アルフはガゼフと対峙する。
ガゼフは木剣を構え、アルフは得物を木剣から身の丈程の長さがある棒へと変え、穂先を下に向けるように構える。
「それがラグナライト殿本来の得物か?」
「形は違いますが、だいたいこんな感じです」
ガゼフの問にアルフが答え、戦士達は驚いたような表情でアルフを見る。先程クライムとの手合わせで見せた攻撃は見事だったが、あれでも手加減をしていたという事実に息を飲む。
「そうか。では、こちらからいかせてもらう!」
そう言うと、ガゼフが 距離を詰め、左下段から斬りかかってきた。
アルフはそれを受け流し、続く袈裟斬りを弾き、突きをかわし、上段から一撃を放つが、ガゼフはそれを受け流し、カウンターで袈裟斬りを仕掛ける。
アルフはそれをバックステップで回避し、退避と同時に突きを放つが弾かれてしまった。
やはりガゼフは他の戦士とは違うようだ、連撃の流れや攻撃の威力が違う。先程まで相手をしていた戦士達であれば今の攻防で倒せたはずだ。
「なかなかやるな。ラグナライト殿、本気でやっても構わないんだぞ」
「そちらこそ、武技を使って私を殺すつもりで来ても構いませんよ。その前にこれを装備してください」
そう言い、アルフはポケットから取り出した指輪をガゼフに投げる。彼はそれを受けとり日に照らして観察する。
「それは疲労しなくなる効果を持った指輪です」
「休憩の時に聞いてはいたが、まさか本当に有るとは。ありがたく使わせてもらおう」
そう言いながら、ガゼフは指輪を装備して木剣を構え直し、武技を発動させる。
〈戦気梱封〉〈流水加速〉
ガゼフは一気に距離を詰め、切り上げる。
アルフはバックステップをしながらそれを流し、カウンターで突きを放とうとするが、ガゼフがもう一度行動する。
〈即応反射〉で攻撃後の隙をキャンセルし〈六光連斬〉を叩き込む。
アルフは六光連斬を弾きながら飛び退くが、棒の先が切り飛ばされてしまった。
「さすが王国最強と言われる戦士長ですね」
「そちらこそ、正面からまともに耐えられるとはさすがと言うべきか」
木剣を構え直し、アルフを見据える。
「だが、そろそろ本気を出してもらいたいのだが? クライムとの手合わせの時の力を俺に見せてくれ!」
ガゼフは一気に詰め寄り、四光連斬を放つ。それを弾き上げるが、すぐさま蹴りが飛んでくる。
アルフはそれを片手で受け止め、足首を持ってガゼフを放り投げた。
「なっ!?」
ガゼフも女性に片手で放り投げられるとは思っていなかったのか、目を見開き驚愕している。
ガゼフは受け身を取り、着地後すぐに体勢を立て直すが。木剣を構えた時にはすでに武器を構えたアルフが目の前に迫っていた。
木剣で防御しようと構えながら飛び退く。
アルフはさらに踏み込み、木剣に向かって突きを放つ。
突きは木剣を貫通し、そのまま穂先をガゼフに突き付けた。
「・・・・・・俺の負けか」
「そうでもないですよ」
アルフがそう言った直後、棒が砕け散り、穴の開いた木剣が残った。
「私の負けです」
「ラグナライト殿、まさかわざと?」
「さて、何のことですか?」
そんなやり取りをしていると、戦士達が二人を取り囲んでいた。
「まさか戦士長と渡り合うとは」
「最後の方、戦士長を片手でぶん投げたときはたまげたな」
戦士達はそれぞれの感想を言いながら、代わる代わるアルフの頭をわしわしと撫でていく。アルフは頭をグリグリと回され、目が回っていく。
「お、お前達、そろそろラグナライト殿を離してやれ。目を回しているぞ」
ガゼフの言葉を聞き、戦士達が手を離して一歩引いた。アルフは支えを失いへたりこみ、ぶくぶく茶釜とゲオルギウスが心配そうに寄ってきた。
『アルフさん、大丈夫?』
ぶくぶく茶釜からのメッセージに大丈夫と返事をし、その頭を撫で、ゲオルギウスを引き寄せて抱き上げる。
「部下達がすまない、立てるか?」
差し出された手を掴んで立ち上がった。
「はい。まだふらふらしますが大丈夫です」
「すまない、興奮してつい」
その戦士を皮切りに、アルフを撫で回していた戦士達が謝ってきた。
その後、ゲオルギウスにいたずらした戦士がかじられたり。馬くらいの大きさにしたゲオルギウスに戦士達が驚いたり、追い回されたりしながら時間が過ぎていく。
「ラグナライト殿、伝え忘れていたが。王が民と我等を救った礼として昼餐会を開きたいと仰っていてな、是非とも参加してほしいのだ」
「昼餐会ですか、やはりドレスを着て馬車に乗って行かないとダメなのでしょうか?」
「馬車を使うのは服を汚さないためというのもあるが、権力と財力の誇示と言う意味合いが大きい。ドレスを着るのは最低限のマナーと言うやつだ」
アルフはそれを聞き、顎に手を当て少し考える。
ドレスならナザリック自室のアイテムボックスにいくつか入っていたはずだ、良さそうな物が無ければ1から造れば良い。
後は馬だが、そう思いながら視線を上げるとゲオルギウスが目にはいる。ゲオルギウスの口の端から火が漏れ出ているのを見ると、
「ストロノーフさん、馬のかわりにあれに乗ってきても良いですか?」
ガゼフはアルフの視線を追う。
「龍か、馬のかわりになるのであれば大丈夫だろう。それより、あれを止めてくれないか?そろそろ部下が限界のようでな」
戦士達を見ると、息があがり、今にも倒れそうな者もいる。
「わかりました。ゲオルギウス、戻っておいで」
その声を聞き、戦士達を追うのをやめてかけてきた。アルフは戻ってきたゲオルギウスの頭と顎を撫でる。
戦士達を見ると、膝に手をつき息を整える者やその場で倒れている者もいた。