セバスからの説明を聞き、アルフは顎にてを当てて考えていた。
セバスの話ではボロボロにされたあの娘を袋に詰めて神殿に行こうとしていたらしい男を怪しく思い、代わりに連れていくと言ったがその男は「そんなことをしたら自分が殺される」と言い、セバスは逃げる資金に白金貨十枚を渡したそうだ。
その話のなかでアルフが引っ掛かったのは、セバスが助けた娘が八本指が運営していると思われる娼館で働かされていた、と言う点だ。
「セバス、話してくれてありがとう。助けた人が近くにいた方がいいと思うからあの子のそばにいてあげて」
「では、失礼いたします」
セバスはそう言うと一礼して客間へと向かっていった。
「ソリュシャン、そこにいるんでしょ?」
「お気付きでしたか」
アルフの言葉に、背後から答える声がし、振り返るとソリュシャンがいた。
「私を誤魔化すなら匂いと音も遮断しないと。それより、あの娘は?」
「はい。言われた通りに。そろそろ睡眠系毒の効果が切れて目覚める頃です」
「ありがとう。少し気になることがあるからここに泊まらせてもらうから。空いている客間に案内してもらえるかな?」
「畏まりました」
ソリュシャンに案内された部屋のベッドに座り、膝に乗せたゲオルギウスを撫でながら先程の続きを考える。
セバスが助けた女性、王都の裏社会を牛耳っていると言う八本指が運営していると思われる娼館で働かされていた。
物語だとこういった所から人を助けると、その組織がいちゃもんを付けてくるときがある。今まで見聞きした感じだとほぼ確実に何かしてくる。
もしもの時はこの手で潰せば問題ないだろう。
アルフがセバス達が使っている屋敷に泊まると決めたのと同時刻。
空が茜色から夜の色にかわる頃、アインズはモモンとしてペロロンチーノと共に王都に来ていた。とくに行くところもなく土地勘も無いため、アルフの店に来たのだが・・・・・・。
「何あれ・・・・・・」
ペロロンチーノは率直な感想を述べる。
アルフの店には明かりが無いにも関わらず、建物の前には豪華な服を着た人々が花束や指輪、ネックレス等のアクセサリーを待って群がっている。
「アルフさんのファン、ですかね」
そんな状況を見ていると背後から肩をつつかれ、振り返るとそこにはぶくぶく茶釜がいた。
「茶釜さん、何でこんなところに?表出てきて大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、ここなら視線は店の方にいくから」
確かにときどき通る通行人は店の前に集まっている人達に視線を向け、こちらには見向きもしない。
「じゃあついてきて」
ぶくぶく茶釜の案内で狭い路地を進み、店の裏手へまわり、裏口から建物へと入った。
リビングにはクレマンティーヌがおり、ソファーに寝転がって暇そうにしている。
アインズは魔法で作っていた鎧を消し、何時ものローブ姿になり、リビングにある椅子に腰かける。
ぶくぶく茶釜とペロロンチーノも椅子に座った。
「そう言えば、店の前にいるあの人達は何ですか?アルフさんは今どこに?」
「あー、あれはアルフさんに求婚したり告白したり、取り引きしたい貴族達の集よ。で、さっきアルフさんから連絡があったけど、心配事があるからしばらくセバスの所に泊まるって」
アインズの質問に答えながら、ぶくぶく茶釜はテーブルにグニャリと上半身を乗せる。
「心配事?」
「何でもセバスがボロボロにされた女性を助けたんだけど、その事で八本指って言う犯罪組織がちょっかいかけてくるかもって」
「俺たちも手伝った方が良いかな」
「アルフさんなら大丈夫でしょ、それより相手の方が心配かな。あの子ああ見えて容赦ない所あるから」
「ですよねー」
ぶくぶく茶釜の言葉で以前あった事を思い出す。
アルフがアインズ・ウール・ゴウンに所属して、レベルが100になってしばらくたった頃、あの人は『元いたギルドを潰してきます』といって、ギルドに夜襲をかけたことがある。
元々所属人数が十数人の小さなギルドだったが、アルフによって完全に潰されていた。
後日、その時の戦闘映像をみたウルベルト、るし⭐ふぁー、タブラ等の中二病組がさらに興味をもち、積極的にクエストに誘っていたのも良い思い出だ。
思えばあの人達が馴染みやすくしたのかもしれない。
「もしあれがこの世界で再現された大惨事だよなー」
ペロロンチーノの言葉に皆で頷く。
「なに、あーちゃん何かやらかしたことでもあるの?」
クレマンティーヌがソファーから起き上がり、興味深そうな顔でこちらを見ている。
「あの時は凄かったなぁ。気になるなら大図書館で探してみると良いよ、確かあそこにあるはずだから」
「え~、今持ってないの?」
ペロロンチーノの言葉にクレマンティーヌが文句を言う。
やはり、こう親しげな方が気が楽だ。
こうして夜が更けていく。