剣姫と白兎の立場を入れ替えたのは間違っているだろうか   作:Hazakura

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第6話 美の女神フレイヤ登場【後書き:番外編(過保護なリヴェリア様)】

 現時刻は昼前。

 オラリオは活気に溢れていた。仕事に勤しんでいた者達がちょうどお腹を空かせていた頃だろう。

 建物からは人の出入りか激しくなり、飲食店や路上販売の店員さん達は、今が稼ぎ時だと、勤労の汗を流していた。

 そんな活気溢れる人々とは対称的に、アイズは自分のホームである教会の跡地へとトボトボと、重く感じる足取りで歩みを進めていた。

 

「……怖かった」

 

 桜色から少し血色を失った唇からポツリと、心の声がこぼれた。

 エイナさんに見つかった後は、それはもう怖かった。

 とてもとても怖かった。

 

 彼女の家に連行された。

 身ぐるみを剥ぎ取られた。

 ベッドの上に運ばれた。

 

「いやっ!」「こっち来ないで!」「やめてっ!!」

 

 いくら拒もうとアイズは無力だった。

 逃げることなど不可能だった。

 

「痛くしないで……」

 

 それは抵抗虚しくも己の運命を悟ったアイズの最後の懇願。それに対して、彼女はにっこりと笑みを浮かべて言った。

 

『フフフ……大丈夫。すぐに終わらせるから。痛いのは最初だけだから。だから――』

 

『覚悟してね♡』

 

 アイズは知らなかった。これが恐怖の始まりに過ぎなかったことを。

 涙を浮かべながらの行われた怪我の治療。その後に更なる恐怖が待ち構えていたことを……。

 

 今思い出すだけで寒気が頭からつま先まで全身を包み込み、ガクガクガクと激しく震えだす。心の中の小さなアイズは般若の気配を感じるだけで、泣きながら脱兎のごとく逃げ出すだろう。

 もう般若同伴の説教は二度と御免だ。

 

 ただ、恐怖と同じかそれ以上に、エイナさんがどれだけ自分のことを心配してくれているのか、思ってくれているのかが伝わってきた。

 怒られた後のエイナさん特製『元気の出るスープ』の味をアイズは一生忘れない。

 

 アイズは手の中で大切に握りしめているポーションへと目を落とした。

 これは、エイナさんから貰ったもの。

 すぐに使用して怪我を完治させないのは、痛みに慣れさせる為。

 ダンジョン内で負傷しても、必要最低限の行動は取れるようにする為である。冒険者が痛みで動けないようでは生き残れない。あと、お仕置きも兼ねているらしい。

 

 エイナさん曰く、ベル・クラネルさんが駆け出しの頃に行っていたとのこと。彼女のとある伝手で耳にしたらしい。

 

 流石は、『冒険者満足度第一位』、『ギルド職員が選ぶ頼れる同僚第一位』、『冒険者が選ぶギルド職員第一位』の【三冠】に輝き、敏腕アドバイザーとしての名をほしいままにしている彼女だ。完璧超人とはエイナさんのことをいうのだろうか? 

 

 ただ、唯一の欠点を上げるとすれば、きっと――うん、ない。無いったらない! 絶対にない!!

 

 心の中の幼いアイズが必至に訴えかけてくる。まさに、調教の賜物であった……。

 

 

 

 

 

 帰宅。

 アイズがホームである教会の隠し部屋へ帰ってくると、彼女を迎えたのはがらんとした静けさだけで、主神であるヘスティアの姿はこの部屋にはいなかった。

 寂しさを感じつつも少しだけホッとしたのは内緒だ。例えるなら、子どもが門限を守らずに夜遅くまで遊び、親が寝静まった頃にコッソリと家に帰ってくる心境に似ていた。

 今のアイズは、体の至る所に包帯が巻かれており、誰がどう見ても重症患者そのものだ。

 主神が見たら、血相を変えて迫り寄ってくる姿が容易に想像できた。

 無茶はしないって言ったのに、さっそく約束を破ったのだ。何だか、もの凄く後ろめたい。それに――。

 

