オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第62話

翌日

 

あれからアインズは、少し情報交換しただけでアルベドの部屋を出ていってしまった。

後でメッセージで聞いてみたところ、アルフ達の様子を見るために来たがアルベドが発情気味だったため、即時撤退を選択したそうだ。

 

そして今は王都の家でぶくぶく茶釜とマリアにドレスの着付けを手伝ってもらっている。

 

「ねぇ、アルフさん。私も王城行っていい?」

 

「どうですかね、私は連れていきたいですけど王城の検問で引っ掛かりそうな気がします。その辺りは迎えに来るストロノーフさんに聞いてからでないと」

 

「やっぱりそうなるか。王城のパーティーで出てくる食事楽しみにしてたんだけどなぁ。着付け、終わりましたよ」

 

「ありがとうございます」

 

アルフは姿見に自らを映す。

 

「うん、昨日も思ったけどよくできてる。じゃあ行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロ・レンテ城 昼餐会会場

 

広さ40㎡ほどあり、所々テラスへと出られる扉がある広間、その天井からは豪華なシャンデリアが吊るされ、永続光(コンティニュアル・ライト)の光を反射して辺りを照らしている。その明かりの下では豪華な服や宝石で身を飾った貴族達が、思い思いに食事をとったり、仲の良い者同士集まって会話をしている。

 

「まったく。たかが小娘一人のために本当にこんなパーティーを開くとは。王は何を考えている」

 

「おい、あまり大声で言うと聞こえるぞ」

 

その男が視線を向けた先にはリ・エスティーゼ王国国王、ランポッサ三世が挨拶に来ている貴族達に対応している。

 

「そうだな。だが事実だろう?少なくとも貴族派のほとんどはそう思っている」

 

そう話し込んでいると城の外が騒がしくなり、テラスに出ていた貴族達も何やら下階を覗きこんでいる。

 

「ん?なんだ、外が騒がしいが」

 

「大方どこぞの大貴族が来たんだろ。にしてもラグナライトとか言う小娘はまだ来んのか、もし噂通りの美しさなら妾にしてやってもいい」

 

「ははは、前にも聞いたな。それはいいかも知れんがむりかもな。そのラグナライトと言う小娘は貴族並に資産を持っているらしい、しかも冒険者だから権力には興味なし。特定の男性はいないらしいが噂通りの美しさならそれに釣り合う者でなければ付き合うことすら不可能」

 

「それは暗に私を醜男だと言っているのか?」

 

「ははは、その台詞は顎の下の肉を落としてから言ったらどうかね?」

 

そんなやり取りをしていると、何やら広間の入口辺りが騒がしくなってきた。

 

「さっき外で騒がれてたやつか?」

 

そして、騒ぎの的となっている人物が広間に入った瞬間、彼女を見た貴族達が止まった。

 

入って来た女性の顔は整っており、銀色の縁を持った眼鏡をかけている。彼女は艶のある黒髪を軽く三つ編みで束ね、ドレスは夕暮れ時の空を切り取って作られたと錯覚するような美しい物であり、その胸元と手首には見たこともない輝きを灯した宝石が身に付けられ、右肩にはドラゴンを模して作られた大きめの装飾品が付けられている。

 

「あれは、どこの貴族の御息女だ?」

 

「もしかして、どこかの国の姫か?」

 

「誰か面識のある者はいないか」

 

そんな感じの小さな話し声が辺りから聞こえ始める。

 

 

 

「美しいな、本当に誰か面識はないのか?」

 

「いないみたいですね。それにしても蒼の薔薇がエスコートとは、かなりの要人と言うことか・・・・・・本当にどこかの国の姫かも知れませんね」

 

彼女はコツコツとヒールの音を響かせ颯爽と歩いていく。その歩く姿にはブレはなく、背に一本筋が通っているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分前

 

アルフはぶくぶく茶釜を膝に乗せてゲオルギウスの背に座り、王城へと続く大通りをガゼフと共に移動していた。

 

『茶釜さんも王城行けて良かったですね』

 

『ええ、まさか国王が私のこと見たいって言うとは思わなかった』

 

二人は周りに人目があるのでメッセージを使って先程のことを話している。

 

店に迎えに来たガゼフにぶくぶく茶釜を連れていっても大丈夫か聞いたところ、

「大丈夫だ、と言うより王がラグナライト殿が使役しているドラゴンとスライムも見てみたい、と言っているのでぜひ来てほしい」と言っていた。

 

『にしても、視線がすごい集まってる気がする』

 

辺りをみるとすれ違う人々や露天で買い物をしている人達の視線がアルフに集まっている。

 

『それは仕方ないですよ。アルフさんみたいな美女が、伝説や神話で強者としているえがかれるドラゴンに乗ってるんですよ?注目集めない方がおかしいですよ』

 

アルフは視線を意識しないようにし、進行方向を向く。

そこには王城への入口があり、その脇の停留所には様々な馬車が止まっており、城門には短い列ができていた。たぶん危険物の持ち込みがないか、招待状を持ってきているかをチェックしているのだろう。

 

ゲオルギウスを降りて小さくして肩に乗せ、ぶくぶく茶釜を抱え直し、アルフもその列に加わる。少しすると順番が回ってきた。

 

「招待状の御提示をお願いします」

 

アルフは招待状を取り出し、警備兵に渡す。

 

「確かに。では先に進んでください、そこで危険物を持ち込んでいないか魔法で確認いたします」

 

兵の言葉に従い先に進む。順番を待つ間暇なので後ろに着いてきているガゼフに話しかける。

 

「ストロノーフさん、検問っていつもこんな感じなんですか?訓練の時は簡単に入れてもらえたのですが」

 

「いつもと言うわけではない。今回は王主催の昼餐会、当然そこには王が来ることになる、それを狙って危険人物が紛れ込むかも知れないからな」

 

「そうですか。王城勤めって大変なんですね」

 

そんな話をしていると順番が回って来た。

 

「ここでは魔法による身体検査をおこないます。〈魔法探知(ディテクト・マジック)武器探知(ディテクト・ウェポン)〉」

 

目の前の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が魔法を発動し、何かを見つけたのか顔をじっと見てくる。

 

「失礼ですが、その眼鏡を鑑定してもよろしいでしょうか?」

 

「かまいませんよ。一応付与されているのは文字識別の魔法です」

 

「〈付与魔法探知(ディテクト・エンチャント)〉・・・・・・確かに。では先にお進みください」

 

アルフ達は門を無事通過し、王城へと入った。

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