ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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ついに! やってきたわに!

 

 継続高校との強化合宿が決まり、新入生達の指導方針が固まった繁子達。

 

 そんな、繁子達は今、ミカ達を連れてショッピングモールへと息抜きがてらに繰り出していた。

 

 両手にはショッピングモールで購入した服や戦車ショップで購入した戦車製造に必要最低限の部品、そして、日用雑貨品など様々な物である。

 

 

「いやー、たまにはこういうのも良いわね」

 

「女の子らしいことしてる気がするよ」

 

「私ら全部1から作ってんもんね」

 

「言えてる」

 

「いやいや、全部1から作ってるって…」

 

「まず買うって発想がなかったからね、私ら」

 

 

 ワイワイと雑談をしながらショッピングモールを歩く立江達。

 

 確かに、買うよりも自作することの方が時御流的には多い事だろうが、それにしてもショッピングモールに足を運んだのが久々だというのは年頃の女の子としてはどうなのだろうか?

 

 そこは、立江曰く、農家をしている方々に要らなくなった物を貰いに行く頻度の方が多いという事だった。

 

 果たして年頃の女の子がそれで良いのだろうかというアキの疑問はこれが時御流だから致し方ないで片付いてしまった。

 

 短期入学を繁子がしていた間、共に戦車道をしていた中で時御流がどういったものかもおのずとわかって来るというものだ。

 

 さて、それはさておき、ショッピングモールを歩いている立江達だが、真沙子と繁子、永瀬、ミカの姿が見当たらない、どうしたのだろうか?

 

 そのことに気がついた多代子は立江にこう質問を投げかける。

 

 

「あれ? リーダー達は?」

 

「あー、しげちゃんなら真沙子とミカと一緒にケーキ食べたいからってさっきルクレールに行ったわよー」

 

「あ、戦車喫茶とかいうあの!」

 

「そうそう、真沙子の奴がルクレールのケーキ見て自作してみたいって言っててさー」

 

「なるほどねぇ、それでか」

 

 

 そう言いながら、多代子は立江の言葉に納得したようにポンと手を叩く。

 

 戦車喫茶ルクレール、他校の生徒達もよく通う戦車型のケーキが自慢の喫茶店である。

 

 戦車型の呼び鈴を押すと90式戦車の発砲音が鳴り、出てきたウエイトレスは注文を受けると挙手の敬礼をして去っていくという独特なおもてなしがされる。

 

 今の戦車道をやっている女子高生などに非常に人気が高い喫茶店なのである。

 

 さて、一方、そんな喫茶店でケーキを頼んだ繁子達一同はというと?

 

 

「…このケーキ、…うん、福島産の卵を使っとるね」

 

「これは非常に美味ね、ちなみにどのレベルから作ってるのかしらね?」

 

「これ、すんごい美味しいよ! 真沙子作れそう?」

 

「まぁ、食べた感じ材料はわかるし、後は慣れかな? 二週間あれば作れるかもしんない」

 

「それは大したもんだね、是非ともご馳走になりたいな」

 

 

 そんな感じの会話を苦笑いして敬礼をするルクレールで働いているウエイトレスの目の前で繰り広げていた。

 

 食べただけで大体、原材料などは予想がついてしまう。流派の定めとはいえ、店の商品を再現できると豪語してしまう真沙子のスペックは相当なものだろう。

 

 そんな中、繁子達は注文し出されたケーキを味わいながら食べていた。独特な形状のケーキだが味の方は言わずもがな、とても美味で女の子に人気が高いのも頷ける。

 

 最近、忙しくなり、新入生の模擬戦やら指導、さらに、強化合宿での試合形式の練習を幾度も行ってきた。

 

 こういう息抜きの場もたまには必要不可欠なものである。

 

 

「ケーキ美味いよねー」

 

「ところでしげちゃん、聞きたいんだけど、今年はどんな感じかな? 手応え的には」

 

「ん? 手応えって?」

 

「戦車道全国大会の事さ…。今年の新入生の戦力を見た限りで狙えそうかい?」

 

 

 そう言いながら、ミカは戦車型のチーズケーキを口に運び首を傾げる繁子に対して問いかける。

 

 新入生の戦力、新しい戦車の製造、さらに、継続高校との強化合宿。

 

 それらをこなしている中で繁子自身が手応えを感じているかどうか、ミカはその事について気になっていた。

 

 繁子はそんなミカの質問に首を傾げたまま悩ましそうに顎に手を当て『んー…』と声を出して考え込む。

 

 手応えのほどは間違いなくある。そして、対黒森峰に関してのシュミレーションも何回か頭の中で考えてやってみた。

 

 その事を踏まえた上でミカに答えるならば。

 

 

「あぁ…まぁ、対黒森峰女学園のシミュレーションは何度か考えてはみたけど、手応えは確かにあるよ」

 

「ほほぅ、そうかい?」

 

「うん、まぁ、戦車道全国大会は戦車強襲競技とは違って…」

 

