オーバーロード 月下の神狼   作:霜月 龍幻

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第91話

ヤルダバオトが飛び去った空を朝日が照らす中、アルフはゲオルギウスの前足に掴まりゆっくりと降りていく。

 

下方からはモモンや他の冒険者、王都兵達の勝ちどきの声が響き渡る。

 

アルフは左手でヘルムを脱ぎ、ふるふると頭を左右に動かし大きく息を吐く。

夜明けの風が頬と髪を撫で、火照った身体から熱を奪っていく。

 

「この後はこの騒動の後始末・・・・・その後はアレの片付けか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったいこの王都はどうなっている!」

 

会議室として使っている広間に男の怒鳴り声とテーブルを叩く音が響き渡る。

 

事の発端は会議室の入り口で息を切らせている六腕の部下、この部下が持ってきた情報、一人の女により六腕が全滅したと言うものだ。

更には悪魔の出現により各部門に多大な被害が出ているらしい。

 

この場には困惑と憤りが入り雑じった空気が漂っている

 

 

その時、会議室の扉をぶち抜いて何か大きな物が放り込まれた。

 

それは見知った人物、全滅した六腕の部門長ゼロだった。

 

「・・・・・ゼ、ロ?」

 

投げ込まれたゼロに気をとられるなか、壊れた扉から3つの人影が入ってきた。

 

「雰囲気作りでぶち抜いたけど、普通に入れば良かった・・・・・・」

 

先頭にいる女はそう言いながら面倒そうに瓦礫を踏みつけながら歩いてくる。

 

「貴方達が八本指の幹部、でよろしいですか?」

 

女は微笑みながら問いかけて来るが、その瞳には寒気がするほどの怒気が含まれている。

 

「あ、あの女です!あの女が六腕を!」

 

「お前は蒼の薔薇の!」

 

「答えてくれないのか、まぁ良いや〈集団標的・支配〉」

 

その言葉とともに思考は消え、操り人形と化した。

 

 

 

 

 

「さて、これからどうしたものか・・・・・・」

 

こいつらを殴っても憂さ晴らしにはならないだろうし、こうして捕らえては見たもののこれといって何をするかは決まっていない。

 

「あ、そう言えば。マーレ、あんたデミウルゴスの頼みでこいつらの仲間拐ったみたいだけど、そいつどうしたの?」

 

「あの人はデミウルゴスさんの指示とぶくぶく茶釜様のアドバイスで恐怖公と餓食狐蟲王とで内と外から」

 

「す、ストップ!聞いたアタシがバカだった・・・・・・」

 

姉からの質問にマーレがおどおどしながら答えるが、その答えにアウラは顔を歪めて自分の身体をさする仕草をする。

 

今思うと、うちのギルドはとんでもない生物兵器を作っていたようだ。

 

そんなことを考えていると

 

「そうだ、アルフィリア様にお聞きしたいことがあったんだ。質問してもよろしいですか?」

 

と、こちらの顔を見上げている。

 

「いいよ」

 

「ありがとうございます。デミウルゴスが言っていたのですが、今回のこの作戦についてアルフィリア様は説明も無しに全てを知っていたのですか?」

 

「え?あ、うん」

 

実際はそんなことはない、デミウルゴスの企みは何となく察してはいるが全て知っているかと言うとそうではない。

罪もない人も捕まえたのも、用途は特に思い付かない。

 

「やっぱりアルフィリア様もアインズ様のように頭が良いんですね」

 

「う、うん。そうだと良いな」

 

アウラの透き通るような純粋な眼差しが突き刺さる・・・・。

 

「そ、そうだ。この人間達はデミウルゴスに任せるから、自由に使って良いって伝えておいて」

 

それが良い、我ながら良い案だ。アインズも同じくデミウルゴスに丸投げ気味だし、別に問題は無いよね。

 

「わかりました。この後アルフィリア様はどうするんですか?」

 

「そうだなぁ。王都の行方不明者の捜索に加わるか、今回の騒動で亡くなった人達の埋葬を手伝うことになるかな」

 

こうして王都での騒動は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

同時刻 スレイン法国某所 会議室

 

その部屋は白く、2m×10mほどの同色の長机が中央に配置されており、同じデザインの椅子が8脚用意され、その全てが埋まっている。

 

椅子に座っているのは、議長席に最高神官長が座り、その他の席には各聖典の神官長、そして漆黒聖典の番外席次が座っている。

 

「さて、朝早く皆に集まってもらったのは他でもない。数日前に起こった、リ・エスティーゼ王国のとある村で爆発があった件だ。漆黒聖典による調査が終わったので報告する」

 

その言葉に一瞬場がざわついた。

この反応も仕方ない、他国とはいえ村が1つ消し飛んだのだ、それも恐らく人為的に。

 

「まずはこれを見てもらいたい」

 

最高神官長がそう言い手を2度叩くと、会議室の入口から長さ50cmほどある黒い鏃のような板を持った神官が入ってきた。

神官は板を最高神官長の前に置くと、会議室を退出した。

 

「これは、爆心地である村の近くで発見された物だ」

 

吸い込まれそうな黒い色をした板には血管のように細かく枝分かれした深紅の線が走り、まるで生きているように淡く光り点滅している。

 

「それは、鱗でしょうか?」

 

「うむ、鑑定によると最高位のドラゴンの物のようだ。

ドワーフですら加工が不可能だそうだ」

 

「評議国の?いや、まさか破滅の竜王カタストロフ・ドラゴンロードですか!?」

 

その言葉に場がざわついた。

無理もない、世界を滅ぼす力をもつ竜が復活したとなれば・・・・・・。

 

「一度はその可能性も考えたが、どうも違うみたいなのだ。

ドラゴンにより滅ぼされた場所では黒粉の原料となる植物が栽培されていたらしい」

 

「と、言うことは人類に仇なす者では無いと?」

 

「その確証は無いが、慎重に調査を進めた方が良いだろう。相手の逆鱗に触れればここもあの村と同じことになりかねない。

調査は継続するが、気になるのはニグンが遭遇した者達の事だ。

陽光聖典を壊滅させ、最高位天使をも屠る力を持つ彼等がもし法国の者が罪もない民を殺したと知れば、我々を悪として滅ぼしに来るかもしれん」

 

「では、もしプレイヤーだとしても接触しない方がよろしいと?」

 

「うむ、法国に悪印象を持っている可能性があるうちはその方が良いだろう。

今後はプレイヤーと思われる者を発見してもしばらくは接触はせず、法国に敵意を持っていないと判明した後接触するものとする」




遅くなって申し訳ありません。
残業とイベント周回が忙しく、なかなか話が思い浮かばず期間が開いてしまいました。

誤字脱字の指摘ありがとうございます。
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