アルフが店で客の相手をしているのと同時刻。
ロ・レンテ城 ヴァランシア宮殿の一室に、二人の女性と一人の青年がいる。
女性の一人はアダマンタイト級冒険者チーム、蒼の薔薇のリーダー、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。今は鎧ではなくドレスを着ている。
もう一人の女性は、この国の第三王女、黄金と呼ばれる姫、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。
最後の一人は姫の護衛、騎士であるクライム。
三人は丸いテーブルを挟むように座っており。ラキュースの正面にラナー、ラナーの隣にクライムといった位置で座っている。
「それで、アルフィリア・ルナ・ラグナライトと言う方はどうでしたか?」
「そうね、チームに入れてそう時間はたっていないけど信頼はできると思うわ。彼女自身の戦闘は見てないけど戦力は期待できる」
「そうですか。クライム、貴方が手合わせしたときはどうでしたか?」
「彼女は強いです、最後の盾と木剣を砕いた攻撃は凄かったです」
「確か戦士長と互角に戦って、負けてしまわれたと聞いていますが」
「いえ、それは正確ではありません。最後の一撃でガゼフ様の持つ木剣を貫いた後、ラグナライト様はわざと自らの武器を破壊したように見えました。恐らく休憩時に貴族達の対立を聞き、自ら負けを宣言したように思います」
「そうですか」
そう言ってラナーは少し考えてから言葉を発する。
「では、私の依頼したあの件、彼女にも手伝ってもらいましょう」
「いいの?こっちとしてはありがたいけど」
「かまいません。今度開かれる昼餐会では直接お話をしてみたいですね」
「なら昼餐会の時に私がアルフィリアのエスコートをして引き合わせよう」
「よろしくお願いします」
夜
ナザリック地下大墳墓 第九階層 アルフの自室
アルフはそこで、アイテムボックスを探っていた。目的は三日後にある昼餐会で着るドレスを探すためだ。
「う~ん」
腕を組み、ベッドの上に広げた複数のドレスに目を向ける。
一応ドレスと名の付く物は全て引っ張り出したが、合計六着しかなかった。しかもその半分はアーマーとも名前がついている。
「なんかパッとしないね、一応似合いはするけど国王主催の昼餐会に着ていくには微妙かな」
声のする方に視線を向けると、ドレスの1着をアルフの体に合わせるように掲げるぶくぶく茶釜がいる。
彼女がここにいるのは、女性としての意見を聞くのと一緒にドレスを選んでもらうためだ。
「やっぱり1から作った方が良いですかね」
「その方が良いかもね。そうすると裁縫スキル持ってる子探さないと。マリアちゃんはどう?」
ぶくぶく茶釜の言葉に、二人の視線が部屋の端に向けられる。そこには椅子に座り、ゲオルギウスを膝に乗せて寝ているマリアがいる。
「残念ながらマリアがとってる製作系職業は鍛冶と彫金だけです」
二人して腕を組み考える。二人はナザリック所属のシモベのスキルを全て把握しているわけではなく、すぐに思い当たる者は思い付かなかった。
「そうだ、デミウルゴス辺りなら知ってるかも」
アルフは早速デミウルゴスにメッセージを発動する。
「デミウルゴス、ちょっといいかな」
『これはアルフィリア様、お久しぶりでございます』
「うん、久しぶり。それで聞きたいことがあるんだけど、ナザリックの中で裁縫出きる子知らない?今度国王主催の昼餐会に出ることになってドレスを作らないといけなくて」
『裁縫ですか。アルベドはどうでしょう、彼女は自作で抱き枕や子供服を作ったりしています』
「子供服?」
『子供服です・・・・・・』
妙な言葉が出てきた。アルベドが子供服を作っている、誰かと子を成すつもりなのだろうか、と思い。ふと転移前の事、〈モモンガを愛している〉と書き換えたのを思い出す。
『どうかいたしましたか?』
「いや、思い当たる節があるなぁ、と思って。とりあえずアルベドの所に行ってみるよ。ありがとうね」
『お役にたてたのなら幸いです』
その返事を聞き、メッセージを切った。
「アルベドの所に行くけど、茶釜さんはどうします?」
「留守番しててもつまんないからついてく」
そして二人はアルベドが自室として使っている部屋の前に立ち、扉をノックする。
少しすると扉が開き、中からアルベドが顔を出した。
「アルベド、久しぶり」
「お久しぶりです、アルフィリア様、ぶくぶく茶釜様」
「今日はアルベドに頼みたいことがあって来たんだけど、中にはいっていいかな?」
「どうぞ」
アルベドの案内で部屋に入る。部屋に入ってまず目についた物は、ベッドの上に複数あるアインズを模したぬいぐるみだった。
アルフはベッドに近寄り、ぬいぐるみアインズをひとつ手に取り、でき具合をチェックする。
縫い目が一定で乱れはなく、腕や首等の継ぎ目も丁寧に縫われている。
「これはアルベドが作ったの?良くできてるね」
「はい、それはもう一針一針愛情を込めて作りましたから」
くふふふふ、と怪しげに笑っている。とりあえずこの出来なら頼んでも問題ないだろう。
「アルベド、貴女に頼みたいことがあるの。僕にドレスを一着作ってくれないかな?今度国王主催の昼餐会に出ることになってドレスが必要になったの、材料はこっちで出すから。報酬は何がいい?」
アルフはそう言いながらアイテムボックスからドレスのデザイン画と、材料となる常闇の切れ端、黄昏の雫、混沌の糸、黒龍針を取り出し、アルベドに渡す。
「そんな、報酬だなんて。我々ナザリックに属する者は至高の御方々の役にたつ事こそ報酬でございま・・・・・・」
手渡したアイテムを見た瞬間アルベドが止まった。
「アルベド、どうかしたの?」
止まったアルベドをアルフとぶくぶく茶釜は心配そうに覗きこむ。
「あ、あの。先程あんなことを言ってしまいましたが、報酬の件頼んでもよろしいでしょうか・・・・・・」
アルベドが恥ずかしそうに頬を染め、何だか申し訳なさそうに聞いてくる。
「いいよ、もともと報酬あげるつもりだったし」
こちらとしてはうれしい話だ、ナザリックのシモベ達は至高の御方々に仕える事こそ幸せです。と言って報酬をなかなか受け取ろうとしないため、自ら報酬を受け取ってくれるというのは正直嬉しい。
「では、この常闇の切れ端と混沌の糸、黒龍針をいただけないでしょうか?」
何故そんなものを欲しがるのか聞いてみたところ。
今度1分の1アインズ様フィギュアを作る予定らしく、それに着せるローブを作るのに必要になったそうだ。
ようは普通の黒い布ではなく、より本物に近づけるために常闇の切れ端が欲しい、との事だ。
「いいよ。アインズさんのフィギュア作るときは私も手伝ってあげるから声かけてね。こっちとしてもシモベ達に頼られると言うのは嬉しいから」
「ありがとうございます、その時はよろしくお願いいたします。では、まずは採寸からいたしましょう」
そう言うとアルベドは軽い足取りで裁縫道具を取りに行った。
誤字の指摘ありがとうございます。