カラクリの行方   作:うどんこ

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ちょっとブリーチ風のポエムに挑戦してみました。
優しい目で見てやってください。

感想がホスィ(ボソ


第二十三話 再来

 

 

 

 

現世(うつしよ)は僕らのオモチャ箱

 

常夜(とこよ)は私達の遊園地

 

死神は僕らのお友達

 

虚は私達のお人形

 

 

 

──第23話 再来──

 

 

「現世〜現世〜た〜のし〜いげ〜んせ〜」

「ねえねえアンジェ! お菓子屋さんでチョコやケーキやプディングが一杯欲しいな!」

「アー……ウー……」

 

 小さな背丈の子供達が暗黒で支配された空間の先頭を進み、その後ろを四人の破面達が付いて行く。一人は興味無さそうに、一人は子供に向けるべきではない視線を飛ばし、一人はそれを見てニヤニヤと笑い、一人は憂鬱そうにしていた。

 

「なんでボク達はガキのお守りをしないといけないんだろうねぇ……何か聞いてないの、アンジェ?」

 

 揶揄うような口調でそう聞いてくるルピにアンジェは面倒臭そうに答える。

 

「知らないよ。連れてく必要も無いはずなのにね。あれじゃない? 私が勝手にどっか行かないための(くさび)として連れていかせたんだと思うよ」

「それにしてもどうして君たちを藍染様は指名したんだろうね? 十刃(エスパーダ)でもないし勝手な行動しそうなのにね、君もあのガキ達も」

 

 明らかにアンジェ達を軽んじているが、そんな事も気にならないくらい憂鬱そうなアンジェは真面目に答える。

 

「前回こっちに来た時には結構な衝撃を与えたからじゃないかな? 警戒してこっちにより人員を回して来やすいように。まあ()()()の達成には持ってこいと思ったんじゃない? 本音はあいつらの観察だろうけどね」

「はあ? 主目的ってなんだよ。目的は現世の戦力を削ぐことだろ?」

 

 アンジェの反応につまらなさそうにしながらもアンジェの発言で引っかかった部分を聞く。しかし、アンジェはそれを教えてはくれなかった。

 

「んん? ……ああ、別に大した事じゃないし私も予想しただけだから気にしなくてもいいよ。個人の予想を聞いて、今回の行動に支障をきたすような事になったら私の所為になるだろうから言わないでおくよ」

「ふーん、まあどうでもいいや」

 

 会話を切り上げると同時に黒腔(ガルガンタ)が裂けた。どうやらだいぶ話し込んでいたようである。

 現世の暖かい風がアンジェ達の横を抜けていく。そして下には、虚圏(ウェコムンド)からの侵略者を迎え撃つべき存在が此方を睨み付けていた。

 

「オウ? い〜い場所に出られたじゃねえか」

「ピンポイントで敵の目の前に出られるなんて凄いツイてるよね。ヤミー君の運のよさが高いお陰かな」

「あァ? あいつら死神なのか?」

「ありゃ、気付いて無かったのか。言わずにいれば面白かったのかな」

 

 軽口を叩く二人に加わるようにルピも口を開く。

 

「弱そうな奴ばっかりだから分かりにくいよね〜。アレが6番さんが言ってた『尸魂界(ソウル・ソサエティ)からの援軍』じゃないの? ね?」

 

 先程から口を開いていないグリムジョーに確認を取るように目を向ける。そしてすぐさま笑いながら言い直す。蔑みの感情を込めて。

 

「ア・ごめーん。”元”6番さんだっけ?」

 

 ルピの挑発的な発言にも眉一つ動かさず、興味がないといった様子で此方に背を向けた。

 

「あの中にはいねえよ。俺が殺してえヤローはな」

 

 そう言うや否や、行き先に目星をつけたのかその方向へと空を蹴り、この場を後にした。

 

