ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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第一次繁子大戦勃発

 

 

 サンダース大付属高校との試合を終えてから数日後。

 

 繁子は個人的な用事で繁華街に来ていた。というのもある人物との待ち合わせがあるからである。

 

 それは、先日あった試合を観戦していた人物だ。その人物から繁子は呼び出され私服に着替えてプライベートで会いに来ている。

 

 格好は野球帽にハーフパンツ、そして、農業魂と書かれた謎のTシャツとファッションセンスがあるかどうかは疑わしい格好だ。

 

 

「もうそろそろやと思うんやけどなぁ…?」

 

 

 繁子は可愛らしい虎の形をした腕時計を見ながら首を傾げて1人呟く、予想より早く待ち合わせ場所に着いていた為に待たされる羽目になったのであるがぼちぼちその指定された待ち合わせ時間になる。

 

 すると、しばらくして、灰色横縞のシャツに日差しを避ける為の帽子を被り水色掛かった少し長めのスカートを履いた女の子が繁子に近寄ってくる。

 

 

「待たせたか? しげちゃん」

 

「あ、来たか! ううん、待ってへんよ」

 

 

 そう言ってにっこりと笑みを浮かべる繁子。

 

 繁子の目の前にいる女の子。黒森峰女学園の隊長、西住まほである。彼女は笑みを浮かべて繁子の側に寄ってくる。

 

 2人並んだその姿は田舎娘感が滲み出ている。

 

 果たしてファッションセンス的な意味ではもしかすると…、いや、これ以上の突っ込みは野暮だろう。

 

 ひとまず合流した2人は近くの喫茶店に入りコーヒーと戦車型に模られたケーキをそれぞれ注文する。

 

 女の子同士、積もる話もあるだろう。それに黒森峰女学園が順調に勝ち進んでいる事を繁子は知っていた。

 

 黒森峰女学園の次の相手は恐らくはジェーコ率いるあのプラウダ高校。共に強豪と当る故に思う事も多々ある。

 

 そして、そんな彼女達2人の後をつけて遠目から眺める4人の影があった。

 

 それは立江をはじめとした時御流の同門メンバー達である。

 

 

「…はじめてのお使いを見る親の心境ってこんな感じなのかしらね」

 

「というか2人揃ってファッションセンスが壊滅的な気も…」

 

「特にリーダー酷いね、何あれ、野球観戦するおっさんみたいな格好じゃない?」

 

「ああああ! 2人とも服屋に拉致したい!?」

 

「ぐっちゃん、抑えて抑えて!」

 

 

 そう言って今にも2人の襟を掴んで服屋に引きづり込まんとしている立江を宥める真沙子。

 

 はたから見たら確かに多少なり浮いてる気はしないわけではないが、それはそれで可愛らしいではないかと言うのが真沙子の言い分である。

 

 だが、立江はそんな2人がオシャレなカフェにいるシュールな光景が彼女の中ではなんとも言えないモヤモヤとした違和感のようなものを感じさせているようである。

 

 それはさて置き、喫茶店に入った繁子とまほの2人は軽い昔話を挟みながら近況を互いに話し合っていた。

 

 

「という訳でうちらはそうめん流しとフルセットのおかげでサンダースに勝てたって訳や」

 

「すごい! 流石しげちゃん!」

 

「せやろ、せやろ、あのそうめん流し作るのは割と大変やったんやでー」

 

 

 誰も突っ込みが居ないというのはこれほど怖いことだろうか。

 

 繁子達は先日の試合の話をしているのであろうがその内容がそうめん流しとフルセット着てスズメバチを退治したという内容である。

 

 到底はたから聞いていればこれが戦車道の話だとは誰も思わないだろう。思うとすればそれは立江達のような同業者くらいである。

 

 そんな繁子の話を聞いていたまほの目はキラキラと輝いていた。あの昔の頃と変わらないまほの憧れの人物、それはまさしく目の前にいる繁子だ。

 

 繁子から聞く話はとてもまほにはワクワクするものばかりである。だが、今回、まほが繁子を呼び出した本題は違う話をする為。

 

 それはある戦車道の競技についての話だ。

 

 

「しげちゃん、 タンカスロンって知ってるかな?」

 

「…ん? …タンカスロンって言ったら強襲戦車競技の事やろ? うちら良く中学の時やっとったからそりゃ知っとるよ」

 

 

 そう言って繁子はコーヒーを口に運びながら目の前にいるまほにそう告げる。

 

 タンカスロン(強襲戦車競技)。

 

 タンカスロンとは戦車道での使用を認められた車輌のうち、10トン以下の戦車のみが参加を許される戦車競技の一種。公式の戦車道と違って主催者はおらず、有志が行なう野試合に近い形式をとる。

