ほろ酔いの響ちゃんは、甘えん坊になってめっちゃキスとか抱っことかせがんでくると思うんです。あと今回はスケベじゃないよ、すまんな

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響ちゃんがほろ酔いになる話

 

 

「午後二三○○。司令官、お疲れさま。今日の業務は終了だよ」

「あー、終わったぁ」

 

 本日の秘書艦である響の時報を聞き、提督は机の上に突っ伏した。今日の

書類の多さは尋常ではなかった。我らが秘書艦である響殿がいなかったら消灯時間までに終わることはなかっただろう。

 

「ありがとう響。お前がいなかったら今晩は徹夜だった」

「お安い御用だよ。司令官はいつも頑張ってるからね。これくらいは当然だよ」

 

 少し誇らしげな笑みを浮かべて言う響。頼もしい彼女に改めて感謝する。いつも助けてもらってばかりで申し訳ないから、いつかしっかりしたお礼をしようと思う。しかし、一方で提督は響のもう一つの意図を知っていたから早速表に出した。

 

「ま、ご褒美もほしかったんだろう?」

「うっ……な、何のことかな」

 

 明らかなうろたえ。響は帽子の先を摘まんで顔を少しだけ伏せる。提督はその響の仕草を見てニヤリとする。彼女が帽子のつばを摘まむのは、恥ずかしい時か何かやましいことを隠している時だと知っているからだ。なお、本人は気づいていないので、この読心術はまだまだ実用可能だろうと踏んでいる。

 

「ほー、そうかそうか。なんだ俺の勘違いか。それならいいんだが、もしもだ。もぉしも響が嘘を吐いていることを素直に認めたら……」

 

 提督は執務室備え付けの冷凍庫から、駆逐艦たちの買い置きアイスの奥に眠る一本の瓶を取り出す。それを見た響の表情が明らかに変わる。その変化は、暁がお子様ランチを目の当たりにした時の様にわかりやすく、そっくりだった。

 

「この俺が大切に残してきたストリチナヤ・ウォッカを、一緒に飲もうと思ったんだけどなぁ。嘘を吐いてないなら仕方ないな、うんうん」

 

 提督はボトルを上、下、右左と揺らす。響は何とか平静を保とうとしていたが、完全に目がボトルを追いかけていた。

 

「よし、直そう。これはまたいつかの機会に……」

「あっ」

 

 冷凍庫にボトルを直そうとし、響は思わず呼び止めてしまう。その反応に提督はにんまりとし、響は己のミスを悟った。

 

「おやー、何かな響。何か言いたそうじゃないか」

「うっ……うぅ」

「ほれほれ、何か言いたいことがあるならいいたまえ。言うなら今だぞ?」

「えっと、その」

 

 もじもじと手を触る響。なんだろう、謎の犯罪臭を感じてしまう。だが言いたいことが言えなくてもじもじしている彼女がかわいくて、ついついいじめたくなってしまう。

 

「何もないなら本日はしゅうりょ」

「ま、まって! の……飲みたいんだ」

「なにを?」

「うぅ……司令官のが……欲しい」

「俺のなにが欲しい?」

「~~っ! その、ウォッカを司令官と飲みたいんだ! ご褒美がほしいんだ!」

 

 顔を真っ赤にしながらようやく本音を口にした響の姿に、提督は満足げな表情を浮かべて戸棚から二人分のロックグラスを取り出す。それを見た響の顔がぱっと明るくなる。なんて可愛いのだろう。暁型の中では中心的になって姉妹をまとめている彼女が、この瞬間だけ見せてくれる笑顔だった。

 

「ほら、グラスに氷を入れてくれ。今夜は特別だぞ」

「うん!」

 

 意気揚々とグラスを受け取った響は、冷凍庫から氷を取り出してグラスに入れ、応接用のソファーの向かい側にあるテーブルの上に置く。その間に提督はつまみを取り出し、ボトルを開けて中身を注いだ。

 

「よし、準備完了だ」

「ハラショー。このとろみがたまらないね」

 

 目が輝く響は、ごくりと喉を鳴らす。ウォッカは度数が高いため、冷凍庫に入れても凍らず、とろとろとした見た目になるのだ。さて、彼女の我慢もそろそろ限界だろうから解禁と行こう。提督はジュークボックスの電源を入れ、適当な音楽を流してグラスを手に取る。

