ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか? 作:パトラッシュS
前回、戦車喫茶ルクレールで真沙子の従姉妹、黒森峰女学園の一年生、逸見エリカと遭遇することになった繁子達。
久々の再会を喜ぶのも束の間、なんと、今年の黒森峰女学園の主軸である隊長、西住まほと西住みほも話に加わり、あっという間に彼女達の周りは賑やかに!
というわけで、今回はそんな西住姉妹が加わったところから彼女達を交え、繁子達のルクレールでの話が始まる。
「…てなわけで、さっきまでワニさんの話で盛り上がってた訳よ」
「ほほぅ、新種のワニか、私も見てみたいな」
「西住隊長…! いや是非うちに見に来て…!」
「ねぇ? しげちゃん、機会があれば私達も新種の生物を見つけたりしてみたいわよね」
そう言いながら、まほは柔らかく笑みを溢してコーヒーを口に運ぶ繁子に問いかける。
新種の生物の発見、確かに幼き日には繁子と西住まほ、西住みほの3人は戦車を作り上げた事はあれど、成し遂げることができなかった事だ。
コーヒーを一口飲んだ繁子はそれをゆっくり元の場所に戻すとまほの言葉に頷き、こう話をしはじめる。
「せやね、って言うかまほりん、新種の生物ってなかなか見つからへんもんなんやで? 絶滅危惧種のゴブリンシャークならこの間見かけたけど」
「ほんと! しげちゃん! それどんな感じの魚なの!?」
「ほれ、それ、そんときの写真な?」
「うわぁ…なんだか怖い魚だねぇ」
「深海魚やからな? あんこうとかと一緒やで?」
「これは、すごい型をしたサメだな。見たことがないよ」
そう言いながら、隣で写真で撮ったゴブリンシャークの写メを西住みほと西住まほの2人に横並びになって見せてあげる繁子。
そんな2人の様子を見ていたエリカはなんだか落ち込んだようにシュンと丸くなる。ワニがサメに負けてしまったのがショックだったようだ。
それを横目で見ていた真沙子は仕方ないと言った具合にため息を吐く、これは、可愛い妹分にフォロー入れてあげるべきだろうという気遣いからだ。
繁子も真沙子のアイコンタクトを見てその事を勘付いたのか話題を変えはじめる。
「そういや、エリカちゃん、さっき話してたその新種のワニってどんな感じなん? やっぱり可愛い?」
「なんつっても新種のワニだからね〜、ね? エリカ」
「え? う、うん、餌とかあげるとよく懐いてくれるかな?」
「せやったらまほりんも一見の価値ありやで! 新種のワニなんてそうそうお目に掛かれへんしな!」
「む、そうね…。それじゃエリカ、来週の週末、見に行っても良いかしら?」
「!? …は、はい! 是非、来てください!ツイニヤッテキタワニってワニなんですけど!」
伊達に長年、MCを張って来たわけではない。
その気概を見せたと言わんばかりに繁子はアイコンタクトを送った真沙子と小さなサムズアップを交わす。
ワニさんの話で盛り上がるエリカの話を暫く聞きながら、繁子達はルクレールのケーキを食べつつコーヒーを口に運ぶ。
そして、そんな中、ふとした疑問がエリカの中で思い浮かび、話を変えるようにして質問をまほとみほに投げかけはじめた。
「ところで、話は変わるんですけど、西住隊長と副隊長は…、その、繁子さんとはどういう間柄なんですか?」
「エリカさん。私の事は同級生なんだからみほで良いよ、んーそうだね…」
「一言で言えば幼馴染で、しげちゃんは戦車道流派、時御流家元だよ」
「と、時御流? 時御流って真沙姉ぇや智代姉ぇと一緒の!?」
「しかも、現当主。だからリーダーって言ってんでしょ? さっきから」
「えぇ!?」
「あーいや、大したことあらへんからそんな驚かんどいてや…、没落流派やしな? ウチは」
今頃、事の重大さに気付いたのかエリカは驚いたような声を上げて唖然とする。
時御流と言えば、最近ではよく耳にする戦車道流派である。
黒森峰女学園のライバル校の知波単学園が最近、その時御流を主流にして、長年、伝統にしている突撃戦術をより一層強化しているという話は同じクラスの女生徒からもエリカは聞いていた。
それに、従姉妹の真沙子や永瀬もまた時御流という話である。
