ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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継続高校

 

 

 継続高校。

 

 名前の由来はフィンランドがソ連の侵攻を阻止するために戦った「継続戦争」から取ったものである。

 

 この継続高校であるが、前回の戦車道全国大会ではフランス戦車率いる名門、マジノ学園に勝利し圧倒的物量を誇るメグミ率いるサンダース大付属高校に奮闘し、敗戦したという自校の貧困な経済状況を感じさせない素晴らしい戦車道での実績を残した。

 

 戦車道全国大会前に練習試合でも他の学校には連戦連勝を繰り広げていた事もあり、近年、その名は広まりつつある。

 

 ダークホースと呼び声が高く、来年の戦車道全国大会では良いところまで行くのでは? とまで言われている程だ。

 

 だが、そんな継続高校の名前が霞む出来事が前回の全国大会では起こっていた。

 

 そう、知波単学園。

 

 近年ではベスト4まで行った実力も霞んでしまい、負けを積み上げてきた名門校。

 

 もはや知波単学園の戦車道は過去の遺物、黒森峰に並ぶ程の呼び声の無い戦車道を繰り広げる学校では無いと烙印を押されつつあった。

 

 だが、そんな前評判を覆すかのように今年の知波単学園は強豪、サンダース大付属。聖グロリアーナ女学院を撃ち破りなんと前人未到の決勝まで快進撃を続けた。

 

 知波単学園の活躍の裏で霞んでしまった継続高校。そんな、継続高校の裏の躍進にはこの三人の一年生が大きく関わっている。

 

 

「…ねぇ、聞いた? ミカ。 今日から短期転校生が来るんだって」

 

「そうなんだ。聞いてないな」

 

「聞いてないってより興味なさげだけど…」

 

「そんなことは無いさ、私は常に何事にも興味があるよ、人生には大切な時が何度か訪れるけど今がその時の一つかもしれないだろ?」

 

「…さっきまで知らなかった癖に」

 

「まぁまぁ、ミッコ…」

 

 

 そう言って継続高校の教室で雑談を繰り広げる三人。

 

 この三人こそが、知波単学園の陰に隠れながも確実な実績を継続高校にもたらした一年生達である。

 

 その三人の中の一人、チューリップハットをかぶり、人生訓のような哲学じみたフレーズを口にする少女は捻くれた様な口調でありながらも余裕がある物腰でこう語り始めた。

 

 

「短い間であれ、この学園に来たのも何かの縁かもしれない」

 

「ん…? 短期転校生を誘うつもりなの?」

 

「いや、まだ顔も見てないからね、戦車道をやるかはわからないさ」

 

「てか、どっからの短期転校生なのよ、アキ」

 

「聞いた話だと私は知波単学園って聞いたけど…」

 

 

 ブロンド色の髪を二つ結びで纏めたおさげ。外見や立ち振る舞いは若干幼げに見えるアキと呼ばれる少女は聞いた話を二人に告げた。

 

 知波単学園、前回の戦車道全国大会2位という快進撃を果たした名門校となれば戦車道全国大会の舞台で戦った彼女達が知らないわけがなかった。

 

 決勝でも、あの絶対王者、黒森峰女学園との激闘を繰り広げ、後一歩のところまで追い詰める程の実力を発揮した。

 

 その立役者である知波単学園のルーキー五人組の活躍は目覚ましいものがあり、特に隊長の辻つつじの懐刀、城志摩 繁子と呼ばれる一年生は戦車道全国大会の中で話題が持ちきりになるほどの人物であった事はこの三人の記憶には新しい出来事だ。

 

 時御流、かつては島田流、西住流と肩を並べるほどの力を持った流派。

 

 その流派を使う五人組の戦い方は決勝の試合を観戦していたミカ達に衝撃的な印象を与えた。

 

 しばらくして、そんな他愛の無い雑談を繰り広げていたミカ達の担任の教師が教室へと入ってくる。

 

 

「はい、では皆さん、お静かにしてください!」

 

「ん…、どうやら先生が来たみたいだね」

 

「ミッコ! 先生来たよ! 前向こう! 前!」

 

「おっとっと!」

 

 

 そうアキから言われ、思わず振り返り真っ直ぐ担任の方へと身体を向けるミッコ。

 

 どうやら、噂の転校生とやらが来たみたいである。ミカ達は顔を見合わせるとどんな生徒がこの継続高校にやって来たのか気になって仕方ない様子であった。

 

 そして、暫くすると担任の教師が口を開き生徒たちに改めてこんな話をしはじめた。

 

 

「今日から短期転校生が知波単学園からやって来ます。…ささ、入って来てください」

 

 

 そう言って、担任は廊下の方へと手招きをして短期転校生を教室へと呼び寄せる。

 

