数を数える癖があるので神父様と呼ばれ何故か懺悔する生徒がいる……

 

「もう! みんな意味不明な事を言い過ぎ! ライブ前なんだから集中していこう!」

もっともらしい事を言っているのがドラム兼女声担当の直美だが、その凄まじいドラミングとライブパフォーマンスの激しさから別名「いどまじん」と揶揄されている。

 

「あっ! じゃあ僕、コンビニで何か買って来ますね……」

この気弱そうな男は、直美の弟でサイド・ギターの伸二だ。中性的な見た目も相まって騒音部のマスコットだ。

 

「君がそこへ行く事は『決定』されてる『運命』だからだ!『運命』は偶然ではなく必然性があって起こるものだからだ……」

 

神父様の訳の分からない迷言は無視して直美が続ける。

 

「あ! お願いね伸二。アホに付き合ってたら時間掛かるから……」

 

伸二が食料調達に走ってる間、もう一合わせする事になった。

 

「お~し! ワシの歌を世界に響かせちゃるけぇ!」

 

「ワン! ツー! ワンツースリーフォー!」

 

「レッツゴー……! …………ワシの歌を聞けば簡単な事さ~」

 

 

ウォォォォォォォォォォォォォォォン !

 

 

「なんじゃあ! 空襲か!」

 

「サイレン? 火事か何かか?」

 

「みんな! ちょっと外見て! 空が赤くない?」

 

丁度そこに伸二が息せき切って戻ってきた。

「みんな! 外の様子がおかしいんだ! 変な人があちこち俯いて歩いてる!」

 

それを聞いて一同は笑い出した。

 

「あっはははは! 伸二もついに見たか! 我が大学の七不思議の一つ『血まみれ女』の霊を!」

 

「女? 違うよ! 女も男もとにかく様子が変なんだ!」

 

「ねぇ! みんなちょっと待って! アンタら変態と違って伸二が嘘つく訳ないでしょ!」

 

「ちょっと待て! 俺も変態かよ!」

 

一応、自身を常識人として認識している宗一から異論が出たが、神父様が優しく宗一の肩を叩きながら言った。

 

「宗一よ……人が敗北する原因は『恥』のためだ。認める事は『恥』ではない……」

 

「断じて違う…………!」

 

「もう! 変態談話は良いから! ちょっと様子を見に行きましょう?」

 

直美に強く言われ渋々様子を見に行く一同!

建物から出てみると丁度、フォークソング部の女の子が向こうから歩いて来るのがみえた。

 

「なんじゃぁ! どう見ても普通にみえるわい!」

 

「よく見てよ! 大吉さん! いつもと様子が違うでしょ!」

 

「はぁん? まったく伸二はビビりじゃのぉ……良し! ワシが声掛けて来ちゃる!」

 

勢いラッキーが駈け出していった。

「おおい! ちょっとあんた~この辺で変わった事がなかったねぇ?」

 

ラッキーの問いかけにも俯いたままの女の子。

 

「おい? あんた人の話聞いとんね?」

 

ガバッ !

 

「うおぅ! なんじゃあ! その顔! 離せ! 離さんかぁ!」

 

突然、女の子はラッキーの首をしめてきた。

そして、その顔は蒼白で目から血を流していた。

 

「キチガイじゃあ! この女はキチガイじゃあ!」

 

その様子を見てパニックになる一同。

 

「ギギギギギギ……この……おんどりゃあ!」

 

ラッキーは女を蹴り飛ばして命からがらといった体でこっちに走ってくる。

 

「みんな! 校舎じゃあ! 校舎に逃げ込むんじゃあ!」

 

ラッキーの後ろには女が立ち上がり全力で後を追いかけてきていた。

とにかく走った。全力で走った。そして命からがら向いの校舎に逃げ込む事が出来た。

 

「はあ……はあ……なんだ……あの化物!」

 

「はあ……あんなのがそこら中に居るんですよ……」

 

「あ……ありゃあビタミン剤の打ち過ぎじゃあ……」

 

「でも……確かにフォーク部の女の子だったわよ……神父様はどう思う?」

 

「十一……十三……十七……十九……落ち着け! これは『試練』だ! 『天国』へと行く為の……」

 

「死んでどうするのよおおおおおおおおおおおおッ!」

 

バアンッ !

 

何処かのドアが開け放たれた音に一斉に一同の批難が直美に向く。

(この! いどまじん! おどれが大きい声だすけぇ!)