2人の戦車道の腕を知っているエリカからすれば、まほやみほ、従姉妹の真沙子達の話を聞いて繁子という存在が一気に凄い人物に感じられた。
黒森峰女学園隊長である西住まほも副隊長であり妹であるみほも彼女に何故、此れ程、親しいのか納得がいく。
「しげちゃんは今の知波単学園現隊長だよ、それに、そこにいるミカは…」
「継続高校隊長のミカだよ、よろしくね?」
「は、ははは…。まさか、各学園の隊長やってる方にこんな風に会うとは思いもしませんでした…」
恐縮したまま、エリカはミカから差し出された手を掴むと握手を交わし、現在、自分がいる状況に顔を引きつらせる。
そんな中、真沙子は恐縮しているエリカの肩をポンと叩くと笑顔を浮かべてこう話をしはじめた。
それは、次の戦車道全国大会に向けての意気込みである。今年の戦車道全国大会にかける思いは知波単学園は並々ならぬものを抱いているのだ。
「まぁ、黒森峰女学園とはライバル校だしね、ウチはさ? てな訳で今年の優勝旗は貰うわね?」
「まほりんとは決勝で去年やられとるから今年はその借りを返さなあかんからね」
「ふふ…、そうはいかないさ、優勝は今年もウチだ」
「みぽりんもおる事やし、時御流と西住流の鎬を削り合うには丁度ええやろ」
「えぇ…、でもそっか、しげちゃん達と私達、戦うことになるのかぁ。でもそれはそれで楽しみだな」
「ふふ、それじゃウチは共倒れしたところを優勝旗を横から頂こうかな?」
「お! それミカ達らしいって言えばらしいなぁ」
「なんにしても次の戦車道全国大会が楽しみね」
そう言って、今年の戦車道全国大会に向けての意気込みを語る一同。
今年は一年生にみほもエリカも黒森峰女学園にはいる。優秀な人材には困ってはいない上、はっきり言えば去年よりも黒森峰女学園はかなり強い。
繁子はその事をわかっている。だが、知波単学園の一年生にも絹代もいるし、なにより、東浜雪子が指導官として指導をしている。
今年こそは優勝、誓いを果たすべきは今年だと繁子達は決めていた。
ふとそんな時だ、繁子はみほのバックについてあるキーフォルダーの人形に目がいく。
「あ! みぽりん! それまだ使ってくれてたんや!」
「ん…? あーこれ? うん! しげちゃんが作ってくれたボコ人形だよ! 年季が入っててボロボロになりつつあるけど、自分で裁縫とかして直したりしてから使ってるんだ」
「なんだかもう数年になるからこれはこれで味が出てきとるね♪」
「ボコボコになってる方がやっぱりボコは可愛いよね!」
「「だってそれがボコだから!」」
みほが見せてきたボコの人形について2人は意気投合したように満面の笑みを浮かべる。
恐らく、ボコが好きな者同士通じるものがあるのだろう。こればかりは周りの者達にはわからない独特の感性であり2人にしかわからない趣味であった。
だが、この光景を見ていたまほは『むぅ…』と面白くなさそうに声を溢していた。どうやらボコ好き同士の2人の会話に語れないのでふてくしているしているようだ。こういうところは昔から変わっていない。
そんな中、ミカは自前のカンテレを演奏しはじめながらコーヒーを口に運んでいた。それを見ていた真沙子は関心したように声を溢す。
「へぇ〜…こんな風な演奏曲もあるのね」
「戦車での士気向上なんかに役立つんだ。こんな風にゆっくりコーヒーやケーキを飲んだり食べたりする時とかにもね? 頼りになる相棒だよこの子は」
「カンテレの演奏ってなんだか難しそうね…」
「カンテレで思い出したんだけどそういえばさ確かワニの皮とかでコーティングした楽器とかなかった?」
「うぇ!? そ、それって本当! 智代ねぇ!」
「あーそれ、ヴァイオリンとかね、確かあったかもしれないわ、てか、ワニ革なんて財布にもよく使われてるしね」
真沙子は顔を真っ青にして永瀬に質問してくるエリカに代わりに淡々と答える。
確かにワニ革を使った財布やバック等は多い、そう考えると、エリカが飼っている新種のワニから取れた革で財布を作ればかなりの価値が出る代物になるだろう。
だが、愛着があり、長年、エリカが愛情を注いできたワニの皮等剥ぐなんてことは彼女自身が微塵も思っていなかった。それどころかドン引きしている始末である。
