今回は1周年記念(一ヶ月遅れ)と七夕を兼ねての特別編です。今回のお話の時系列は織姫誘拐前後位ですかね。
何人かまだほんのちょっとしか登場出来てないキャラがちょこっとだけ出ますがまあ、お許し下さい。後でちゃんと出てきますから。
このお話は本編に無くても大丈夫なのですが結構重要なものもあったりします。もしよかったら色々と考察してみて下さい。
特別編 七夕
「アンジェちゃん、これどっから持って来たん?」
そう訊ねるのは、
「ああこれ? 笹だよ。市丸さんも見覚えあるんじゃないのかな? そんなもの現世か尸魂界くらいにしかないんだから、わざわざ現世から持って来たにきまってるじゃん」
悪びれる事もなく言っているが、無断で現世へ行く事は基本的に禁じられている。そういう事に甘い市丸にはまだしも、規則に厳格な東仙の側で言うべきではなかった。
「おいアンジェ。貴様、まさか藍染様の許可なく現世に行ってはいないだろうな? その場合は私が処罰を与えるぞ」
そのような事を言われると思っていなかったアンジェは明らかに挙動不振になっている。何か言い訳を考えているのだろうか、口をモゴモゴさせていた。そのような滑稽な様子のアンジェに対して、市丸は笑いを堪えている。
「ぇ、あの……えっと……あ、そうだ! 折角七夕も近いことだし市丸さんも東仙さんも何か願い事を紙に書いて吊るしてよ! 何かいいことあるかもしれないしさ。他の皆も何人か吊るしてくれてるよ」
どうやらアンジェは話の都合が悪くなると他の話題に変えたがるようだ。東仙も溜め息を吐き、「後でお仕置きだ」と呟きながらもアンジェの話題に付き合っている。なんだかんだでアンジェには甘いようである。
「へ〜、七夕かぁ〜。久々やな。どんな子らが願い事書いておるん?」
「そんなもの無駄だ。願ったところで力がなければ叶えられぬのだからな」
それぞれが各々の思った事を率直に述べている。東仙の言葉ももっともではあるが、アンジェはその意見をやんわりと否定した。
「確かにただ願い事をしても叶えられないかもしれない。でも自分が叶えたい願いを明確にする事で、己が求めている事も確認出来るんだよ。その願望に向かってより頑張る事が出来るかもしれないと考えれば、素晴らしいと思わないかな?」
そんなアンジェの言葉もあまり納得していない様子の東仙。まあ思う所があるのだろう。
「それなら尚更文字に起こす必要も無いだろう。自分の頭の中でやっていれば良いだけの話だ」
そんな様子の東仙にアンジェはやれやれと頭を振っている。
「胸の奥に秘めるのと言葉や文字にして外に出すのとじゃ、だいぶ違いがあると思うのだけれどもね……まあいいや、とりあえず試してみようよ! 別に悪い事なんて何一つある訳ないんだしさ。まあ恥ずかしいってのはあるかもしれないけどね。」
何も書いていない短冊が置いてあるテーブルの隣で、手招きを始めたアンジェ。その方へとなんだかんだ言っておきながら短冊を書きに行く東仙。意外とノリがいいのかもしれない。
一方の市丸はというと、笹に吊るしてある短冊を見て回ろうとしていた。
「ボクはどんな事書いてあるか見てから書こうとおもっとるのやけれど、別にええかいな?」
他人の願い事を見て回るのも醍醐味の一つであろう。アンジェもそういえばどんなのがあるか確認してなかったなと思い、市丸と一緒に楽しもうと考えた。
「いいよ〜。ついでに私もご一緒してもいいかな? あ、東仙さんも一緒にどう? 他の人の願い事で心温まったりするかもですよ〜」
「それは嫌味か? 私の目が見えていないことをお前も知ってる筈だ。私はこれを書き終わったら帰るからな」
アンジェが此方にゆっくり歩いて来ている間に、近くにある二枚の短冊が目に入った。それにはそれぞれ
『美味しいお菓子がいっぱい食べれますように』
『楽しいおもちゃがいっぱい欲しいです』
と書かれている。おそらくあの双子が書いたのであろう。実に子供らしくてわかりやすいものである。
「市丸さん市丸さん、その二枚は誰が書いたかわかりやすいよね〜。あ、どっちがどっちを書いたかは私も分かんないや」