 なぜそのような愚行に走ったのかを聞かれても、きっと口にすることは出来なかっただろう。嵐のように荒れ果てた心境を言葉で伝える術を、アイズ は持ち合わせてはいなかったからだ。

 アイズは寝台に体が悲鳴を上げないようゆっくりと横たわる。今日は色々あってもう疲れていた。その後、深い眠りを体が求めており、アイズはすぐに夢の世界へと旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

 少しの休息を取った後、アイズは『豊饒の女主人』を訪れていた。

 理由は主に三つある。

 一つ目は、まるで食い逃げの様にいきなり店を飛び出したので謝罪に。

 二つ目も、借りていたウエイトレスの服をダメにしたので謝罪に。

 三つ目は……。

 

 アイズの視線の先では、神様がウエイトレスの服を着てせっせと働いていており、彼女の訪問に気が付いたキャットフードルの店員が、すぐに声を上げた。

 

「ヘスティア様、保護者の方が迎えにきたニャ!」

 

 直後、神様がこちらの方に一直線で駆け抜けてきた。

 

「助けて~! アイズ君!!」

 

 闘牛のごとく向かってきたので、アイズはひらりと華麗に躱す。

 怪我の痛みにも大分体が慣れてきた。

 

「へっ?」

 

 ヘスティアはその勢いのまま壁へと正面衝突し、凄い衝撃音と何かが潰れるような奇声? 悲鳴? が店内に轟いた。

 

「……神様、生きていますか?」

「避けるなんて、ヒドイよ」

 

 アイズの問いかけに対して、今にも命の灯が消えそうな声で神様は答える。

 なるほど、大丈夫みたい。とアイズはそう結論付ける。

 主神の扱い方にも大分慣れてきた。

 

 ヘスティアは薄れゆく意識の中でアイズの現状を視認し、覚醒する。

 

「――って、どうしたんだい、その怪我は!?」

 

 アイズの怪我に気が付いた神様は、案の定、迫り寄ってきた。

 

「……階段で転びました」

「そうなのかい!? ――ってダウト! 絶対、ダウトだよ!!」

 

 やはり、神様にウソは通用しないらしいーー。

 なので、アイズは本当のことを話す。

 

「……少し、張り切り過ぎました」

「何を!? 絶対に少しじゃないよね!?」

 

 今のアイズにヘスティアに対しての後ろめたさは皆無であった。

 理由は言うまでもない。

 神様のことはとりあえず置いといて、アイズはまず一番近くにいたキャットフードルの店員に頭を下げた。

 

「……お騒がせして、ごめん、なさい。……あと、シルさん……と女将さんは、いらっしゃいますか?」

 

「ニャにからツッコんだらいいのか、わからないニャ。……少し、待つのニャ」

 

 

 

 シルさんと女将さんが来てからは頭を深く、深~く下げた。

 ただ、予想外だったことは、シルさんが店を飛び出したアイズのことを過剰なまでに心配していたこと。

 女将さんも服をダメにしたことをあまり気に留めていなかったことだ。

 彼女曰く、「店の馬鹿娘達もよくダメにする」だとか。

 代金はというと、置いて行かれた神様がこき使わr……一日働くことでチャラになったらしい。

 神様のファインプレーである。そして、ごめんなさい。

 

 ミアさんは、アイズの全身を一瞥した後、ニッと笑みを浮かべる。

 

「最初のうちは生き残ることだけに必死になっていればいい。みじめだろうが、笑われようが、生きて帰って来たやつが勝ち組なのさ」

 

 この人は、私の事情を見通しているのだろうか?

