次に一行が向かったのは、ある工場の一角だった。この時点で判明したのだが、どうやら『祠』が門の役割を果たしているらしい。現に工場にしても敷地内に祠があるを直美が覚えていた。
しかし工場まで残り二百メートル地点で伸二の身に異変が起こった。
ドガッ !
「ガッ……!」
伸二が突然、鼻血を出してその場に倒れこんだ。
「伸二? どうしたの! ギャッ!」
伸二に駆け寄った直美も何者かに殴られた様にその場に突っ伏した。
「これは……敵の襲撃だ! 周囲を警戒しろ!」
神父が叫ぶと周囲からこれまで見たこともない位の醜女が湧いて出た。
「なんじゃと! 囲まれとる!」
「ちっくしょう! 思いっきり罠じゃねぇか!」
一斉に周囲を警戒するがその間も謎の襲撃が彼らを襲った。
「グハッ!」
「アイタ! そこを殴るのは反則じゃろ!」
「クッ……ラッキー! 結界だ! 結界で周囲を囲うんだ!」
「う…うむ!」
神父の要請に急いで変身しようとするラッキー。
グニュンッ !
「ああ! またコイツ吐き出しよった!」
「何を遊んでいる! グハッ!」
「ちょ……ちょっと待ちんさい!」
ラッキーが変身に手間取る間にも醜女と謎の襲撃は止まない。
「急げえええええええええ! ラッキィィィィィィィィ!」
「ええい! あっ! 入った! 変身!」
周囲に下駄の結界が張り巡らされ醜女達を押し戻す事が出来た……が依然として謎の攻撃続いた。
「ぐげ! ぐまま! まっ! まぐまぐ!」
「宗一! パニックでアナグマ語を話すんじゃあない!」
「ぐげ!」
「ぐままままー! ぐげ!」
「あぁ……ラッキーの言う通り結界をかいくぐって我々に攻撃を加えている!」
「ま?」
「辺りを見渡してみろ! どこかに本体はいないか!」
「ぐま! んま……まぐまぐ……まっ!」
「確かに見渡す限り鬼も雷神も居ない……二……三……五……七……」
「ぐげええええええええええええええ!」
「落ち着けと言っているんだ! 宗一!」
「ぐ~! ま~! まっ?」
(ラッキーの言う通りか……いや……まさか! このアナグマ化も敵の攻撃なのか? 攻撃した相手をアナグマ化する能力……!)
「いやワシは普通に喋れるけど……」
「紛らわしい事をするんじゃあない!」
(だが……この感じ?)
「貴様! 視ているな!」
突如、神父はあらぬ方向に向かって声を荒げた。その瞬間、攻撃の手が止んだ。
「いきなりどうしたんじゃ神父?」
「私の鏡に写り込んだ! 敵は恐らく遠隔視の能力で我々を把握している……ソコッ!」
神父の八咫の鏡が空中を打つとその先から腕が伸びていた。
「な……なんじゃと! しかし居場所もわからず! どうやって仕留めるんじゃ!」
「それに醜女がこれだけ居たら探すのも無理だ! こっちが攻撃しようとしたら的確に急所を攻撃してきやがる!」
アナグマ化から回復した宗一が続ける。
「いや……そうでもない。確かに正確な居場所は特定できないが恐らく門の近くで我々を視ている」
「なんでそんな事がわかるんじゃ!」
「感じたからだ! それに万が一、我々が包囲を突破した場合を考えても門の近くで待機した方が対処出来る」
「じゃあ門まで突っ切るか?」
「いや……人数が多いと突破の隙を突いて来るだろう……だが! 私が気づいた以上!敵の攻撃は私をまず狙って来るはずだ!」
「ならどうするんじゃ!」
「私が一人で仕留めてこよう……」
神父の提案に誰しもが戸惑った。
「危険過ぎる! 感じただと? 不確定過ぎるだろ!」
「そうでもない……仮に門へ向かえば攻撃を探知出来る私に全ての攻撃が向く……そうすれば醜女の殲滅は可能なはずだ」
「ああっ! もう! どうせ行くなって言ってもお前は行くんだろ?」
