剣姫と白兎の立場を入れ替えたのは間違っているだろうか   作:Hazakura

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第3話 豊饒の女主人 前編

 夕刻。

 本日のダンジョン探索を終え、教会の隠し部屋でアイズは、自分の目を疑っていた。

 ヘスティアから受け取った更新ステイタスの用紙に記された熟練度の成長幅が一言でいうなら、凄かったからだ。うん、ものすごく……。

 

「書き間違えた……?」

「僕がそんなミスを犯すと思っているのかい? 正真正銘、アイズ君のステイタスだよ」

 

 アイズはまじまじと用紙を見つめる。

 今日は確かに頑張った。

 コボルトの群れに遭遇しても一撃ももらうことなく切り抜け、すべて屠った。

 自己最多となるモンスター撃破スコアも記録した。

 しかし、そのことを考慮してもステイタスの伸びがあまりにも不釣り合いだった。

 もちろん、良い意味でーー。

 

「なんで?」

「……」

 

 アイズからぽつり、と言葉がこぼれた。

 下界の子どもたちなら大いに喜ぶであろう。

 別の世界線の白髪の少年なら大はしゃぎして主神を嫉妬させるほどにーー。

 しかし、この時アイズの心には嬉しさより別の感情が支配していた。

 それは純粋に”知りたい”という欲。

 この急上昇したステイタスの理由が解ればもっと強くなれる。

 憧憬に――。

 

 

 ”あの人”にさらに近づける。

 

 

 何か知っているのでは? と神様の方に視線を移した。

 すると何かを感じ取ったのか主神はアイズとの目線をすっと外し、明後日の方に目を向けた。

 お世辞にも上手いとは言えない口笛を吹きながら……。

 

「神様」

「な、なんだい?」

 

 ヘスティアに緊張が走る。

 たった一言。

 呼ばれただけ。

 それによりヘスティアの視線が強制的に戻される。

 けっして、アイズが声を荒げたわけではない。

 声の大きさもいつも通り。

 だが、アイズの言葉には強い意志が篭っていた。

 もといアイズのことを溺愛しているヘスティアに無視をするという選択肢は存在しなかった。

 

「理由が知りたいです」

 

 言葉足らずのセリフ。

 しかし、ヘスティアはもちろんその意味を理解していた。

 アイズの背中に『憧憬一途(リアリス・フレーゼ)』を刻んだときから、いつかは聞かれるとも思っていた。

 だが、ここまでステイタスの成長を促すとはヘスティアもかなり驚いた。

 これは不思議に思われても仕方がない。

 アイズは強くなることを望んでいる。

 そのためには必要なことだということも。

 だが、ここで彼女は悩んだ。

 正直に『スキル』のことを話していいのかどうかを。

 ここでヘスティアが取るべき行動は――。

 

 

  1.正直に話す。

  2.優しい嘘をつく。

  3.少し過激なスキンシップで有耶無耶にする。

 

 

 ヘスティアの脳内に選択肢が浮かぶ。

 ここは、おそらく未来の分岐点だ。

 ヘスティアが選んだ未来はもちろん、

 

 

  1.正直に話す。

  2.優しい嘘をつく。

 →3.少し過激なスキンシップで有耶無耶にする。

 

 

 頭の中で何かを選択する音が聞こえた。

 ヘスティアの視界がより鮮明になる。

 アイズ君をよく見るとステイタスの更新後ということもあって、服を着たばかりだ。

 ぶっちゃけると、ガードがかなり緩い。

 目的遂行のためにもこの雰囲気をあえてぶち壊す。

 そのためには、理想郷という名の谷間へダイブするには今しかない!!

 

「ア~イ~ズ、く~ん!」

 

 いざ、理想郷へ!