 

 参加規程は車輌の重量制限のみで、言ってしまえばルール無用。1輌からエントリーが可能であり、試合への乱入、助っ人参戦、即席の同盟や裏切り、戦車以外の携行兵器の使用等々、自由度の高さは戦車道の比ではなく、戦車道連盟が定めた適合品から除外されるような部品を使っての車輌強化までも認められている。

 

 時御流はこのタンカスロンでかつて猛威を振るった事で特に有名だ。

 

 ルール無用。すなわちなんでもあり、繁子達が中学の時に行ったタンカスロンでは改造戦車のオンパレードの上に改造対戦車車両による殲滅など、滅茶苦茶な戦法を取りまくっていた。

 

 特に酷かったのは1輌VS70輌の戦い。

 

 繁子達はありったけの地形改造、そして、魔改造兵器を用いてこの試合を戦車1輌のみで70輌の戦車を撃破した事がある。

 

 崖や沼地、そして、地雷に対戦車火器を持ってして繁子達は完膚なきまでにこれを撃退した。

 

 

「懐かしいなぁ…タンカスロン。いやーあの頃は若かった」

 

「いや、しげちゃんは今でも若いし綺麗よ、私が保証するわ」

 

「えへへ、そうやろうか?」

 

 

 お世辞にもまほから綺麗と言われて満更でも無さそうに応える繁子。

 

 繁子が華の十代である為に若いのは当たり前なのであるが突っ込みが誰もいない為に会話が成立してしまってるあたり流石である。

 

 これではまるで口説かれているようだとも捉え方によってはそう見えない事もない。

 

 女性に女性が口説かれる図というのは何というかかなりシュールな光景であることだろう、もっとも特に繁子は気にせず素直に褒め言葉として受け取っているようであるのだが。

 

 そして、まほは繁子にこんな話を持ちかけはじめた。それは先ほど挙げたタンカスロンという競技についての話だ。

 

 

「それで、しげちゃんどうかな? 私とタンカスロンを組んで欲しいなって思って」

 

「ウチと? まほりんが?」

 

「そう、この全国大会終わったら来年の戦車道全国大会まで時間もあるし。知波単学園と黒森峰女学園でタンカスロンの同盟を組みたいのよ」

 

「へぇ…。それは面白そうやな」

 

 

 繁子はそのまほの話を聞いて笑みを浮かべる。

 

 確かに前に共闘するかもしれないとは話をしていたがこういった話をまほから持ちかけられるとは繁子も思いもしなかった。

 

 別に異存はない、これはこれで黒森峰女学園と知波単学園の関係の良好にも繋がる事だろう。

 

 まほはすっと繁子の手を握り、笑みを浮かべてこう話をしはじめる

 

 

「それに私はしげちゃんと一緒に戦車に乗りたいよ、しげちゃんなら私の背中を任せられる」

 

「奇遇やなウチもやで、まほりんとならタンカスロンで敵なしやからね♪」

 

 

 そう言って、まほから握られた手を握り返して笑みを浮かべる繁子。

 

 だが、その時だ。タンカスロンの話をしている2人の会話にある人物からの割り込みが入る。

 

 

「はいはーい。ちょーとまった。何勝手に話を進めてんのーリーダー」

 

 

 そう、その割り込みをした人物とは遠目から2人の会話を隠れながら聞いていた立江だ。

 

 彼女がなぜこの場に居るのかが繁子には疑問ではあるのだが、立江は目の前にいるまほをジッと見つめると繁子にこう話をしはじめた。

 

 

「しげちゃん、黒森峰女学園の隊長さんと仲良かったんだね〜。準決勝前にタンカスロンの話をするなんてどういう了見かしら?」

 

「いや、まほりんは幼馴染やし…」

 

「今は全国大会真っ最中でしょ? 決勝は言わずともあたる相手は黒森峰かプラウダじゃない?」

 

「てか、立江なんでここにおるん?」

 

「そりゃしげちゃんが心配でみんなついてきたのよ」

 

 

 そう言いながら親指で永瀬達を示す立江。

 

 同じ喫茶店の別席に座る彼女達三人はにこやかな笑みを浮かべたままこちらに手を振ってくる。繁子もこれには苦笑いを浮かべるしかない。

 

 という訳で、立江はジーとまほを見つめたままこう話をしはじめる。

 

 

「貴女、しげちゃんの幼馴染とか言ったわね、開幕式でも見かけたし。それで、しげちゃんの可愛さとか素晴らしさとか愛らしさをどこまで理解しているのかしら」

 

「…ほほぅ、それは愚問ね、しげちゃんについて私に勝負を挑んで来るか」

 

