ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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※今回はウルトラマンパンツァーの続きになってます


ザ!ウルトラマンパンツァー! 戦車道は世界が救えるか!その2!

 

 ウルトラマンチャレンジ2回目。

 

 残り時間は8分台になりつつある。戦車を駆るまほはいつもよりも神妙な面持ちでバスを見つめていた。

 

 このチャレンジが成功できなければ繁子の美味しいお弁当が食べられない! 愛が籠もった愛妻弁当は何としても手に入れたい。

 

 繁子本人が果たしてそこまで愛情を込めているかはともかくとして、真心を込めた弁当である事は違いはないだろう。

 

 まほの精神力は研ぎ澄まされ、いつにも増して燃えていた。

 

 

「絶対に成功させるっ!」

 

「何故かわかりませんがまほ選手、鬼気迫る顔つきです」

 

「いや、そこまでせんでも…」

 

「死んでも砲弾は必ず窓に入れるさ…!見ていてくれしげちゃん」

 

「やから、死んでもうたら弁当食われへんやないかーい!」

 

 

 メラメラと目に炎を宿すまほの言葉にツッコミを入れる繁子。

 

 確かに自分の弁当を求められて嫌な気はしないのだが、年末年始の企画である事をまほは忘れているのではなかろうか?

 

 そんな気がしてならなかった。というよりもはや企画など知るか! と言わんばかりである。

 

 インカムを使いつつ、まほは妹のみほとコンタクトを取り2回目の挑戦へと移る。

 

 

「それじゃ始めてくれ!」

 

「では! 西住まほさん!2回目のウルトラマンチャレンジ! スタートです!」

 

 

 まほはすぐさまスタートの赤ボタンを押すと同時に戦車へと乗り込み、みほの乗るバスをティーガーで追う。

 

 ぐんぐんとスピードを上げてバスを追うまほ。

 

 だが、まほはそこで一旦ティーガーの走るペースを落とし始めた。これは…?

 

 

「おや! 西住まほ選手! 戦車のスピードを落とした?」

 

「いや、ちゃう…。あれは…」

 

 

 繁子はすぐさま、そのまほの意図に気がつきそう声を溢す。

 

 まほはインカムを使い、バスの中にいるみほとコンタクトを取っている。すなわち、何かしら思うところがありティーガーの走るスピードを落としたのだ。

 

 おそらく、タイミングをずらす為の謂わば調整だろう。先ほどはタイミングはどんぴしゃりだったが逸れた。

 

 すなわち、バスとティーガーが交差点に差し掛かるタイミングを調整する事によってその誤差を補おうという作戦である。

 

 

「はぁ、考えたなー…チェンジオブペースか」

 

「え?」

 

「よう見ときや永瀬、あれは実践でも使われてるもんやで、まほりんなら尚更やからな」

 

 

 チェンジオブペース。

 

 急発進、急停車、もしくはそれらだけでなく戦車のペースを意図的に変化させて様々な局面を打開する技である。

 

 繁子達もよく使う技であるし元プラウダの隊長であるジェーコとの戦闘の際に用いた事がある技。

 

 だが、今回西住まほが使うチェンジオブペースはまた一味違う技なのである。

 

 微妙な調整、そして、速度の上げ下げて走行スピードに違和感を与えずに行う事が出来るそれは普通のチェンジオブペースとは格段に異なっている。

 

 おそらくはあれが、西住まほの強さの秘訣だろう。

 

 微妙な速度の調整と砲撃のタイミング、さらに砲身の見極め、全てが全て、西住まほは高い水準で行う事が出来き、それを指揮しているティーガーに伝達させ行動に移させる事ができる。

 

 

「バスとの間隔は…ん…そろそろか、スピードを上げろ!」

 

「はいっ!」

 

 

 そして、対象物との間隔。空間把握においても西住まほはズバ抜けた天性のものを兼ね備えている。

 

 西住流でさらにそれを洗練し、昇華させたそれは他の誰もが持ち得ない物だ。

 

 繁子やみほ、または、名門校の隊長クラスと評される戦車乗り達はこの空間把握の能力を各自持ち合わせており、そのそれぞれが違ったやり方、流派、方法で昇華している。

 

 誰もが同じではなく、それぞれが違う戦車道を持ち合わせているのだ。

 

