ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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今後の方針

 

 プラウダ高校との練習試合を終えて。

 

 辻達を加え、繁子達は次の戦車道全国大会に向けての準備を行っていた。

 

 というのも次の大会に向けての課題が浮き彫りになった今回。繁子にも思うところがあった。それはやはり、チハだけでは戦えないというところだ。

 

 チハがダメなわけでは無い、チハを生かすためにチハ以外の戦車に乗る。これにより、その戦車の弱点をチハで補うことを前提にした戦法が組めるという算段だ。

 

 

「はいちゅうもーく! 戦車道において戦術や戦略はとても重要。つまり、チハ以外の戦車を作る事でその幅を広げようというわけや」

 

「なるほどな…つまるところ、黒森峰のマウスなどに対抗するためという事だな」

 

「さすが、その通りやで隊長」

 

 

 そう言って、繁子は解説をしながら隊長である辻の言葉に頷く。

 

 別に突撃の伝統を捨てたわけでは無い、ただ、単調な突撃よりも幅を持たせた相手の度肝を抜くような突撃が必要だと繁子は言う。

 

 

「ふーんなるほどね」

 

「プラウダ戦で突撃した戦車はみんなやられちゃったしね」

 

「突撃して壊した戦車は整備科と一緒に乗ってた人物に修理させてるで。自分の壊したものは自分で直す。これがウチらの戦車道の基本やからな」

 

 

 そう言って、スクリーンを変えて先日プラウダ高校に突っ込んでボロボロになったチハを指示棒を使い示す繁子。

 

 確かに繁子の言う通りだ。自分の愛する戦車であれば壊したなら自分で修理して直す。

 

 戦車を愛せば、愛する戦車もそれに応えてくれる。亡き母、明子が常々、繁子達に言い聞かせてくれた言葉だ。

 

 一緒に戦ってくれてありがとう。私の戦車道に付き合ってくれてありがとう。

 

 そう言った気持ちを込めて修理や洗車をしてあげればその戦車にも愛着が湧くというものだ。そうなれば無茶なタイミングで突撃をする事や戦車を無下に扱うような戦い方はしない筈。

 

 繁子はそれを知波単学園の機甲科のみんなに理解してもらいたかった。

 

 

「わかった。繁子、お前の言う事は確かにと私もそう思うよ」

 

「…辻隊長」

 

「皆、そう言う事だ。我が知波単学園の伝統を捨てるわけでは無い。しかし、気づかされた。練習試合や今までの試合を振り返って、私達の戦車道に足りなかったものが」

 

「はい!」

 

「確かに繁子ちゃん達が言う事は私にも理解できます」

 

「それじゃ、みんな…」

 

「あぁ、君らが作るという戦車。私達にも協力させてくれ。知波単のエースだからな! 繁子は!」

 

「マスコットだよ! 隊長!」

 

「そうですよ! しげちゃんはうちのマスコットです!」

 

「…いや、あの…やっぱりマスコットの定位置は変わらへんのやね」

 

 

 繁子はズルとずっこける。

 

 せっかく隊長がそれらしい事を言っていたのにどうにも最後が締まらない。それが、繁子らしいといえば繁子らしいとも言えた。

 

 その後、繁子達はブリーフィングを終えてそれぞれ戦車の製造に取り掛かる事にした。

 

 

「よし!それじゃ取り掛かるか! まずは資材の調達やね!」

 

「我々は先日壊した戦車の修復から取り掛かるよ」

 

「了解や、んじゃうちらは他の学校からいらん部品ないか聞いてくるんでこちらは任せましたよ隊長」

 

「おう! みんな! スパナは持ったな! 行くぞ!」

 

「「おー!」」

 

 

 こうして、戦車道全国大会に向けて皆の意思が一つとなり、その為の行動が実行に移されることになった。とりあえず辻隊長を含むメンバーはまずは戦車の修復に取り掛かる。

 

 

 

 そして、繁子達だが、まずは戦車の原材料となる部品からの調達。

 

 他校でいらなくなった戦車を引き取るという形をとりつつ、それを違う形に変えるという作業だ。

 

 繁子とともに学園から出た永瀬と立江の二人はまずある学校を訪れることにした。

 

 それは…。

 

 

「…うん。この部品、まだ使えるね」

 

「ほんとに貰っていいんですか?」

 

「Да。もちろんよ、先日はおいしいマグロ料理や蕎麦を振舞ってくれたからね」

 

「あ、あのマグロですね!」

 

「あれ、実は繁子の実家で養殖してるマグロなんですよ」

 

「Правда?(ほんとに?) それは凄いわね!」

 

「プラウダ? はい、今私達プラウダに来てますよね?」

 

「違う違う永瀬、ロシア語で本当?って意味よ」

 

「タツエは賢いのね! やはりウチに欲しいわ! うちの副長はロシア語が全然ダメでこまってるのよ」

 

「聞こえてますよ! 隊長!」

 

「あら、スタルシーいたのね貴女」

 

「酷い!?」

 

「あはは…」

 

 

 そう言いながら、先日、練習試合を行ったプラウダ高校の隊長ジェーコから部品を頂く立江と永瀬。

 

 そんな部品を受け取る立江を見るジェーコは首を傾げていた。それは、そもそも、要らなくなった部品なんてものを集めるなんて事を何故行っているのかについてだ。

 

 知波単学園も名門ならば金銭面はある筈。だからこそ、こんな風に立江や永瀬が訪ねてくる意味がわからなかった。

 

