オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第30話

「クレマンティーヌ、大丈夫?」

 

アルフはそう言いながらかがみこみ、彼女の顔の前でひらひらと手を振る。

 

「あ、うん。体がふわふわするけどだいじょーぶ」

 

人間から獣人へと体が作り変わったことで酔いが生じているようだ。

 

「それより、あそこでスクロール開いてるの何?」

 

クレマンティーヌが指差す方を見ると、カウンターの上で録画用のスクロールを開いているぶくぶく茶釜がいた。

 

「茶釜さん、何してるのかな?」

 

「ん?シャルティアへのお土産。アルフさんが百合である証拠と、おかずにでも使ってもらおうかと思って」

 

そう言いながらぶくぶく茶釜はスクロールを閉じ、アイテムボックスにしまった。

 

「はぁ・・・・・・」

 

アルフはカウンターの上にいるぶくぶく茶釜を両手で抱きかかえ、クレマンティーヌの前までもっていく。

 

「このピンク色の男性のアレみたいなスライムはぶくぶく茶釜さん、僕の仲間です」

 

「はじめまして」

 

ぶくぶく茶釜はそう言いながら右手を上げた。

 

「は、はじめまして」

 

クレマンティーヌは不思議そうにぶくぶく茶釜を見ている。

 

「それより、聞きたいことがあるんだけど。なぜ僕を拐おうとしたの? 宝珠がどうとか言ってた気がするけど」

 

「あー、あれね。少し長くなるけどいい?」

 

アルフとぶくぶく茶釜は頷き、先を促す。

 

「私、元はスレイン法国の漆黒聖典ってところにいたんだけどさ、嫌気がさして抜けることにしたんだけど、その時スレイン法国の最秘宝の一つ、叡者の額冠ってのを持ち出してズーラーノーンの死の螺旋って儀式に乗じて法国の目から逃れようとしたの。

で、その儀式の鍵の一つが死の宝珠。能力を強化してもっと派手にしてもらおうかなーって」

 

「一つ聞きたいんだけど、死の螺旋って何?」

 

「私も詳しくは知らないんだけど。アンデッドって沢山集まるとより強い個体が出てくるじゃない?その特性を使ってより強いの、さらに強いのと螺旋を描くように、より強いアンデッドが生まれる現象、それが死の螺旋。確か都市一つを死の都に変えたらしいわよ?」

 

「そんな儀式をこの都市で・・・・・・」

 

「まぁその儀式も発動まではしばらくかかるみたいだけど。ンフィーレアってのがいれば今すぐにでも始められるみたい」

 

「ンフィーレア・バレアレか」

 

彼のタレントは確かマジックアイテムを使用条件を無視して使用できる、というものだったはずだ。

おそらく使用条件の厳しいマジックアイテムを使って大量のアンデッドを召喚させるのだろう。

 

「んで、さっきも言ったけど法国の目から逃れるためにズーラーノーンにいたんだけど、かわりに匿ってくれるならいろいろ教えてあげちゃう」

 

「貴女はもう僕の眷属だし、守るのは問題ない。僕のそばにいれば探知系の魔法は阻害されるから。しばらくはここで暮らして後で僕達の本拠地に行くから」

 

「分かった。で、聞きたいんだけどさっき言ってた、あんたが男ってどういうこと?みた感じ女以外には見えないけど」

 

クレマンティーヌの疑問に、問題のない範囲で答えた。

 

何らかの魔法の事故で遠くから本拠地ごと転移してしまい。その影響で容姿と性別が変わったと。性癖や好みは変わらないが体の性別に精神が引っ張られて女性化し始めていることを。

 

「へぇ~。で、この世界で生きるのに金が必要で稼いでいる、と言うわけね。なんか六大神とかを思いだすなー」

 

「六大神?」

 

「うん。スレイン法国が崇めている六柱、地水火風生死を司る神達。確かそいつらもどこからか転移してきたって伝承があったような、なかったような」

 

そう言った直後、クレマンティーヌの腹がくぅ~、と鳴った。

 

「あはは、ごめん。お腹すいちゃった、何か食べ物ある?」

 

そう問われ、アルフは床にぶくぶく茶釜をおろしてアイテムボックスからナザリックでもらった弁当箱と指輪を一つずつ出してクレマンティーヌに渡した。

 

「はい、ちょっと量が少ないかも知れないけど食べ物と、飲食が不要になる指輪」

 

弁当箱と指輪を受け取ったクレマンティーヌは、永続光に指輪をかざし、物珍しそうに眺めている。

 

「こんな便利なものあるんだ、他の効果持った指輪とかあるの?」

 

アルフは顎に手を当て、所持している指輪の効果を思い出していく。

 

「えーっと。疲労無効、状態異常無効、時間停止無効と、行動阻害無効、精神異常無効、即死無効。他にも無効系の以外だと伝言(メッセージ)の指輪とか転移の指輪とかいろいろあるよ」

 

「うへぇ。今言ったもののほとんどが国宝とか至宝とか言われても問題ないものばっかり。もしかして王族かなにか? あ、これうまいね」

 

クレマンティーヌは指輪をポーチにしまい、弁当を食べた始めていた、弁当の中身はサンドイッチで複数種類入っている。

 

「ただの平民だよ、さっき言ったやつは自分で作ったものだよ」

 

「ふえ、ふぉふぇふぉんふぉ!」

 

「はぁ・・・・・・美味いのは分かるけど、口に物入れたまま喋らない」

 

クレマンティーヌは口をもごもごして飲み込もうとしているが、放り込んだ量が多かったのかなかなか飲み込めないでいる。

 

そんな時、止まったかと思ったら、次の瞬間には自分の胸を叩き始め、苦しそうにしている。

 

「ちょ⁉クレマンティーヌ!」

 

それをみたアルフはあわててアイテムボックスに手を突っこみ、無限の水差しとコップを出し、水をついだコップをクレマンティーヌに渡した。




英雄の領域に足を踏み入れたクレマンティーヌ、弁当のサンドイッチに殺されかける。
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