オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第9話

ナザリック地下大墳墓・上空

 

そこには、二つの人影が浮いていた。

片方は漆黒の鎧を着た骸骨。もう片方は蛙のような顔をし、背に蝙蝠のような翼を生やした悪魔だ。

 

「世界征服なんて面白いかも知れないな」

 

モモンガはそう呟き、空に浮かぶ星々を見続ける。

 

「モモンガ様、アルフィリア様について御聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」

 

「許可する、聞きたいこととは何だ?」

 

「はっ。アルフィリア様は、アインズ・ウール・ゴウンに所属していながら、一時期至高の方々に深く関わるのを避けていた、と数名のシモベから聞いております」

 

モモンガは顎に手を当て、どう話したものかと思案する。考えすぎかも知れないが、デミウルゴスはアルフが裏切るのでは、と考えて聞いているのだろう。

 

「彼女は昔、心に傷を負っていてな。今は克服できてはいるが、当時は皆で少し心配したものだ」

 

「その心の傷、というのは?」

 

「うむ、これはたっち・みーさんから聞いた話だが。

彼女は以前所属していた組織で親しくし、仲間と思っていた者達に裏切られ、殺されそうになっていたところ、たっち・みーさんが助けたそうだ。

詳しい話は彼女から聞くと良い、事情は話しておこう。

朝になった辺りに聞きに行くと良いだろう」

 

「質問に答えていただき、ありがとうございます」

 

そう告げると、デミウルゴスは一礼した。

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓・第九層 アルフの自室

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

アルフはメッセージを切り、天井を見上げて息をついた。

 

「アレの話をするのか・・・・・」

 

今は克服しているとはいえ、心の傷だ。

モモンガの話では、デミウルゴスは自分がモモンガ達を裏切るのでは、と考えているような感じ。といっていたが、トラウマを話しただけで信頼を得られるのだろうかと考えるが、それだけではダメだと思う。

深く考えすぎても仕方がない。嘘偽りなく、このギルドとギルドメンバーに対して思っていることを話そう。

 

そう結論づけ、机に視線を戻す。

 

そこには複数のアイテムが転がっている。

 

蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)万能の霊薬(エリクシル)、ヒヒイロカネ、賢者の石。

 

これらはアルフが取っている錬金術師のスキルを使い、創られた物。どれも掃いて捨てる程所持しているが、ちゃんと錬金術が使えるか試しに創ったものだ。

 

デミウルゴスはあと少しでこちらに来るらしい。

 

椅子から立ち上り、その場で伸びをする。

ぱきぱきと固まった関節がなる。

 

「説得できれば良いな。マリアはそこで待機してて」

 

「わかりました」

 

マリアの膝の上では黒龍が寝息を立てている。

 

デミウルゴスを出迎えるために錬金部屋を出て、部屋に置いてあるソファーに腰掛けたその時、

 

コンコン

 

と扉をノックする音が聞こえた。

 

「どうぞ」

 

入室を許可するとデミウルゴスが部屋に入ってきた。

 

「失礼致します」

 

一礼してソファーの横に立つ。

 

「どうぞ、座って」

 

デミウルゴスに座るよう促すと、素直にソファーに座った。

 

「モモンガさんから聞いてるよ。僕のトラウマとギルドに対する思いについて聞きたい、ということであってる?」

 

「はい」

 

デミウルゴスの回答を聞き、自分の心の傷に関して語る、他の人にとってはとるに足らないことかも知れないが、自分にとっては傷となった出来ごとを。

 

 

 

僕は以前、違うギルドに所属していた。

そのギルドの長は人間種、亜人種、異形種分け隔てなく集め、弱い者達に戦いや、冒険のいろはを教えていた。

 

だけど、しばらくするとその長は忙しくなり、ギルドを後任に任せ、引退した。

 

思えばその時から変わっていったのかもしれない。

後任に変わってからギルドから異形種が減り、やがて居なくなった。

その時は他の所に移ったのだろうと思っていたけどそうじゃなかった。

 

ある日偶然、亜人種から異形種に変わったことで真実を知った。後任は異形種を中心に狩る組織と繋がっていて、仲間だった異形種を差し出していたんだ。

 

異形種に変わったことで、僕も標的になり。

ギルドを外され、信頼していた仲間達に追いかけ回された。

 

転移魔法を阻害され、MPも残りわずか。

そして、捕まってしまった。

 

かつて仲間と思っていた三人、そいつらに僕は斬られて、刺されて、焼かれて、抉られて・・・。

そいつらはわざと攻撃力の低い武器を、階位の低い魔法を使っていた。

 

その時聞いたんだ「どうしてこんな酷いことをするんだ」って。

そしたら奴らは言ったんだ「異形種を狩って何が悪い」「強い職業につくのに必要なことだから、最後に手伝ってくれよ」「異形種になったお前が悪い」・・・。

 

あと少しで殺されるって時に、たっち・みーさんが助けてくれたんだ。

 

「その後でモモンガさん達のギルドに入ったけど、その時の事が心の傷になっていた。

こちらが信頼していても裏切られるのではないかと」

 

「・・・・・・」

 

デミウルゴスはこちらを見つめ、静かに聞いている。

 

「それは杞憂だった、皆は優しくしてくれた。

でも、頭ではもう大丈夫だ、この人達は裏切らない。とわかっていても、心が拒絶していた。

それから時間はかかったけど、少しづつ心の傷を癒し。克服できた。

初めてギルドメンバー全員でクエストに挑んだときはとても楽しかった」

 

思い出しながら天井を見上げ、深呼吸する。

視線を戻し、続きを言葉にする。

 

「でも、そんな楽しい時間も終わりを迎えた。

一人、また一人と忙しくなり、ギルドから去っていった。その時後悔したんだ、もっと早くトラウマを克服できていたら、楽しい時間をもっと多く過ごせたはずだ、と」

 

デミウルゴスの眼を見つめ、自分の気持ちを正直に告げる。

 

「だからこそ、今ここにいるモモンガさん、ぶくぶく茶釜さん、ペロロンチーノさん、仲間達が造り出し、愛したシモベ達と苦楽を共にしたいと思っている、すぐに信頼してくれとは言わない」

 

話を聞き終え、デミウルゴスはソファーを立ち跪いた。

 

「心の傷を探るようなご無礼、お許しください」

 

「構わないよ。デミウルゴスはモモンガさん達が心配だったんでしょ、もし僕が裏切ったらって。

僕はモモンガさん達を裏切らないよ。裏切られる痛みはよく知ってるから、モモンガさん達には同じ思いをしてほしくない」

 

「このデミウルゴス、貴女様を四二人目の至高の御方として忠誠を捧げます」

 

「ありがとう、デミウルゴス」

 

優しくそう言い、立つように促した。




デミウルゴスがちょろい気がしますが気にしない。
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