 しかしながら、この短期転校生を呼び寄せてから暫くして、教室へと足を踏み入れて現れた少女の姿に継続高校の生徒たちが一斉に騒めき出した。

 

 それもそのはずだ、戦車道全国大会の決勝はテレビで中継されている。

 

 その見たことのある風貌。そして、あの黒森峰女学園の西住まほと激闘を繰り広げた有名な一年生の姿がそこにはあったのだから。

 

 彼女は何事も無く教室に入ってくると毅然とした態度で教卓に立つ教師の横に並ぶ。

 

 背丈はちっさく、威厳の無い様にも見える。

 

 だが、醸し出される雰囲気はやはり他とは違い異質だった。まるで、そう例えるなら、初めて来た田舎の一面に広がる田んぼの風景を目の当たりにした時の様な雰囲気と言えば良いだろうか。

 

 

「自己紹介お願いできますか?」

 

「知波単学園から来ました。城志摩 繁子です。よろしくお願いします」

 

 

 戦車道全国大会が終わってから、テレビのインタビューや雑誌の取材などで繁子の名を知る機会はたくさんある。

 

 特に戦車道全国大会は女子高生ならば目の当たりにする機会が多い競技だ。西住まほと城志摩繁子の知名度はあの大会からグッと高くなったと言っても良いだろう。

 

 当然ながら、教室からは…。

 

 

『あの娘、雑誌で見たことある』

 

『噂の一年生じゃない? あの娘』

 

『すごい有名人じゃん! …うわぁ! 後で握手してもらおう!』

 

『私、日曜日の夜によくテレビで見かけた事あるよ!』

 

 

 などの声が当然のようにあちらこちらで上がった。

 

 城志摩 繁子。今や黒森峰の西住まほと来年は双璧を成すだろうと言われている一年生ルーキー。

 

 知波単学園の戦車道での後任の隊長に任命されたという話は継続高校にも当たり前の様に知れ渡っている。だが、そんな彼女が何故、継続高校に短期転入してきたのか?

 

 ミカ達はそこが不思議でならなかった。

 

 暫くして、自己紹介を終えた繁子は先生の指示に従い指定された机に鞄を持って座る。

 

 それから、いつものように授業が始まり、皆は先生の講義に耳を傾けてノートをとり始めた。

 

 学生の本分は勉学である。

 

 そして、時間が経ち終わる授業と共に当然ながら繁子の周りにはたくさんの人だかりができていた。

 

 転校生が珍しいのはどこも同じである。

 

 

「ねぇ!ねぇ! 繁子ちゃんってあの城志摩繁子ちゃんだよね!」

 

「すごーい! サイン書いてもらってもいいかな!」

 

「なんでウチに来たの? あ、もしかして! 戦車道する為?」

 

「…あー…えーと」

 

 

 この勢いには流石の繁子もタジタジである。

 

 確かに繁子は知波単学園からこの継続高校に今日から短期転入して来て皆が珍しがるだろうなとは思っていた。

 

 しかしながら、ここまでの反応は正直な話、かなり予想外だった。

 

 だが、クラスメイト達が挙げた事柄に関して、繁子がこの継続高校に来た理由は全く異なっていた。

 

 

「いや、ウチは自分を見つめなおす為にこの学校に短期転校したんよ」

 

「自分を見つめなおす??」

 

「まぁ、ちょっと…しばらく戦車道から距離置こうって考えてなんやけどね、後、うちの事はしげちゃんでええよ」

 

 

 そう言って繁子は柔らかく微笑み寄ってきた皆に応える。

 

 今日からしばらくは同じクラスメイトだ。そこには、皆と仲良くしておかなければならないという繁子の気遣いがあった。

 

 そんな親しみやすい繁子が継続高校のクラスメイトから受け入れられるのには20分も掛からなかった。

 

 

「そうなんだ、大変だったんだね」

 

「せやねん、ウチにもいろいろあってなぁ」

 

「あ、しげちゃんの趣味ってなんなの?」

 

「一応、ギターとかやってるで! あと農業とか建築とか…」

 

「凄いじゃん! ねぇ! ねぇ! 今度バンド誘うから是非聞かせてよ!」

 

「あははー、機会があればやなー」

 

 

 そう言いながら繁子はサラサラーとサインを色紙に書いて希望していた女生徒に手渡す。

 

 農業や建築という話を軽くスルーしているが、彼女達は聞かなかった事にしているだけである。まさか、華の女子高生が建築や農業なんてしているとは夢にも思わないだろう。

 

 すると、そんな繁子の目の前にいつの間にかさらりとした長い髪にチューリップハットをかぶった少女が繁子の机に腰掛けていた。

 

 

「やぁ、君が城志摩 繁子ちゃんかい?」

 

「ん…?」

 