 ヘスティアは跳んだーー。

 少しの浮遊感を経て至福の時が訪れた。

 一言で表現するなら安らぎを得たのだ。

 神々も知らない未知の領域に、ヘスティアは遂にたどり着いたのだ。

 でも、それだけでは終わらない。

 

 もっと更なる高みへ――。

 

 頬ずりをすることで理想郷を堪能する。

 

「……んっ!」

 

 アイズから妙に艶かしい声が漏れる。

 醸し出される艶やかさは、性別を超えすべての者を魅了して虜にすること間違い無しであろう。

 現に超越存在の一人が虜にされていた。

 しかし、その時間は長くは続かなかった。

 

「へぶしっ!!!」

 

 今までに体験したことのない衝撃がヘスティアを襲った。

 ヘスティアの意識が徐々に遠くなり、世界が白く染まる。

 直後、この下界で何物よりも美しい光の輝きに包まれると巨大な光の柱が天空に突き刺さったのだった……。

 

 

 後日談。

 主神を失ったアイズは色々あって美少女が大好きな変態のロキ様に拾われた。

 そこで、少年と少女は運命の再開を果たす。

 この二人は後に……。

 

 『世界を救った最後の英雄(ラスト・ヒーロー)

 

 “白髪赤目の少年”と“金髪金眼の少女”による『最強夫婦』の英雄譚として後世の人々に語り継がれたのだったーー。

 

 

 

HAPPY END?

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 だああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 こんな結末をボクは絶ッ対に認めない!

 誰だ!? 女神であるこのボクをHE・N・TA・Iにしたのは!!

 ーーまったく、ボクがアイズ君にセクハラをするわけがない。

 

『なぁ、()()そう思うだろう!?』

 

 先程の選択肢へと戻る。

 

 

  1.正直に話す。

  2.優しい嘘をつく。

  3.少し過激なスキンシップで

    強引に話題を変える。

 

 

 ヘスティアは考察する。

 まず、ここで3の選択肢は論外だ。

 こんなのは変態しか選択しない、と自分を必死で言い聞かせ3を除外する。

 よって、残りは1と2のどちらかとなる。

 アイズのことを想えばこそ――。

 

 ぶっちゃけると、アイズ君が隠し事どうこうなんて、正直な所よく分からない。

 分かりやすい所もあれば行動が読めないこともある。

 もちろん、そこがアイズ君の可愛い所なんだけど……。

 例え隠し事がうまかったとしても例外がある。

 それは、ボクたち超越存在のことだ。

 人類は神々に嘘を付けない。

 レアスキル云々なんて詰問されたら明るみになる可能性も決して低くはない。

 可愛い娘を娯楽に餓えている神々の玩具になんてさせるものか!

 それにベル何某への想いなんちゃらだなんて、絶対に言いたくないっ!!

 ボクはヘスティア、天界では三大処女神(スリートップ)と言われていてね、風紀にはうるさいんだ。

 様々な考えが脳裏を過り、一つの結論へと至る。

 

 『これはアイズ君のためだ!』

 

 

  1.正直に話す。

 →2.優しい嘘をつく。

  3.少し過激なスキンシップで

    強引に話題を変える。

 

 

 強い視線で答えを待っているアイズにヘスティアは己のしてやれることに努める。

 

「今の君は、理由ははっきりしないけど、恐ろしく成長する速度が早い。どこまで続くかはわからないけど、言っちゃえば成長期だ……これはボクの見解に過ぎないけど、君には才能があると思う。冒険者としての器量も素質も、君は兼ねちゃってる」

 

 アイズの現状は果たしてスキルだけに起因しているものなのか。

 発現したスキルだけが、この少女の急激な飛躍の原因なのだろうか。

 一度は死にかけたとはいえ、たった一人でダンジョンへもぐり、着実に成果をあげてきた毎日。

 戦闘に生かす身のこなしや技術はアイズが実践で組み立てていくものだ。

 【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】の有無に関係なく、戦闘の中で判断を下すのはアイズに他ならない。

 それは彼女自身の『力』だ。

 

「……君はきっと強くなる。そして君自身も、今より強くなりたいと望んでいる」

「……はい」

 

 目を逸らさないアイズに、ヘスティアは自分の両手を胸に抱いた。

 心細そうに目を伏せがちにして、心の内を吐露する。

 

