ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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VSサンダース大学付属高校 2

 

 こちらは所変わって。

 

 現在、ケホ三輌を率いて誘導及び奇襲を仕掛けるためにカモフラージュで身を潜めている永瀬隊。

 

 彼女は前方から現れた予想外の戦車に思わず度肝を抜かれた。

 

 まさか、重戦車をサンダース大学付属高校が持ち出してくるというのは予想外の出来事。永瀬も戦車内で思わず冷や汗を溢す。

 

 

「まさか予想外だったよ。1世紀は9年じゃなかった事の次くらいに予想外だった」

 

「いや、永瀬っち、それは短すぎだから…」

 

「もう少し噛み砕いて言えばビアンカ派がフローラ派に乗り換えるくらいショックかな」

 

「ごめん、例えがよくわからない」

 

「えっ!? ドラクエやってないの!? 人生半分くらい損してるよ!」

 

「あー、うんごめん」(FF派だなんて言えない…)

 

 

 そんな感じで車長を務める永瀬は緊迫した状況下にも関わらず、操縦席に座る先輩と他愛の無い会話を交わしていた。

 

 とりあえず、奇襲して撤退の指示は繁子から携帯端末を通じて受けている。そうめんを飛ばすしかない作戦とかいうのも聞こえたような気がしたがおそらく気のせいだろう。

 

 相手戦車も永瀬達がポイントKにいない事に関してもう気づく頃合いだろう。弾頭が当たる間合いには入った、後は撃ち込んでスタコラサッサと逃げるだけである。

 

 

「さてさて、んじゃぼちぼちはじめよっかね!」

 

「装填完了!」

 

「ほんじゃま! 一発かまそうか!」

 

 

 そう言った瞬間、永瀬が乗るケホの主砲が轟音を立て弾頭を発射した。

 

 見事、敵シャーマン戦車に直撃。白旗が上がり行動不能となる。それに続くかのように他2輌のケホも主砲を発射し1輌は外したもののもう1輌のシャーマン戦車撃破に成功する。

 

 何故、この時点でファイアフライやT30重戦車を狙わないかというとケホの主砲で厚い装甲を貫けるのかわからないという不安要素があったからだ。

 

 よって永瀬は繁子からはシャーマン三台の撃破を要請された。今回はそれに応えた形である。1輌は取り逃がしてしまったのであるが…。

 

 向こうはT30重戦車にファイアフライ、そしてシャーマン戦車2輌。

 

 残ったシャーマン2輌くらいならばどうにかなるだろうが、それでも今回は大事をとってのこの策。

 

 重戦車ならば行動も遅く、ケホの機動性にもそうそうついてこれないだろう。シャーマン2輌、ファイアフライ1輌くらいならばケホなら撒ける。

 

 永瀬は主砲発車後すぐにカモフラージュを外し、隊全体に撤退の指示を飛ばした。

 

 

「よっしゃ! まずは作戦成功! みんな撤退するよー!」

 

「了解です!」

 

「さぁて! 鬼ごっこ開始! 逃げろ逃げろ〜」

 

 

 そう言ってファイアフライと重戦車を置き去りにすぐさまその場から離れる永瀬隊。

 

 だが、もちろん敵も待ってはくれないだろう。ファイアフライとT30重戦車、M4シャーマン2輌の主砲が火を噴き、逃走を試みる永瀬隊に追撃をかける。

 

 爆ぜる地面、だが、永瀬はやられっぱなしという訳ではない。すぐさま主砲で応戦しつつ回避を行う様に皆に通達した。

 

 

「うひょー! 今、横ズドンって!」

 

「いや! 言ってる場合じゃないでしょう! 永瀬っち!」

 

「まぁねぇ、けどウチのケホのスピードにはやっぱり追いついて来れてないみたいだし、このままなら行ける行けるぅ!」

 

「全く! 少しはこっちの苦労も考えてよねって!」

 

 