「あっ! グリムジョーずるーい!」

私達(僕達)も自由に行動したいのに! ねえねえ現世に行くっていう『お願い』は聞いたからお菓子屋さんに行ってもいいよね?」

「あっレクシー! 僕はおもちゃ屋さんでかっこいいプラモデルが欲しいんだ! ワンダーワイズも欲しそうにしてるだろ! お菓子は諦めておもちゃ屋さんに行くんだ」

「違うわよハロルド! ワンダーワイズは美味しいスイーツをたらふく食べたいって言ってるのよ。おもちゃよりもお菓子に行きましょ」

「絶対おもちゃ!」

「絶対お菓子!」

「アウー…」

 

 グリムジョーの勝手な行動に騒ぎ立てたのは二人の子供であった。そして死神達をそっちのけで言い争いを始めている。彼らから名前を呼ばれていた大剣を背負った少年──ワンダーワイズはそんな二人の様子をただジッと見ていた。

 

「全くうるさいなぁ。ねえ、あいつら静かに出来ないの? 保護者としてきたんでしょ、キミ」

 

 不快そうなルピの言葉も軽く流しつつ独り言のように呟く。

 

「あれでいいんだよ。ああやっている時が一番()()()()()()()()。あいつらの興味を引くような奴が来ない事を祈りたいね」

 

 そんなアンジェの目は自分の子供を見るような目であった。なんだかんだで愛着があるのであろうか。

 

「にしてもよお、こっちは六人であっちは四人じゃ二人も余っちまうじゃねえか。どーすんだよ、オレは余りにはなりたくねえぞ」

「安心しなよヤミー君。あいつら二人は今の所闘うつもり無さそうだし、ワンダーワイズは動くか分からないから実質こっちは三人だ。やったね、私達の方が数では不利だよ!」

 

 そんなアンジェの言葉に呆れるルピ。本当になんであの双子を連れてきたのか謎だからである。

 

「ホントになんで此処に来たのさ。今の所足手まといになる気しかしないんだけど、大丈夫? もし邪魔になるようだったら容赦はしないからね」

「だいじょーぶだいじょーぶ、ルピ君。今は誰に対しても()()()だ。邪魔になることはまずないね……っと、(やっこ)さんはどうやら痺れを切らしたようだ」

 

 最後の言葉を発せられると同時に、アンジェの首を刎ねんとする凶刃が迫って来ていた。

 

「へえ、随分と若い隊長さんだね。誰の後釜で入って来たんだい、坊や。良かったらお姉さんに聞かせておくれよ」

 

 身体を大きく捻ることでかわしたアンジェは、袖からやはりどうやってしまっていたか分からない大きさの対戦車ライフルのような斬魄刀を滑り出させ、そのまま銃口を下手人へと向ける。

 

「てめえにガキとは言われたくないな。

 十番隊隊長 日番谷冬獅郎だ」

「へえ、自己紹介もしっかり出来るなんて偉いね。これはお姉さんもしっかり名乗っておかなきゃね〜」

 

 日番谷とほとんど背丈の変わらないアンジェに子供扱いされるのはなんとなくだが腹が立ってしまう。しかし油断する事なく相手が嫌がるであろうかなり近い間合いで身構える。

 

「私の名前はアンジェ・バニングス。しがない一研究者さ。階級は()()()

 その間合いはいい判断だね〜。このタイプの火器は近距離が苦手なんだ、花丸あげちゃおう!」

 

 明らかにこちらを馬鹿にしているが油断は出来ない。一度は撃退されたとはいえ、浦原、夜一を相手取り、有利に戦っていた相手である。何か罠を張っている可能性も大いにある。日番谷は油断する事なく相手へと突進していった。

 

「さて、この頃疲れが溜まるような事ばかりだったんだ。たまには身体を動かして発散しないとね。さあ少年(チコ)、私と一緒に踊ろうか」

 

 

 

──────────

 

 

 大きな倉庫のような建物が近くにある市街地の上空。そこでは虚のような仮面を被った黒い男と、目つきの鋭い隻腕の白い男が激闘を繰り広げていた。終始相手を押しているのは仮面を被った男──黒崎一護であり、目つきの悪い白い不良のような青年──グリムジョー・ジャガージャックはそれを凌ぎながら攻める機会を伺っている。

 

「一護のヤツ、今んところは押してんなァ、案外いけるんちゃうん?」

 