「その君の意志は尊重する。応援も手伝いもする、力も貸そう。……だから約束してほしい、無理はしないって。この間のような真似はもうしないと。お願いだから、ボクを一人にしないでくれ」

 

 アイズが5階層へ進出した時もそうだが、特に自分より格上であるミノタウロスを相手に逃げず立ち向かったことには色々と思うところがあった。

 無様でもいい、情けなくてもいい。

 ただ、生きて無事に帰ってきてほしい。

 ヘスティアは強く願っていた。

 

「――――無茶はしません。強くなるために頑張ります。……でも、神様を絶対に一人にはしません」

「アイズ君……」

「……あ、その……心配はかけると思います……ごめんなさい」

 

 アイズには悲願がある。

 目標もある。ダンジョンでは何が起こるか分からない。

 そのことはエイナさんにもきつく言われている。

 ゆえに、彼女は心配をかけないとは誓えなかった。

 ただ、もう一つの誓いは立てられる。

 

 ”無事に帰ると”

 

『神様を絶対に一人にしないと』

 

「……ボクの感動を返してほしい」

 

 アイズの返答を聞き、ヘスティアはその場に項垂れるが心の中は悪い気分ではなかった。

 むしろ、すっきりとしていた。

 アイズは約束してくれたのだ。

 ボクを一人にしないと。

 

 抱きつきたくなる衝動を堪え、ヘスティアはにこっと笑った。

 ややあって本日の夕食へと話題が移る。

 

「アイズ君、今日の夕食はどうしようか」

 

 その後、今日シルさんという人にお世話になったことを聞いた。

 

「アイズ君がお世話になったのなら、ボクからも一言お礼を言わないと」

 

 ヘスティアはクローゼットからコートを取り出して身支度を整える。

 

「それじゃあ、行こうか」

「うん……」

 

 ヘスティアは先程の”約束”と、アイズとの初めての外食という二つの相乗効果にかなりの上機嫌となっていた。

 アイズの腕を取り、隠し部屋を後にする。

 この時、アイズの唇が綻んでいたことは誰も知らない。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 外は夕日が沈み暗くなっており、街には昼とは違う活気に溢れていた。

 魔石灯が灯す明かりは街を一層綺麗に着飾っており、人通りの多い所に進むにつれて笑い声や怒声などの景気のよい声が賑わっている。

 そして、それがより大きく聞こえてくる建物へ足を進ませた。

 

(ここ、だよね……?)

 

 アイズは見覚えのあるカフェテラスを見つけ、その店頭で足を止めた。

 朝に見かけた看板を仰ぐ。

 シルさんが働いている酒場ーー。

 

『豊饒の女主人』

 

 こういった場所にあまり経験のないアイズはどうしたらいいのか分からず、まず入り口から店内をそっと窺ってみた。

 恰幅のいいドワーフの女性、ネコ耳を生やした少女達、客に注文をとる奉仕さん達、店のスタッフがみんな女性だった。

 そのことに少しだけ、ほっとした。店内は明るい雰囲気に包まれており、飛び交う声は笑い声ばかり。

 みんなお酒を飲んで楽しんでいた。

 料理はどれも美味しそう。

 ただ、自分には少し不釣り合いかな? とも思った。

 

「アイズ君、ここかい?」

 

 アイズに続きヘスティアも店の様子を窺った。

 二人が中を覗いていると銀髪の店員さんがこちらに気付き、駆け寄ってきた。

 今朝、お世話になったシルさんだ。

 

「アイズさん! さっそく来てくれたのですね」

「うん」

「隣の方もご一緒ですか?」

 

 アイズはコクリと頷くことでシルさんの質問に答えた。

 その後にヘスティアが口を開く。

 

「ボクはヘスティア。今日はうちのアイズ君が世話になったね。ボクからも礼をいうよ」

「いえ、あまりお気になさらないでください」

 

 シルさんは笑顔で答える。

 