 

「そら、仕事の邪魔だ、行った行った」

 

 くるりと回転させられてドンッと背中を押された。

 アイズの心の隅にしつこく残っていた影が取り払われたような気がする。

 あと、少し痛かった。

 

「小娘、シルとリューの推薦でアンタは将来、『豊饒の女主人』の看板娘として働いてもらう予定だ。勝手にくたばったら許さないからねえ」

 

 アイズは感謝の念を感じながら、店を後にした。

 

 

 

 ……何か忘れているような気がするけど。

 

 

 

「ぼさっとするんじゃないよ! ほら、次は皿を洗いな!!」

「ふぇ~ん」

 

 

 

 ヘスティアの長い一日は続く。

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 夜。

 【ガネーシャ・フャミリア】の本拠、「アイアム・ガネーシャ」の入り口を貴族然とした正装を着こんだ人並み外れた美丈夫達が笑いながらくぐっていく。

 彼等は全員が全員、神である。

 今日ガネーシャ主催で開かれる『神の宴』の来賓達である。

 

 ちなみに、「アイアム・ガネーシャ」というのは、三十Mぐらいの像の頭を持つ巨人像が、白い塀に囲まれただけのただっ広い敷地の中で、胡坐をかいてデンと座っているデザインの建造物である。

 構成員達の間でもっぱら不評であり、悲しいことに入り口はなんと、胡坐をかいた股間の中心なのである。

 現在、出入り口である股間に人が群がっていく様はまさに地獄絵図である。

 

「俺がガネーシャである! 本日はよく集まってくれたみなの者! 今回の宴もこれほどの――」

 

 建物の外見とは異なり、落ち着いた内装の大広間に設けられたステージ上では、外の建物と全く同じ格好をしたガネーシャが馬鹿でかい肉声で宴の挨拶を行っていた。

 もちろん、周囲の神々はお約束とばかりにガネーシャのスピーチを聞き流し、各々談笑している。

 会場は立食パーティーの形式が取られていた。

 

 【ガネーシャ・フャミリア】はオラリオの中でも指折りのファミリアなので、この迷宮都市内で居を構えている神達には全てお呼びの声がかかっていた。

 ヘスティアもその一人である。

 

 ヘスティアは、タッパーに、さっ! さっ! さっ! と料理を次々に詰め込んでいく。

 

 【ヘスティア・ファミリア】は日々の生活が厳しく、オラリオではほぼ底辺に位置する【ファミリア】だ。

 アイズの負担を減らすためなら彼女は体面など一切気にしない。

 今日は一日中、奴隷のように働いたこともあって、口の中にも料理を放り込んでいく。リスのように両頬を膨らませて。

 

 そして、今日この宴に出席したのは、他にも理由がある。

 

 手と口は動かしたまま周囲を見渡す。神々が会話に華を咲かせている中で、一人壁際で佇んでいる目的の人物を見つけるとすぐさま駆け出した。

 

「ヘファイストス!」

 

 燃えるような紅い髪と真紅のドレス、右目に大きな眼帯をした麗人が、ヘスティアを見るや呆れたような表情を浮かべる。

 

「久しぶりヘスティア……ただ飯を食いあさるのはもういいの?」

 

 ばっちり見られていた。

 体面を気にしないとは言っても、神友に面と向かって言われるとグサッ! っとくるものがある。

 

「うっ……いや、これは、どうせ残るんだし……粗末に捨てるくらいならボクが有効活用してあげようかなー、なんて……」

 

「ほーほー、立派じゃない、そのケチ臭い精神。まぁ、色々と思うところはあるけれど、元気そうで何よりよ。……あと、風の噂で聞いたわよ。何でもファミリアを立ち上げたってね」

「そうだとも、聞いてくれよ――」

 

 ここから、ヘスティアによる怒涛の眷属の自慢話が始まる。

 神の中には自分の眷属を可愛がるあまり、話に熱が入ることはめずらしいことではないが、聞かされる方には堪ったものではない。

 そう、普通なら……。

 

 彼女はヘスティアの熱弁を終始、耳を傾けた。

 ヘスティアは知らないことだが、元保護者として彼女の現状をかなり気にかけていた。

 居候していた時は、心を鬼にして追い出した背景がある。

 

「良かったじゃない。……いい子を見つけられて」

 

