オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

32 / 94
第32話

午前中の営業を終え、昼休み。

 

アルフとクレマンティーヌはリビングで昼食をとっており、ぶくぶく茶釜は食べ終わって「もっと体を自在に動かせるように練習してくる」と寝室に籠っている。

 

二人の間には重い沈黙があり、リビングには食器がたてる音しかない。アルフはこの沈黙に耐えかね言葉を発する。

 

「あ、あの。クレマンティーヌ、今朝のことはごめん」

 

この言葉を聞き、クレマンティーヌのフォークが止まる。

 

「私のご主人様って本当に酷い人だよね~、可愛い眷属が犯されてるのに助けずそれを記録したり、火の粉がかかりそうになったら私を見捨てて逃げるんだもん」

 

「返す言葉もございません・・・・・・」

 

「まぁ、過ぎたことだし許してあげるけど、本当に危なかったんだから、あと少しで快楽に堕ちて戻ってこられなくなるところだったんだからね」

 

「・・・・・・」

 

「今度同じ目にあうときは巻き込んであげる」

 

クレマンティーヌは満面の笑みで、語尾にハートマークが付きそうな口調でそう言った。

 

 

「そう言えばさぁ、あーちゃんの本拠地ってどんなところ?」

 

「朝から気になってたんだけど。そのあーちゃんって何?」

 

「アルフィリアだから、頭文字とってあーちゃん」

 

まぁ守護者達のような堅苦しい感じがなくていいか、と思いその呼び方を許可した。

 

「僕達が拠点にしているのはナザリック地下大墳墓って言って、結構いいところだよ。食堂は大人数入っても平気だし、大浴場はいろんな種類の風呂があるし、今度いろいろ案内するよ」

 

「へぇ、墳墓ねぇ」

 

クレマンティーヌはおそらく普通の墳墓を想像しているのだろう、ナザリックがどんなところか知ったときの反応が楽しみになってきた。

 

そして、昼休みも終わり。午後の客をさばいている。

 

「店主、このスクロールはいくらだい?」

 

「第一位階魔法のスクロール三枚で30金貨になります」

 

「はい、お代」

 

「ありがとうございました」

 

「嬢ちゃん、これ」

 

「はい、解毒薬と聖油が一本づつで15銀貨になります」

 

「金貨一枚と銀貨五枚ね」

 

「ありがとうございました」

 

やはり消費アイテムを買う客が多い。アルフはカウンター横に貼られた紙に視線を移す。

 

聞いた情報を書き込む紙。初日はそれなりに増えたが、今は伸び悩んでいる、あれから追加されたのは蒼の薔薇、魔剣キリネイラム、八本指の3つだけだ。

しかも蒼の薔薇に関してはメンバーは女性のみでかなり強い、王都リ・エスティーゼを拠点にしているとしか情報がなく、八本指にいたってはそう言った犯罪組織が暗躍しているとしか情報がない。

冒険者が出し渋っている可能性はあるがエ・ランテルではこの辺りが限界だろう。

 

王都ではどうするかを考えながら、客の相手をした。

 

 

 

 

数時間後、客足が途絶え、アルフ見たさの野次馬達も店の中にはいない。

 

少し早いが店の扉に閉店の札をかけ、戸締まりをし、伝言(メッセージ)を発動させる。

メッセージの相手は冒険者をやっているアインズ、今はどうしているかを聞くために魔法を発動させ、繋がった。

 

「アインズさん」

 

『アルフさんですか、どうしたんです?』

 

「いや、今どうしているのかと状況確認」

 

『今、ですか・・・・』

 

アインズが言いよどむ、何か厄介なことになっているのだろうか思案するが、次のアインズの言葉に思考が止まる。

 

『今、巨大なハムスターの絵を描いてます』

 

「は?」

 

アインズが言うには、モモンの名で冒険者を始め、依頼者のンフィーレアとともに行った森にいた森の賢王という巨大ハムスターを手懐け、街中をそれにのって練り歩いたと。

で、組合に登録するのにも金がいくらかいるらしく、少しでも浮かせるためにハムスターの外見を描いているとのことだ。

 

「アインズさん、ンフィーレアって薬師のですか?」

 

『そうです、タレントはマジックアイテムの無制限使用でしたね』

 

「今一緒にいますか?」

 

『いえ、こちらは魔獣の登録があるので、漆黒の剣の皆と一緒に先に店に行かせました』

 

なんか嫌な予感がする、その予感が当たらないことを願い、アインズに言う。

 

「アインズさん、今すぐンフィーレアのところに行ってください」

 

『ですが魔獣の登録が』

「費用は気にしないでください。もしかしたらンフィーレアが拐われるかも知れません」

 

『わかりました』

 

その言葉とともにメッセージが切れた。

もし、予感が当たれば、ズーラーノーンはンフィーレアを拐い死の螺旋を始めるだろう。

 

 

 

そう考えながら、数十分が経過したとき、アインズからメッセージがきた、それは予感が確定した知らせであり、この都市の危機を現すものだった。

 

『ンフィーレアが拐われました』

 

「漆黒の剣は」

 

『重症でしたがもう大丈夫です。いったい誰がこんなことを・・・・・・』

 

「アインズさん実は・・・・・・」

 

アルフはクレマンティーヌからの聞いた情報と予測を告げる。

ンフィーレアを拐ったのはズーラーノーンという組織。その組織はンフィーレアと叡者の額冠、死の宝珠を使い、アンデッドの大量召喚を行ってこの都市を死の都にしようとしていると。

 

「だけど拠点はどこだ?」

 

そう考えていると、居住スペースへの扉が開き、クレマンティーヌが入ってきた。

 

「あーちゃん、どうしたの?一人でぶつぶつしゃべって」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。