カラクリの行方   作:うどんこ

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「前回三本立てにするといったな」
「そうだ作者、た、助けて…」
「あれは嘘だ」
「ウワァァァァァァ!!!」

今回、現世の話は突っ込むことが出来ませんでした。ごめんね! また、今回もいつもより文量が多いです。


第十話 将棋

 

 新たに姿を現した破面(アランカル)──ノイトラに似た男は、そのまま藍染の横を通り抜け、この場にいる全員が姿を確認しやすい位置で動きを止めた。まるで、己の存在を知らしめているようである。

 

 確かにノイトラと似てはいるが、所々違う点が確認できた。

 死覇装は、ヤミーやグリムジョーなどと同じ胸元をはだけさせたタイプの物を着ており、そのむき出しの胸には機械的な胸当てらしきものが装着されていた。

 仮面の名残と(ホロウ)の孔があるであろう左目は、仮面の名残はあるのだが孔は無く、代わりに怪しい紅い光を放つ機械仕掛けの目玉があり、せわしなく動いている。

 斬魄刀は三日月型の刃を二つ、8の字に合わせた大鎌状のものではなく、己の身の丈を超える、所々が錆び、刃(こぼ)れした鈍い色を放つ重鈍な大鉈状のものである。

 そして、放たれる霊圧は弱く常に一定であり、どこか無機質なイメージを沸かせるものである。ノイトラのような攻撃的な霊圧は全く感じさせなかった。

 

「さて、茶番が終わった所で新しい十刃(エスパーダ)である彼の紹介に入るとしようか。アンジェ、紹介を始めてもらってもいいかな?」

 

 藍染の言葉で怒りから我に返ったアンジェは、咳払いしながらいそいそとノイトラ似の男の隣へと移動した。

 

「えーっと……、この度の新しい第5十刃(クイント・エスパーダ)は……。名前なんだったっけ? いけねぇ……」

 

 従属官(フラシオン)(予定)が名前を忘れているが、当の本人はそんな事どうでも良さそうにキョロキョロと周りを興味深そうに見渡している。周りの者達はその変わった光景を黙って眺めていた。そうしている間に、アンジェはどこからか取り出したカンペを見始めた。

 

「彼の名は……あったあった! え……、これちょっと無理があるんじゃないの? これ書いた時の私、一体何考えてたんだろう……」

 

 何やら不安になる様な事を口走っているが、幸いにも周りにはよく聞こえていなかったようである。

 

「彼の名はギルガ・ジルガ。ノイトラ・ジルガの弟だよ。因みに彼、今は喋る事が出来ないからそこは許してあげてね」

 

 アンジェの紹介を聞いての周りの反応は色々であった。ノイトラに弟なんていたのか? 弟なんぞに負けたのか? などの反応が多かったが、ノイトラの事をある程度知っている者達は、弟などいないを事当然知っており、ノイトラ本人の身に何かあったのであろうという考えに至っていた。

 

「彼が十刃(エスパーダ)に就任する事に納得出来ない者はいるかな? もしいるようであれば遠慮なく申し出てくれ。彼に挑戦する権利を与えよう。彼を見事打ち倒した者には十刃(エスパーダ)への加入を認めようじゃないか。誰か挑戦する者はいるかな?」

 

 その言葉の後、誰一人申し出をする者はいなかった。それも当然であろう。あの様な惨状を見せられては挑戦する気も失せてしまう。もし、先程の事態が起こる前であれば、相手を霊圧で判断した者が数人、命を散らすはめになっていたであろう。

 

「どうやら誰の異議もないようだね。おめでとう、ギルガ。これで君も晴れて十刃(エスパーダ)の仲間入りだ。みんなも納得してくれている筈だ、君こそが十刃(エスパーダ)に相応しいとね」

 

 実際は納得出来ていない者もいたが、反論する者は誰ももいなかった。十刃(エスパーダ)入りが決まった当の本人は、藍染の言葉にも特に反応を示すこともなく、只々己の周囲を、興味津々といった様子で眺めているだけであった。

 

「それではここで解散としようか。長い時間付き合ってくれてありがとう。各自、戻ってくれ」

 

 藍染はそのまま奥の暗がりへと姿を消していった。それに東仙も続いていく。残る破面(アランカル)達も続々とその場から姿を消していった。

 そんな中、アンジェは一息ついていた。今日、色々とあったのだ。プレッシャーから開放された感覚は心地よいものであったであろう。その顔はやり切った、といった感じであった。取り敢えず、ギルガを己の研究室──第5宮(クイント・パラシオ)となる場所に帰るよう命令し、さてどうするかと考えていると──

 

「色々と大変そうだったね。見ていて全く飽きなかったよ」

 

ザエルアポロがそう茶化してきた。それに対し、アンジェはジト目で返す。

 