「あ、あの…2人とも、まぁ落ち着いて…」

 

 

 繁子は睨み合うまほと立江の2人を宥めるようにそう告げるが2人は既にバチバチと火花を散らしていた。

 

 繁子の隣で常に戦う相棒であるという自負がある山口立江。幼馴染で愛すべき馬鹿である繁子を理解しているという自負がある西住まほ。

 

 彼女達はしばらく睨み合うと繁子に対する愛らしさ、または可愛さ、凄さの言い合いをしはじめた。それも喫茶店の中である。

 

 司会には永瀬が介入。互いに第一次繁子大戦を勃発させた。

 

 

「いい! しげちゃんはね! 身長が足りなくてぴょんぴょん跳ねるところが可愛らしいのに加えて更に仕方ないから脚立を自作するのよ!」

 

「ぐ…ぐはぁ…! !」

 

「おーと強烈なダメージ西住まほ選手の急所に直撃だー」

 

 

 立江の繁子自慢に思わず吐血寸前にまで追い込まれるまほ。

 

 だが、彼女は折れない、ふらふらとした足取りで踏ん張ると昔の思い出の繁子について立江に語り始めた。

 

 

「ふふん…。では知っているか? しげちゃんは幼き日、私の妹にボコ人形を作る際、指を何回も刺して涙目になっていたのを隠しながら健気に作っていた事を…」

 

「ごほぉ…!」

 

「次はぐっちゃんに大ダメージ! 効果は抜群だー!」

 

「あの…もうやめてくれへん? うちめっちゃ恥ずかしくて泣きそうやねんけど」

 

「よしよし、ぐっちゃんがああなったらしょうがないってリーダー泣きなさんな」

 

 

 顔を覆い赤面する涙目の繁子の慰めるように多代子は背中をさすってあげる。

 

 確かにこれでは公開処刑である。立江VSまほのはずが被害が全部繁子に回ってきているのであるからして仕方ないだろうがこれには多代子も同情するしかなかった。

 

 そして、第一次繁子大戦から数時間後。

 

 ようやく落ち着いてきた2人は互いに息を切らしながら見つめ合うと晴れ晴れとした表情を浮かべていた。

 

 強敵だった。だが、今は互いに健闘を讃えよう。立江とまほは歩み寄ると共感したように頷く。

 

 

「我が同志よ」

 

「私は貴女のような友を得られて光栄に思うわ」

 

 

 ガシっと固い握手を交わす立江とまほの2人。

 

 何やら繁子の事で共に共感できる友情を深めたらしい。ただ、戦場になった喫茶店の人間達からは賞賛する拍手が降り注ぐばかりである。

 

 

「タンカスロン、貴女と繁子と私達なら世界も取れる」

 

「奇遇ね、私もそう思ってたところ」

 

「詳しい話はまた後日しましょう」

 

「ようやく! ようやく終わったで! 真沙子ォー!」

 

「よーしよし、がんばったねーリーダー」

 

 

 泣きつく繁子をそう言って慰める真沙子。

 

 しかしながら長い戦いだった。平和な時はこうして訪れる。互いに失うものは何もない戦いであるのだがそれを間近で聞いていた繁子には失う物があまりにも多すぎたようだ。

 

 だが、和解を迎え、互いに握手を交わす立江達の光景を目の当たりにして、ここに来て永瀬がある事をようやく思い出した。

 

 

「あ、そういや、しげちゃんとまほりん、服」

 

「「「あ…」」」

 

「ん…? うちらの服がどないしたん…?」

 

「え? 別におかしなところは無い気はするが…」

 

「連行」

 

「「了解!」」

 

 

 2人の服装について思い出した立江はそう言って指をパチンと鳴らす。

 

 すると、永瀬、真沙子、多代子はすぐさま立江の合図と共に2人を担ぎ上げる。その突然の出来事にまほも繁子も目を丸めるばかりだ。

 

 

「え、え!? ちょ、どういうことなん!?」

 

「なんで私まで担ぎ上げられてるの!?」

 

「さぁ! 行くぞー!」

 

「「「おー!!」」」

 

「ちょ…! まっ…! うわー!」

 

 

 そのまま立江達からされるがまま繁子達は喫茶店から拉致られそこを後にする。

 

 彼女達の向かう先は一体どこなのか…? まほと繁子を喫茶店から連れ去った立江達の目的とは一体。

 

 黒森峰女学園隊長、西住まほと立江達の邂逅。

 

 第一次繁子大戦を通して分かり合えた彼女達。だが、そんな彼女もなす術なく立江達から拉致される。果たして彼女達の運命やいかに

 

 

 続きは次回の鉄腕&パンツァーで!!

 

 

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