 

「それじゃ、本日もお疲れさまでした。我が秘書艦殿」

「うん、お疲れさま。私の司令官殿」

 

 カン、と心地よい音が部屋に響いて、二人はグラスを傾ける。喉を熱い液体が流れ落ちる。焼けつくようなその刺激は、疲れ切った体に染み渡って体を温めた。

 

「くぅー、これだな」

 

 提督は軍服のボタンを外して空気を取り込む。恐らく三十分もしないうちに体は温まるだろう。響もニコニコとご機嫌な顔でウォッカの味を楽しんでいた。

 

「スパスィーバ。おつまみが欲しくなるね」

「今回はチーズ盛り合わせセットだ。チータラにスモークチーズ、モッツアレラチーズにその他もろもろ」

「じゃあチータラで」

 

 響の口の中に入ったチータラは、もぐもぐと吸い込まれてやがて消えていた。その仕草を見て提督はじゃ○りこと細長いニンジンをもぐもぐと食べるウサギを思い出した。

 

「司令官、これすごくおいしい」

「お、わかるか。鳳翔さんが試作した居酒屋用メニューだ。味見をお願いされて食べてみたらすごくおいしかったから一部提供してもらった」

「いいね。これはお酒が進む」

「おっと、グラス二杯までだぞ。明日も仕事があるんだから」

「да」

 

 とは言うものの、響はまだ物欲しそうな顔をしていた。おそらく彼女ならボトル一本は余裕で開けるだろう。ただ、このウォッカは入手困難な代物なので、それは勘弁していただきたいので提督は早々に蓋を閉めた。

 

 ジュークボックスから流れるジャズアレンジが部屋を満たし、疲れ切った体の力が抜けていくのがよく分かった。しばし二人は無言でウォッカを流し込む。氷が溶けだしてほんの少しだけ水割りになったウォッカもまた格別である。

 

「そういえば、この前暁が風邪引いたよね」

「ああ、季節の変わり目でちょっとこじらせたんだったよな」

「うん。それで寝込んでいたけど、やたらと自信ありげだったんだよね。その理由が粉薬を飲む特訓をしたからだってさ」

「特訓?」

「そう。その特訓が、駄菓子屋に売っている粉ジュースの元を粉薬に見立てて飲んだんだって」

「ああ、それであの時やたらと粉ジュースを買ってたのか」

 

 響はいったんグラスを傾け、提督もつられておつまみを一口入れてお酒を流し込む。

 

「それで特訓の成果を見せるって粉薬をそのまま口に入れたんだ」

「うわ。それもしかして」

「想像通りだよ。甘いものに慣れすぎて、薬も甘いと思って舌にダイレクト。口を閉じたまま悲鳴を上げてたよ。どうにか水を手に取って飲みこもうとしたら、今度はむせて大参事」

「哀れレディよ……」

「結局オブラートを使って飲んだよ。居合わせたの私だけだから、皆には内緒って言われた」

「いや俺に話してるじゃないか」

「ふふっ、私だってちょっとは意地悪したいときもあるさ」

 

 響は楽しそうに唇を釣り上げ、おつまみを口に入れる。見ればすでに頬は赤くなりつつあった。それは酔いが回るのが早いためか、彼女の肌が元から白いから目立っただけなのかはわからない。

 

「じゃあ、次は俺だな。ちくわ大明神って知ってるか?」

「ちくわ大明神?」

「ああ。そいつはなんと伝説のスピポポッチが――」

 

 と、二人はしばし雑談に花を咲かせる。仕事を考えなくていい一時は心がとても落ち着いた。敵も来なければ仕事もない。提督になる前に散々経験した当たり前のことが、こんなにも貴重で素晴らしいものだとは。この時間が来るとつくづく実感させられる。

 

 いや、一つ違う点があった。それは目の前に絶世の美少女がいて、自分に笑顔を向けているという点だ。知らない人からしてみたら無表情といわれる彼女は、自分の前だと確かな笑みを浮かべてくれる天使なのだ。そしてその左手薬指には、何よりの信頼の証である指輪がきらりと光っている。意識し始めた当初は年の差がありすぎるだろうと思っていたが、今やもうどうでもよくなっていた。

 