 そんな二人の激闘を観察しているのは、一護に虚化を教えた平子真子であり、一護の様子を特に注意深く見ていた。そして、その横からはパシャパシャとカメラのシャッターの切られる音が響き渡る。

 

「……で、アンタは仲間が戦っているのに随分気がラクそうやなァ。そんなんでエエん?」

 

 平子が警戒を解かずに音が聞こえる方を向く。そこには全くこちらを警戒しておらず、無防備な姿で一護達の様子をカメラに収めている男がいた。

 

「ん? アレを止めろって? ムチャ言うなよ。止めに入ったらオレは二人からボコられんだぞ。邪魔をするなーってね。それよかコイツの扱いに慣れておく方が有意義だと思うんだよね」

 

 まるで昔からの知り合いみたいなノリで話しかけてくる男である。面倒くさい匂いがしてたまらなかった。

 

「アンタは俺がその無防備な背中に刀突き立てられるとは思わんのかいな。おたくらにとって自分らは敵やないんか?」

 

 そう言ってみるものの相手は相変わらず無警戒のままであった。気配も発さずにいきなり隣に現れてからずっとこれである。目的が全く分からない。

 

「あんさんがその気だったらオレはとっくにトンズラしてるさ。立ち位置は傍観なんだろ、今んとこは。オレもおんなじだから気楽に時間潰しましょーや。てか、他のヤツらに此処にいること知られちゃオレが困るんだな、コレが」

 

 ペラペラと饒舌にどうでもいい事を喋り始めた。一体何しに来たのであろうか。

 

「今回、お忍びでこっちにカメラを手に入れに来たってわけよ。知り合いに頼んではいたんだけど、反応をみるに持って帰ってきてくれなさそうだったんだよね〜。だから内緒の現世来航ってわけよ。

 ン、疑ってるな。安心しろよ、このカメラはパクってねえよ。ちゃんと購入して来たやつさ。いやー義骸って奴は便利だな。アンジェからこっちの金と一緒にパクっ……ゲフンゲフン、借りて来てて正解だったわ〜」

「こっちに来とるのがバレたらどうなるん?」

「説教されるんじゃね? もしかしたら追放かも。路頭に迷ったらあんさん達のお宅に転がり込むんでそん時はよろしく〜」

「入れんわボケ」

 

 本当にコイツは何しに来たのであろうか。

 

「話は変わるけどアンタのそのカメラ、全く撮れとらんちゃうん?」

 

 その言葉を聞いた途端、男の顔が信じられないといったようなものに変わる。どうやら気付いていなかったようだ。

 

「……なんでなん? 使い方間違えてた?」

「ただのカメラに死神と虚が写るわけないやろボケ。心霊写真みたいになるかもしれへんけど、ほぼ確実に綺麗な青空と住宅街しか写っとらんやろな」

「何……だと……!?」

 

 まるで自分の全力の攻撃が全く効かなかった時のような驚愕の表情である。そこまで驚くことでもないと思うのだが、平子の一言を聞いてからは頭を抱えてウンウン唸っていた。

 

「折角頑張ったのにこんなのってありかよ……アンジェに改造を頼もうもんならバレるし……てか一番知らせちゃいけねぇ奴に改造頼むってなんだよ。Dr.ザエルアポロに頼んでもバラされそうだし……一体誰に頼めばいいんだ?」

 

 そしてうるうると瞳を潤ませながら平子の方を向いて来た。可愛い女の子ならともかく、立派な成人男性の容姿である破面からされてもただ気持ち悪いだけである。

 

「なあ、あんさん。あんさんの知り合いに機械に詳しくてちょろ〜っとカメラを改造してくれるような人、知り合いにいねぇか? お礼は弾むぜ?」

「おらんことないけどアンタに教える筋合いはあらへんなぁ。諦めて帰ったらどうや?」

「そりゃねーぜ()()っち! オレとお前の友情はそんなもんだったのかよ!」

 

 名前など言った覚えはない筈だが、なぜ知っているのであろうか? 以前何処かであった覚えもない。

 

「……どこで名前聞いたん? 藍染からか?」

「少し前にあの黒崎とかいう少年とか他の連中とかと会話しているのを()()()してたからな。

 はあ、諦めてアンジェに頼んで改造してもらうか……小言言われんだろうなぁ……」

 