 ヘファイストスの率直な感想だった。子どもたちとて、自分の主神となる神を選ぶ権利がある。

 まだ、始まってもいなかったヘスティアの眷属になる者はそう簡単には見つからなかっただろう。

 

「そうなのだよ! それでね、それでね――」

 

 まだまだ語り足りていないのか、ヘスティアが言葉を紡ごうとしたが、ざわっっ、としたどよめきに彼女の声は遮られた。

 

 

 

 

 

 人というか神々が割れ、そこに道が出来る。

 その光景に何が原因になっているのか、一瞬で理解する。

 

 衆目を根こそぎ集めているのは銀髪の女神。

 

 新雪を思わせるきめ細かい白皙(はくせき)の肌。

 細長い肢体は宙を泳いだだけで見る者を魅惑するような色香を漂わせている。

 金の刺繍が施されているドレスが纏うは、十分な容量を誇る形のよい胸、小振りで柔い臀部(でんぶ)、くびれた腰。

 黄金律という概念がここから摘出されたかのような完璧なプロポーション。

 

 銀の双眸を持つ美貌は、儚く、涼しく、そして凛々しい。

 

 

 彼女こそが、『美の女神』

 

 

 神も下界の者も、万人を例外なく魅了してしまう、『美』そのものとも言える超越存在(デウスデア)

 

 そして、このオラリオであの【ロキ・ファミリア】と並ぶ最強勢力の派閥の主神。

 オラリオの頂点に君臨する二強の派閥は迷宮都市の双頭と比喩されているほどだ。

 

 

 美の神にして、愛を司る女神――フレイヤ

 

 

 こつこつ、と。

 細い靴の音が響いていく。

 

 そして、美の女神は一人の女神の所まで歩みを進めると、本人の意志に関わらず見る者すべてを魅了する微笑みを浮かべ、その口を開いた。

 

「こんばんは。ロキ」

「なんや、フレイヤがこんな所に顔を出すなんて珍しいこともあるもんやな」

「ふふふ、ここに来ればあなたに会えると思っただけよ」

「ウチは会いたくなかったんやけど……」

 

 ロキは話しかけるなオーラを全開で出しているが、フレイヤは気にも留めない。

 

「邪険にするなんて酷いわ」

「どの口が言うんかい! ――そんで、要件は何や?」

「言わないと分からない?」

「……」

 

 空気が張りつめ、次第に亀裂が入る。

 フレイヤが先程とは一転した絶対零度の微笑みを浮かべ、ロキは細い朱眼で射殺すような眼光を飛ばす。

 

「いつまでもオラリオの双璧と呼ばれるのは貴方も不本意でしょう?」

 

 フレイヤは続ける。

 

「そろそろどちらが上かはっきり付けるのもおもしろいとは思わない?」

 

 会場に緊張が走った。

 フレイヤは指し示す事柄はひとつしかない。

 

 ――戦争遊戯。

 

 対戦対象の間で規則を定めて行われる派閥同士の決闘。

 それは、神の代理戦争とも呼ばれている。

 対立する神と神が己の神意を通すためにぶつかり合う総力戦。

 

 二人の会話に聞き耳を立てていた神々は面白くなってきたとばかりに(はや)したてる。

 

「はぁー、それは建前やろ……本音は?」

 

 ロキは周囲で騒ぎニヤニヤしている神々(アホ共)にうんざりしながら、小さくため息を吐く。そして、問いた。

 

 

 

 狙いは間違いなく――。

 

 

 

(ベル)が欲しいわ』

 

 

 

 声が聞こえたわけではない。おそらく発してないのだろう。

 しかし、その唇の動きははっきりとそう告げていた。

 

「却下や! 却下!!」

「あら、残念」

 

 直後、二人の間から張りつめていた空気が嘘だったかのように霧散する。

 

「ったく、年中盛りおってこの色ボケ女神」

 

 ロキの見立てでは、戦争遊戯を行っても勝算は十分にあった。

 殺し合い(争いごと)は天界きってのトリックスターであるロキの十八番である。

 だが、矛を交えることは出来ない。

 

