オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第67話

「なっ?!」

 

どう言うことだ、見張役は目を離すことは無かったはずだ、なぜ標的が後ろから。

確か相手は魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ、ならさっきのは幻術の類いかとも思ったが、あれには質量があった。幻術は外観はどうにか出来るが感触や質量はどうにもできない・・・・・・。

 

「不思議そうな顔をしてますね、幻術に質量が有ったのがそんなに気になりますか?なら、その種明かしをしましょう」

 

黒髪の女がそう言った直後、変化が起こった。

倒れていた二人にかけられていた幻術が解け、人の大きさの藁人形へと変わった。

 

「何が目的なのか探るために囮を使いましたが、貴方達は何度も女性を拐っているようですね」

 

辺りの空気が変わった、例えるなら目の前に強大な魔獣が現れ、命の危機が迫っている時のようだ。

脳がこの女は危険だと警告を発している。

 

「皆、逃げ‼」

「逃がしませんよ?」

 

指示を出す前に先手をうたれた。

倒れていた藁人形が立ち上り、退路を塞がれた、路地を襲撃場所に選んだのが裏目に出てしまった。

 

「くっ!たかが藁人形、まっぷたつにしてやる‼」

 

持っていた剣を振り上げ、全体重を乗せて降り下ろして藁人形を袈裟斬りにしようと切り付けたが、バキンッ!と剣が折れただけで、藁人形を両断することは出来なかった。

 

「ではこちらの番ですね、〈集団標的(マスターゲティング)全種族魅了(チャームスピーシーズ)〉」

 

魔法が発動され、黒髪の女が数年来の友だと思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、友達。最近調子はどうですか?」

 

「ああ、お前だったのか。もちろん絶好調だ」

 

魔法が上手くかかったようだ。

 

「そういえば、何故私を襲ったのですか?いくら友達でもやってはいけないことがありますよ?」

 

「すまない。依頼でお前を拐うように言われててな、何故あの時断らなかったんだろう」

 

「まぁ、何も無かったから良いよ。それより誰に頼まれたか教えてくれませんか?」

 

「ああ、本当は教えたらまずいんだがお前なら教えても構わないか。俺達は八本指の奴隷部門長にお前を拐う依頼を受けたんだ」

 

「へぇ、貴方達はワーカーでしたよね。女性を拐ったりする犯罪はよく引き受けるんですか?」

 

「冒険者としての普通の依頼より実入りが良いから、それに拐った女は味見して良いって役得がたまにあるしな。まぁ危険はそれなりにあるが冒険者辞めて正解だったよ」

 

それを聞き、自分の中で燻っている怒りが再燃しそうになるがそれを押さえ込んだ。

 

「あーちゃん、こいつらどうするの?私がバラそうか?」

 

クレマンティーヌは顔に笑みを浮かべながらそう言った。

 

「その必要はないよ」

 

「え~、久しぶりに拷問したい」

 

そう言いながらブー垂れている。

 

「今回は我慢して、その内拷問し放題の場所紹介するから」

 

そう言った後、アルフは〈メッセージ〉を発動させアルベドに繋いだ。

 

「アルベド、今ナザリックいるよね」

 

『アルフィリア様。はい、今はデミウルゴスと一緒に執務室であげられてきた情報を整理しております』

 

「仕事中ごめん、今からナザリックの表層に人間を五人送るからシモベ達にあげて、拷問するなり食べるなり好きにして良いよ」

 

『ありがとうございます、シモベ達も喜びます』

 

アルフはそれを聞いたあとメッセージを切り、新たに〈転移門(ゲート)〉を発動させ、魅了を支配に切り替え命令する。

 

「ゲートの中に入れ。転移後現れた人物に従え」

 

その命令を聞き、アルフの操り人形と化したワーカー五人はのそのそとゲートをくぐり転移していった。

 

 

 

「ずいぶん手慣れてるね、こういうこと経験無さそうだから意外。それにしても、この藁人形どうなってるの?」

 

クレマンティーヌは興味深そうに2体の藁人形を眺めている。

 

「その藁人形はゴーレムだよ。感触を実物に近づけるために胴体部分に人間に近い骨骼のモンスターの胴体を入れて、重さの調整でアダマンタイトの棒を埋め込んである。ちなみにこのゴーレムは今のクレマンティーヌより難度は15ほど上だったりします」

 

「この藁人形より私が弱いって何か複雑な気分」

 

「レベル上げすれば超えられるから心配しないで」

 

「え~、またあの退屈なスケルトン退治やるの?」

 

「そんな嫌そうな顔しないの。今度は私の私財はたいて同レベル帯のモンスターと戦わせてあげるから。じゃあ露店巡りの続きをしますか」

 

そう言いながら路地から出て大通りに出て、クレマンティーヌと一緒に露店巡りを再開した。

 

 

 

 

 

 

アルフが襲撃を受けた同時刻、ぶくぶく茶釜とペロロンチーノはナザリックで作られたスナック菓子をつまみながらリビングでくつろいでいた。

 

「なぁ姉ちゃん。アルフさんにデミウルゴスの計画の事言わなくて良かったの?」

 

ペロロンチーノはそう言いながら皿に手を伸ばし、菓子を掴んで口に運ぶ。

 

「ん、アルフさんはカルマ値が善寄りだからね。前デミウルゴスの牧場の事説明されたとき怒りはしなかったけど不快って思ってるのが顔に出てたし、話しても大丈夫だと思うけど王城でのあの怒りようを見たらね・・・・・・」

 

そう言いながら王城での事を思い出す。

八本指のしている事に怒り、その感情が表情が顔に出ていた、その表情は怒れる魔王を連想させるほど怒気に満ちていた。

 

「そう言えばさ。今回の食事の時もアインズさんが羨ましそうに俺達の食事眺めてたんだけど、アンデッドの食事不要の特性どうにかならないかな。一緒に食事しながらワイワイ話したい」

 

「そうね、確かに。こっちの世界は食が豊富だもんね、ナザリックの食事はうまいし、この世界の料理も美味しいものが多いからなぁ」

 

「それでさ、俺たちでなんとか出来ないかな?アイテム使って」

 

「あんたにしては良いこと考えるじゃん。でもアンデッドの食事不要を無効にする装備となると神級(ゴッツ)は必要だしね。後はデータクリスタルか、宝物殿にはその手のデータは無かったはずだし、出ても不要だから売ったりしてたから・・・・・・」

 

「それならアルフさんはどう?」

 

「そうね、あの子ゲットしたクリスタル売らずに全部持ってるって言ってたから有るかも。それに錬金とマリアちゃんの彫金が使えるから器はなんとかなる。アルフさんが任務終えたら相談してみるわ」

 

ぶくぶく茶釜はそう言いながら皿に手を伸ばし、菓子を掴んでそのまま咀嚼した。

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