王都に来て二日目の早朝、アルフは店となる建物の中で木箱とアイテムボックスからアイテムを出し、店頭へと列べていく。
セバスが選んだ物件は、エ・ランテルで使っていた家とほぼ一緒で、間取りを覚える手間が省けて良かったとの思いが半分。もう半分は、建物の構造が似すぎていて王都に来た、と言う新鮮味がなく、味気ないと言う気持ちが半分だ。
「茶釜姉、そっちはどうですか?」
アルフは品物の陳列と、ドアベル、看板の設置を終え、居住区への扉を開けてそう言う。
「こっちはあと寝室に物入れるだけだから、もう少しで終わる。そっちは?」
ぶくぶく茶釜は寝室から顔を出してそう答えた。
「店の方は終わったよ。この後冒険者組合に宣伝を頼みに行くけど、茶釜姉はどうする?」
「寝室は後にして付いてくよ」
「じゃあ行きますか。ゲオルギウスおいで」
アルフはゲオルギウスを肩に乗せ、ぶくぶく茶釜を連れて冒険者組合へと行くことにした。
王都リ・エスティーゼ 冒険者組合 10:00
アルフ達は建物に入り、中を見回す。
一度しか入ったことはないが、エ・ランテルの冒険者組合より広く、内装が豪華な気がする。
中を見回していると、複数の視線が向けられていることに気づく、おそらくゲオルギウスとぶくぶく茶釜が気になるのだろうか、と考え気にしないことにした。
「茶釜さん、喋っちゃダメですよ。皆驚きますから」
アルフはぶくぶく茶釜にしか聴こえない程の小声でそう言い、ぶくぶく茶釜は了解の意として頷く。
それを確認し窓口へと行ったのだが、こちらが口を開く前に、受付嬢が先に言葉を発した。
「アルフィリア・ルナ・ラグナライト様ですね?」
「はい、そうですけど。私の情報、エ・ランテルから届いたんですか?」
「いいえ。情報は来ていませんが、名指しでの依頼がありましたので。依頼人から大まかな容姿は聞いております」
「で、依頼人と依頼内容は?」
「こちらになります」
そう言うと、受付嬢は一枚の紙をカウンターの上に出した。
「依頼人は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ様です」
アルフは眼鏡をかけ直し、依頼書に目を通す。
依頼内容は戦士達の訓練を手伝ってほしい、と言うもので、指定された時刻は依頼書確認した日の昼、確認したのが夜であれば翌日の昼、とある。
「あの、この依頼書が発行されたのは何時でしょうか?」
「発行されたのは、今朝の8時頃ですね」
それを聞き、アルフは安堵する。
一方的に依頼してきたとはいえ、あんな真面目な人を待たせるのは気が引けるからだ。
「わかりました。その依頼、受けます」
「畏まりました。では、こちらをお持ちください」
受付嬢はそう言いながら、一つのスクロールを取り出した。
アルフはそれを受取り観察する。手触りが良く、良質な羊皮紙が使われていることがわかる。
そのスクロールは赤い帯で括られ、結び目に封蝋が押してある。
「それは王城への入城許可書ですので、なくさないよう御注意下さい。報酬はストロノーフ様から直接お受け取りください」
「わかりました」
そう言い、アルフ達は冒険者組合を後にした。
アルフ達が冒険者組合から出ていった直後、建物内が騒がしくなる。話題は勿論アルフの事である。
「あの美しい少女は何者だ?戦士長自ら依頼を出すとは」
「情報が少ないな、モンスターを使役している冒険者となればけっこう目立つんだが・・・・・・」
「俺知ってるぜ。少し前までエ・ランテルに遠征に行ってたんだが、そこで武器の強化屋の店主をしていた」
「その話の本当か?」
「ああ、俺が乗ってる馬は脚が速くてな。不眠と不労のアイテム装備させてエ・ランテルから王都なら六日で着く。ちなみに、そのときは恋人とかそういった人物の影はなかった、その時は冒険者じゃなかったはずだが」
そして、この話は瞬く間に冒険者達に広がることになった。
王都リ・エスティーゼ ロ・レンテ城正門
アルフ達は城壁を見上げ、ため息をついた。
「うわぁ、すごく立派だね。なんか場違いな気がするけど、入って良いのかな・・・・・・」
「良いんじゃないの? ちゃんと入城許可書持ってるんだし、ストロノーフさんの依頼だし行かないとダメでしょ」
その言葉を聞き、アルフは意を決して入口へと向かったのだが。入城許可書を見せたら呆気なく通され、拍子抜けしてしまった。
そして、城門の警備をしていた兵士の一人にガゼフのいるところに案内され、野外演習場という趣の場所に通された。
その場所は広く、演習場を見渡すための櫓が有ったり、障害物や土を盛って作った山、塹壕等があり、そこで見覚えのある物達が訓練をしている。
ある者は木剣を打ち合い、またある者は障害物に身を隠しながら敵陣に接近する。
訓練の内容は見た感じでは、2チームに分れ、相手の陣にいる将を討ち取れば勝ち。と言うシンプルな物のようだ。
アルフ達が訓練を見ていると、演習場を見渡せる櫓の上から声が響く。
「そこ!Cー2の防御が甘い!Dー4!それで隠れているつもりか!もっと体勢を低くしろ‼」
その声に、訓練をしている戦士達が返事をする。
どうやら演習場を区分けして指示を出しているようだ。
声のする方を見ると、ガゼフが身をのりだし、指示を飛ばしていたがアルフ達に気付き、櫓を降りてきた。
「ラグナライト殿、呼び出してすまないな」
「いえ、一応は依頼ですので。それより指示は出さなくて良いのですか?」
「ああ、もうすぐ終わるのでな」
そういった直後、戦士達の声が響き、それを確認したガゼフが言葉を発する。
「各員集合‼」
その声を聞き、即座に戦士達がガゼフの前に集合する。
「今日はラグナライト殿に依頼し、我々の訓練を手伝ってもらうことにした。理由は、我々仲間内の訓練だけでは限界がある。こそで外部の強者を呼び、その者と戦うことで様々な経験を得ることにあるのだが、今は訓練直後なのでこれより一時間の休憩とする。ラグナライト殿と交流するのも良いだろう、私はクライムを呼んでくる」
そう言うと、ガゼフは城の方へと行ってしまった。
クレマンティーヌが出てこないのはセバスの所で預かってもらっているためです。
誤字の指摘ありがとうございます。