「というわけで、ちくわ大明神なんだ」

「なるほど。確かにそれは大明神に匹敵するね。じゃあ不死鳥ちくわもいるんじゃないかな」

「ほう、新しいジャンルか……」

 

 笑みを浮かべて提督はつまみを再び口に入れる。すると、響が右肩に頭を乗せて腕をきゅう、と掴んできた。あまり見ることのできない響の甘える姿だ。酔いも回ってる影響もあるのだろう、まるで暖を取る猫の様に頬ずりしてきた。

 

「どうした、もう酔ったのか?」

「どうかな。ただ、今はこうしていたいんだ」

「そういうのを酔ったっていうんだぞ」

 

 提督は響の顎を。こちょこちょとくすぐってみる。若干色っぽい吐息が漏れて、響の目が色気づく。頬はすっかり紅潮して。時折期待を感じる眼差しを受ける。

 

「ふふっ、そうかもね。司令官ともっとこうしていたいなって思っちゃう。こんな姿姉さんたちには見せられないな」

 

 猫なで声になった響は、グラスに残ったウォッカの最後の一口を飲み込み、一杯目が終了する。提督はボトルを手に持って、お替りはいるかと聞く。響は、グラスを向けた。

 

「二杯目、これで最後だからな。明日も仕事があるんだから」

「うん」

 

 半分ほど溶けた氷が、カラン、と耳に心地よい音を立てて転がる。響はそれを愛おしそうに眺めるとまた一口熱いアルコールを胃袋に注ぎ込んだ。今日一日の疲れからの解放感、回った酔いが混ざり合って心地よい睡魔を脳に送り込む。それが理性を少しずつ壊して、響は大胆になっていく。

 

「司令官」

「なんだ」

「んっ」

 

 見ると、響はチータラの先端を口に咥え提督にもう片方の先端を差し出していた。これはつまり、こっち側を咥えろという彼女のおねだりなのだろう。ポッキーゲームならぬ、チータラゲーム。強いお酒が飲めるといってもやはり子供、アルコールが回るのは早かった。

 

 もっとも、提督も少しばかり酔いが回っていたから、なんの抵抗もなくチータラの先端を咥え、二人ほぼ同時に食べ始めた。距離があっという間に近くなって、響の顔が目の前一杯に広がる。透き通るようなアイスブルーの目。海のように冷たく、吸い込まれそうな深い色をした瞳。その中に自分が写っていて、彼女が見る自分の姿がよくわかった。

 

 そして、自分の瞳の中にも響の姿が写っているのだろう。その中の自分を見て、彼女は何を思うだろうか。いや、もしかしたら見えていないのかもしれない。彼女が今見ているのは、見ていたいのは提督である自分なのだから。

 

「んっ」

 

 響が最後に残った部分を口に吸い込み、それと同時に響は提督に自分の唇を押し付けた。提督もまた、彼女の気持ちに答えようと自分の唇を押し付け、まだ幼い少女の唇は提督にあっという間に覆い尽くされてしまう。それでもその小さな唇で提督の愛情を受け止めようとする彼女の健気さは、守ってやりたいと心から思ってしまう儚さを持っていた。姉妹で中心的に振る舞える一方、彼女の心は氷のように脆い。それは姉妹たちも知らないこと。それを唯一知ることができた選ばれし者、それが自分なのだ。

 

 最高の権限じゃないか。

 

「んっ、むっ、んんっ……っはぁ」

 

 やや長めの口づけを終え、提督は唇を離す。見ると、そこにはまだ物足りなさそうな響の顔があって胸が跳ねる。ああ、なんてそそる顔をしているんだろう。こんなにも美しい少女が、年も行かない少女が、姉妹のまとめる大きな存在である少女が、こんなにも甘えた顔をするなんて。

 

 提督はたまらなく愛おしくなって、頬に手を置く。氷のように白い肌は、赤く紅潮していて、その中にある瞳はうるうると提督のことを見つめている。なんて純粋でか弱いのだろう。故に、それをこの手で汚したいという悪魔のような欲望が渦巻く。

 

 今度は自分から唇を押し付ける。響の唇をこじ開け、提督は舌をねじ込んだ。小さな唇に、成人男性の舌は大きすぎた。いとも簡単に口の中を制圧し、自らの唾液を注ぎ込む。

 

「しれっ、んぅ……んちゅ、じゅぷっ……んぐぅ」

 

