オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第5話

ひとしきりアウラとマーレを撫で回した後、ぶくぶく茶釜、アルフ、ペロロンチーノは闘技場の観客席に移動していた。移動した理由はモモンガの実験を邪魔しないためだ。

 

「モモンガさん、スタッフを自慢してますね」

 

ぶくぶく茶釜の言う通り、闘技場の中央に残るモモンガは、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掲げ、自慢しているようだ。

 

「確かに、あれは自慢したくなりますよね。僕を含めたギルドメンバー全員で素材集め、錬金、データクリスタルの厳選、いろいろありましたから」

 

アルフは昔を思い出すように言う。ギルドの最盛期、もっと早くトラウマを克服出来ていれば、との思いが心に巨大な楔となって今でもまだ残っている。

 

「あ、実験始まったみたいですよ」

 

ぶくぶく茶釜の言葉に、アルフは闘技場の中央へと意識を向けた。

 

モモンガが火球を放ち、放たれた火球が的に当たってはぜる。

 

「魔法は普通に使えるようでよかった」

 

ぶくぶく茶釜の言葉に同意する。もし使えなかったら僕やモモンガさんのような魔法職中心のビルドだと足手まといにしかならない。

 

モモンガは手を耳(?)に当て、何か考え込んでいるようだが、おそらく何処かしらに〈伝言(メッセージ)〉を飛ばしているのだろう。

 

伝言を終え、モモンガはスタッフを振りかざし力を発動した。

 

根源(サモン・)の火精霊召喚(プライマル・ファイヤーエレメンタル)

 

その声と共に、巨大な光球が生じ、それを中心に桁外れな炎の渦が巻き起こった。

 

巻き起こった渦は加速度的に大きくなり、直径四メートル、高さ六メートルまで膨らみ、紅蓮の煉獄が周囲に熱風を巻き起こす。

 

「根源の火精霊ですか、改めてみると迫力があるなぁ。

ん? アウラとマーレが戦うみたいだ」

 

ペロロンチーノの言葉通り、アウラが戦闘態勢に入り、マーレがおどおどしている。

 

 

 

 

戦闘はアウラとマーレのペースだ、余裕を持った攻防が続く。

 

ふとモモンガを見ると何もないはずの空間に手を入れ、ごそごそと何かを探っていた。どうやらアイテムボックスに手を突っ込んでいるようだ。

 

 

空中に溶けるように根源の火精霊の巨体が消えていく。周囲に撒き散らされていた熱気も急速に薄れていった。

 

桁外れの破壊力と耐久力を持つ根源の火精霊だったが、アウラとマーレの前では意味がなかったようだ。

 

「うちの子達はすごいでしょ」

 

ぶくぶく茶釜を見ると、我が子を自慢し、胸を張っているのだろうが、体をグニュっと曲げたようにしか見えない。

 

再び闘技場へ視線を移すと、モモンガがアウラとマーレに水を飲ませ、二人の頭を撫でていた。

 

観客席に居たアルフ、ぶくぶく茶釜、ペロロンチーノはモモンガ達の所まで移動し、ぶくぶく茶釜が再びアウラとマーレの頭を撫で始めた。そこに声がかかる。

 

「おや、私が一番でありんすか?」

 

言葉遣いの割には若々しい声が聞えると同時に、地面から影が膨らみ、吹き上がる。その影はそのまま扉の形を取る。そんな影からゆっくりと姿を現す者がいた。

 

「……転移が阻害されてるナザリックで、わざわざ〈転移門(ゲート)〉なんか使うなっていうの。闘技場内まで普通に来たんだろうから、そのまま歩いてくればいいでしょうが、シャルティア」

 

モモンガのすぐ側から呆れたような声が聞こえる。その凍りつかんばかりの感情を含んだ声音に、先程までの子犬の雰囲気は無い。あるのは満ちすぎてこぼれだした敵意だ。

 

その横ではマーレが再び、ブルブルと震えだしている。少しずつ姉の側から離れていっているのはなかなか賢い。実際、アウラの豹変には、モモンガもちょっとばかり引いていた。

 

シャルティアはアウラを一瞥すると、すらりとした手をモモンガの首の左右から伸ばし、抱きつくかのような姿勢を取る。

 

「ああ、我が君。私が唯一支配できぬ愛しの君」

 

真っ赤な唇を割って、濡れた舌が姿を見せる。舌はまるで別の生き物のように己の唇の上を一周する。

 

妖艶な美女がやれば非常に似合っただろうが、彼女では年齢的に足りないものがあり、ちぐはぐ感が微笑ましくさえある。だいたい、身長が足りないので、伸ばした手も抱きつくというより首からぶら下がろうとしているようにしか見えない。

 

それでも女性に慣れていないモモンガには十分な妖艶さだが。

 

こんなキャラだっけ、という心中に湧きあがる思いでペロロンチーノを見ると、先程モモンガをからかっていた時と同じように親指を立てていた。

 

モモンガの視線の先が気になり、シャルティアもそちらを見る。そこには自分の創造主、ペロロンチーノが立っていた。

 

「ペロロンチーノ様、お久しゅうございます」

 

モモンガの首からぶら下がったまま言う。

 

「なんかさっきのアウラとマーレの反応と随分違くない?! もっとこう、ぎゅっと抱きついてくるとか、耳元で色っぽく囁いたりとか。

これがNTRか!NTRってやつか?!」

 

ペロロンチーノが頭を抱えてうんうん唸っている。

 

シャルティアがモモンガの首から離れ、ペロロンチーノも抱きついて、その耳元で甘い声で囁く。

 

「冗談でありんす。ペロロンチーノ様、お会いしたかったでありんす」

 

「シャルティアァーー!!」

 

ペロロンチーノはすぐさま復帰し、シャルティアを抱き締めた。




誤字脱字の指摘ありがとうごさいました。

シャルティアの説明の大部分をぶった切ましたが仕方ないです。

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