 そうしてカメラを大事そうにしまい込み、平子の方を向いて、ため息を吐いてきた。まるで平子の聞き分けが悪いからみたいな雰囲気で。流石の平子でも、これにはちょっと頭にくるものがある。

 

「それで、いつまで傍観を決めているつもりなんだ? あの少年ピンチみたいだから助けに行ってやったら喜んでくれるんじゃね?」

 

 そして指差す先には、仮面がなくなり先程まで蹂躙していた相手に(ほふ)られている黒崎一護の姿があった。

 

 

 

──────────

 

 

 アンジェと日番谷、弓親とルピ、ヤミーと一角が刃を交え、交戦していた。

 子供三人組は戦う気がないのか、その場で他の者の戦闘を観察しており、そんな彼らを乱菊は斬りかかっていいのかあぐねていた。

 

「ねーねー、彼処にいるのってこないだ見てた真珠頭じゃない?」

「ホントだ〜。今度の相手はヤミーさんだけど大丈夫なのかな。ハロルドはどっちが勝つと思う?」

「ヤミーさんにキャラメル一個」

「私もヤミーさんにドロップ一個」

「それじゃ成立しないじゃん。ワンダーワイズはどう思う?」

「アウー……ウー」

 

 ワンダーワイズはハロルド達の問いかけにも反応せずいつの間にか捕まえていた蜻蛉を見ており、そのまま口に放り込む。

 

「あっ! 何それ!? 何処に居たの?」

「もっとおっきいやつ捕まえて遊ぼうよ! ワンダーワイズも参加ね」

 

 そんな風にワイワイ騒ぐ子供達の声を聞きながら、アンジェは必死に日番谷の攻撃をいなしていた。

 

「さっきから逃げてばかりだな。少しは反撃してこないのか?」

「私は色々と下準備していないと上手く立ち回れないんだよ。何処かの誰かさんがそれを許してくれないけどね。まあ、頑張って私と一緒に円舞曲(ワルツ)踊り続けようか」

 

 日番谷から距離とるもすぐに詰められ、凶刃が迫る。アンジェの身体のあちこちに氷の塊が付いており、所々に切り傷が付いていた、どうやら苦戦しているようだ。

 対して日番谷は全く傷を負っていないが深追いはせず、慎重に攻めていた。まだ報告で聞いている動きを相手は見せていない。話に聞いている黒い波打つ刀身の斬魄刀も抜いていないのだ。唯一聞いていたことと同じなのは、弱々しいとても破面とは思えないような霊圧だけである。

 

「あーあ、つまんなァーい。弱っちいったらありゃしないよ。勝ち目ナイってわかんないの?」

 

 ルピの小馬鹿にした声が聞こえるそちらを盗み見ると、弓親が額から血を流しており、それを余裕そうに笑っていた。

 歯ごたえがないからかつまらなそうにしていたが、アンジェが劣勢な様子を見て、いいこと思いついたとアンジェ達に提案する。

 

「アンジェ! ヤミー! そっちの子たちもボクに譲ってよ! こいつらウダウダめんどいからさ、一気に四対一でやろーよ。──ボクが解放して、まとめて相手してあげるからさ」

「そりゃないよ、これから華麗に逆転するつもりなのに」

 

 息を切らせながらのアンジェの発言をルピは鼻で笑う。

 

「アンジェもさァ、氷漬けにされそうなくせに強がらないでよね。キミが砕け散ろうと構わないんだけど、折角だからその前に相手を引き受けてあげるよ」

 

 そうしてルピは左脇に挟まれた鞘から己の斬魄刀を引き抜いた。アンジェは何か言おうかとも思ったが、口をつぐみ己の斬魄刀を袖へと滑り込ませていく。

 日番谷の判断は早かった。ルピの言葉を聞くと同時にルピに向けて全速力で駆けていた。

 斬魄刀解放。以前の襲撃の際、シャウロン・クーファンも使っていた奥の手である。しかも十刃(エスパーダ)のものだ。解放されて勝てる見込みがあるかわからない。ならばそれよりも前に叩けばいいだけの話だ。