 思考がうまく回らないのか、響はされるがままの状態で提督の侵略を受けることしかできなかった。ああ、この背徳感。続々と背中が震えて響を汚したくなっていく。だがまだ焦ってはいけない。提督は唇を離した。

 

「んはっ……はぁ……はぁ……」

 

 長いキスを終えた響はうつろな目になっていた。長いこと口を塞がれていたから荒い呼吸を繰り返してどうにか酸素を送り込む。上下に揺れる小さな肩、そして胸。その口元からはほんの少しだけ唾液が零れ落ちて、彼女の口元を伝い、部屋の証明を反射させていた。

 

「響」

「あっ」

 

 響の手首をつかむと、そのまま押し倒す。提督よりも一回りも二回りも小さな彼女はいとも簡単にソファーに押し込まれてしまい、帽子が転がった。

 

 響がこちらを見る。期待の眼差し。なら答えようじゃないか。顔をぐっと近づけると、響は物欲しそうに口を開ける。だが、提督は意地悪をする。キスをしようと顔を目いっぱい近づけ、その瞬間ニヤリと笑って見せ、響がえっ、と思った瞬間に首筋にかぶりついた。

 

「ひゃぁんっ!」

 

 予想外の出来事に、滅多に聞けない響の甲高い声が漏れた。ああ、なんて艶のある声なのだろう。クールな口調で話すこの口からあんな声が出るのだ。もっと聞かせてほしい。もっと自分の耳を幸せにしてほしいと、舌をぬろりぬろりと走らせる。体の体温が上がって汗をかいたのか、酸っぱい味がする。しかしすんすんと匂いを嗅ぐと、汗のにおいに混じって響の甘い香りがした。

 

 提督は口を開いている響の口の中に、親指を入れる。半開きで無抵抗な響は、その指を受け入れて舌でからめとり、ちゅぱちゅっぱと音を立ててしゃぶる。気に入ったのか、響は提督の手首に触れて、離れないでと言いたそうに握りしめる。可愛い奴め。提督は舌をいったん離すと、次に耳を狙って舌をねじ込む。見ると耳たぶまで真っ赤になっていて、舌を入れると熱いくらいだった。

 

「んんんぅ……あぁだめ……だめぇ……」

 

 彼女の耳の中は這いずり回る舌が唾液をかき混ぜる音で満たされている。普段ものが触れることのない敏感な耳の中をこうもいやらしくかき混ぜられると、体の中で自分ではない何者かが撫でまわすような感触がして身をよじらせる。

 

 しかし、響は決して拒否をしない。もちろん、その行為を望んでいるからだ。愛する人が自分を愛してくれる。その触れ合いと、体温が欲しくて仕方ない。一見クールで姉妹の中で一番しっかりしているイメージがある響。だが彼女は、響は、姉妹の中で誰よりも甘えん坊だったのだ。

 

 提督は指を引き抜く。ねっとりとした唾液の糸が伸びて消える。耳から顔を離してみると、名残惜しそうな響の顔眼差しがこちらを見ていた。肩で呼吸し、生暖かい息が肌に触れる。

 

「しれい……かん」

 

 響が両手を向けてくる。キスのおねだり。提督はそれに応えようと顔を向け、思いとどまる。意地悪をしよう。

 

 にやりと笑って見せ、提督は響の飲んでいたウォッカのグラスを手に取るとそれを口に含む。一体何を、と彼女が思う隙も与えずに唇を押し付ける。響が驚いて目を見開く。何が起きたかわからないという顔。間髪入れずに提督は響の口の中にウォッカを注ぎ込む。抵抗する力のない響は、頭が真っ白になってしまいそうになるが、せめてこぼさないようにしようと飲みこむ。だが、それでも幾分か追いつかなくて、隙間からこぼれる。

 

 半分ほど口移ししたところで提督はもう半分を自分で飲みこむ。続けて舌をもう一度ねじ込んで、アルコールの混じったお互いの唾液を混ぜ合わせる。甘く、熱く、とろりとした二人の愛が口の中を踊る。

 

 くちゅくちゅと、響の口内に唾液をもう一押しして顔を離す。見ると響は暑いのか、汗をうっすらと流して肌に髪の毛が張り付いていた。

 

「暑いか、響」

「うん……すごく」

 