 

「部品くらい買えば良いじゃない、知波単学園は名門でしょう? 金銭面なら…」

 

「私達に買うっていう発想はない」

 

「…えぇ…?」

 

 

 スタルシーのその言葉に言い切る立江。

 

 確かにこれまで繁子や立江達が乗る戦車は全て自分達の手で設計図や工夫を重ねて完成させてきた戦車ばかりだ。

 

 その戦車道はこれからも変えるつもりはない。だからこそ、プラウダに部品を求めてやってきたのである。

 

 これにはスタルシーやジェーコも顔を引きつらせるしかなかった。同じ名門同士であってもこの意識の差はなんだろうと思わざる得ない。

 

 

「とりあえず、これは貰っていくね? ありがとうございます! ジェーコさん!」

 

「いいのよ、困った事があればいつでも訪ねてきなさい。おいしいボルシチを振舞ってあげるわ」

 

「なら、私達も寿司か蕎麦作らなきゃね」

 

「板前さんの着替え今度から一式持ってこないと」

 

 

 そんな会話をかわしながら立江と永瀬は風呂敷に包んだ部品を担いで運搬車に積み込んでいく。

 

 この運搬車ももちろん繁子達が1から全て作ったものだ。

 

 運転は立江が行う、繁子達は全員戦車の運転やトラクター、クレーン、はたまたシャベルカーやブルドーザーまで全ての乗り物を乗りこなす事ができるスキルを身につけている。

 

 これらを操れる彼女達の運転技術は時御流の賜物と言っていいだろう。

 

 

「そんじゃ失礼しましたー!」

 

「部品ありがとー!またねー!」

 

 

 そう言いながら、運搬車を発進させる立江と永瀬の二人。

 

 この部品がいったいどんな風になるのか? 二人は軽トラの中で心を躍らせながら母校、知波単学園へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 ところ変わり、ここは黒森峰女子学園。

 

 数ある戦車道の名門高校の頂点に位置する学校である。この学校に入れるのは一握りの者達ばかり、それは戦車の技術もそうだがなにより戦車道において最強流派の名を欲しいがままにする西住流を主流としているところも大きいだろう。

 

 この黒森峰女子学園にポツンとやって来た3人組。

 

 繁子、多代子、真沙子の3人である。

 

 もともとこの学校に入るか入らないかというところまで考えていた挙げ句、結局は知波単学園を選んだ訳だが。

 

 

「来てしまった…」

 

「すんごい威圧感だね校門からさ」

 

「こんにちはー誰かいらっしゃいますかー?」

 

「ちょっ!? 真沙子ッ!!」

 

 

 何食わぬ顔で校門を潜る真沙子を制するように言葉を発する多代子。

 

 しかし、怖いもの知らずなのか真沙子はズカズカと校門を潜ると校舎の方にスタスタと歩いて行く。

 

 おそらく、学校に入校許可をもらいに行くためだろう。

 

 

(…まぁ、そもそもここに来たのは戦車の部品をもらうためやからなぁ…)

 

 

 そう、繁子達が今日、黒森峰を訪れたのには理由があった。

 

 それは、先ほどの永瀬、立江と同じく要らなくなった部品をもらうため。当初、資材を持て余してそうなサンダース大学付属高校とどちらに行くか迷ったが同じ名門同士の高校だしこちらの方がもらいやすいだろうという考えでこちらの学校に来た訳である。

 

 たくさんの黒森峰の制服が横を通過して身体がちっさな繁子は真沙子の後ろから隠れるようにしてついていく。

 

 そして、しばらくすると生徒会室に足を運んだ真沙子は二人にこう告げた。

 

 

「ちょっとここで待ってて、多代子あんたも付いてきて頂戴」

 

「あいよ、攫われたらだめだぞリーダー」

 

「は、はよ、帰ってきてな? アウェー感半端ないんやから」

 

「数分くらいで終わるから大丈夫だっての」

 

 

 そして、ノックして生徒会室へと入っていく真沙子と多代子。

 

 ポツンと一人生徒会室の前に取り残された繁子はアウェー感も相まって非常に気まずかった。通り過ぎる黒森峰女子学園の学生達が微笑ましく見てくるから尚のことだ。

 

 するとしばらく生徒会室の前で繁子が待っている時だった。何やらふと、声が聞こえてくる。

 

 

「…え…?…しげちゃん?」

 

「あ!…真沙子、帰ってきた…あ…」

 

 

 声をかけられた繁子が振り返るとそこに立っていたのは…。

 

 遠い昔に一度見た顔見知り。確かに彼女ならばこの場所に居てもおかしくはないだろう。しかしながらこのタイミングで会うとは繁子も予想だにしてなかった。

 

 

「…ま…、まほりん…?」

 

 

 そこに立って居たのは西住流、西住しほの娘が一人。

 

 現在、高校一年生にしてその実力を買われ黒森峰の隊長についている少女。西住流、西住まほ、その人だった。

 

 対峙する二人の少女。

 

 彼女達の縁はこの場にいないまほの妹のみほを含め、幼き日より遡る。

 

 これが、戦車道全国大会でしのぎを削る二人の再会だった。

 

 




ツイッターにてガルパンのEDをあの五人組(農家)が歌ってくれたという曲のリピートが止まらず何回も聴いてます。

やばいこれが中毒というやつですね(白目。

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