黄昏の魔王   作:鉄鬼

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第二話 彼の望み

七人目のカンピオーネ、草薙護堂。(本当は八人目なのだが。)

城楠学院高等部一年生。五人家族だが基本的に両親は不在のため祖父と妹の三人暮らし。

3月末、イタリア旅行中にまつろわぬ神である軍神ウルスラグナを倒しカンピオーネになる。

後の4月中旬にイタリアのカンピオーネ、サルバトーレ・ドニと戦い勝利する。

更には数日前、まつろわぬアテナと戦い勝利。しかしアテナは見逃した。

彼は戦闘でローマのコロッセオや東京の浜離宮恩賜庭園を破壊。

さらに不確かな情報だがミラノのスフォルツェコ城、パルレモのフェリーチェ門、サルデーニャのカリアリ港なども破壊しているとのこと。

彼の権能はウルスラグナより簒奪した十の化身の力を使う『東方の軍神』である。

怪力を発揮したりや神獣を召喚する。

彼は学校ではいたって温厚で優しい極普通の生徒だそうである。

あとはイタリアの魔術結社『赤銅黒十字』の『赤い悪魔』エリカ・ブランデッリが彼の愛人を名乗っている。

彼女は草薙護堂を様々な面でサポートしているようだ。

以上が正史編纂委員会に勤めている夕雨の両親とシルヴィアが調べてくれた草薙護堂の情報である。

 

「またとんでもないやつが出たなぁ。」

 

一ヶ月と少し前に彼の存在を知り、刻夜はすぐに夕雨の両親に相談した。

そうしたら二人はなんとかして調べてみると言ってくれた。

正直いつもいつもお世話になりっぱなしなのにまた頼るのは申し訳なかったが、自分達は隠れている身なので魔術や呪術関係ではあまり動けないのだ。

(ちなみにシルヴィアはイタリアの魔術結社『夢幻の園』に所属しており、『銃士長』という大騎士に相当する称号を持っている。そして彼女は彼女の代役の人からヨーロッパの情報を教えてもらっている。)

 

「うん、本当に凄いね、この草薙君って人。どうするの刻、会ってみる?」

「やめとこうぜ夕雨。そんなことしたら面倒ごとが増えそうだ。」噂のサルバトーレ・ドニと同じようなバトルフリークだったら最悪だし。

「でも本当に凄いことよね、これ。カンピオーネが同じ国どころか同じ学校に通ってるなんて。」

そう、一番の問題はこの草薙護堂は俺と夕雨の通っている城楠高校の一つ下の後輩だということである。

いやいや、流石にこれはないぞ。同じ学校にカンピオーネが二人とか…。

なんだか面倒ごとの臭いがプンプンする。

 

ちなみにシルヴィアは魔術業界では行方不明ということになっており、小雪は戸籍そのものが無いため一緒に学校に来ることが出来ない。

出来れば一緒に学校生活を送りたいものだが…。

 

「確かに凄い偶然ですよね。」

「偶然?本当にそうかな。」

「えっ、どういうことですか?」

「カンピオーネの誕生なんてめったに起こることじゃない。ほとんど奇跡みたいなもんだ。そんなやつが一つの国に二人どころか一つの学校に二人なんておかしすぎる。俺にはこれが偶然という名の必然にしか思えない。これから何か起こる気がしてならない。」