 と、響はセーラー服のリボンに手をかけてしゅるりと緩めた。それに合わせて提督は服を掴み、ゆっくりとめくり上げて脱がしてやる。その中から、白色に水色の水玉模様の可愛らしいキャミソールが現れる。汗をかいたせいか、一部が湿って体に張り付いていた。提督汗ばむ下着姿の響を舐めるように目線を上から下へと巡らせる。華奢な体は少しでも力を入れると簡単に壊れてしまいそうで儚く見えた。もっと見ていたい。もっと触れたい。

 

 自分だけのものにするために、もっと汚したい。

 

「可愛いよ、響」

「さすがにこれは……恥ずかしい……」

 

 顔を背ける響。先ほど舐めた耳が唾液でまだ少し濡れている。そこに指を置いてなぞると、彼女は喘ぐ。愛おしい、恋しい、大切な人。欲しい、もっともっと。

 

 響の手が提督の手を探す。その仕草にいち早く気が付いて、そっと恋人繋ぎで握ってやる。羞恥で歪んでいた彼女の表情が柔らかくなる。そう、この子は誰かの手に触れるとすごく安心するのだ。

 

 耳に触れていた方の手を離し、寂しそうに猫の手になっていた響の手を握り、指を絡める。顔を近づけて額をこつん、と触れ合わせる。目の前いっぱいに広がる響の顔。色気づいた少女はどこまでも愛おしい。

 

 再び口づけ。彼女が寂しくないように、彼女が可能な限り自分を感じることができるように、唇だけでなく頬、鼻先、額、耳、首筋と、満遍なく愛情を注ぎ、そして唇へと戻る。

 

 すっかり湿った唇同志まるで別の生き物のように触れ合う。お互いが欲しくてたまらない。啄むような口づけは、よりいっそう体を熱くさせていく。提督もそろそろ限界が近づいて、上着のボタンをすべてあけて床に放り投げる。

 

 上着を脱いだ提督の身体を見て、響の表情が少し揺れる。タンクトップ越しにわかる、軍人として鍛え上げられた胸筋。肩から伸びる腕の上腕二頭筋の曲線美。そっと、提督の胸板に手を置く。なんて頑丈な肉体なのだろう。響は、いつもこの胸に抱かれていると思うとお腹の奥が少し切なくなる気がしていた。

 

「しれいかん……」

 

 物欲しそうな響の顔。幾度となく繰り返した唇の触れ合いで、彼女の脳内は媚薬で満たされてしまっていた。足を淫らに曲げ、スカートの奥にある魅惑の三角地帯をチラつかせて提督を誘う。出来上がり。提督は微笑んだ。

 

「俺の部屋、来るか?」

 

 愛する秘書艦は、黙って頷いた。

 

 

 

 

 シャワーを浴びる提督は意外なほど冷静だった。響は先にシャワーを浴び終え、バスタオル一枚で浴室から出て今頃はベッドの上で待っているに違いない。しかし、これから情事に耽る男にしては落ち着いていて、髪の毛や体を洗う動作は丁寧そのものであった。響と初めての初夜を迎えたときには、落ち着かずにシャンプーもボディソープも乱暴に扱っていたのを少し懐かしく感じる。

 

 と言うのも、提督はこの後待ち受けている落ちをあらかた予測していたからだった。響と夜にお酒を飲んで、二人で燃え上がったことは幾度となくあった。しかしその際、二人が夜の営みまで足を踏み入れることは実のところなかったのだ。

 

 その理由がこの後に待っている。提督は蛇口を閉めてシャワールームからでる。湯気が滝のように脱衣所へと流れ込み、温度差で体があっという間に冷えていった。

 

「さて」

 

 適当に髪の毛をタオルで拭き、バスタオルを腰に巻いて脱衣所から出る。ベッドの方に目を向けると、布団が膨らんでいて響がそこにいるのが分かった。その傍らの床には、彼女が身にまとっていたバスタオルが落ちている。要は全裸である。

 

 何も知らない男性なら、ここでドギマギして鼻息を荒くしながらベッドに近づくだろう。しかし提督はあくびを一つしてベッドに近づき、布団を優しくめくった。

 

「すぅー……すぅー……」

「これだもんなぁ」

 