けらけら笑いながら市丸の隣へと来た。その顔はどこか楽しげである。
「アンジェちゃんはもう書いたんかやろ? どこら辺につるしたん?」
「それは内緒だよ〜。この中のどこかにあるから探してみてよ。多分すぐに分かると思うよ」
どうやら自分で探さなければいけないようだ。まあ時間潰しにそれなりに楽しめるだろう。そう考えながら短冊を見て回る。
『
『新たな不死の研究の実戦投入』
おそらくバラガンとザエルアポロのものであろう。ザエルアポロはともかくとして、バラガンが書いているのは意外であった。確かにそれなりに交友があるのは知っていたが、この様な事は、下らないの一言で一蹴しそうなものである。いったいどの様に言い包めたのであろうか。まあ、この2人も誰が書いたのかが分かりやすい願いであった。
「アンジェちゃん、どうやってあの頭の固そうなバラガンにこれ書いて貰ったん? ボク、凄く気になるわ〜」
そんな市丸の問いに、アンジェも何故かびっくりしていた。なんでこれを準備した奴が知らないのであろうか。逆にびっくりである。
「へーかには何か伝えた覚えなんてないのに……なんでだろ? 誰かに挑発でもされたのかな」
そのアンジェの言葉で大体想像が出来た。おそらく、バラガンの『
『これから起こる事全てが楽しめる物事でありますように』
多分『新入り』の一人である『楽天家』が書いたものであろう。どこか飄々としており、自分となんとなく気が合いそうな人物である。まあ、彼らしいなと思った。
『私を憐れむ奴を一人残らず潰す』
『渇きからの解放』
『個が欲しい』
一つは誰のものか分かるが、残り二つは誰が書いているのかがよく分からない。どちらもアンジェと関わりがある『新入り』の『願望』なのであろうが、何故このような願いなのかが分からないのだ。どちらもそのような願いとは縁がなさそうなのだから。『海賊』と『性悪娘』のことはこれからもっと知っていく必要がありそうである。
他にも色々な願いの書かれた短冊がそれなりにあった。アンジェの交友は結構広いのだろう。そして笹の一番上に特徴的な文字で書かれた短冊──アンジェの願い事を見つけた。そこには
『思い出を再び』
と書かれていた。思い出とは一体何のことであろうか。そして何故その事を願い事にしているのであろうか。
「これがアンジェちゃんの願いなん? なんか思っとったのと結構違うな〜。どうしてこの願い事を書いたの?」
アンジェは自分に支障がない程度の情報はペラペラと喋るので、この言葉にはどんな反応を示すのだろうか。簡単に話すような事であれば、そんなに重要な事ではないのだろう。その逆であれば、アンジェの根幹に関わっている可能性がある。
「そりゃあ今一番の願いだからだよ。内容は内緒だけど、ある物を思い出にあるかつての姿に戻したいだけさ〜。どうだい? 市丸さんからしてみれば下らない願い事だろう?」
一部分は隠しているが、それ以外はすんなりと教えてくれた。この場合はどうなのであろうか? それなりに重要なのかもしれないし、こちらをからかっているだけかもしれない。そんな風に考えていると、横から声をかけられた。
「一通り見て回ったから市丸さんも短冊書こうよ! 願い事ももう思い浮かんでるんじゃないかな?」
そういえばそうであった。当たり障りのない無難な事を書こうかと思ったが、気が付けば己の本心を写していた。どうしてであろうか。
「へぇ、『大切な
東仙はおそらく市丸達が短冊を見ている間に出ていったのであろう。テーブルの上には一枚の短冊が置かれていた。
『永遠に藍染様を支え続ける』
実に彼らしい願いである。彼の願いはこれからもずっと変わることはないであろう。おそらく自分もである。市丸はそんなことを考えていた。
「私達の願いは天に届くかな〜。願わくば一人でも多くの願いが叶いますように……」
天の川もない
今回は星に願いを回でした。
ちなみに今回の話、そういや1周年記念やってなかったな……七夕も近いな……よし、書くかと思い18話の執筆途中に書き始めました。18話? ……もう少しお待ち下さい。
特別編は今後も余裕があったら書いていくと思うのでお楽しみ下さい。