 そして、西住流の真骨頂を極めつつある西住まほのその乗り方は誰しもが憧れるような動かし方である。

 

 案の定、まほの計算通りというべきか、交差点に差し掛かるあたり先ほどよりも少しばかり遅めでなおかつ、砲身は開いた窓へと向いていた。

 

 タイミングは噛み合う、そしてその時は訪れた。

 

 

「撃てぇっ!」

 

 

 ズドンッ! と凄まじい音が響くと同時にティーガーの主砲が火を噴く。

 

 先ほどとは違った手段を取り、さらに、そのティーガー主砲の放った軌道は異なる動きを見せる。

 

 その時、繁子は確信した。この軌道は間違いなく行くと。

 

 吸い込まれる様にしてまほの乗るティーガーから放たれた砲弾はバスと交差し、そして…。

 

 ズガンッ!という音を立て、そのバスの中へと吸い込まれていった。バスは微かに揺れはしたものの横転する事なく、その場で停車する。

 

 なんと、ウルトラマンチャレンジ2回目にして西住まほはやってのけた。バスの窓にティーガーの主砲を通すという神業を…!

 

 これには会場も騒然とする他なかった。

 

 まさか、あのチャレンジが2回目にして成功するとは誰も思いもしなかったからだ。

 

 

「に、西住まほ選手決めたァァァ!? 現場からは歓声が上がっております!」

 

「2回目だよ!? んなアホなっ!?」

 

「あの距離で合わせてくるなんて流石だね〜」

 

 

 永瀬の興奮した実況を他所に盛り上がりを見せる外野。

 

 西住流、ここにあり。

 

 まさにそれが体現されたような、状況での一撃だった。神業とはこういうものを言うのであろう。

 

 それを目の当たりにした観客達は惜しみなく握手と賞賛をできる限りこの業をを見せてくれた西住まほへと送った。

 

 静かにそれを眺めていた繁子も笑みを浮かべ嬉しそうに拍手を送る。

 

 西住まほはティーガーで、暫し観客を一望するように凱旋した後すぐさま繁子の元へと駆け寄った。

 

 

「み、見てくれたか! しげちゃん! 私やったよ!」

 

「あぁ、しっかり見てたで、流石やな」

 

「ふふふ、しげちゃんのお弁当楽しみだ♪」

 

「んー…作るって言ってもうたからなー。これは一本取られたわ」

 

 

 そう言いながらにこやかに握手を交わす繁子とまほ。

 

 まほの戦車の腕には繁子も素直に脱帽だ。確かに神がかったチェンジオブペースに加え、タイミング、砲弾の軌道、全てが完璧だった。

 

 繁子も同じように2度でクリアしろと言われてもおそらくはできるかわからない。

 

 これは、みほの協力もあっての事だろうが、目の前で起きた奇跡は誰しもが成し得ることのできないある種の伝説と言ってもいい。

 

 繁子はそんな事を成し遂げてくれたまほが誇らしく感じた。

 

 それから暫くして、バスに乗っていたみほが打ち込まれた砲弾に入っていたであろう弁当を抱えて下車し、まほと繁子の元へと駆けてくる。

 

 だが、その目は涙目だ。一体どうしたのか…。

 

 

「お姉ちゃーん! お弁当の中身ぐちゃぐちゃになってたよー!」

 

「…え…」

 

「いや、戦車に込めて撃っとるんやからそうなるやろ」

 

 

 そこにはぐちゃぐちゃになった弁当があった。

 

 おかしい、チャレンジは間違いなく成功したはずなのに何故だ。そんな、悲しき感情がまほから溢れていた。

 

 普通に考えたらそうなることは明白である。涙目のみほはプクーと顔を膨らませたままジト目でまほを見つめる。

 

 

「これじゃ!しげちゃんのお弁当食べれないよ! もう!?」

 

「いや…、けどだな…。まさかぐちゃぐちゃになるなんて…」

 

「ま、まぁ、また二人分作るから、大丈夫やって、それは永瀬あたりに食べさせるから」

 

「ちょっ!? 私残飯処理かなんかに利用されてない!? リーダー!? 」

 

 

 そう言いながら繁子のぐちゃぐちゃになった弁当を巡り姉妹喧嘩になりそうな所を宥める繁子の言葉に目を丸くする永瀬。

 

 確かにぐちゃぐちゃになった弁当を食べるなんてことは誰でも嫌である。けど、食べ物は粗末にしてはいけない、それが世の常だ。

 

 時御流なら尚更である。

 

 ひとまず、西住まほのウルトラマンチャレンジはこうして成功した。

 

 ありがとう! ウルトラマン!