そう、あまりにもこの状況は異常すぎるのだ。

「考えてみろよ、ここ数年で三人ものカンピオーネが誕生してる。普通ならカンピオーネは世界に一人いるかいないかの存在なんだ。それが今は八人。やっぱりおかしいよ。」

まあ俺もその異常の内の一人なんだが。

「八人目も生まれたことだし日本も正式になるだろうしね。」

「確かに刻夜の言う通りだわ。異常なカンピオーネの数に日本の戦場化、前者は今のところどうしようも出来ないから今はおいて置くとしても後者は無関係ではいられないわ。」

「ええ、刻夜さんが危惧している通り、私達もこうして平和にすごせなくなります。時に私達も戦わなければならないのでしょう。」

「ああ、だから刻は最近悩んでたんだ。」

悩んでいるのは隠していたつもりだったが見抜かれていたらしい。

やはり彼女達にはかなわないようだ。

「ああ、一ヶ月前からなんとなくそろそろこうして隠れるのも限界な気がしててさ。八人目の誕生って聞いてもってあと少しかなって思ったんだ。」

一ヶ月前、シルヴィアがみんなを集めたあの時、俺は終わりの足音を感じていた。

「もう少し後にしようと思ってたけど言っておく。俺達は近いうちに表舞台に出ることになると思う。そうすればまた戦うことを余儀なくされる。死と隣合わせの日々に戻ることになる。俺を利用しようと近づくやつも出てくるだろう。下手すればみんなに危害が及ぶかもしれない。」

正直、このことを言おうか一ヶ月間ずっと迷っていた。この言葉を言ったらこの平穏な日々が本当に終わりそうな気がした。

だから悩んでいた。

「だからその時まで覚悟を決めておいてほしい。」

決死の覚悟でそう言った。

言ったら三人は顔を見合せて頷き合うと、

 

一人一回の三連続ビンタをしてきた。

 

「痛っ、痛っ、痛っ! えっ、何?何で俺ビンタされたの!?」

ビックリした。いきなりビンタされて驚かない人がいるだろうか、いやいまい。

もしかしてあれか?よくドラマとかでやる、あなたなんてもう知らないって出てくやつか?

「ごめんみんな、なんかよく分かんないけど出ていかないでくれ。」

「何言ってるの?」

「えっ、今のビンタはよくドラマとかでやる『あなたなんてもう知らない。さよなら。』みたいなやつじゃないのか?」

「違います…。」

「バカなのかしら…。」

「あはは…。」

違かったみたいだ。良かった。

「ビンタしたのは刻夜が今さらなことを言うからよ。私達はあなたと一緒にいると決めた時からそんなこととっくに覚悟しているわ。馬鹿にしないでほしいものね。」

ああ、なんて力強い言葉だろう。

「刻夜さんに手を取ってもらったあの日から私はあなたの為なら私はこの世界の全てとだって戦うと覚悟しています。」

ああ、なんて優しい言葉だろう。

「大体私達はどこでも、どんな状況でも、みんなでいられればいいの。それだけでいいんだよ。」

ああ、なんて愛に満ちた言葉だろう。

俺は馬鹿にだった。

自分が強いからって彼女達を少し甘く見てしまった。

やはり敵わないな。

本当に馬鹿だった。愚かだった。

自分の愚かさを反省し、今度こそは正しい言葉を言おう。

 

「その時が来ても俺についてきてくれ。俺はみんなを守る。だからみんなも俺を、みんなを守ってくれ。」

 

「ええ。」 「はい。」 「うん。」

「まあ極力、ギリギリまで隠れてのんびりしようぜ。」

四人で喋って、笑って、ふざけあって、そんな平和な日々。

「今の俺にとってこの平和な生活が何より大事だからさ、少しでも長く、ね。」

そんな日々に少しでも長くいたいのだ。

 

「おはよう。」と言うと、「おはよう。」と返してくれる人達がいる。

「いってきます。」と言うと、「いってらっしゃい。」と送り出してくれる人達がいる。

「ただいま。」と言うと、「おかえり。」と迎えてくれる人達がいる。

誰かが側にいてくれる。

一度は失ったそんな平和な日々がいつまでも続くことを願う。

誰も欠けることなくずっとこのままでと強く望む。

三人も同じであるようで顔を見合せて、笑い合った。

 

 

 

でも心の奥底では同じ位強く、こう願っていた。こう望んでいた。

戦いの日々に戻り『ヤツ』を見つけ出し、戦い、殺すことを―――――

 

 

 

 

「そうそう、刻夜にサプライズがあるから楽しみにしていてちょうだい。」

「いやいや、シルヴィアのサプライズって点で嫌な予感しかしないんだけど!?」

 




どうも、やっと2話を更新できました。
最新刊の発売までに権能をお披露目できるか本当に冷や汗です。
本編の8人目と権能が被ったら最悪だなぁと最近思ってばかりです。
最近他のカンピオーネのSSの更新が遅いのもこのためなんでしょうね。
次の過去編2話は今日か明日には更新します。
しばしお待ちください。
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