 相手は、あのフレイヤだ。

 『生と死』、『戦いと勝利』を司る女神だ。

 

 彼女が行動を起こすだけで戦況はひっくり返る。

 子どもたちでは美の女神の魅了に抗えない。これは神々の一般常識だ。

 ついでに言うなら、大半の男神(アホ共)も同様である。

 

 それにフレイヤの狙いはベルだ。

 そして『愛』をも司る女神を相手に、男を巡る戦いではこちらの不利は避けられない。

 水面下ではあったが、ロキはフレイヤのベルに対する執着は異常だとこの数年間で思い知った。

 

 

 彼女の愛が本物であることを。

 

 

 愛を司る女神が本物の愛を求めるという矛盾。

 

 

 それを裏付ける事柄として彼女はベルに対して魅了を使う素振りを今まで見せてこなかった。

 しかし、彼のことは何がなんでも『()()()』手に入れるという激情の想いが見え隠れしている。

 某神曰く、天に昇る魂を追いかけてまで囲う女神もいるとのこと。

 故にフレイヤがどのような行動を起こすかを読み切ることは不可能と言っていい。

 フレイヤに言わせれば、愛を計算式に当てはめて物事を考える事の方が愚か、との事。

 こう言うのは理屈ではなく、『想い』なのだ。

 

「なんや、ウチが言うのもあれやけど簡単に引き下がるんやな」

 

 ロキの問いかけに対して美の女神は答える。

 

「遠征での活躍を聞いて、私としたことがつい早まってしまったわ。それに、力尽くなんて品がないもの」

「いつも思うんやけど、どこからその情報を得ているんや?」

 

 フレイヤのベルに関する情報伝達の速さはそれ程までに異常なのだ。

 

「それは企業秘密」

 

 彼女は彼のことをただ視ているだけだ。

 人とは、惚れた意中の相手を無意識に目で追ってしまう生き物である。

 視界に入るだけで本人の意思に関係なく認識してしまうものである。

 そう、愛ゆえに。

 それは彼女とてなんら変わりはない。

 ただ、魂の色を見抜ける特別な瞳、最強の眷属達、超越存在さえ魅了する美貌、愛を司る女神であるフレイヤにとっては得られる情報量が常識の範疇を超えているのだ。

 

 もっとも、彼女の『神の鏡』の使用は最早ご愛敬であった。

 ベル君のプライバシーが心配である。

 

「ロキに振られたことだし、もう行くわ」

 

 それじゃあ、と言い残して、彼女はひしめく神達の中に消えていった。

 

 

 

 その一方で。

 

「ヘファイストス、ロキとフレイヤは仲が悪いのかい?」

「少なくとも、良好とは言えないわね。……あんたも今の見たでしょう?」

 

 ヘスティアの問いにヘファイストスは答える。

 

「ロキってもしかしてみんなから嫌われているのかい?」

「なんで、あんたは嬉しそうなのよ」

 

 ヘスティアのゲスな笑みにヘファイストスはドン引きだった。

 

 この後、ヘスティアの本当の戦いが始まる。

 

 

「ボクの【ファミリア】の子に武器を作って欲しいんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 




《小ネタ》

へスティア「そんなだから、皆に嫌われているんだよ」

ロキ「ウチは嫌われていない」キリッ

ヘスティア&フレイヤ「「!?」」

フレイヤ「嫌われている自覚なかったの?」

ヘスティア「余計な事を言ってごめんよー笑」

ロキ(……ㇷ゚ㇽㇷ゚ㇽ……)

ベル君「僕はロキ様のことが大好きですよ」

ロキ『――トゥンクトゥンク――』

フレイヤ(ぶっ殺)

《後書き》
はい、と言う事でやっとフレイヤ様が登場しました。
フレイヤ様の立ち位置が気になっていた方もいたのではないでしょうか?
これから原作とは少しずつ違った展開になってくると思いますので、今後ともよろしくお願いします。
今回、ちょっとした番外編を書いてみましたので、よければどうぞ。



【過保護なリヴェリア様】〜初めての子育て編:約10年前の日常①〜

 緊急事態! 緊急事態!!

