「何か問題がございましたか、モモンガ様? 至高の御方々?」
アルベドが問を繰り返す、予想していなかった出来事に皆が固まり、思考停止している。
「失礼いたします」
アルベドが立ち上がりモモンガのすぐそばに移動し、
「何かございましたか?」
と覗き込むようにその美しい顔をモモンガに向ける、モモンガの鼻腔を、程よく甘い香りがくすぐった、その香りがモモンガの思考を再起動させ加速させていく。
「いや……なんでもない……」
アルベドはNPCだ、NPCがこのように意思を持ち自らの口で言葉を発することは無い、それに匂いは法律でダイブゲームでは再現してはいけないとされている。
「……いかがされましたか?」
やけに近い、お互いの吐息が重なりあうほどの距離までモモンガに近づいたアルベドは、美しい顔を可愛らしく傾けてくる、間近に迫った美貌にせっかく冷静になり始めていたのに、その冷静さがどこかに飛んでいきそうだった。
「……GMコールが利かないようだ」
アルベドの潤んだ瞳に吸い込まれ、ついNPCに相談してしまう。
これまでのモモンガの人生で、これほどまで異性に迫られた事は無い。しかもこれほどまで淫靡な雰囲気を漂わせて近づかれたことは皆無だ。作り物のNPCだと知っているはずなのに、まるで生きているような自然な表情の動きが、モモンガの心を揺さぶった。
しかしそんな自らの感情の動きは、抑制されるように沈静化していく、モモンガは大きな起伏が起こらなくなった自分の心に一抹の不安を感じていた。
モモンガは頭を振り、アルベドの顔を見た。
「……お許しを、無知な私ではモモンガ様の問いであられる、GMコールというものに関してお答えできません、この失態を払拭する機会をいただけるのであれば、これに勝る喜びはございません、何なりとご命令を」
会話をしている、間違いない。
その事実を理解したとき、ここにいる皆が驚愕に襲われた。
確かにNPCに意志があり、生きている、会話も問題なく行える。だがそこでアルベドだけが特別なのだろうか?、という疑問が浮かんだ。
モモンガの視線はアルベドから、いまだ控えている執事と六人のメイドに移る。
「セバス、玉座の前に」
「はっ!」
セバスが玉座の前の皆の横に並び礼をとる。
「大墳墓をでて、周辺地理を確認せよ、もし知的生物がいた場合は友好的に対応しろ、行動範囲一キロに限定、戦闘行為は極力避けろ」
「了解いたしました、モモンガ様。直ちに行動を開始します」
本拠地を守るために創られたNPCが外に出られるという、ユグドラシルでは不可能なことが可能になっている。
モモンガはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンから手を離す。
スタッフは宙に浮き、物理法則を完全に無視したような光景だが、これはゲームのままだ、ユグドラシルでは手を放すと空中静止するアイテムは珍しくない。
モモンガは腕を組み、思案しながら辺りを見回した。視線の先にはギルドメンバー3人、すぐ近く控えるアルベド、セバス、
少し離れたところにプレアデスの六人。
とりあえずは上位者として行動しておけばいいだろう、何か問題が起きた場合はギルドメンバー達と相談して決めればいい。そうと決まれば行動第一だ。
モモンガはスタッフを手に取り、声を張り上げた。
「プレアデスよ、これから九階層に上がり、八階層からの侵入者が来ないか警戒に当たれ。 直ちに行動を開始せよ」
「承知いたしました、我らが主よ!」
声が響き、セバスと戦闘メイド達は玉座に座るモモンガと、そばに居たギルドメンバーそれぞれに跪拝すると、一斉に立ち上がり歩き出す。
巨大な扉が開き、セバスとメイド達の姿が向こうに消え、閉まる。
そしてモモンガは、最後に残ったNPC、アルベドに視線を向ける。
すぐ側に控えていたアルベドは優しい笑みを浮かべ、モモンガに問いかける。
「ではモモンガ様、私はいかがいたしましょうか?」
「あ、ああ……、私の下まで来い」
「はい」
心のそこから嬉しげな声を上げて、アルベドがにじり寄っていく、モモンガ以外の者から見れば愛しい人に呼ばれ浮かれているように見える。
「触るぞ」
「あっ」
モモンガは手を伸ばし、アルベドの手首に触れる、
トクントクンと繰り返される鼓動、それは生物なら当たり前のものである。
モモンガに触れられ、アルベドの頬は紅潮し、体温が上がっていく。
「……」
モモンガは思案する、NPCに脈があり、生きている、普通の人間のように応対し、意志疎通ができる、ここである考えがモモンガの中で浮かぶ、それは『この世界が現実なのではないか』と。
やはりナザリックからスタートだと、似たり寄ったりになってしまいますね、元の話からどこをどう改編するかが難しいです。
コメントありがとうございます、こんなに早くコメントが入るとは思いませんでした。