 そう言いながら飛んでくる弾頭を巧みな運転捌きで躱すケホの操縦席に座る知波単学園の二年生。

 

 彼女とて、伊達に名門、知波単学園で戦車を操縦していた訳ではない。これまでの熟して来た試合経験も豊富だ。

 

 そう言った意味では永瀬は彼女の腕を信用している。次々と飛んでくる弾頭が爆ぜるなか、射程範囲から抜けたのか弾頭は飛んでこなくなった。

 

 どうやら、作戦の第一陣は無事に終了したようである。

 

 だが、これからが本番だ。永瀬達は次の誘導作戦を行う為にポイントへと移動を開始する。

 

 

 

 こちらはサンダース大学付属高校の陣営。

 

 初手から2輌のシャーマンをやられたメグミは非常に気を悪くしていた。こちらの策を向こうに勘付かれていたメグミの落ち度であるが、まさか、知波単に序盤から奇襲を許し取り逃がしてしまうのは流石に予想外の出来事であった。

 

 しかしながら、彼女とて、この最悪のケースを予想していなかった訳ではない。通信の傍受を裏目に使われた今回を教訓にして次から策を練り直せば挽回の機会は幾らでもある。

 

 

「…やられた。…仕方ないわね、傍受策が読まれてた」

 

「では、どうなさいますか隊長?」

 

「サンダースにはサンダースの流儀がある。物量で押しつぶす…といきたいとこだけど相手はこの動きも予測してるに違いないわ」

 

「oh…。ジーザス!」

 

「まぁ、そんなに悲観することは無いわよ。たかだか2輌。ファイアフライもT30もやられてはいないからまだこちらに勝機はある」

 

「では、次は…」

 

「逆手の逆手を取るのよ、相手は無線の傍受前提の動きをしてくるはず。そこを予測して全体で追い込みをかけるわ」

 

「…と言いますと?」

 

 

 隊長、メグミの意図が少しだけ理解できずにそう訪ねる1人の隊員。

 

 しかしながら、メグミは不敵な笑みを浮かべる。どうやら、何かしらの考えが彼女にはある様なそんな笑みだった。

 

 そして、メグミはしばらくしてゆっくりと口を開いてその隊員に話をしはじめる。

 

 

「敵車輌は奇襲を考えると少数。そして、ファイアフライとT30重戦車を撃破してないところを見る限り、偵察用の車輌の可能性が高い」

 

「つまり…?」

 

「包囲、またはそれによる行動制限をかけて殲滅を行えば手こずる様な戦車では無いという事よ。敵の通信を拾いなさい、拾い次第報告して」

 

「わかりました!」

 

 

 そう言ったメグミは次の作戦行動に移る永瀬隊の行動についてすぐに思案する。

 

 傍受した通信を通してのポイント移動はあまり得策とは言えないかもしれないが、けれど、囮を使えば良い。

 

 シャーマン一輌を囮に奇襲をかけた偵察戦車3車輌をおびき出す。そして、伏せてあるシャーマン2輌とファイアフライで包囲し殲滅を行えば良い。

 

 

「さて、どうなるかしらね…。ケイ達は?」

 

「はい、予定通り分隊は市街地方面に散らしました。問題無いかと」

 

「あの娘にはもう一輌のファイアフライを任せてるからね、ナオミと上手くやってくれたら良いのだけど」

 

 

 次の段取りがついたメグミはそう言って別行動を行わせている分隊の報告を聞き、静かに頷く。

 

 敵車輌の行動を考えるに先に市街地にケイ達を送り込んだのはサンダースの戦略的には正解だったかもしれない。

 

 明らかに妙であった。敵が偵察用戦車を送り出すにしても本隊があまりにも動きがない。

 

 メグミは予感がしていた、敵本隊がいる場所を検討した結果、市街地にいる可能性が高い、何故ならば今回、市街地戦をこちらも予想に入れて行動しているからだ。

 

 ならば、相手はそんな市街地戦を先に有利に運べる様に待機し。奇襲をかけて偵察用戦車に目をいかせるように時間を稼いでいるのでは無いか?