「では、案内しますのでこちらへどうぞ。お客様二名入りまーす!」

 

 シルさんの声に視線が集まり、店の中が一瞬、静かになった。

 店中の人から注目されていることに戸惑うも、二人は笑顔を絶やさないシルさんの後をついて行く。

 ドワーフの女将さんと向き合う感じのカウンター席に案内された。

 

「アンタがシルのお客さんかい? ははっ、隣の女神と揃って可愛い顔してるねぇ!」

「……ありがとう、ございます」

「なんたって、ボクの自慢の娘だからね」

 

 アイズはぺこりと頭を下げた。

 水の入ったグラスを出されたので、喉を潤すためにそれを口元へ運ぶ。

 隣では神様もゴクゴクと景気よく喉の音を鳴らせていた。

 

「シルから聞いたよ。何でもウチの看板娘になってくれるそうじゃないか!」

 

「「!?」」

 

 告げられた言葉に度肝を抜かされる……。

 

 

 

 その結果――。

 水が気管に入り、アイズは思いっきり……そう、これでもかってほど盛大にむせた。

 ただでさえ人との会話を苦手としているのに接客業となると難しいを通り越して無理である。

 隣の神様は『ぶぶっぅっー!!』と盛大に水を吹きだしていた。

 カウンター席の上は神様の分泌液と水でびしょびしょになり、他の店員さんがその後片づけに追われている。

 アイズはハンカチで口元を拭いながら、

 

「……どういうことですか?」

 

 現在アイズの背中をさすっており、元凶である人物(シルさん)を問いただしてみるも……。

 シルさんはくすりと小さく笑うと、イダズラが成功したと言わんばかりの表情で片目をつぶり、舌を突きだした。

 俗にいう小悪魔スマイル、通称――てへぺろ☆である。

 

「こちらがメニューになります。では、ごゆっくりどうぞ」

 

 シルさんはメニュー表を渡すと新たに追加注文の入ったテーブルの方へ駆けて行った。

 

「アイズ君、ボクは何も聞いてないよ!?」

「私にもわかりません」

 

 しかし、このちょっとした悪戯が幸か不幸かアイズの命運を大きく分ける結果となる。

 突如、ヘスティアに神のお導きがあったのだ。

 アイズのウエイトレス姿が見たいという全人類の夢と希望が……。

 これは欲望にまみれた動機なんかではない。

 絶対にそうだと断言できる。

 娘にかわいい服を着せたい。

 またその姿を見てみたいと思うのは普通のことだ。

 なにもおかしなことはない。

 

 ヘスティアは目を輝かせ、必要以上に”アイズ君のウエイトレス姿が見たい”と熱く熱弁してみせた。

 その後、女将さんに服を貸してくれるよう交渉する。

 アイズは抵抗する素振りを見せるが、残念なことに気前のいいミアさんは、神様のその案を受諾し即採用。

 そして、なぜが店の店員さんと周囲に座る酒場の客が賛同の声を挙げる。

 悪乗りはほんとに止めてほしい。

 こうなるともう弱冠14歳のアイズにはどうすることもできなかった。

 数の暴力という名の理不尽な力に……。

 

「では、行きましょうか♪」

 

 アイズは笑顔が120%のシルさんともう一人の店員さんに奥の部屋へと連行されたのだった。

 

 ――数分後。

 

「……どう、かな?」

「アイズさん、かわいい!」

「えっ!?」

 

 がばっと、軽い衝撃とともに、正面から腕を回された。

 主神と違い邪念を一切感じないためどうして良いのか分からずにアイズはその場に立ち尽くす。

 

「シル、その子が困っています」

「はーい」

 

 注意を促す声によりアイズはシルさんの抱擁から解放された。

 その声の主へ顔を向けると。

 

「あなたも大変ですね」

「ーーはい。えっと……」

 

