昼餐会のあった日の夜更け、誰もいない真っ暗な路地裏を歩く人物がいた。
昼餐会でアルフに下卑た視線を向けていた男、巡回使をしているスタッファン・ヘーウィッシュ。
その男は布に巻かれたキャンバスを抱え、ある場所に向かっていた。それは自分の欲望、美しい女をぼろぼろに壊して抱くと言う性癖を満たしてくれる場所に。
そこで一つ疑問が出てくる。何故、たかが巡回使である彼が国王主催の昼餐会に参加できたか。それは、巷で噂の美女が昼餐会に来ると耳にし、主人である貴族に頼み込みコネで参加することができた。
貴族に払った金額を考えると頭が痛いが、あの黄金と称される姫と同等かそれ以上の美女がこの王都に居ると知れただけでもそれだけの価値はあった。
やがて目的の建物に着き、重そうな鉄の扉をノックする。
少しすると扉が開き、中から一人の男が顔をだした。
「これはこれは、ヘーウィッシュ様。今夜はどのような女をご所望で?」
「それは後だ、コッコドールは居るか?」
「はい。今は六腕と警備の打ち合わせをしていますが、すぐに終わると思います。打ち合わせが終わるまで部屋でお待ちください」
「わかった、案内しろ」
案内された部屋で待っていると、部屋の扉がノックされた。
「入れ」
その言葉を聞き、扉が開かれた。
「ヘーウィッシュ様、今夜はどういったご用事で?」
入ってきた男は八本指の奴隷部門の長をしているコッコドールだ。
「まずはこれを見てほしい」
ヘーウィッシュは持ってきていたキャンバスにかけられた布を取り、その絵をコッコドールに見せた。
「ずいぶんな上玉ね、こんな娘実際にいるの?」
「ああ、この目で実際にみた。この絵は画家達が描いた絵の中で最も似ているものを買い上げたが、これでもあの美しさを表現しきれていない。
それで頼みと言うのはこの娘を奴隷に堕してこの店で私の相手をさせてほしい」
「これほどの上玉ならかなり稼げるけど、一回で壊すつもり?」
「そんなもの、魔法でもポーションでも使えばどうとでもなる。これほどの女だ、治すのに多少かかるかも知れないがすぐに元はとれるだろう」
「それで、この子の情報は持ってる?」
「もちろん。この女は蒼の薔薇所属の冒険者だが、本人は金級の冒険者と言う話だ」
「蒼の薔薇ねぇ。冒険者なら一人消えても問題はないけどアダマンタイト級のチーム所属となると難しいわね」
「金は成功したらそれなりに払う」
「わかったわ。私が抱えてるミスリルと同等のワーカーを五人程当たらせるわ。それで今夜はどんな女を呼びましょうか?」
「いつもと同じ、美しくまともな女を」
「わかりました、ではツアレと言う女を呼びましょう。あの子ならまだ比較的まともよ」
「名前などどうでもよい、すぐにでも連れてきてくれ」
「わかったわ」
そう言うとコッコドールは女を呼びに部屋を出ていった。
翌日の午前十時頃、アルフは肩にゲオルギウスを乗せ、クレマンティーヌを連れて街を歩いていた。
なぜ、この時間帯にこんな場所にいるかと言うと。朝、店を開けようとしたのだが店の外には冒険者ではなく、男性の貴族達が群がっていた・・・・・・。
話を聞いてみると、告白とか求婚が主だったが中には取引の話もあった。
その後告白系は断り、取引は保留にして店から逃げ出して、街を見ていたクレマンティーヌと合流して今にいたる。
今回ぶくぶく茶釜は偶然様子を見に来たペロロンチーノと一緒に留守番をしている、出掛ける時にお土産として食べ物を頼まれたのでいくつか買っていく予定だ。
「あーちゃん、あの依頼受けて良かったの?まぁ、あーちゃんなら大丈夫だと思うけどさぁ」
たぶん昨日の夜行われたラキュースの作戦説明を盗み聞きしていたのだろう。
「今回はちょっとね・・・・・・それより、串焼きでも食べよ。おじさん、串焼きください」
アルフは串焼きを多めに買い、一緒に食べながら露店を見て回り買い物をしていたのだが、クレマンティーヌが時々立ち止まり辺りを見回している。
「どうしたの?」
「うん。何かつけられてる、人数は五人かな?」
「やっぱり気のせいじゃなかったんだ」
しばらく前から誰かにつけられているのを耳で捉えてはいた、待ち伏せは何度かされた経験はあるが尾行された経験は無かったため判断できずにいた。こういった事に長けたクレマンティーヌが言うなら間違いないだろう。
「やっぱり気付いてたんだ。で、どうする?撒く?」
「ちょっと考えがあるから、こっち来て」
そう言うと、アルフは人気の無い路地裏に歩を進めた。
アルフ達を追う人影が五つ。付かず離れず、相手に気取られぬように距離を取って取り囲んで人目の無いところに行ったら拐い、上司のところへ届ける。
何度も行ってきた事だ、相手は金級冒険者だが蒼の薔薇所属だ、いつもより警戒して見張役は建物の屋根に二人配置している。
しばらく標的を監視しているが、冒険者らしさがない。
街の中と言うのもあるが、それでも警戒心と言うものが全く感じられない。
後から加わったあの女の方がまだ冒険者らしい。
そんなことを思いながら監視を続けていると、標的が人気の無い路地裏に入っていった。
屋根に配置している見張役を見ると、異常なし、襲撃準備と指示が出た。
標的は路地を進み、大通りから離れていく。誘い込まれている気はするが、見張役二人がそろってOKを出したのだ、心配することはない。
路地に入って少しすると見張役から指示が出た。次道を曲がったら決行。手筈としては、屋根にいる見張役が標的の前に降りて奇襲をかけ、混乱しているところに後方から挟撃を仕掛ける、というものだ。
そして、決行の時が来た。
標的が道を曲がり、姿が見えなくなる。それを合図に音を立てないように走り、後を追って道を曲がる。
曲がった直後、目に映ったのは奇襲が成功した仲間の剣が金髪女の心臓を貫いている光景だった。
こちらも奇襲で混乱している隙に、標的を羽交い締めにして仲間が薬品を染み込ませた布で鼻と口を押さえた。
最初は抵抗していたが、次第に力が抜けていき最後には気絶した。
「意外に簡単だったな」
「ああ。蒼の薔薇と言っても所詮は金か」
縛り上げた標的である黒髪の美女と、心臓を貫かれ死体となった金髪女を見下ろしながら言う。
「そういえば、殺したり大きな傷を付けなければ味見して良いって話だったな。少し楽しませてもらおうか」
そう言いながら服を裂こうとしたとき、背後から声がかけられた。
「女性相手に酷いことしますね」
慌てて声のする方を見ると、そこには殺したはずの金髪女と標的である黒髪の美女が立っていた。