「全天使で攻撃を仕掛けろ! 急げ!」
弾かれたように、全ての
「本当にお遊びが好きな奴らだ・・・・・・皆下がれ」
天使たちが襲い掛かる中、やけに冷静沈着な声がニグンの元まで届く。四方八方から飛び掛かる天使によって一分の隙間もない状況下でありながら、焦りすら感じていないようだった。
無数の剣によって串刺しになる、そう思ったが それより早くアインズの魔法が発動する。
〈
ズンと大気が震えた。
光を反転したような、黒い光の波動がアインズを中心に一気に周辺を飲みつくす。波動が迸った時間はまさに瞬きひとつ。ただ、その結果は歴然として残る。
「・・・・・・あり、ありえない・・・・・・」
誰かの呟きが風に乗って聞こえる。それほど信じられない光景が広がっていた。
総数四〇体を超える天使。それらが全て、黒の波動にかき消されていた。
ゾワリとニグンの全身が震える。脳裏を走ったのはガゼフ・ストロノーフ。王国最強の戦士の言葉。
『・・・・・・愚かなことだ。あの村には・・・・・・俺より強い人がいるぞ。お前たち全員でも勝てるかどうか知れないほどの底知れない・・・・・・。そんな・・・・・・そんな人が守っている村人を殺すなぞ、不可能なこと・・・・・・』
その言葉が眼前の光景に重なる。
そんなはずはない!
ニグンは浮かんだ言葉を追払い、必死に自分に言い聞かせる。
ニグンは懐に手を当て、そこに収められた魔法のアイテムに勇気をもらう。
これがあるなら大丈夫だと固く信じて。
しかしそういった心の支えがない部下達は、別の手段に出た。
「う、うわぁああ!」
「なんだ、そりゃ!」
「化け物が!」
天使が意味をなさないと知り、悲鳴のような声を上げながら、自らの信じる魔法を立て続けに詠唱し始めた。
〈
その他幾つもの魔法がアインズに打ち付けられる。
「なぁ、アルさんや」
「何だい、ペロさんや」
「これ、俺達来た意味有るのかな」
今目の前で起きている光景、敵が必死に魔法を打つ中、アインズは平然と立っている。
「来る意味なかったですね」
そう会話している間も戦闘は続いている。
今の状況は、敵が放った鉄のスリングをアルベドがスキルを使って弾き返し、放った者の頭が弾けとび、動揺した敵が
「やれやれ・・・・・・反撃と行こうか。〈
アインズの伸ばした右手の指先から放たれた、ポツンとかすかに揺らめく、吹けば消えるような黒い炎が
ゴゥッ、と監視の権天使の全身を黒い炎が一瞬で覆い尽くす。
天すら焼こうという勢いで燃え上がる黒炎の中、天使の姿が溶けるように掻き消えた。余りにも呆気なく。
それから、対象を燃やし尽くした黒い炎もまたこの世界から消えていく。
そこには何も残っていなかった。いままでの光景 天使がいたのも黒い炎が起こったのも嘘であったかのように。
「ば、ばかな」
「一撃だと・・・・・・」
「ひぃっ」
「あ、あ、ありえるかぁああああ!」
無数の混乱が生じる中を、ニグンの怒鳴り声が響く。
「そんなはずはない! ありえない! 上位天使がたった一つの魔法で滅ぼされるはずがない! 貴様は一体何者だ! アインズ・ウール・ゴウン! そんなやつが今まで無名なはずがない! 貴様の本当の名前は何だ‼」
冷静な表情はもはやどこにもない。ただ認めることができないと叫んでいた。
「・・・・・・何故、そんなはずがないと思った? それはお前が無知なだけかな? それともそういう世界なのかな? 一つだけ答えさせていただこう」
返答を持って周囲が静まり返る。その中、アインズの声がやけに大きく響く。
「私の名前は、アインズ・ウール・ゴウン。この名前は決して偽名のなどではない」
敵がざわざわと騒がしくなる中、アインズの声がアルフたちに響く。
「私の力は十分に示した。アルフよ、ここからは貴女が力を示す番だ」
「はい?」
アインズの突然の言葉に思考が止まった。
アルフは
『なに考えてるんですか』
『いやぁ、敵が弱すぎて相手するのが面倒になりまして』
『・・・・・・分かりました。ちょうど暇してましたし』
メッセージを切り、アルフは敵の前に進み、アインズが下がった。
「ぐっ。 なめおって・・・・・・最高位天使を召喚する!」
そう言い、敵が懐からクリスタルを取り出し、掲げる。
「ん?、魔封じの水晶か、
熾天使級であれば問題ない、夜でないのが少し痛いが奥の手を使えば問題はない。
左手中指に着けている指輪と、左太ももに付けたリングに意識を向ける。
考えている内に、クリスタルが破壊され 光が輝く。
それは隠れようとする太陽が、地上に出現したかのようだった。草原は爆発的に白く染め上げられ、微かな芳香が鼻腔をくすぐる。
ニグンが歓喜の声を上げる。伝え聞く伝説の降臨を前に。
「見よ! 最高位天使の尊き姿を!
それは光が輝く翼の集合体だ。翼の塊の中から、王権の象徴である笏を持つ手こそ生えているものの、
それ以外の足や頭というものは一切ない。異様な外見ではあるが、聖なるものであるのは誰もが感じる。
至高善の存在。それを前に喝采が炸裂するような勢いで上がる。
部下たちが、感情を爆発させていた。