 アイズの視線の先には、先程着替えを手伝って貰ったエルフの少女がいた。

 アイズにとって姉的存在であるエイナさんと似た、整い過ぎている目鼻立ち。

 ハーフエルフの彼女と違うのは、突き出ているその耳がより鋭角的な線を描いているということ。

 空色をしたアーモンド形の瞳がアイズの金色の瞳と目が合うと、彼女は行動を移した。

 

「リュー・リオンです。リューと呼んでくれて構いませんよ。ヴァレンシュタインさん」

「私の名前……?」

 

 アイズはリューさんとは初対面だったので名前を知らないはずだ。

 頭にクエスチョンを浮かべていると、

 

「実はシルからあなたのことを伺っておりました」

「私が教えちゃいました」

 

 リューさんのあとにシルさんが続いた。

 そして、再びリューさんが言葉を紡ぐ。

 

「今朝出勤したときにアイズ・ヴァレンシュタインという天使に出会ったと私達の前で自慢していました。シルは貴方がこの店に来られるのを楽しみにしていたようですよ?」

「ちょっ! 何言ってるの!?」

「シル、大丈夫です。私は記憶力に自信がありますので」

「そういうコトじゃないんだけど……」

 

 アイズは二人の楽しそうなやり取りに、ほのかに口端を緩めた。

 その後、シルさんとリューさん、二人の間でちょっとした会議のようなものが開かれたかと思うと。

 

「アイズさん、最初にあいさつの練習してみましょうか。私の後に続いてみてください」

「…………はい」

「いらっしゃいませー!」

 

 シルさんはまさに接客のお手本となるようなひとつひとの音をはっきりと相手が聞き取りやすい声で発し、お辞儀をしてみせた。

 笑顔がまぶしい。

 アイズは背中の汗が一滴すーっと流れるのを感じながらもシルさんに続く。

 

「……い、いらっしゃい、ませ……」

 

 言葉がスムーズに出てこない。

 シルさんみたいにニコッと笑顔で対応出来ない。

 むしろ、恥ずかしくて手で顔を覆いたくなる。

 普段言葉を発する機会が少なく、表情に乏しいアイズには当然、シルさんのようには出来なかった。

 たが、他二人の反応は……

 

「やっぱり、かわいい!!!」

「これなら大丈夫でしょう」

 

 シルさんには再び抱きつかれ、なぜかリューさんは納得顔で頷いていた。

 

(解せない……)

 

 そんなやり取りをしているとドアの向こうから足音が近づいてきた。

 

「シル~、リュ~。人手が足りなくて困ってるニャ。はやく戻ってほしいニャ」

 

 ドア越しに助けを求める声が聞こえてくる。

 

「シル、そろそろ戻りますよ」

「せっかく、いいところでしたのに……。では、アイズさん、一緒にいきましょうか?」

「……はい」

 

 二人の後に続き部屋を出る。

 まさに、その瞬間――。

 

 

 

(えっ!?)

 

 

 

 心臓がとび跳ねた。

 完全な不意打ちで視覚に飛び込んできたのは、今からまさに店に入ろうとしている集団、その中いる白髪の王子様(ベル・クラネル)の姿だった。

 それからのアイズはとにかく迅速だった。

 考えるよりも先に体が動いた。

 アイズは神速の速さで奥の部屋へと駆け込んだ。

 この時の反応速度は言うまでもなく、とあるデスゲームの中なら確実に二刀流のユニークスキルを獲得していただろう。

 

(なぜあの人がここに!?)

 

 以後、アイズは物陰で聞き耳を立てることとなる。

 ウエイトレスの姿で……。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 ヘスティアは今か今かとアイズが着替えて出てくるのを楽しみにしていた。

 待ち時間も最高のスパイスとして機能しているほどに。

 ついさっき、店員の一人が奥の部屋へと行き、複数の足音が聞こえてくる。

 そして、遂にご対面かと思った矢先、絶対に聞き間違えようのない非常に不愉快な声が店中に響いた。

 

ヘスティアにとって犬猿の仲とも呼ばれる人物の登場である。

 

「ミア母ちゃんー! 飲みに来たでー」

 

 

 ーー波乱の宴が始まる。

 

 

 

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