「ーーーーちょっと聞き捨てならないわね」

 

 

 そう言って、繁子の話を遮り、ルクレールの他の席に座っていた女生徒が立ち上がるとツカツカと足をこちらに進めてきた。

 

 真沙子に負けずとも劣らないつり目、それに、薄い銀髪掛った亜麻色の長い髪に透き通った瞳、全体的にスラッとした美少女は顔をしかめたまま話をしてた繁子の眼前まで迫ってくる。

 

 見たところ、黒森峰のタンクジャケットを身につけてる。どうやら、黒森峰について話していた事が彼女の癇に障ったらしい。

 

 

「対黒森峰のシミュレーションですって? 貴女、全国9連覇してるウチの高校に挑戦しようとか思ってるの? もしかして?」

 

「ん…? あんたは…一年生?」

 

 

 そう言いながらが椅子に座る繁子の眼前で腕を組んだまま見下ろす形で告げる黒森峰の女生徒。

 

 そんな女生徒に繁子が首を傾げたまま目を丸くして訪ねる。

 

 黒森峰女学園ならば繁子の事を知っていても不思議ではなさそうだが、一年生ならば知らぬのも無理はないだろうとそう思ったからだ。

 

 すると、暫くして、その一年生はドヤ顔を浮かべたまま自信満々にこう語り始める。

 

 

「そうよ、私の名前は…」

 

「ほぉ、見ない間に随分とデカい口を叩くようになったわね〜…ねぇ? ウチのリーダーに何か用事かしら? エリカ?」

 

「あん? 誰よ! 私の名前を…」

 

 

 その時だった。語ろうとした一年生の動きが話しかけてきた真沙子の姿を見てピタリと止まった。

 

 そして、それに呼応するかのように永瀬の目が嬉しそうにキラキラと輝いている。まるで、長年あっていなかった愛犬を発見したようなそんな眼差しだった。

 

 一度視線を逸らし、その後暫くしてから、さながら、機械のようにギギギっと首をゆっくりと動かし、声がする方へ再び視線を向けるエリカと呼ばれた一年生。

 

 その視線の先、ニンマリと満面の笑みを浮かべていた真沙子を見つけた瞬間、エリカは仰天したような声をあげた。

 

 

「げぇ…!? マサねぇ! なんでこんなとこに!智代姉ぇまで!」

 

「いやーあんた黒森峰に入ったんだ。久しぶりねー」

 

「北登! 北登じゃん! 元気にしてたかー! よしよしよしよし!」

 

「ぎゃー! 智代姉ちゃんやめてー!」

 

 

 そう言って、驚いたように声を上げたエリカに永瀬は近寄ると抱きつき、ワシワシと頭を愛でるように撫で始める。

 

 その様子を目の当たりにしていたミカと繁子は目を丸くして首を傾げる。どうやら見たところこの黒森峰女学園の一年生は真沙子達の知り合いのようであった。

 

 髪の毛をひたすらワシワシと永瀬から撫でられ続けたエリカは肩で息をしながら中腰の姿勢を取っている。ひと段落ついたとこで、ミカは真沙子にこう質問を投げかけた。

 

 

「知り合いかい?」

 

「ウチの従姉妹の逸見エリカ。私が生まれたのが先だから一応、妹分って事になるのかしらね? ちっさい時から智代と私とたくさん遊んだ仲よ、エリカの事は智代はたくさん可愛がってたかしらね」

 

「北登って言ってね! ちっさい時からずっと私らの後ろからついて来てたんだよー!」

 

「や、やめて! いや、確かにそうだったけどさ! 昔話すると私のイメージっていうか!」

 

 

 エリカは顔を真っ赤にしながら左右に首を振り恥ずかしそうに真沙子に近寄り懇願する。

 

 積もる話もあるだろうから、繁子はとりあえずミカに席を詰めてもらいエリカが座れるスペースを作ってあげた。

 

 とりあえず、エリカは顔を真っ赤にしたまま顔を両手で抑えて静かに繁子に勧められるまま、その席に着席する。

 

 そのエリカの姿はさながら子犬のようであった。

 

 

「いやーエリカちゃんの元気な姿が見れてお姉ちゃん嬉しいよ! ほら! ケーキ頼みな! お姉ちゃんの奢りだからさ!」

 

「最近、調子はどんな感じ? 上手くやれてんの?」

 

「あ…、う、うん、大丈夫だよ、一応、黒森峰の機甲科に入ったし、成績もそれなりに挙げてる感じかな」

 

「そっか! 私らとしても北登が黒森峰に入るなんて予想してなかったからさ! ね! マサねぇ!」

 

「そうよねー、こんな驚いたのはエリカと新種のワニを見つけた時以来かしら」

 

 

 そう言いながら、真沙子と永瀬は感慨深そうにエリカとの思い出しながら話をする。

 