「ワニさんは用途がたくさんあって色々便利わに」
「自然の恩恵はやっぱりありがたいわにねー」
「ん? なんだか不思議な語尾だな? 最近の流行りのというものか何かか?」
「まほりん、知らないわに? こんな風に語尾にワニを付けると戦車道の腕が上達したりするんやでわに」
「そうだったんだ知らなかった…わに」
「なら私も付けるようにしてみるわに」
「!? 無いです! 無いですから! 西住隊長!騙されたらダメです! みほも乗らないでよー!」
「やっぱりエリカを弄るのは楽しいわに」
そう言って完全に繁子達に乗せられているまほ達に顔を真っ赤にしながら止めに入るエリカ。
この調子だと黒森峰女学園の戦車道を専攻してる機甲科の女生徒達が明日には語尾にわにを付けるようになってしまう。エリカはそれだけは何としても避けたかった。
黒森峰女学園にまさかのワニブーム到来、そうなってしまえば毎日、恥ずかしい黒歴史を思い出しながらエリカは戦車道に努めなければならなくなる。
エリカから使っても戦車道が上達することはないと言われたまほはなんだか残念そうな表情を浮かべてショボンとしていた。
「そうか…この語尾、可愛いから暫く使ってみたいなと思っていたんだが、残念わに」
「!!…いえ! 西住隊長ならなんの問題も無いかと思われます! むしろバンバン使ってください!」
「えー…何そのテノヒラクルー。私らは使っちゃダメなのー」
「ねぇーねぇー」
「ちょっ…!真沙姉ぇ達!頬をツンツンしないで! えぇい! やめい!」
そう言いながら真沙子と智代から頬をツンツンされてるエリカはやられるがままそう言って2人から離れる。
だが、頬をツンツンしていた2人からはジト目、エリカは顔を引きつらせたまま『うっ…』と後退りしてしまう。
そんな、エリカや真沙子達3人の微笑ましい光景を見ていた繁子、ミカやまほ達は面白そうに笑顔を溢していた。
「あはははは! …冗談さ、さてそろそろ時間だ。午後から演習があるから私達は失礼しようかな」
「ふふふふ、そうだね、今日は面白いものが見れた。しげちゃん、私達もそろそろ出ようか」
「ん? もうそんな時間になるかいな…。ほんじゃルクレール出ようか?」
「ケーキも食べれたし、久々にエリカは弄れたし満足満足」
「あのさ、真沙姉ぇ、最後のはいらなかったわよね!」
そう言いながらワイワイとルクレールの席から荷物を持って立ち上がる一同。
何はともあれ、ルクレールでの有意義な時間を過ごした彼女達は店から出るとそれぞれ別れてゆく。
「それじゃまた」
「うん、じゃあまた! 元気でな!」
「エリカー、あんましまほりんに迷惑掛けるんじゃないわよー」
「わかってるってば! 覚えときなさい! 絶対、真沙ねぇなんてぶっ倒してやるんだから!」
「おー! 活きがいいね! そん時を楽しみにしてるわ」
「頑張るんだよ! 北登! また撫で撫でしたげるからね!」
「う…っ! …智代姉ぇ、それは勘弁してよ〜」
そう言いながら、涙目で捨て台詞を吐いてゆくエリカに満面の笑みを浮かべて手を振り見送る真沙子と永瀬の2人。
従姉妹である真沙子に強気な発言に対し、永瀬の言葉に関してはエリカはタジタジであった。面倒見がいい永瀬から可愛がって貰った事もあるのでそうなってしまうのも致し方ない事だと言える。
まほ達の姿が見えなくなるまで手を振り、見送った繁子達御一行。
帰り際、特に真沙子と永瀬は久々に会った妹分のエリカに会えてご満悦のようだった。
今年は妹分である彼女と機会があれば対峙して、戦車道全国大会を戦うことになるだろう。そう考えると嬉しさが込み上げてきたからかもしれない。
「さぁて、ウチらも頑張りますか!」
「お! 智代! やる気じゃん!」
「とりあえず立江達と合流しよう、もう買い物も終わってる頃合いだろうしね」
「賛成! ほんじゃはよ合流して知波単帰ってから戦車作りに取り掛かるか!」
「「「おー!!」」」
真沙子の従姉妹、エリカとの邂逅。そして、次の戦車道全国大会に向けて気持ちを新たに帰路へとつく繁子達。
この先、彼女達に待ち受けている難敵達を乗り越えていけるのだろうか!
目指すは戦車道全国大会決勝戦!
さて、この続きは…。
次回! 鉄腕&パンツァーで!