 

 そんな仮定がメグミの中であったからだ。だとすれば、ケイ達が今の時点で市街地に向かっていれば奇襲ができる可能性がある。

 

 

「本番はこれからよ、知波単学園…。名門サンダース大学付属高校を舐めないでもらおうかしら」

 

 

 やられたら倍にしてやり返す。それが、サンダース大学付属高校。

 

 金銭面でも、戦車道でもそうだ、隊長メグミはフラッグ戦車に乗り込むとゆっくりと移動をはじめる。

 

 その戦車が目指すは永瀬隊。まずは手始めに彼女達の殲滅にである。

 

 

 

 そして、一方その頃。

 

 サンダースの動きを永瀬からの携帯端末からの通信を通して聞いていた隊長の辻と繁子はある出来事に直面していた。

 

 というのもサンダースへの奇襲が上手くいき、撤退を指示していた繁子であるが、予想外の敵の動きがあり、現在、敵のファイアフライと交戦に入っていたのだ。

 

 そう、ケイ達が乗る、ファイアフライとそのシャーマン隊である。

 

 市街地戦ではあるもののまだバリケードが完全でない状況下での完全な奇襲。この奇襲により繁子達のホニとチハ2輌は完全に沈黙させられた。

 

 

「くっそ! やられた! 市街地に分隊送り込んで来るのは予想外やった!」

 

「まだバリケード完全じゃないのに!」

 

「しゃあない! 今は引くんや! ファイアフライはデットライン越えさせたらあかんで!」

 

 

 そう言って、奇襲を受けた繁子は全体にそう通達を出す。

 

 繁子が言うデットライン。それは、オイ車を停めている場所に近いところを定めている。何故ならば向こうに今回導入したオイ車を晒して策を台無しにされるのは避けなければならないからだ。

 

 こちら側はあまり無理して本隊との交戦前に車輌を減らすわけにはいかない。

 

 まだ、T30重戦車もファイアフライもあと1輌づつ残っている。もっとも、現在進行系で障害となるファイアフライが1輌奇襲してきているのであるが…。

 

 

「シャーマン1輌くらいなら…、辻隊長!」

 

『どうした繁子!』

 

「あのシャーマンとファイアフライを利用しましょう! ポイント指示しますんでそこにシャーマンを誘導してください! …立江!」

 

『了解! わかった。んじゃホリで待ち構えてるからよろしくね♪』

 

「流石は立江やな!」

 

 

 繁子はそう言って携帯端末を使って2人に指令を送ると笑みを浮かべる。

 

 立江はどうやらこちらの意図が分かったらしい。そう、繁子が考えている策、それは相手戦車を撃破し、それをそのままバリケードに使うという策だ。

 

 戦車を撃破したのにそれを使わないとは勿体無い。最大限に利用させてもらえないとチハとホニIIIを失った代償としては少なすぎるくらいだ。

 

 

「Yes! 上手くいったわね! ナオミ!」

 

「そうだね、このまま押し切る?」

 

「隊長が来る前に手柄立てるのが私達rookieの役目だからね!」

 

「そう言うと思った」

 

 

 そう言うと、ケイ達が乗るファイアフライは主砲を放ち、視界に入ってきたホニ1輌に砲撃を仕掛けるが外れる

 

 ケイ達、分隊が撃破した戦車は合わせて2輌。分隊としては申し分ない成果だろう。だが、ケイ達はこれでは満足できない。

 

 狙うはフラッグ車、ここまでくればさらに欲を張っても構わないだろう。

 

 

「さてさて、それじゃ残りも倒してしまいましょ」

 

「了解!」

 

 

 前進するファイアフライとそれに追従するようについてくるシャーマン1輌。

 