 

(そうだ! おたけびで俺たちの息の根を止める気か!)

 

(すいません! 姉さんも悪気があった訳じゃ……)

 

(なんでアタシが謝らなきゃならないのよ! 神父が悪いんでしょ!)

 

(そうだとしたら……どっちだね? 君の最優先は? 私か?)

 

その神父の言葉に現実に引き戻される。

 

(そう……断じて違う……落ち着け……落ち着くのよ直美!)

(まず状況を整理しましょう……整理……整理ィィィィィィィ!)

(神父のクソ野郎の素数が出て来るううううううううううう!)

 

 いどまじんは混乱している様だ……

 

(ばかたれ! おどれが混乱してどうする! とにかく隠れる場所を探すんじゃあ!)

 

ラッキーの言葉に我に返る。

 

(そうだ! 二階の倉庫なら俺が開けれるぜ!)

 

宗一……趣味ピッキング。

 

(とにかく行きましょう!)

 

二階へと急ぐ面々。何とか道中、見つかる事もなく無事辿り着く事が出来た。

 

「よし! ちょっと待ってろ!」

 

おもむろにピッキング用具を取り出し鍵穴に差し込む宗一。

 

「あんた! そんなの持ち歩いてる訳?」

呆れた様子の直美に宗一は言い放つ。

 

「俺たち騒音部には機材を出し渋るだろ? その為の備えさ……よし開いたぞ!」

 

ひとまず安堵する一同。

倉庫の中で腰を落とした。

 

「しかし……あれはなんじゃぁ?」

 

「知るかよ! とにかくヤベーもんには違い無い」

 

「まさか……あれが学園七不思議の『血まみれ女』じゃあ……」

 

「そんな訳無いでしょ伸二! どう見たってフォーク部の子だったじゃない!」

 

「じゃあ……みんなにとり憑いて……」

 

「伸二よ! そんな非科学的なモンありゃあせん! きっと今時のヤバイ薬に手を出しておかしくなっとるだけじゃあ!」

 

「でも……」

 

「ワシの首を見てみんさい! さっき鏡で見たんじゃが……幽霊なんぞがこんな痕つけれるかい!」

 

ラッキーの首には女の手形がはっきり残っていた。

 

「じゃあ! このまま隠れてたら薬の効果が切れて元に戻るんですね?」

 

「知らん!」

 

 エ――――――ッ !

 

一同の声なき声が木霊する。

 

「でも待って! 伸二の話じゃあんなのがあちこちに居るんでしょ?」

 

「うん……僕も気味悪くて隠れながら部室に帰って来たんだ」

 

「なるほど……神父! 君の意見を聞こう!」

 

「我々は夜明けを迎えねばならない……さっきも言ったがこれは『試練』だ! 例え彷徨える魂だろうが、薬漬けのサイコ集団だろうが、『目的』の為に私はいかなる障害も排除しよう……」

 

((確かに!))

 

ここに来て神父の言葉に朝まで生き残る事が大事だと再確認した面々だった。

 

「そ……そうだな! 朝になれば助けが来てくれるよな!」

 

「そうじゃあ! とにかくなんか身を守れる物を探すんじゃあ!」

 

「倉庫内を手分けして探してみましょう!」

 

ここでそれぞれの見つけた武器を見てみよう。

宗一……鉄パイプ

ラッキー……ガラスの灰皿

神父……謎の円盤

直美……火かき棒

伸二……大剣

 

「ねぇ……少し疑問に思う事があるんだけど良いかしら?」

「あ……あぁ俺達も思っている」

 

「「おまえの武器おかしくね?」」

 

みんな思う所は一緒だったようだ。

 

「まず普通組に分けてみよう……俺の鉄パイプにラッキーの灰皿、火かき棒は何故あるのかわからんが……まあ認めよう! まず神父! なんだその円盤は!」

 

「わからない……だがこの円盤からは不思議な『引力』を感じる……私が持つべき物だ!」

 

「つぎ! 伸二! 何故、普通の学校に『大剣』がある!」

 

「えっと……これは確か美術部の去年の出し物の『ゲームに登場する武器展』の残りだと思います……」

 

「そうか……それなら仕方ないな……神父よ? お前さっき朝まで生き残るのが大事だって言ったよな? なぜ円盤で生き残れると思った?」

 

「これは『神』が私に与えた『贈り物』だ!」

 

一同に「もう……いいや。面倒くせ~」という空気が流れた。

 

