オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第79話

王都リ・エスティーゼ 某所 11:30

 

人目のつかない屋根の上、そこには二つの人影があった。片方はデミウルゴス、もう片方はシャドウデーモンだ。

 

『デミウルゴス様、指示されたモノの調査が終わりました』

 

そう言いながらシャドウデーモンは紙の束を渡し、デミウルゴスはそれをパラパラとめくり、満足げに頷く。

 

「ありがとう、では本来の任務に戻っていいですよ」

 

『はっ』

 

シャドウデーモンは一礼し、影に溶けるように姿を消した。

 

「あとはアウラだけですか」

 

そう言いながらアウラが調査を行っている区画に目をやると、ちょうどアウラが屋根の上を跳ねてこちらにやって来るのが見えた。

 

 

 

「デミウルゴス、こっちは調べ終わったよ」

 

「ありがとうございます。これであらかた調べ終わりましたね」

 

「そう言えばさぁ、勝手にあんなことやって良かったの?アルフィリア様自ら魔力を込めたアイテムを持っていたとはいえ、至高の御方の指示なく人間の前に現れて。他の人間に知られたらどうするの」

 

「その点は問題ありませんよ。彼女の知略は私やアルベドに匹敵しますし、彼女は我々が有益であるかぎり裏切ることは無いでしょう。それに、いろいろ情報ももらいましたしね」

 

「デミウルゴスがそう言うならいいけど。それよりさ、こんな人間の組織の情報なんてなんに使うの?」

 

「それは内緒です。さて、これからあの人間達がどうなるか楽しみですね」

 

デミウルゴスは怪しげな笑みを浮かべ、目の前にある八本指の拠点を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気晴らしの食べ歩きを終えて店に戻ってリビングにいってみると、アインズは椅子に座って本を読み、ペロロンチーノは吊るされているぶくぶく茶釜を野菜スティックでつついていた。

 

「ほーら姉ちゃん、餌ですよー」

 

野菜スティックはぶくぶく茶釜の体にめり込むだけでかじる様子はない。

ペロロンチーノの気分は鳥篭の鳥にエサを与えている感じだろうか、今まで虐げられてきた事をここではらそうとしているのも理由としてはあるのだろうが・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・小僧、ただで済むと思うなよ」

 

 

 

ぶくぶく茶釜が低音でそう言い、ペロロンチーノの体が震え始めた。

 

「・・・・・茶釜ちゃん、あんな声も出せたんだ。一瞬チビりそうになった」

 

私もクレマンティーヌと同様、ぶくぶく茶釜の声に気圧されチビりそうになっていた。

 

「あ、アルフさんおかえりなさい」

 

「うん、ただいま・・・・・・」

 

声の高さはいつもと同じだが、怒気が混ざっているのが感じ取れる。

 

「早速で悪いんだけど、これ解いてくれるかな」

 

「は、はい!」

 

「アルフさんちょっと待って!」

 

ペロロンチーノは逃げ出そうと駆け出したが、それより早く開放されたぶくぶく茶釜はペロロンチーノの頭を掴み、床に叩きつけた。

 

「ぐっ・・・・・アルフさん助け、痛ダダダァ!割れる!砕ける!」

 

ギリギリと頭を締め上げ、ミシミシと音がなる。

 

「大丈夫、死ぬ前にポーション使って何度も何度も同じこと繰り返してあげるから」

 

「お姉様、やめっ、ギヤァァァァ‼」

 

こうして、調子にのったペロロンチーノはぶくぶく茶釜による制裁を受けることになった。

 

 

そのまま平穏に今日が過ぎるのかと思ったのだが15時頃にソリュシャンからのメッセージが入った。

 

 

 

 

『アルフィリア様、少々御時間よろしいでしょうか』

 

「ソリュシャン、どうしたの?」

 

『アルフィリア様が保護されると言った人間が八本指に拐われました』

 

「・・・・・・それ、どういう事?貴女とセバスは何をしてたの?」

 

アルフの声には怒気と苛立ちが混ざり、ソリュシャンは息をのんだ。

 

『そ、その。アインズ様の命で我々が王都を去るにあたり、付き合いのあった商人や組合の人間達に挨拶をしに行ったのですが思いの外時間をとられてしまい、その間に拐われてしまったようです』

 

社会人として挨拶に行くのは間違いではないが、見張りや護衛はつけなかったらしい。その辺りまだ経験不足なのだろう。

 

「それで、相手からの要求は?」

 

『指定された場所へ時間内に来るよう置き手紙がありました』

 

それからソリュシャンから場所と時間を聞き、自分も出向く旨を伝えてメッセージを切った。

 

 

 

「あの、アルフさん。どうかしましたか?」

 

アインズが心配そうにこちらを見ている、ぶくぶく茶釜も同じような感じだ。今の心情が声や表情に出ていたらしい。

ペロロンチーノはリビングの隅で気絶している。

 

「セバスが助けた娘が拐われました。それでアインズさん、ナザリックを動かしていいですか?」

 

「デミウルゴス達の邪魔にならない範囲でなら構わないですが」

 

「ありがとうございます。クレマンティーヌ、この装備に着替えておいて」

 

そう言いながら、アイテムボックスから無限の背負い袋を一つ取り出し、テーブルの上に置いた。

クレマンティーヌは袋の口を開き、中をのぞきこむ。

 

「ん、何。私の新しい防具?」

 

「いや、私のお下がりの間に合わせ。このあと八本指相手に戦争するから、その格好で行くよりはいいでしょ?私も準備があるからまた後で」

 

そう言うと、アルフはリビングを出て寝室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、あの感じ前にもあったなぁ」

 

「ですね。八本指が悪いとは言え、怒ったアルフさんの相手はかわいそうですね」

 

「それより、クレマンティーヌは何やってんのさ」

 

視線をクレマンティーヌに移すと服を脱いで下着姿になり、防具に着替えようとしている。

 

「何って、普通に着替えだけど?」

 

「それはわかるけどさ、一応ここには男が二人ほどいるんだからアルフさんと一緒に寝室に行って着替えようよ」

 

男二人に目をやるとアインズはそっぽを向き紳士的な対応をしているが、愚弟は床を這ってクレマンティーヌに近づこうとしているので踏んづけておく。

 

「前居た所だと任務の都合上男共の前で着替える事もあったし、いまさら恥じらいとかないなぁ」

 

クレマンティーヌがそれでいいなら問題ないか、とりあえず足の下で抜け出そうともがいている愚弟は踏み抜いておいた。




オーバーロード二期製作決定!!
初っぱな新婚ごっこが見れるのでしょうか。
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