「あぁ! ミカ何やってるの!?」

 

 

 ブロンド髪の少女、アキが静止する間もなくいつの間にか繁子の目の前にミカはいた。

 

 いきなりの突撃、心の準備も何もあったものでは無い。だが、しかし、ミカは動じずに繁子にニコリと笑みを浮かべていた。

 

 そして、彼女はカンテレをどこからか取り出すとポカンとしている繁子にこんな話をしはじめる。

 

 

「風に呼ばれてやって来たのさ、さぁ一緒に戦車道をやろう…」

 

「あ、そのカンテレええな! 結構良い木使ってるやろ?」

 

「えぇ!? 食いつくところそっちなの!?」

 

 

 まさかの繁子の返答に度肝を抜かされるアキ。

 

 だが、話の腰を折られたミカも負けてはいない、ポロンとカンテラを繁子の前で鳴らしてみせると続ける様にこう告げ始めた。

 

 

「このカンテレの良さがわかるなんて…やっぱり私はキミと戦車道をやる運命だったんだ…」

 

「へぇ…確かに11弦やな。 おぉ、この肌触り、ポプラの木やね! 普通、カンテレはポプラや松、ハンノキ、唐檜やけれどええポプラの木を使っとるわ、最古のカンテレは一本の木を刳り貫き、表面に5本の弦を張った楽器やったね」

 

「ごめん、アキ、この娘何言ってるかわからない」

 

「ミカが折れた! 折れたよ! ミッコ!」

 

「嘘ォ!?」

 

 

 そう言って、繁子の勧誘に乗り出し奮闘空しく、全く違う事柄に食いついた繁子に負けを喫したミカは顔を引きつりながらアキに助けを求めた。

 

 確かに、カンテレに詳しい話を転校初日の繁子からぶっこんで来られれば普通の女子高生でなくとも通訳が必要だろう。

 

 ミカも大概マイペースであるが繁子の農家的知識とカンテレ知識がそれを見事なまでに粉砕してみせた。これには同級生のアキもミッコもビックリである。

 

 それよりも気になったのは、何故、ミカのカンテレを触っただけで素材がわかったのかというところだろう。

 

 

「…なんでこのカンテレがポプラの木でできてるってわかったのかな?」

 

「キミも木の気持ちになればわかるで」

 

「やばい、この娘、ミカと同レベルかそれ以上の曲者だよ」

 

 

 そう言って、繁子から木の気持ちになれと告げられて全く理解できないミッコはひたすら顔を引きつらせるしかない。

 

 しかしながら、周りの生徒達はそんな繁子のカンテレの知識に目を輝かせていた。ここまでカンテレの知識が深いと逆に尊敬したくなるのもわかる。

 

 ここは継続高校、フィンランドの伝統が色濃く浸透する学校である。

 

 

「すごーい!しげちゃん物知りなんだね!」

 

「まぁ、北海道で行ってポプラの木調達した事あるからな」

 

「北海道まで行ったの!? 木を調達するためだけにっ!?」

 

 

 とんでもない繁子のカミングアウトにただただ驚かされるばかりの一同。

 

 他にも無人島を開拓したり、戦車作ったり納屋作ったり、全国の厳選素材を集めたラーメン作りをしているのであるが、話せばキリがないだろう。

 

 繁子はとりあえず気を取り直して声かけてきた

 

 

「ところでスナフキンにムーミン」

 

「スナフキン…」

 

「ムーミンって…」

 

「あははは! 確かに二人とも似てる似てる!」

 

「「笑うな!」」

 

 

 そう言って、二人の繁子から付けられたあだ名に大爆笑するミッコ。

 

 確かに似ているといえば似てる。ムーミン谷に高校がありますとこの場で宣言しても何ら違和感が無さそうなところがミッコのツボに入った。

 

 だが、繁子は続けざまにミッコにもこう告げる。

 

 

「キミはミィに似てるな、やっぱりこの学校、ムーミン谷高校の間違いなんやないか?」

 

「「あはははははははっ!」」

 

「よーし! 転校生! いい度胸だ! 誰がスナフキンの姉だ!」

 

「…ミッコ…、私のお姉ちゃんだったんだね」

 

「衝撃の真実」

 

「絶対に嫌だわ! そんな真実!」

 

 

 そんなやり取りをしながら三人を含めた繁子の周りはワイワイと笑い声が溢れていた。

 

 転校初日、いろんな不安があったが、どうやらなんとかやっていけそうである。

 

 継続高校での初日はこうして過ぎてゆく、そして、継続高校のクラスメイト達と話が盛り上がる中で繁子は最後の最後にとんでもない爆弾を投下していった。

 

 

「ちなみにムーミンってトロールらしいで」

 

「そんな真実知りたくなかったよ!?」

 

 

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