オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第81話

八本指が指定した時間の少し前、指定された場所に向かうため、アルフとセバスは不可知化したクレマンティーヌ、ソリュシャン、ゲオルギウスを頭に乗せたアウラを連れて路地を歩いていた。

 

今は夜である、アルフは耳と尻尾を隠すためフード付きの黒いロングコートを着込み、動きやすくするためいつものロングスカートからズボンにはきかえている。

 

 

今夜、八本指の拠点に行くことをラキュース達にメッセージを使って経緯と共に知らせたところ、クライム達を向かわせた所と被っていたため、ついでに援護して欲しいと頼まれ、断る理由はないので了承した。

 

「しかし、アルフィリア様までこられなくても良かったのではないでしょうか?人間の組織を潰すのであれば我々だけで」

 

ソリュシャンの言うことはもっともだ。

 

「ソリュシャン、相手は私とセバスを名指しで呼び出した。もしも私が行かなかった場合、最悪ツアレが殺される可能性がある」

 

「ですが、アルフィリア様にこれ以上不快な思いは」

 

「ソリュシャン、不快な思いはもうしている。八本指のせいであいつらの事を思い出したよ・・・・・・」

 

ソリュシャンはアルフの表情を見て息を飲んだ。その表情は冷たく、見ているだけで寒気が襲ってくるようだったが次の瞬間には普段の表情に戻っていた。

 

「早く行こう。クライム達が待ってる」

 

そう言うと、アルフは歩を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地を進み、指定され場所の近くに隠れているクライム

とその隣に見知らぬ人物がいた、スキルで職業を見ると盗賊とある。

耳をすますと、少し離れたところから複数の呼吸音と布が摩れる音、カチャカチャと鎧の音も聞こえてくる。多分クライム達の仲間だろう。

 

「ラグナライト様、アインドラ様から話は聞いております」

 

「貴女が噂の。微力ながら手伝わせてほしい」

 

「助かります、それで状況は?」

 

「それが・・・・・・ここには八本指最強と言われる六腕の内、五人が揃っていますが・・・・・・倒せますか?」

 

クライムの質問に盗賊が眉をひそめる。その気持ちはクライムにも理解できた。六腕はアダマンタイト級冒険者に匹敵する強さを持つ、それを五人相手にして勝てるはずがないと考えているのだろう。

 

「昨日のサキュロントと同等なら10人居ようが問題ありません」

 

それを聞いた盗賊はクライムを少し離れた所につれていき、耳打ちする。

 

「・・・・・・班長、あの人物はもしかして狂人ですか?一応いろいろ噂を聞いていますが、五人相手となると・・・・・・」

 

アダマンタイト級冒険者の強さを知っているなら当然の反応だ。しかし、アルフの強さを身を持って知っているクライムにはあの言葉が真実だとわかる。

 

「違うんです。それくらいあの方は強いんです。ガゼフ様が自ら、自分と同等の力量を持った者が束になっても敵わないと、そう言っていました」

 

「えっ!?戦士長がそんなことを!?本当だとするとそれはすごい・・・・・・」

 

「それで、これからのことですが。ラグナライト様とセバス様にも六腕の話をしていただけますか?」

 

 

 

 

 

 

 

二人から情報を聞き、作戦をたてた結果。アルフとセバスが八本指の気を引き、クライムと盗賊で手薄になった建物に侵入して拐われたツアレを救出する事となった。

 

そして今、アルフとセバスは訓練所を思わせるような広々とした場所で三十人程の男に囲まれている。

 

そこに待ち構えていた複数の男達、若干名の女達がニヤニヤとした品のない笑みを浮かべている。

その中に二人に聞いた六腕がいた。

 

不死王 デイバーノック

踊る三日月刀(シミター) エドストレーム

千殺 マルムヴィスト

空間斬 ペシュリアン

 

レベルはたいした事はないが、気になるのは空間斬の二つ名を持つ男。実際空間を両断するスキルや魔法は存在しているが、あれがそこまでの領域に至っているとは思えない。

 

そんなことを考えていると、六腕から声が上がる。

 

「なぁ、爺さん。あの女そんなに大事か?」

 

ちらりと建物のある場所へ視線を向ける。それは無意識の行動なのだろう。

アルフは視線の先を〈千里眼(クレアボヤンス)〉で確認すると、そこにはツアレが居た。二人から聞いた情報では違う場所に捕らわれているはずだ。

 

「そこの女を全裸に剥いてこちらに引き渡すなら今すぐ解放してやる。そこの女は六腕の一人サキュロントを倒したからな、ズタボロになるまで凌辱してから殺す。それをあそこにいるお偉いさんに見てもらわないとな」

 

そう言いながら建物を見た。

 

要約すると、警備部の幹部がやられてメンツが潰れた。なら倒したやつを力と数でねじ伏せて信用を取り戻す、と言ったところだろう。

 

こういった手合いは面倒だ。ユグドラシルでギルド潰しをしたあと、メンツだ何だと数週間付きまとわれたことがあった。

 

「貴方達の言いたいことはそれだけですか?〈次元立方体(ディメンション・キューブ)〉」

 

アルフは魔法を発動し、半透明の立方体の中に六腕を隔離した。

 

「なっ、何だこれは!?」

 

六腕の四人は立方体の内側から攻撃するがその攻撃は通らず、金属を打ち合わせる音だけがあたりに響く。

 

「答える義理はない。お前達はそこで部下達がたった一つの魔法で全滅するさまを見ていろ」

 

アルフはそう言い終えると息を思いきり吸い込み、ゆっくりと吐き出す。その息は白く、真冬のそれを思い起こさせ。一歩踏み出すとペキペキと音をたて地面が凍り、霜が降りる。

 

 

 

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)

 

 

 

魔法が発動した瞬間大気の水分が氷結し、時間以外の全てが停止した。

 

アルフ達を取り囲んでいた下っ端達は氷像と化し、キューブの内に居た六腕は呆然とその光景を眺めていた。




設定
次元立方体(ディメンション・キューブ)
一定時間範囲内のモノを次元の壁で隔離し、空間攻撃系の魔法、スキルで簡単に解除できる。
主にモンスターが大量に出てきたときに分断するために使われる。

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)
水氷系の範囲即死魔法。即死を防げても凍結による行動阻害、被ダメージ増等のデバフをうける。
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