 突如ロキ・ファミリアの幹部会議を行っている最中、一人の団員Aの声が転がり込んできた。

「何や? 敵襲でもあったんか?」

 ロキの緊張感のない声が部屋の中で霧散する。

「大変です! ベル・クラネル氏が負傷しました。」

 幹部のフィン、リヴェリア、ガレスの表情が険しくなる。

「ベルは今どこにいる!? 私がすぐに向かう!」

 リヴェリアが駆けだそうとするが、ロキがこれを制する。

「私の邪魔をするな!」
「今は報告を聞く方が先や。それで、状況は?」

 ロキの問いに団員Aが答える。

「はい、中庭で転んで足を擦りむいたようです。現在治療を行っております。」

「「「えっ!?」」」

 ロキ、フィン、ガレスの声が重なる。

「それだけか?」
「はい!」

 団員Aは大真面目に答える。

 ロキ、フィン、ガレスから緊張が解ける。三人は一々それぐらいで報告するなと言う空気が醸し出している。――が、

 その空気はすぐに破壊された。

「アホか! 緊急事態ではないか!!」

 リヴェリアが再び部屋から駆け出そうとするが、ロキが再び待ったをかけた。

「なんだ!?」

 リヴェリアの声には怒気が含まれている。それを宥める様にロキは言葉を選びながら問う。

「自分、今から向かってどないするん?」

 報告によれば手当はもう終わっている頃だろう。それに、今は幹部会議を行っている最中なので、普通に考えればこれくらいの案件で動くのは好ましくない。……だが、

「何を言っている? 私の回復魔法とエリクサーを使うに決まっているだろう」

「「親バカか!!」」

 ロキとガレスの声が重なり、フィンはやれやれとポーズをとる。

「これだから、酒乱と野蛮なドワーフは――。私はもう行くぞ」

 リヴェリアは相手にしている時間はないと言わんばかりに部屋を飛び出して行った。

「フィン、あれはどうするつもりだ?」
「母性に目覚めたというより、爆発してしもうたで……」

 ロキ達が彼女に母親役を押し付けた結果がこのようになるとは誰が予想出来たであろうか……。

 当初はベルの大好き攻撃とリヴェリアに常にくっ付いては甘えてくる行動に狼狽えていた彼女は、一体どこに行ってしまったのか……。

 泣き虫で、弱虫で、甘えん坊で、純粋無垢な一人の少年は、あの難攻不落のハイエルフを簡単に攻略してしまった。

 彼女があまりにもベルのことを可愛がる為、当初は下の団員達からの反感もあったが、今ではすっかり若様と呼ばれている。

 ベル君の将来が末恐ろしい。

「ベルが傷を負うたびにエリクサーを使用されては、ファミリアの資金が崩壊する。対策として、ベルには治癒魔法やポーションを使わずに自然治癒で治す教育方針をとろうと思う」
「それをあの頭の固いエルフが納得するか?」

 フィンの提案にガレスが問う。

 今では完全にベルを溺愛してしまっている彼女だ。寝るときは一緒でないと眠れない程である。

 将来、ちゃんと子離れできるのだろうか……。

「建前はロキに任せるとして、ベルの為と言えば、リヴェリアは最後には納得するさ」

 彼女はベルの母親なのだから……。

 それから、10年後の未来。
 冒険者とエルフ達の間でこの教育方針を真似する人が増えたらしい。
 リヴェリアの影響力は甚大であり、ベルの活躍はその拍車をかけた。

 ちなみに、リヴェリア説得の際は怪獣大戦争が勃発したとか、してないとか笑

 〜おしまい〜

《最後に》
やっぱり、後書きだと気楽に書けて楽しいです。
少しポンコツ化したリヴェリア様を書いてみたかった。後悔はしていない笑


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