 

「させるか!」

 

 アンジェから距離を取るのは悩み所ではあったが、それよりもこちらの方が危険と判断した。

 出し惜しみは無しだ。

 

「──卍解」

 

 大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)

 

 日番谷の背から竜のような氷の翼と尾が生まれた。それと同時に駆ける速度も跳ね上がる。

 だが、あと少しの所で間に合わない。

 

(くび)れ『蔦嬢(トレパドーラ)』」

 

 ルピから噴き出した霊子の奔流が日番谷の視界を遮った。それでも構わず、相手を倒す為に相手が居るであろう場所に向けて斬魄刀を構えて突く。その時、煙幕を貫いて木の幹のような物体が現れた。

 かろうじて、それを羽で防御する。勢いのあまり背後へ強引に後退させられるが、止められないほどではなかった。

 

「……どうした、こんなもんか? 解放状態のてめえの攻撃ってのは」

「ハハッ! よく防いだね!」

 

 煙の奥のルピは、挑発されたにも関わらず気を害することもなく明るかった。

 

「……でも正直止められるとは思ってなかったな。ちょっとショックだよ。十刃(エスパーダ)ですらないアンジェすら倒せてないから大したことないと思ってたけど、意外とやるもんだね隊長クラスってのは」

 

 煙が徐々に晴れていく。そして姿を現した。

 

「でもさ、もし今の攻撃が──八倍になったらどうかなァ?」

 

 そこにあったルピの姿は、上半身が鎧のようなものに覆われ、八本の触手が生えた円盤が背中に形成されていた。

 その異形とも呼べる姿は防御で動きが止まっていた日番谷目掛けて残り七本もの触手を叩き込む。一本でもあの威力だ。当然防ぎ切ることなど出来ずに、日番谷の体は森の中へと墜落していった。

 

「言ったろ? 四対一でいこうよ・ってさ」

 

 日番谷以外の死神を小馬鹿にする。

 

「ア・ごめーん。四対八、だっけ」

 

 その顔は格下を嘲笑うものであった。

 

 

──────────

 

 

「あーあ、折角急ピッチで準備したのにルピ君のせいで無駄になっちゃったよ。ヤミー君も相手取られて残念そうだね」

「全くだよ……てかアンジェ、いつの間にかオレの肩に乗ってんじゃねえよ」

「別にいいじゃん。可愛い乙女が肩に腰掛けてるんだよ? もっと嬉しそうにしてくれてもいいんじゃないかな」

 

 何言ってんだコイツといった目で見られたアンジェは、流石に傷付いたのか悲しそうに肩から降りた。

 そしてある事に気付いたヤミーはそれをなんとなく聞いていた。

 

「おいアンジェ、なんでお前()()もいんだ?」

 

 ヤミーは遠くにいる切り傷や氷が纏わりついたアンジェを指差しながら、肩から飛び降りた()()のアンジェに訊ねる。

 

「あれは囮だよ。あれと坊やが踊っている間に狩場を整えて、最後は踊らせてあげるつもりだったんだけどパーになっちゃった」

「ほー、よくバレなかったな。で、いつから入れ替わってたんだ?」

「坊やが切り掛かって来た時かな。いや〜全然気付かないとは思わなかったよ。ま、死角に入ってもないのに入れ替わってるなんて思いもしないだろうから無理もないね」

 

 それを聞いてヤミーは呆れた。自分もその場面を見ていたが、なんの違和感も感じなかったからである。そんなものにどうやって気付けというのであろうか。

 

「あの坊やにネタばらしした時の驚愕に染まった顔を見たかったなぁ……まあしょうがない! 二人でのんびりと時間を潰そうか」

 

 そう言うとその場に座り、ルピと死神の戦いの様子を眺める。それは一方的なものであった。

 

「なんだ、話んなんないね。キミたちホントに護廷十三隊の席官? つまーん、ないっ!」

 

 八本のしなやかな触手が不規則に動き、死神達を打ちのめす。更に背中の円盤を回転させ、八本の触手が巨大な電動ノコギリのように、相手へと猛威を振るう。とても相手に勝ち目がなさそうな一方的なものであった。

