冒険者モモンがイビルアイを助けたスクロールを見てから少し時間が経過し、部屋の中の冒険者の人数が増えていく。
そして、冒険者はモモンの姿を見つけては次から次へと集まり、挨拶をしていく。
その光景は、有名人を取り囲むファンといった感じだろうか?
「にしても、モモンさんは人気ですね」
「それをいったらアルフさんも人気でしょ。見ましたよ、求婚や告白をしようと店の前に集まる貴族の群れ」
「うん、私も見た」
「あれは違うような気が・・・・・・・」
そんなことを話していると、見知った人物が話しかけてきた。
「おお、ティア殿、ラグナライト殿、それにペロロンチーノ殿か」
「あ、ども。ストロノーフさん」
「ラグナライト殿とペロロンチーノ殿がここにいると言うことはゴウン殿もここにおられるのか?」
「あー、アインズさんはカルネ村の近くに居を構えてそこに引き込もって魔法の研究をしてます」
うん、引き込もってはいないけど嘘は言っていない。
「そうか、カルネ村での礼を改めてしたいと思っていたのだが。それにしてもモモン殿の人気はすごいな」
「やっぱりそう思います?」
「ああ、実はモモン殿に挨拶をしたいと思っていたのだが、あの様子では無理そうだな。また次の機会にしよう、俺は王の元に戻る。では後程作戦会議で」
そう言うと、ガゼフは広間の奥へと歩を進めた。
その後、広間には王国にいるほぼ全ての冒険者がそろい、対策会議がひらかれた。
会議の内容はヤルダバオトのおおよその難度、何をしに王都に現れたか、どうやって討伐、ないし撃退する方法が話し合われた。
結論から言うと下級冒険者はゲヘナの炎から悪魔が出ないよう食い止め、中級と上級の冒険者は中心近くの悪魔を排除しつつ生き残っている人間の救出。
蒼の薔薇と漆黒のチームは二手に別れヤルダバオトの近くに侍る側近を引き付け、モモン、ペロロンチーノ、アルフで3対1の状況に持ち込み討伐ないし撃退をする事となった。
そして、アルフはティアと共に遊撃手としてゲヘナ内の建物の上にいるのだが。
「・・・・何でペロロンチーノさんがここに?」
「あー。告白する前に恋が終わって寂しいの」
「その気持ちわかる。私も告白前に何度も恋が終わってるから」
ペロロンチーノとティアがぎゅっと握手を交わしている。
「・・・・・・仲が良いのは喜ばしいんだけど、続きはこの騒動が終わってからにしてね」
「ん。それより、アルフィリア今武器持ってないけど大丈夫?」
「大丈夫、これがあるから」
そう言いながらアルフはポケットからアダマンタイトのインゴットを取り出す。
〈
魔法の効果がインゴットに現れグニャリと変形し、剣、斧、戦鎚、槍と次々形を変えていく。
「アルフィリア本当に万能、私達必要ない?」
「そうでもないよ。アルフさんは近接と投擲武器なら全部使いこなせるけど、弓やボウガンみたいな射撃武器は全く使えないんだ」
「なんか意外、何でも出来る完璧超人かと」
そう言いながら二人でこちらを見ている。
「う、全然使えなくないもん!」
ペロロンチーノの言っていることは確かに事実だ。だがそれはとっている職業が射撃武器を装備出来ないだけで、命中精度と攻撃力ががた落ちするが弓に細工をすれば使えなくはない・・・・・・。
こちらの心中を知ってか知らずか、二人してニヤニヤとしながらこちらを見ている。
「いや~、眼福ですね。可愛い女の子が頬を赤くしながら意地をはる姿は。姉ちゃんの教育の賜物だなぁ、完全に女の子です」
「同意」
そう言いながら二人して親指を立てている。
「うぐ・・・・・・も、もう知らないです!先に行きますよ!」
アルフは屋根の上を跳び跳ねて行ってしまった。
王都 住宅街
「クソッ!いったいどうなってやがる!」
そう言いながら目の前の悪魔、小型のガーゴイルに剣を振り下ろす。
ガーゴイルは両断され、地に落ちて息絶えた。
「はぁ・・・・こいつで18体目か、何が起きてるんだ?」
振り向くと、同じく悪魔を倒した
俺達3人は八本指の拠点制圧で捕まえ損ねた者がいた場合の保険として雇われ、この辺りを見回りしていたのだが突如悪魔が現れ人を殺したり拐うのを目撃し、倒してまわり今現在に至る。
「知るか。たぶんあの炎の壁に関係あるんじゃないか?それよりあと何匹相手に出来る?」
野伏はそう言いながら腰にさげていた矢筒を掲げる。筒には矢が2本しか入っていない。
「俺は見ての通り、あと一匹が限界だ」
「私もあと一匹しか倒せない。もう魔力が残り少ない」
「俺は良くて三匹、悪ければ一匹だ。まぁこのまま悪魔どもの強さが変わらなければの話だが」
そう言いながら右手に持った剣を見る。
剣は所々刃こぼれし、ヒビが入っている所もある。もし先ほど倒した悪魔以上のモノが出てくれば全滅は確実だろう。
「おい、まずいぞ。何かでかいのが近づいてくる、しかも早い!」
野伏の顔が険しいものに変わり、一点を見つめながら弓矢を構える。
警告から数秒、通りの脇道から人間より一回りデカイモノが姿を現した。
「何だ、あれは・・・・」
その者の肌はどす黒く、背には蝙蝠のような翼、頭部には左右非対称のネジくれた角が二本生えている。
見るからに先程のガーゴイルより上位の存在だ、何故こんな奴がこんな所に・・・・・・。
『オオオオオォォオォォ!』
悪魔が咆哮し、ガーゴイルが集まってきている。
「・・・・・・ここまでか」
諦めたその時、後方から鈍く光る何かが飛来し、悪魔の眉間を貫いた。
貫いた物は、見た感じ槍ではあるが柄と石突がアダマンタイトで出来ている。おそらく刃もアダマンタイトだろう、だが有名、無名を含め冒険者で総アダマンタイトの槍を使う者に心当たりがない。
そう考えていると、俺達と悪魔の間に白銀の光が舞い降りた。
「あんたは・・・・・・」
服装は何時もと違うが見覚えのある顔だ。
最近蒼の薔薇に入ったアルフィリア・ルナ・ラグナライト。彼女は淡く光る純白の衣を身に纏い、白銀の軽鎧を身に付けているその姿は戦女神を彷彿とさせる。
「もう大丈夫です。ペロロンチーノさん!」
『あいよ!』
その直後、後方から無数の矢が飛来、この場全てのガーゴイルの眉間を撃ち抜いた。
遅くなって申し訳ないです。
86話の誤字の指摘ありがとうございます。
錬金術系統の創作魔法、金属素材を様々な武器に作り変えられる。
変化回数には制限があり、使用する素材のランクによって変わる。アダマンタイトは50回、七色鉱になると3桁後半になる。