ナザリック地下大墳墓・第二階層 迷宮区 13:00
「あ、あーちゃん。ちょっと、休憩しない?」
クレマンティーヌはレベル上げを始めて約四時間、自分と同等のスケルトンを数十体休みなく倒し続け、疲労して膝に手をつき、大量の汗を流している。
「四時間ぶっ通しだったし、休憩にしよっか」
それを聞いたクレマンティーヌはドサッと仰向けに寝そべり、手に持ったスティレットを放り投げ、体に溜まった熱を吐き出すように息を吐き出した。
「あ~、床が冷たくて気持ちいい・・・・・・てか、これ本当に強くなれるの?」
「なれるよ。今のクレマンティーヌなら難度120くらいなら相手出来るはずだよ」
スキルを使ってクレマンティーヌを見る、種族と職業レベルが合わせて40になっている。おそらく獣人のスキルも幾つか発現しているだろう。
少し早いが、スキルで召喚する眷属と戦わせる事にする。
〈中位眷属召喚・オルトロス〉
スキルを発動し、アルフの影から這い出るように、二つの頭を持ち、尻尾が蛇になっている黒い犬が現れた。
「このモンスターの名はオルトロス、難度は120で火属性の魔法を二つほど使える。貴女にはこれと戦ってもらいます」
「スケルトンは見飽きてたからちょうど良いか」
そう言いながらクレマンティーヌは立ちあがり、腰のホルダーからスティレットを一本引き抜き、クラウチングスタートのような体勢をとり、複数の武技を発動する。
〈疾風走破〉〈超回避〉
〈能力向上〉〈能力超向上〉
オルトロスとクレマンティーヌが同時に床を蹴り、加速する。
オルトロスは複数の火球を吐き、クレマンティーヌは火球の間を縫うように回避し、オルトロスの下に滑り込んで思い切り蹴り上げる、浮いたオルトロスの胸にスティレットを突き立て、込められた魔法を発動した。
〈
龍雷がオルトロスの体内を駆け回り、肉を焼き破壊していく。
辺りには肉の焼ける匂いが漂い、オルトロスが炭化してボロボロと崩壊していく。
「どお? 難度120と戦った感想は」
「あ、うん。強くなったってのはわかるんだけど。なんかこう、他人事みたいな?」
まだ強くなった実感が薄いようだ。
「まぁ少しずつ理解すれば良いよ。
僕はこれからエ・ランテルの店を王都に移転する準備とかいろいろしてくるから、休み終わったらちゃんとレベル上げ再開してね」
そう言うと、アルフは
城塞都市エ・ランテル アルフの店 寝室
暗転した視界が戻ると、そこにはぶくぶく茶釜がおり、荷物をまとめている。
「茶釜さん、荷物はかたつきましたか?」
「一応居住スペースは終わってるけど。アルフさん、私ばかりにやらせないでよ」
ぶくぶく茶釜は頬らしき所を膨らませ、怒ったような仕草をする。
「すみません、クレマンティーヌのレベル上げがありまして」
「それって、アインズさんの実験の手伝い?」
「いいえ。眷属にするとき、強くなる方法を教えるって言っちゃいましたから」
「あぁ、確かにそんなこと言ってたね」
「で、まだ途中ですがクレマンティーヌのレベルが10上がりました」
「レベル上げが有効って情報はアインズさんの役に立ちそうですね」
「では、僕は店の方のかたつけをしてきます」
アルフは店に行こうと寝室のドアに手をかけるが、ぶくぶく茶釜に呼び止められた。
「少し前に店の様子を見たんだけど、店の外が人で溢れて凄いことになってる。原因は事件の後、突然休んだことかな?」
「・・・・・・」
ぶくぶく茶釜が言った状況、冒険者が道を塞ぐほど溢れているのを想像し、言葉が出てこなくなる
「人気者は大変だね」
「・・・・・・出ていって説明しないとダメかなぁ」
「あーちゃんのファン達なんだから、大切にしないとダメだよ」
ぶくぶく茶釜がいたずらっ子のように言う。
アルフはため息をつきながら変化し、店に出ることにした。
店に出ると、ドアの外は人で溢れ、アルフを見た冒険者達が歓声を上げる・・・・・・。
(何あれ、すごく怖いんだけど・・・・・・)
思わず後退り、顔がひきつってしまう。
アルフは意を決し、店のドアまで進み鍵を開けたとたん、人が一気に雪崩れ込み、カウンターまで押しやられてしまった。
店に入ってきた冒険者達は、「嬢ちゃん大丈夫だったか!?」「アルフィリアさんが無事で良かった!」「俺たちアルフィリアちゃんが心配で心配で!」と、アルフを心配する言葉が次々出てくる。
「し、心配させてごめんなさい。それと、皆さんに言わないといけないことが・・・・・・」
アルフはどうして休んでいたかの理由と、事件が立て続けに起き、不安で一時王都に店を移す。と言う話をした。
「と言う訳なので、今日は移転前セールで能力付与を一つ銀貨二枚で承ります!」
アルフのその言葉を聞き、冒険者達は歓声を上げ、店の中は戦場と化した。