 そして三人の死神が触手によってついに捕えられる。

 

「あっ!? ダメダメ!! 触手プレイなんて駄目だよ! それは同人誌でやって下さい」

 

 いきなり訳のわからない言葉を発するアンジェであったが、ヤミーは無視し、他の者は誰も聞いていなかった。

 ルピは乱菊という女の死神を目の前に持ってきて、まさに悦に浸った顔で話しかける。

 

「おねーさんさァ、やーらしい体してるよねぇ。いーなあ、セクシぃだなあ。……おねーさんと比べるともう可哀想なヒトもここにいるけどね」

「は? キレそう」

 

 初めてアンジェがルピの挑発に腹を立てていた。

 ルピが乱菊を捕えている触手を思わせぶりに近づかせる。そして触手の先端から、万遍なく鋭い棘が生えた。

 

「穴だらけに、しちゃおっかなぁ~~~~」

 

 無数の針が乱菊の柔肌を血で染めようと迫り──赤い斬撃が触手を裂き、防がれた。

 

「まーた来たよ、あの下駄帽子。少しでしゃばり過ぎだと思うなぁ」

 

 斬撃が放たれた方に目を向けると一人の男がいた。現れたのは着流しに下駄、目深に被った帽子と、それとなく胡散臭さを醸し出す男。

 

「いやァ~~~~間に合った間に合った。危なかったっスねえ~~~~」

「----……。誰だよ、キミ」

 

 ルピは不愉快そうに男を睨む。対して男は飄々とした様子でそれを流し、頭を軽く下げてお辞儀をした。

 

「あ、こりゃどーも。ご挨拶が遅れちゃいまして。──蒲原喜助。浦原商店でしがない駄菓子屋の店主やってます。よろしければ以後、お見知りおきを」

 

 その言葉が放たれた瞬間、背後から三人の子供達が飛び掛かってきた。

 それにいち早く気づいた浦原は紅姫を振るう。紅の衝撃が子供達を弾き飛ばし、彼らの距離を開ける。彼らは近距離で反撃を受けたのに無傷であった。

 

「……へえ、随分変わった子達がいるじゃないスか。今日は三人のお守りですか? お嬢さん」

 

 アンジェの方を向かずにそう言葉を発する。どうやらこちらを相当警戒しているようだ。アンジェはそんな浦原に凄く嫌そうな顔を向ける。

 

「概ねそんなところだよ……だけどキミの所為でお守りどころではなくなりそうになっちゃったよ」

 

 そんなアンジェの発言に怪訝そうにするが、直後に相対していた三人を見て納得した。

 

「ワンダーワイズどうどう……」

「ウー……ウー」

「ほら、キャラメル上げるから」

 

 一人の子が双子の様な子供に宥められており、そしてその双子はこちらを見て歪んだ笑みを浮かべていた。

 

「キミがここにきた事であいつらがキミに興味を持っちゃったんだ。ちゃんと責任取ってくれよ」

 

 そんなアンジェの言葉は浦原には届かなかった。双子が口を開き、その言葉を掻き消したからである。

 

「甘くて淡い水飴の香り」

「芳ばしくて深い醤油の味」

「さあさあ下駄のお兄さん」

「ねえねえ帽子のお兄さん」

「あなたの駄菓子をくださいな」

「ぜんぶぜ〜んぶくださいな」

 

 ニコニコと子供らしく笑いながら近づいてくる。ただ、その笑みはどこか不穏さを感じさせるものでもあった。

 浦原は構えいつでも対処出来るようにするが、子供達はそれでも構わずゆっくりと近寄ってくる。

 

「四肢を賭けて踊りましょ」

「命を賭けて狂いましょ」

「「僕達(私達)と遊ぼうよ!」」




今回から戦闘回です……ン? 戦闘回?
まあ戦闘描写は少なめでしたが一応戦闘回でした。
次回は戦闘回?になると思います。
次回の次でようやく双子の刀剣解放をお披露目出来る……(名前だけ)
今年は出来ればもう一つくらい上げたいと思っていますので楽しみにお待ちください。
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