「何楽しんでんだよ。こちとら大変だったんだぞ。私が助けを求めたときも無視するし……、あの偏屈ジジイは余計な事しやがるし……」

「ほう、その偏屈ジジイとは一体誰の事だ?」

 

 突然聞こえてきた声に、アンジェは身を震わせた。恐る恐る振り返ると、そこには案の定、バラガンの姿があった。

 

「へ、へーか…… さ、先程は私めに助けを出してくださりありがとうございました。そのおかげでその場をしのぐことが出来ました。次からは、出来ればもう少し穏便な方法をとって頂けると助かります……」

 

 態度を一瞬で変え、凄い(へりくだ)るアンジェ。

 

「出来の悪い下僕の躾をするのも王の定めだ。気にするでない。」

 

 それを見て満足そうにするバラガン。

 

 そんなやりとりをしている三人に近づいてくる者がいた。

 

「楽しそうにしとるところごめんな。アンジェちゃん、今時間ある? 隊長の所に一緒にきて欲しいんやけど」

 

 市丸が三人の中に加わってくると、バラガンは顔を(しか)めながら、何も言わずその場を離れいく。ザエルアポロはアンジェに、また後で、と軽く挨拶をして自身の宮へと戻っていった。

 

「何すか市丸さん。私、今日は疲れたから早く自分の部屋に戻って休憩したいんすけど。それって今からじゃないと駄目なんすかね?」

「ボクからのお願いやったら別に明日でもええんやけど、隊長からのお願いやからね。悪いけど今から一緒に来てもらうよ。」

 

 それを聞いて、アンジェは気怠るそうにしながら、ゆっくりと市丸の方へ向かっていく。

 

「一体何の呼び出しなんだろうか……。無理難題を押し付けられるのだけは御免被りたいね」

「そんな事心配しとったん? 安心してもええよ。アンジェちゃんまだ番号貰っとらんかったやろ。それを刻むだけって話や」

「番号刻まなきゃいけないのか……。あんま目立たない所にして貰いたいね。背中とかがいいなぁ……。それはそうと、私に振り当てられる数字は一体何なんだい?」

 

 その質問を受け、市丸は嫌な笑みを浮かべながら、周りの者に聞こえないように答えた。

 それを聞いたアンジェは、藍染の前に着くまでずっと、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 召集からしばらく経った頃、第8宮(オクターバ・パラシオ)のとある一室、そこではアンジェとザエルアポロが、何かに(いそ)しんでいる姿を見せていた。

 

「チェック」

「違うよザエルアポロ君。そこは『王手』って言わなきゃ。ついでに言うと、こういった状況は王手飛車って言うんだよ」

 

 将棋で遊んでいるようである。アンジェが強引にザエルアポロを将棋に誘ったのであろう。その証拠に、ザエルアポロは書類を作成しながら対局していた。

 

「ザエルアポロ君強いね〜。初心者とは思えないよ」

「ルールがチェスに似てるからね。ある程度は対応できるよ。それにしても君、弱くないかい? 勝負を吹っ掛けて来たから、てっきり自信があるものだと思っていたよ」

「失礼しちゃうね、まだ本調子じゃないだけだよ」

「本調子ね……、まあそう言う事にしといてあげるよ」

 

 因みにアンジェは五戦五敗中である。なぜ勝負を仕掛けたのか謎であった。

 

「そういえば、藍染様って君の憺珠(コラソン)の事は知っているのかい?」

 

 そんな何気無い質問を受け、アンジェは次の一手を考えながら答える。

 

「ん〜、多分知ってると思うよ。教えた覚えは無いけどね」

 

 新たな一手を指す。

 

「そうなんだ。それにしてはあまり興味を示してないね。僕はてっきりもっと食い付いてくるものと思っていたよ」

 

 アンジェが指してからすぐさま指し返す。

 

「そりゃそうさ。崩玉と比べたら崩玉の方に興味は行くさ。だってそうだろ? ()()()()使()()()()()()()()()物に興味を示せる訳ないじゃないか」

 

 その言葉にザエルアポロは作業の手を止めた。

 

「……それはどういうことだい?」

 

 そんなザエルアポロの反応に気付く事なく、盤面と睨めっこしながら答えていく。

 

「以前、キミは憺珠(コラソン)を使えば、脆弱な魂魄も十刃(エスパーダ)を超える事が可能なのかと聞いたよね。その時、私は言った筈だよ、『()()()()()』と」

「理論上は超える事は可能さ。ただ憺珠(コラソン)の出力を上げればいいだけの事だからね。でも、実際はそう上手くいくものではない。私の作った物をいくつか見て来たキミなら分かるだろう? ()()()()()使()()()生易しい物なんて、私が好んで作る訳ないってことが」

憺珠(コラソン)はその最たる例だね。脆弱な魂魄がコレを使ったら、ある一定までは霊力は高まるさ。個人差はあるけどね。では、ある一定の値よりも上がったらどうなる? ぶっ壊れるに決まってるだろう? 器が耐えられる訳ないじゃないか。水風船に水を入れすぎて破裂してしまうようなものさ。実力者の場合も同様だよ。ここまで言えば分かるだろう?」

