アルフは顎に手をあて、
これから力になるであろう黒龍、その名前を考える。
「アルフさん、どうしました? 何か悩みごとですか?」
アインズが心配そうにこちらを見ている。
「いえ。ただあの黒龍の名前を考えてまして。いつまでも黒龍やあの子じゃあ味気ないと思いまして」
「なら俺が名前を「遠慮します」
「・・・・・・即答ですか、そうですか・・・・・・」
アインズはいじけたように膝を抱えて座り込み、地面にのの字を書いている。
「一応候補は二つまで絞ってあるので」
最もらしい嘘をつく。実際のところアインズのネーミングセンスが完全に死んでいるのだが、直接言って止めをさすのもかわいそうなのでやめておく。
「そうなのですか?」
「はい。一応竜に関する名前が良いと思いまして。
候補の一つは魔法の神と言われた黒龍、ツィルニトラ。
もう一つは竜殺しの聖者、ゲオルギウス。どちらもいい名前なので」
腕を組み、黒龍を見つめながら再び考え込む。
もういっそダイスロールで決めてしまおうか、と思ってしまう。
「ちなみにアインズさんだったらどう名付けます?」
「そうですね、クロスケとか?」
「・・・・・・やっぱ遠慮して正解だった」
「ひどい!」
再び落ち込むアインズ、それを慰めるアルフ。
機嫌を直してくれるまでしばらくその状態が続いた・・・・。
同刻・第九階層 執務室
そこには二つの人影が長机を挟み、向かい合ってソファに座って書類を眺めている。
その書類は昨日の捕らえたもの達から引き出した情報であり、残りの人数も記載されている。
書類によると陽光聖典のニグンと名乗る者とその部下二名はアルフィリアに忠誠を誓うと申し出ており、それ以外の者は三回質問に答えたら死んでいるようだ。
「デミウルゴス、貴方昨日の朝辺りからずいぶん機嫌が良いわね」
「ええ。アルフィリア様と話して自分の考えの愚かさを思い知らされまして」
デミウルゴスは眼鏡をかけ直し、書類に目を落とす。
「では、アルフィリア様に忠誠を誓うことに異議はないと?」
「ええ、アルベド。彼女の至高の方々のに対する思いは本物でした」
アルベドはじと目でデミウルゴスを見る。
この前から態度が変わっているのもそうだが、その声から忠誠以外の色、自分がよく知る色が感じられたからだ。
「貴方、今現在アルフィリア様についてどう思ってるの?」
アルベドの問いに、デミウルゴスはアルベドを真っ直ぐ見つめて言う。
「彼女には至高の方々と同等の忠誠を誓おうと思っています。そして、もし叶うのなら、彼女との間に子をもうけたいと」
アルベドが感じた色、デミウルゴスは恋をしているようだ。至高の御方にそのような事を思うのは不敬とは思うが、自分も同じようなものなので色恋に関しては何も言えないが、これだけは伝えた方が良いと思い、アルベドは口を開く。
「彼女。いえ、彼は外見こそ女性だけど中身、精神は男性らしいわ。以前玉座の間で至高の方々がそんなことを話していました。
好みのタイプは私とルプスレギナらしいわよ? やはり女性であったり種族が近い方が良いのかしら?」
「そうですか、たとえ中身が男性であってもこの想いは変わりません。私はあの方の在りかたに惚れました」
「そう」
アルベドとデミウルゴスは資料に視線を戻し、情報の選別を再開した。
第六階層 闘技場観客席
「?!」
「アルフさん、どうしました?」
「いや、なんか寒気が」
機嫌がもどったアインズが心配そうに聞いてくる。
アルフは自分の身を抱き、肩をさする。
「そういえば、昨日捕まえた人達どうなりました?」
「あの人達ですか。少し面白いことになってますよ」
何となく嫌な予感がするが、話を進めるように促す。
「隊長のニグンとその部下二人がアルフさんを神と崇めて忠誠を誓うと跪いてました。その時の目はナザリックの者達と同じ感じだったので本気だと思いますよ?」
「・・・・・・」
気が重くなり、目頭を押さえた。
細かいことはアインズやシモベ達にまかせれば良いと思っていたが、こればかりは自分で決定しないといけないようだ。
「その三人昼過ぎ辺りにここへ呼んでください、僕の部下にしても問題無いのであればそうします。ぶくぶく茶釜さんへの報告は僕からします」
アルフは立ち上がって伸びをしながらアインズに言う。
「アウラー!」
闘技場に出て手を振りながらアウラを呼ぶ。
黒龍がのしのしと近づき、アルフの前で立ち止まり首を下げる。
アルフは手を伸ばし黒龍の顎を撫でる。
「今から君の名はゲオルギウスだよ」
つい先ほど決めた名前を黒龍に告げる。
黒龍改め、ゲオルギウスは嬉しそうに頬をすり寄せてきている、どうやら気に入ってくれたようだ。
その後、ゲオルギウスを縮小してマリアに預け、陽光聖典を配下にすることをぶくぶく茶釜とペロロンチーノに告げ了承をえた。
昼食を取り終えた後、陽光聖典の者達の情報に目を通し、三人に会うため再び第六階層に転移する。
転移先にはすでに複数の人影があり、陽光聖典の他、ドラゴン・キン二体とデミウルゴスがいた。
「アルフィリア様、昨日は無礼を働き、まことに申し訳ありませんでした」
デミウルゴスの近くに行くと、陽光聖典の三人が素早く跪いてそう言った。
「気にしてないから別にいいよ。それより僕の配下になりたいって本気?」
「本気でございます」
「スレイン法国は僕のような亜人種や異業種を敵としているみたいだけど、その辺りは大丈夫? ここにはそういった者達がうじゃうじゃいるから」
「はい。その点は問題ありません、私とそこの部下二人は貴女様に仕えると決めたときに決意しました。
ですが価値観というものは一朝一夕でどうにかなるものではございません。ですので、価値観を変えるための猶予をいただきたく思います」
「分かりました、貴方達を配下とし。それにあたってこの指輪をつけてもらいます、手を出しなさい」
アイテムボックスから指輪を三つ取り出し、三人の手の上にそれを置く。
「これは?」
「それは貴方達を監視するものです、着けると外せなくなります。もし貴方達が裏切るような事があれば僕が直接手を下します」
「畏まりました」
そう言い、陽光聖典の三人は迷いなく、指輪を装備した。
最初はコメントと同じようにヴォルテールにしようかとも思いましたが、一応神話系の名前にしました。
設定説明
監視の指輪
アルフが錬金し、マリアが彫金した指輪。
効果は製作者の了解がなければ外せない。
情報系の魔法で探知しやすくなる。
行動や言動を感知し、もし裏切るような行動があった場合、製作者に即知らせる。