 

 

「以上! 現場からの中継でしたっ! 続きましては…!」

 

 

 

「はーい、こちらスケートリンク場にいます山口立江でーす。こちらでは氷上に設置されたレストランのテーブルにたくさんのお客様がいらっしゃってますねー」

 

 

 場面が切り替わり、続いてのウルトラマンが居る現場に時御流、山口立江がやって来ていた。

 

 なんと、ここではある出来事が起きて、この氷のレストランでは食事が配膳できていないハプニングが起きていたのだ!?

 

 ここでそのVTRを見てみよう。

 

 

 そうそれは数時間前。

 

 

『あー、今日もお客さん沢山だわ、多代子3番テーブルにラーメン一丁!』

 

『へい! かしこまり! あねぇ!』

 

 

 ここのレストランでは連日、時御流0円食堂の噂を聞きつけて沢山のお客さんが足を運んでいた。

 

 寒い冬の中、足を運んでくれるお客さん。だが、厨房は火を使うために熱い熱気で包まれていた。

 

 そこで、バーナーを握りながら汗をかいていた立江は厨房にいる真沙子に…。

 

 

『あ、ごめん真沙子!窓開けてくれない?』

 

『おっけー。んじゃ開けとくわー』

 

 

 窓を開けるように頼んだ。

 

 レストランに居たお客さんは防寒着を着ていたり、ソ連っぽいお子ちゃまみたいな娘がいたり、暖かい紅茶を口に運ぶ英国淑女が居たり、カンテレを弾く胡散臭い娘が居たりと個性豊かな者たちばかりである。

 

 そんな事もあり、レストランで起きて居た異変に時御流の立江達は気づいて居なかった。

 

 まさか、こんなことになるなんて…。

 

 

『紅茶はまだかしら?』

 

『はい! ただいま…ってあだぁ…!』

 

『ちょっ! 多代子大丈夫って…? なんじゃこりゃあー!』

 

 

 お客さんに運ぶ紅茶をテーブルに持って行こうとした時だった。

 

 多代子がいきなり転倒し、心配した真沙子が厨房から顔を出すとそこには…一面に広がる氷の床が…!

 

 そう、なんと! 真沙子が開けた窓から外の冷気が流れ込み、それにより床が凍りついてしまったのだ!

 

 しかし、レストランに居るお客さんは個性派ばかり。

 

 イタリア料理を頼んでいた黒リボンで結んだ銀髪ドリルツインテールの女生徒は不満げにこう声を上げる。

 

 

『おーい! 私のパスタはまだかー!』

 

『ちょっと! カチューシャのショートケーキはまだなの!? 早くしないとシベリア送りにするわよ!』

 

『…早くしないと紅茶が冷めてしまう…冷たい紅茶は美味しいとは言い難いわ』

 

『せっかくタダ飯を食べに来たのに、お腹が減ったねアキ』

 

『料金を払う事も選択肢に入れようよっ!? ってかクレーム入れるの間違ってるよ!ミカ!』

 

 

 それに続けとばかりに噴出していくレストランのお客さんの声。

 

 これではまずい…営業どころの話ではない。どうにかしなければ…。しかし、こんな風に凍りついてしまった床では滑って怪我をしてしまう。

 

 ん…滑って…。

 

 ここで立江は閃いた! そうだ! レストランを滑り料理を運べれば!

 

 そして、偶然にもこの店にはスケート仕様にしてあるT-34/85とスケートシューズがなんと店奥に置いてあるではないか!

 

 そんな時だった。立江達の前に黒髪のブリザードと金髪のロシア人美少女が現れる!

 

 

『タツエ、待たせましたね』

 

『Добрый вечер』

 

『あ、あんた達は! まさか!?』

 

 

 そして、その困難に挑むウルトラマンとは一体何者!?

 

 謎が謎を呼ぶ年末年始! ウルトラマン達の新たな挑戦が始まる!

 

 ザ・ウルトラマンパンツァー!

 

 氷の上で戦車を滑らせながらレストランのお客様に料理を配膳出来るのか!?

 

 

 次回に続く!

 

 

 


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