「よし……とにかくだ! それぞれが身を守る武器は見つけた! 次はどうする?」

 

「あたしは下手に動くよりここで助けを待った方が良いと思うわ」

 

「ワシは反対じゃ! あの女の怪力を見たじゃろ? もしあんなのが何人も出てきたら、こんな扉なんぞ一瞬で破られるわい! 一度助けを求めに警備室に向かうのはどうじゃろ?」

 

「僕は……皆さんの意見に従います……」

 

「くッ……神父……君の意見を聞こう!」

 

「『運命』とは切り開くものだ! そうして人の身体には『崇高な精神』が宿るのだ!」

相変わらず意味はわからんが的を射てる気にさせられる……と思ったその時 !

 

ガタガタガタッン !

 

「ひぃ! 見つかってしもうた!」

 

「おい! しかも何人か居るぞ!」

 

「ちっくしょおおおおおおお! こうなりゃ全員ブチのめしてやろうじゃないのおおおおおおお!」

 

「ああ! もう嫌だあああああああああああ!」

 

「伸二よ……『覚悟』だ! 『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばしッ! 幸福へと導くのだ!」

 

「やべぇぞ! もうドアが保たねえ! てめえ等! 覚悟決めろおおおお!」

 

バンッ !

 

ドアが破れると同時に怪物が三体乗り込んで来た。

 

「ウラアアアア! 死にさらせやあああああああああああ!」

 

「さっきのお返しじゃああああああああああああ!」

 

「伸二に手出し……させるかってのおおおおおお!」

 

とにかくひたすら殴り続けて怪物は全身の骨が折れた様だった。

しかし、それでも動いたのでとにかく警備室まで走る事にした。

だが、伸二は完全に怯え腰を抜かしてしまった。

 

「伸二! 早く立って! 走るわよ!」

 

「もう無理だ……姉さんだけでも先に行って……」

 

「手を貸そう! 伸二! 安心しろ私が付いてる!」

 

とにかく二人掛かりで伸二を担いで走った ! 

 

警備室までの道中、怪物が何人か居たが先に行ってた宗一とラッキーが滅多打ちにしておいてくれたお陰で何とか辿り着けた。

二人は待っててくれたようで合流して警備室に向かう事にした。

 

「良し! 明かりが点いてる! 中に人が居るみたいだ!」

 

「とにかく中まで走るんじゃあ!」

 

警備室のドアは開いてて無事に中に入れた。

中には警備員の人が数人座っていた。

いつも深夜まで練習する騒音部にとって警備のおっちゃん達は顔見知りだった。

宗一とラッキーがおじさんに声を掛けた瞬間……

 

ドゴオッ !

 

完全に油断し切っていた二人は不意打ちを喰らい完全に気絶してしまった。

 

「宗一! ラッキー! クッソ……!」

 

密室には数人の警備員だった者と直美、神父、伸二のみ……

 

「死んでたまるかああああああああああ!」

 

鬼の形相で火かき棒を振り回す直美。

謎の円盤で戦う神父。

戦力差は明らかだった。

次第に押される二人。

そして、怪物の一人が怯える伸二に拳を振りかぶった。

とっさに直美がかばいその場に倒れた。

 

「姉さん! 姉さん! 姉さん! 起きてよおおおおおおおお!」

 

「伸二ィィィィィィィィ! 姉さんはまだ生きてる! 君が姉さんを守るんだぁぁぁ!」

 

「僕が……姉さんを……う……う……うわあああああああああああああ!」

 

訳がわからなくなった伸二は目に映る警備員を片っ端から大剣で薙ぎ払った。

大剣が薙ぎ払われる度に怪物の身体はあらぬ方向に曲がり、しばらくするとビクとも動かなくなった。

その場にへたり込む伸二に神父が言った。

 

「伸二! とにかく今動けるのは我々しかいない! こいつらがまた動き出さないとも限らない! 今の内に外に放り出してしばらくここで全員が目を覚ますのを待つんだ!」

神父の言葉に伸二は頷き怪物を放り出してみんなを仮眠用のベッドに寝かせるのだった。

皆が目を覚ますまでの間、しばし身を休める神父と伸二だった。

 

どれだけ時間が経ったのだろうか?

