オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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エ・ランテル編
第25話


リ・エスティーゼ王国 城塞都市エ・ランテル

 

ここは三重の城壁に囲まれた都市である。

 

早朝、日が登り、人々が動き始める時間帯。

通りはまだ人が少ないがもう少しすると賑やかになるだろう。そんな通りを四人の人影が歩いていた。

 

「ペテル。今日はどうしますか?」

 

「そうですね、手持ちには余裕がありますし。午前は町の散策、午後は簡単な依頼を受ける。というのはどうでしょうか?」

 

「賛成である」

 

「俺も賛成」

 

「ニニャはどうです?」

 

「僕も異論はありません」

 

会話の後、広場の露店の回ったり、路地裏辺りも回る。

エ・ランテルは人の出入りが多く、露店では品揃えがよく変わり、掘り出し物が見つかったりするし、少し前まで空き家だった所に店が出来ていたりする。

 

街中を歩いていると、何かに気づいたように小柄な少年が建物に小走りで寄っていく。

 

「ペテル、あんなところに看板がありますよ」

 

「本当ですね、この間通ったときはなかったはずですが」

 

ニニャの言葉に皆が看板に集まる。

 

「見たことのない看板であるな」

 

その看板は真新しく、フラスコと剣が刻印されている。

視線を看板から店の扉に移すと、準備中の札がかかっていた。

 

「入ってみようぜ」

 

「ちょ、ルクルット。扉の札!」

 

ニニャの抗議もむなしく、ルクルットと呼ばれた青年は扉を開けて中に入っていく。

扉を開くと同時、チリンと涼しげでよく響くドアベルが鳴った。

 

店の中はものが少なく、店としては機能していないようだ。そんな中、棚に剣が一本置かれている。

それは鉄とは違った輝きをしており、一目で業物と分かるものだった。

 

そんな時、剣を眺めている四人の耳に足音が聞こえ、皆が足音が聞こえる方を見る。

 

カウンターの奥にある扉が開き、人が入ってきた。

 

「ごめんなさい、まだ準備中なので・・・・・・」

 

その人物は小柄ではあるが美しい女性で、顔立は整っており眼鏡をかけている、美しく長い黒髪を首の後ろで、淡い桃色のリボンで束ねている。服装は白の長袖を着ており、紺色のロングスカートをはき、カーキ色のエプロンを着けている。

 

「あ、すみません、どんな店か気になったもので。私はペテル・モーク、冒険者をしています。そこにいる小柄な少年がニニャ、髭をはやした大柄な人がダイン・ウッドワンダー、で」

 

「俺の名前はルクルット・ボルブともうします」

 

そう言いながらルクルットが女性に近づいていく。

 

「冒険者の方ですか。私はアルフィリア・ルナ・ラグナライトともうします、若輩ながらこの店の店主をしております。といっても開店すらしていませんが」

 

アルフィリアは名乗り、一礼した。

 

「アルフィリアさん、今お付き合いしている人はいるのでしょうか」

 

そう言いながら、ルクルットが迫ってくる。

 

「い、いえ。今のところはいませんが・・・・・・」

 

アルフィリアはルクルットを警戒し、怯えたように一歩後退する。

 

「惚れました、一目惚れです、付き合ってください」

 

「え、えっと・・・・・・ごめんなさい」

 

「なら、お友達からでも」

 

それでも諦められないのか、まだ言い寄ってくる。

アルフィリアは困ったような顔をしてペテルに視線をおくる。

 

「はぁ・・・・・・ルクルット、彼女が困ってますよ」

 

そう言いながら、ペテルはルクルットの襟首を掴んで引っ張っていった。

 

「うちの仲間がすみません」

 

「い、いえ・・・・・・」

 

ニニャが苦笑いをしながらつれていかれたルクルットを見おくる。こなれた感じなので何回か同じことがあったのだろうか、と想像する。

 

「ところで、ここはどういった店なのでしょうか? 見たことのない看板がかかっていましたが」

 

「はい、この店は私の作ったマジックアイテムを売ったり、武器の強化、材質の変更等をする店です」

 

「マジックアイテムは分かりますが。武器の強化、材質の変更と言うのは聞かないですね」

 

「その二つは私の生まれながらの異能(タレント)魔法詠唱者(マジック・キャスター)としての力を使うものです」

 

「ちなみにどんなタレントか聞いてもよろしいですか?」

 

「はい。私タレントは物に力を付与する、というのもで、やり方によってはそこら辺に売っている普通の剣でも魔剣のような力や切れ味を持たせることができます」

 

「ほぉ、それはまた凄いタレントであるな。そこに置いてある剣はタレントによって作ったのであるか?」

 

「いえ、それは魔法詠唱者としての力を使って鉄の剣をミスリルの剣にしたものです」

 

ダインの質問に答えるアルフィリア、その答えに皆が目を丸くし、剣と彼女を交互に見つめる。

 

「あ、あの。何位階の魔法まで使えるのでしょうか?」

 

ニニャが両の手をグッと握り、真剣な顔で聞いてくる。

 

「私は第四位階まで使えます。家は代々魔力の強い家系ですので」

 

「だ、第四位階ですか!」

 

「いやはや、その年で第四位階を使えるとは。世の中は広いのである」

 

 

 

「で、オープン前ですが道具は搬入済みなので、強化なさっていきますか? 本当なら2銀貨頂くのですが、この店初のお客様なのでお代は無しにいたします」

 

アルフィリアは両の手を合せ、微笑みながらそう言った。




エ・ランテル編突入。

唐突に始まりましたが次話で回想をいれる予定です。


毎度ながら誤字脱字の指摘ありがとうございます。
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