 だが、ここで、隊長であるメグミから通信が入ってくる。それは彼女達に撤退を告げるためのものだ。

 

 これ以上の深追いは危険。おそらく隊長のメグミもそう判断したのだろう。サンダースとしてもファイアフライはできれば失いたくない車輌である。

 

 

『もういいわ、ケイ、撤退なさい。そこに本隊がいたのでしょう?』

 

「隊長、noproblem、このまま押し切れば勝てますよ!」

 

『そこは敵陣の真っ只中でしょ? 危険よ、戻りなさい』

 

「…仕方ないですね…。オーケー。戻ります」

 

『貴女のファイアフライは十分活躍してくれたわ。ありがとう』

 

「ふふ、任せてください。それじゃ今からそちらにcome backしますね」

 

 

 そう言うとケイはメグミからの通信を切る。

 

 追い打ちを掛けようかとも考えていたがどうやら不要なようだ。

 

 メグミの指示を受けたケイはすぐに引き返しを行い主砲を発射しながら市街地からの出口へと向かう。

 

 市街地の出口に差し掛かるケイ達。しかしながら、その時だった。

 

 

「上手く射程範囲内に入ったなぁ…撃てぇ!」

 

 

 ズドンッ!出口に差し掛かるファイアフライの真横から実弾が撃ち込まれた。

 

 撃ち込んだ車輌はフラッグ戦車。そう、カモフラージュをしていた繁子達の戦車が市街地の店の中から現れたのだ。

 

 さらに、行動不能になったファイアフライの後方から主砲の火が吹く、建物にカモフラージュしていたホリがそれを解き後方からシャーマン戦車を撃ち抜いたのだ。

 

 両車輌とも出口で詰まるようにして行動不能になっている為、上手くバリケードが一つ出来上がった。

 

 

「よっしゃ! ファイアフライ! 一輌撃破や!」

 

「あと1輌!T30重戦車もだけど!」

 

「囮役ナイスですよ! 辻隊長!」

 

 

 繁子は予測通りに事が運んだ事にガッツポーズを取る。

 

 そう、繁子はメグミからケイ達に撤退を告げる事は予想できていた。奇襲して押していたとはいえファイアフライにシャーマン1輌づつだけではできる事は限られる。

 

 自分が隊長なら撤退させる。辻隊を囮にしたのは市街地から出れる出口を制限し、そちらにファイアフライとシャーマンを誘導をさせる為だ。

 

 その繁子の策はものの見事に的中した。繁子は車内にいる多代子達とハイタッチを交わす。

 

 

「ふふ、上手くいって良かった。さぁ、時間が無い、早く次の作業に移ろう!」

 

「「はい!」」

 

 

 そう辻隊長の言葉に繁子は応えると、彼女の乗る山城(四式中戦車)は店の壁を突き破り、外へと出る。

 

 そして、再び市街地の中へと辻隊と立江に続き戻って行く。まだ作業の途中だ。敵本隊がこのあとこの市街地にやってくる。それを迎い撃たなければならない。

 

 バリケードが一つ出来上がり、敵戦車を利用して道を塞いだ。

 

 あとは残りのバリケード、および、市街地に即席のトラップを仕掛けて敵本隊を待ち構えるだけだ。

 

 

「さてと…あれは用意できたな」

 

「大丈夫、抜かりはないわ。まさかあんなの思いつくなんてねぇ…」

 

「そうめん流し、どうなるか楽しみやねぇ、にしし」

 

 

 繁子はそう言うと、笑みを浮かべて立江に告げる。

 

 バリケードも完全に引き終わった。あとは永瀬達の帰りを待つだけだ。誘導が無事に出来ているか、果たして全部ケホがやられているか。

 

 それは定かではないが、それによってはまた修正をいろいろ加えなくてはならないだろう。

 

 知波単とサンダースの両校の戦闘は残りの本隊同士がぶつかる佳境を迎えていた。

 

 

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