 そう。響がすぐに寝てしまうのである。彼女はお酒がまわり、一度ベットの上に座るとあっという間に眠りに入ってしまう体質だったのだ。お酒が入っていない時は律儀に座って待っていたりするのだが、お酒が入って甘々状態になると、提督の匂いが染みついたベッドの匂いを嗅いで安心して眠ってしまう。それはそれは幸せそうな顔でだ。

 

 数回ほどそんなことを経験していたから、提督はこうなることが分かっていた。だから後日改めてお預けの分までの性欲を彼女にぶつけるようにしている。先ほどのキスの連続は、その前哨戦と言ったところだ。

 

「幸せそうに寝るんだもんなぁ」

 

 ただ、いいこともある。暁型一番の甘えん坊の寝顔がこうして見れることだ。母親に抱かれる赤ちゃんのように眠るその寝顔は、実は写真に収めていたりする。提督はスマホを取出し、静音カメラを起動させると音もなく撮影する。これで響専用隠しフォルダーには七枚目の彼女の寝顔が保存された。明日見せるのが楽しみだ。

 

 しばし彼女の寝顔を堪能し、満足した提督は響を起こさないように布団に入り、優しく手を握る。本能的に響も握り返し、ほんの少しだけ唇が吊り上る。だが、彼女は眠ったままだ。

 

「……おやすみ、響」

 

 彼女の唇に、もう一度キスをしてやると、提督は部屋の照明を落とし、自身も眠りについた。

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 朝である。起床ラッパが鳴る少し前に、響はうっすらと目を開けた。ここは提督の部屋。あれ、なんでここに居るんだっけ? まだうまく働かない頭を回転させ、響は記憶を手繰り寄せる。昨日は業務終了後、提督ととっておきのお酒を飲んだ。そのあと記憶が途切れ途切れだが、ひたすらキスをしていた記憶がある。そして提督の部屋に入って、シャワーを先に浴びてベッドの上に座って……。

 

「……しまった」

 

 響は、また自分が先に寝てしまったことを悔やんだ。一体これで何回目だろうか、おかげで彼はもどかしい思いをしているに違いない。そう思うと響はひたすらに申し訳なくて、たまらず横で寝ている提督の顔を見た。

 

「んー……なんだ響、起きたのか」

 

 ちょうどいい具合だったのだろう。提督も眠そうに眼をこすりながら体を捻り、脳を活性化させようとする。響は少しばかり待って、提督に頭を下げた。

 

「司令官……すまない。また先に寝てしまった」

「ああ。いいさいいさ、いつもの事だから気にするな」

「でも……あそこまでしておいてお預けなのは……いっそ、寝こみを襲ってもよかったんだよ?」

「ばーか、そんなことできるわけないだろ。こんな顔見せられたら」

 

 と、提督はスマホを取り出して昨夜の響の寝顔を表示させる。一体何を、と思った響だったが、画面を見てすぐ顔を真っ赤にし、布団に顔を埋めた。

 

「もうっ! またそんな写真を!」

「この顔見れたら満足満足。無理やり起こすのなんてナンセンスだ」

「でも……なにも、撮ることないじゃないか……」

「お前の可愛い寝顔、ずっと見ていたいからな」

 

 ちらり、と響が布団から目を覗かせて、すぐにまた顔を埋める。顔を隠すのはいいのだが、さらけ出された丸見えの背中が色っぽい。ついつい提督は背骨の辺りに指を置いて、つーと上から下まで降ろした。

 

「ひゃんっ!」

 

 響は思わず背筋を伸ばして飛び上がる。真っ赤になった耳が彼女の羞恥を物語っていた。

 

「いい声だ」

 

 提督はそっと後ろから響を抱きしめる。意地悪をされて少しご機嫌斜めになった響はそっぽを向くが、頭を優しく撫でてやるとすぐに体を預けてきた。ちょろい。提督は顎をこちょこちょとくすぐり、響は心地よさそうな顔になる。

 

「…………次は、ちゃんと待ってるから」

「ああ。頑張れよ」

 

 起床ラッパが鳴る。二人きりの時間は終わりを告げる。でももうちょっとだけ、こうしていたいな。

 

 響は、遅刻することを決心して、今一度提督に身を任せることにした。

 

 

 

 

 おわり

 

 

 

 提督が先に風呂入ればいいじゃんなんてツッコミはやーよ。


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