ようやく面々が目を覚ましだした。

 

「うぅ……酷い目にあったのぅ……」

 

「ったく……なんだってんだよ……」

 

「クソオヤジ……まだ身体が痛い……」

 

「姉さん! 姉さん! 良かったぁ……」

 

「感動の対面だな……だが我々が休んでる間に事態は更に悪くなったようだ。」

 

受付の窓から外を見る様に神父に促され一同が恐る恐る覗いてみると……

 

「なんじゃぁ……あの数!」

 

「さっきより増えてない?」

 

「さすがに……あの数は無理だな。」

 

外を闊歩する無数の怪物達……

 

「これは……もうここで夜明けを待つよりねぇな!」

 

「どうやら……それも我々には許されないらしい……時計を見てみろ!」

 

「時計? まだ夜中だろ?」

 

「いや! 待って! もう朝の六時よ!」

 

「そんな馬鹿な! まだ外は真っ暗……」

 

「だが事実だ! あの時計だけじゃないアレもアレも……全ての時計が同じ時間を指している。」

 

「そうだ! 携帯は? 携帯で助けを呼んだら?」

 

「そうじゃぁ! 早速ワシがよんじゃるわい! ……ウムゥ? 圏外じゃあ!」

 

「まって私も……」

 

「俺のもだ!」

 

「そこにある警備室の電話も使えない。」

 

完全なる孤立。一同に絶望が沸き起こる。

沈黙が支配する中……ラッキーが突然口を開いた。

 

「なぁ……考えてみたんじゃが……どうにもワシャ腑に落ちないんじゃが……」

 

「何が腑に落ちないってのよ!」

 

「考えてもみんさい! ワシ等以外はおかしゅうなっとる!」

 

「だから……それがどうしたのよ?」

 

「逆に考えるんじゃあ! 何故ワシ等は狂うとらんのじゃ?」

 

一同がラッキーの言葉に「ハッ」とした。

 

「そうだよ! 確かにおかしい! 冷静に考えたら俺たちだけ、まともなのは確かにおかしい!」

 

「ふむ……ならラッキー……君の意見はどうなのかね?」

 

「あの時のことを思い出すんじゃあ! 思えばあのサイレンからみんな、おかしゅうなった! じゃがワシ等はライブの練習で爆音で歌っとったじゃろ? そのお陰でサイレンをまともに聞か無かったから助かったんじゃあ!」

 

「乱暴な意見だけど一理あるかもしれないわね」

 

「そうじゃ! 歌じゃ! ワシの歌を聞けばみんな正気に戻るかも知れん!」

 

「ラッキー……それはさすがに……」

 

「じゃあどうするんじゃあ! このまま何もせんのは犬死じゃあ! 少しでも可能性があるならそれに賭けてみんか?」

 

「ぐう……しかし……」

 

「大丈夫じゃ! 芸術は種族の壁を突き抜けるんじゃ! ワシを信じんさい!」

 

半ばラッキーに押し切られる形で怪物に歌を聞かせる事にした。

ラッキーの指示で怪物達が正気に戻るまで室内で様子をみる一同。

警備室にあった拡声器を片手に表にでるラッキーこと漢大吉 !

 

「ワシの歌をきけえええええええええええええええええええ!」

「ボンバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

一斉にラッキーを取り囲む怪物達……

しかし歌に反応するようにそれ以上は何もしてこない。

 

「う……歌が効いている!」

 

「イケる! イケるわ!」

 

「大吉さん!」

 

辺りに大吉の歌声が響く。

 

「爆撃ラブハート!」

(いける! いけるわい! これが歌の力じゃあ!)

 

大吉が更に歌を続けようとした時、一斉に怪物が襲いかかって来た !

 

「やめろ! やめんかぁ! 離せ! 離さんかあああああああ!」

 

「大吉いいいいいい!」

 

「大吉さん!」

 

二人が駆け出そうとした時……大吉が拡声器で二人に叫ぶ。

 

「直美! 伸二! はよう逃げるんじゃあ!」

 

あまりの光景にその場で立ち尽くす二人。

 

「ばかたれーーーーーー直美! ばかたれーーーーーーなぜ逃げないんじゃ!」

 

「いやあああ!」

 

いどまじんは混乱している。

しかし、神父は冷静に言い放つ。

 

「彼の犠牲を無駄にする事は私が許さない! 今のうちにここを脱出するんだ!」

 

「直美! 伸二! 神父の言うとおりだ! とにかく行くぞ!」

 

二人の手を掴み走りだす面々。

 

「行けえ! 行くんじゃあ! ワシは命の限り歌い続けるぞおおおお!」

 

ラッキーの歌を背に行くあてもなく走る続けるのであった。

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