 

 ザエルアポロは少し思考した後、疑わしい物を見るような目を向けた。

 

「……つまり、耐えられる者がいないから使い道に困っているってことかい? じゃあ君のとこの第5十刃(クイント・エスパーダ)はどうなるんだ? 矛盾してるんじゃないのか?」

 

 アンジェは楽しそうな顔をしながら駒を動かす。

 

「そう言えばキミに、あれがどういった目的で作り上げたものか伝えてなかったね。あれは()()()だよ。憺珠(コラソン)の為のね」

 

 アンジェの一手は、今まで押していたザエルアポロの動きを完全に止めるものであった。

 

「……君は確か、自信作と言っていなかったかい?」

「確かに言ったよ。でもあれは()()()()としての出来の評価さ。実験体としての出来はあまり良くないものだったよ。だって、憺珠(コラソン)()()()()にしか耐えられなかったんだもん。」

 

 ザエルアポロは声を出せずにいた。完全に勘違いしていたのだ。ギルガに使われている力が憺珠(コラソン)の限界だと。

──しかし、実際は違っていた。あれだけの力はほんの氷山の一角に過ぎなかったのだ。

 

「アレを十刃(エスパーダ)にしちゃったから、壊れるまで憺珠(コラソン)を別の実験に使えないのがちょいと痛いかな。ま、のんびりやってくつもりだからあんまり問題はないね」

 

 ザエルアポロが駒を動かす。

 

「……一体どうやってそんな馬鹿げたものを作り上げたんだい? 少し僕にヒントをくれよ」

 

 アンジェが駒を動かす。その動きは最初の頃と全く違っていた。

 

「ヒントね……。アレは意図的に生み出したものではなく、とある実験で偶然生み出された代物であると言っておこうか。取り敢えず碌でもない実験さ。マッドと呼ばれる者達さえ呆れてしまうようなものだよ。ま、方法を教えても真似出来る者はいないだろうけどね。浦原喜助でも無理さ。奴にとっては()()()の事だからね。」

「おっと、話が脱線してしまったね。で、ここからが本題だ。実は私の作り方は()()なんだ。正規の作り方も存在するんだよ。ま、こっちもある意味大変だけどね。こっちは無駄な知識や技術なんかは要らない。教えれるのはこれくらいかな?」

 

 核心に近づけるようなものは得る事は出来なかったが、まともなやり方で得られる物ではないと分かったので良しとした。

 そこで、アンジェは話題を変えて来た。

 

「そうそう、今日十刃(エスパーダ)が集まっての話し合いがあったみたいじゃないか。一体どんな事話してたんだい?」

「それを何で僕に聞くんだ? 君の主人に聞けば良いじゃないか」

 

 アンジェはちょっと困ったといった様子である。その間にもお互いが駒をどんどん動かす。

 

「アイツね、まだ言葉を覚えさせてる途中なんだ。だから今回の話し合いであった会話は全く理解してないし、覚えていない筈だよ……。ハァ、戦闘経験以外の記憶の初期化なんてしなけりゃ良かった……。なんで録音機器の持ち込みは禁止なんだよ……」

「そういう訳ね……、だから意味の分からない言葉を時々発していたのか。

 まあ、大した事ではないよ。誰が現世に調査しに行くかって話があっただけだよ。確か、ウルキオラが行くこ「ちょっと待った!!」……なんだい?」

 

 アンジェのいきなりの反応にも驚くことなく続きを待った。

 

「現世に行くのはいつだい? まさか既に出発してるって事はないだろうね?」

「確か明日だっ「こうしちゃいられないよ! 早速藍染様の所に行って、同行させて貰えるように頼まないと!」…………」

 

 何故か聞くべきではないと直感が働いていたが、取り敢えず、現世へ向かいたい訳を訊ねてみた。

 

「そんなの決まってるだろ! 本や映画の物色以外に何があるってんだい? ああ、急がないと! それじゃあ私はこれで失礼させて貰うよ」

 

 そうして風の様にその場を去っていった。残されたザエルアポロは、呆れながらもアンジェへの思いを募らせていた。

 

「技術も欲しい。頭脳も欲しい。彼女という存在そのものも欲しい……。どうやら君は、僕にとって愛しい人に成りつつある様だ。どうにかして僕の手元に置く事が出来ないだろうか……」

 

 

 

 

 

 

 将棋の盤面は、いつの間にかザエルアポロが詰みに陥っていた。




次回からようやく原作に介入出来る……。これからアンジェの謎もどんどん出していくのでお楽しみに!

アンジェの生前の設定考えました。お陰で更にヤバい存在となりました。感想をくれた方ありがとうございます。だいぶ後になると思いますが出す予定です。
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