 新種のワニを発見、その真沙子の言葉を聞いた繁子とミカの目は興味を抱き、キラキラと輝いていた。

 

 それもそうだろう、ワニを発見する事自体滅多に無いというのに発見したのが新種のワニとなれば気になるのも致し方ない事だ。

 

 テンションが上がり興奮気味の繁子はその話について真沙子とエリカに問いかける。

 

 

「えぇ!! 新種のワニやって! どんな感じのワニやったん! 何処で見つけたん!」

 

「あれいつだっけ? 確か中学生くらいだったかな?」

 

「確かそんくらいだった気がする」

 

「川辺で鮎取りしようか! って話になってさ、それで散策してたんだよね」

 

 

 楽しげに話をし始める真沙子達。

 

 まさか、鮎を捕まえに行ったらワニを発見する羽目になるとは思いもよらないだろう。しかし、彼女達はその時に見つけたのだと繁子に語る。

 

 そして、そのワニを発見した第一発見者はなんと繁子の隣にいたエリカだと言うのだ。

 

 

「あん時は面白かったよね! ワニを捕まえたテンションで嬉かったんだろうけどさ! 鮎取りに川辺に来た瞬間、エリカが言った第一声が…」

 

ついに! やってきたわに!

 

「そうそう! ドヤ顔だったから尚更可愛くてさ、思わず笑っちゃって」

 

「そ、それ今言うかな! あの時は確かにはしゃぎすぎてたのは認めるけど!」

 

 

 そう言いながら、真沙子と永瀬の言葉に顔を真っ赤にして慌てた様子を浮かべるエリカ。

 

 どうやら、エリカは2人によほど可愛がられていた事が伺える。親戚間だろうが真沙子と似てる部分もあるし、まるで姉妹みたいで微笑ましいと繁子は思った。

 

 

「戦車強襲競技でついた渾名もクロコダイルのエリカだったもんね」

 

「戦車強襲競技って言えば、2人ともコンビ組んでた時の渾名がツンデレシスターズとか言われてなかったっけ?」

 

「「ツンデレ言うなっ!」」

 

「あはははは! まぁ、確かに従姉妹だけあって目元とか立ち方とか似てるもんなぁ2人とも」

 

「確かに横顔とか真沙子に似てるね」

 

 

 ワイワイと賑やかに話す真沙子達に笑いながらミカと繁子は告げる。

 

 しかしながら、気になるのはそのワニについてだ。果たして、そのエリカが発見したという新種のワニは今はどうなっているのだろうか?

 

 そんな疑問を抱いた永瀬は首を傾げたままエリカにこう訪ねる。

 

 

「そう言えば北登、あのワニは今どうしてるわに?」

 

「わに!? なんで語尾がわにになってるんですか! い、いや、今ウチで飼ってて…結構大きくなってますよ?」

 

「ちなみにワニの名前はなんにしてんの? 新種のワニなら名前とか付けられるんやない?」

 

「新種のワニの名前はツイニヤッテキタワニになったわよ、また新たに最近発見例があったとかでテレビで特番やってたわに」

 

「真沙ねぇまで〜! ツイニヤッテキタワニって不本意で決まった名前なのに!私が付けた名前じゃないのにー!」

 

 

 そう言いながら、2人にイジられルクレールの席に顔を真っ赤にしたまま沈むエリカ。

 

 確かに新種のワニを捕まえた高いテンションでついにやってきたわに! と叫んだものがそのまま新種のワニの名前になってしまうのだからエリカとしては恥ずかしいことこの上ないのだろう。

 

 そうなるのも仕方ないわに。

 

 そんな感じで昔話に華を咲かせていると、ルクレールの出入り口からまた黒森峰の制服を着た生徒が入ってきた。

 

 その顔は繁子達には見覚えがある。黒森峰女学園の隊長、西住まほと妹の西住みほの2人だ。

 

 2人はルクレールに入ってすぐに席に座るエリカの後ろ姿を見つけるとこちらへと足を進めてくる。

 

 

「おや、エリカ、もう来てたの…って、しげちゃんじゃない、それにミカや真沙子達まで」

 

「やぁ、ご無沙汰だね、まほ」

 

「まほりんとみぽりんやん! アンツィオの練習試合以来やね!」

 

「しげちゃん! こんにちわ! 元気にしてた!」

 

「また随分と賑やかになってきたわね」

 

「うぅ…どうしてこうなった…」

 

 

 そう言いながら、人が増えてきた事に苦笑いを浮かべる真沙子とうちひしがれるエリカ。

 

 ゆっくりとルクレールでコーヒーを飲みながらケーキを食べるつもりがこれでは賑やかになり過ぎである。

 

 いつもの事だが、毎回こんな風に人が集まるなら毎度パーティーが開けるんじゃなかろうか。

 

 新たに2人が話に加わり、一層賑やかになる戦車喫茶ルクレール。

 

 

 さて、その話の続きは…!

 

 

 次回、鉄腕&パンツァーで!

 

 


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