その問いかけに神父は静かに笑っている。
「ちっ……俺が道を拓いてやる!」
宗一がロッドを頭上に掲げると先端部分が光り始めた。その間も攻撃は続いたが神父が阻止する。
「アイリスタイフーン!」
低い声で宗一が唱えると荒ぶる風のエネルギーが醜女達をなぎ倒し道が出来た。
「今だ! 行って来いぃぃぃ!」
宗一の掛け声と共に神父が疾走する。
一方その頃、門では二人の雷神がその様子を水晶を通して視ていた。
「どうやらこっちの場所に気づいたみたいだねぇ……」
「あぁ……だが殺る事に変わりゃしねぇ」
「そうだねぇ……私達は無敵さ! 無敵のコンビさ!」
神父は考える。自分の接近を阻止する様に激しい攻撃が加えられている。ここまでは予定通り……だが一番の懸念は取り逃がしてしまえば、この敵は永遠と自分達を付け狙うだろう。
敢えて、その事実を宗一達に告げなかったのは囮として敵の戦力を割かせる為だ。
もしこの襲撃が無ければ宗一達が醜女を始末するのは容易い。そうなれば必然として自分一人の為に戦力を割くよりも自分を始末するまで全力で宗一達の足止めをするだろう。勿論、それでも接近を許せば逃げ出す可能性もあったが神父は否定する。
「私さえ倒してしまえば後は安全な場所から始末するつもりなのだろう?」
誰に言うでもなく神父は呟く。
そうして、ようやく終点のようだ。
「随分と遅かったじゃないか?」
敵の女が神父に問いかける。神父は女の見た目から雷神と判断した。
「私一人の接近を防ぐ為にえらく必死だったじゃないか? それとも自信がないのか?」
ガキンッ!
突如、神父の真横から例の一撃が飛んで来た。八咫の鏡で受け止めると女の後ろから男が出てきた。
「少しばかり攻撃が視えるといって図に乗るな……」
「ハンッ! お前如きに手間取るアタイ等じゃ無いんだよ!」
(二人……女の遠隔視に男が攻撃か……)
(まずは『男』!)
攻撃手段を封じる為に男へ向かう神父。
今までの遠隔攻撃とは比較にならない精度で神父を襲う攻撃だったが神父の脳裏にはある仮説が浮かんでいた。
「貴様……もしかして自分で見える位置しか攻撃出来ないんじゃないのか?」
神父の言葉に一瞬、攻撃の手が緩んだが神父は構わず続ける。
「例えば、私の一部分でも隠してしまえば、ソコは攻撃出来ないんじゃないのか? 勿論……私の背後など見えようが無い所は論外だろうが……」
「それがどうしたあああああああ! 現にお前は俺に触れられねぇぇぇぇ!」
「鏡とは光を反射するものだ……」
スゥー……
神父の姿が風景に溶ける様に消えていった。
「な……なんだと! 消えただと! オイィィィィ! 奴は何処だァァァァ!」
「待ちな! 落ち着くんだよ! 私の能力で……」
「おいぃぃぃぃぃ! 後ろだああああああああ!」
ドグシャアアアアアアアッ!
神父は八咫の鏡によって女の鏡を抜き取った。
「これでお前が遠距離から攻撃することが不可能になったな……」
「お前……お前ええええええええええええええええええええ!」
男は逆上して自身が持つ最後の手を使う。男を中心に空間が捻れていく。
「アハハハハハハハ! これでお前も道連れだあああああああああ!」
「なるほど……空間を歪ませるのが本当の能力か……自分巻き添えなら視覚の制限もないのか……だが少し遅かったな……」
(時間よ止まれ!)
(どうやら間に合ったみてーだな!)
(つっても止まった時間の中じゃわかんねえか)
宗一は神父を担いでその場を離れた。
「時は動き出す」
動き出した瞬間、神父は何が起こったか理解出来ない様子だった。
だが、一同の無事を確認しあい第三の門を通過するのであった。