ザ・鉄腕&パンツァー! 没落した流派を再興できるのか?   作:パトラッシュS

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戦車道全国大会(二年生)編 VS継続高校
素人は黙っとれーー


 

 

 戦車道全国大会一回戦が無事に終わり。

 

 繁子達は今回使ったエンジンの調整、そして、車体の点検を行っていた。

 

 試合後の料理や打ち上げはもちろんマジノ女学院と行ったが、翌日にはすぐさま点検の方に入らなければならなかっだのだ。

 

 その理由は次の対戦相手。

 

 戦車道全国大会二回戦、対戦校はなんと…。

 

 

「継続高校やもんなぁ…」

 

 

 そう、なんとミカ率いる継続高校との試合が控えていたからだ。

 

 ミカ達とは合同合宿、そして、繁子は戦車道を見つめ直すきっかけを作ってくれた親愛なる強敵。

 

 これには繁子も立江達も困惑を隠しきれずにいた。継続高校が強い事は彼女達がよく理解していたからである。

 

 時御流の戦い方はもちろんの事、戦法や戦車の性能の類は向こうも理解している筈、果たしてそんな彼女達に勝てる見込みはあるのかどうかわからない。

 

 

「どちらにしろ作戦考えないとね」

 

「作戦って言っても、やっこさん私らの戦車とか知り尽くしてるよ?」

 

「正攻法でってやるわけにはいかないしね…」

 

「小細工無しのガチンコ勝負? …んー、でも相手はミカ達だよ?」

 

 

 そう言って、一同は表情を曇らせてため息を同時に吐いた。

 

 継続高校相手に正攻法でガチンコ勝負。そんなもの向こうからしてみればカモがネギを背負ってやってきたようなものだ。

 

 ミカの様な柔軟な考え方をした隊長が率いる部隊ならば、策を巡らせてくる事は明白。だからこそ、こちら側も策を講じなければならないのだが。

 

 

「…なんかあるー? ソーメンとか弓矢とかバリスタとか諸々今まで使って来たし、もう同じのは使えないよ?」

 

「つれたか丸の策も読まれてるだろうし」

 

「カモフラージュすら今回危うい気がすんだよね、ミカのやつ勘が冴えてるからさ」

 

「…………………」

 

 

 そんな中、繁子は手作りで作った枇杷の葉をすり潰して作った紅茶をカップに注ぎ、静かにその話を聞いていた。

 

 確かに皆が言う通りだ。今回は策を講じるにしても今回は相手が相手だけにどの様な策を講じるか困難を極めていた。

 

 だが、ここで動揺し焦ってもいい結果には結びつかない。だからこそ繁子は冷静に紅茶を飲んで今の状況を打開する策を考えることにしたのだ。

 

 

「ちょっと、しげちゃん聞いてるの?」

 

「…………………」

 

「リーダー、目瞑って何してんだろ?」

 

 

 紅茶の香りを嗅いだまま瞑想する繁子の姿に首を傾げる真沙子と永瀬。

 

 そして、瞑想する繁子の頭の中に入り込んでくる言葉(テロップ)。様々な職人達と出会い、積んできた色んな経験が鮮明に蘇ってくる。

 

 

 素人は黙っとれーーーーー。

 

 

 その言葉が鮮明に繁子の頭の中に浮かび上がってきた時。遂に皆が待ちに待った天啓が舞い降りる!!

 

 

「閃いたで」

 

「ん?」

 

「…え…? 何? 新しい策思いついたの!?」

 

 

 繁子の言葉にガタリと立ち上がる一同。

 

 皆が悩んでいた次戦に向けての作戦を思いついたという繁子の言葉に驚きが隠せなかった。

 

 まさか、紅茶を飲んで瞑想しただけで策を思いつくとは予想も出来ない、誰でもそう感じてしまうことだろう。

 

 しかし、彼女、城志摩 繁子は思いついてしまうのだ。

 

 

「今回の作戦…、名付けてプロジェクトJ!ジャ◯キー水鉄砲作戦や!」

 

「え? 何、その香港警察的な…」

 

「絶対それのプロジェクトってあれから取ってきてるよね」

 

「細かい事は気にしたらアカン!」

 

「こころなしかBGMが今変わった気がするんだけど」

 

 

 そう言って繁子の発案した作戦に全員でツッコミを入れる一同。

 

 今回の作戦はなんと水鉄砲を使った、作戦を取り入れようというのだ。だが、まさか水鉄砲を作戦に使う事になるとは誰も予想にしてなかった上に香港警察的なネーミングセンスに苦笑いを浮かべる。

 

 多代子が言う様に聞こえてくる謎のBGMがそれを物語っていた。

 

 それはかつて繁子達が行なった水鉄砲合戦の風景が思い起こされる。鉄腕軍こと繁子達は水鉄砲でたくさんの強者達と渡り合った記憶。

 

 そう、その強者のと戦いの記憶を今、解き放つ時がやってきたのだ!

 

 

「概要はやな、まずは…ダケットを使うんやけど」

 

「ダケット!?」

 

「え? 私と多代子が前に作ったやつ?」

 

「せやで、そのダケット」

 

「あれ、宇宙に飛ばすため用だった様な気がすんだけど…」

 

「そうなるともはやあれミサイルだよね、ダケッサイルだよね?」

 

「あー…チューチュー的なダンサーズユニットの…」

 

「違うそうじゃない」

 

 

 そう言って、脱線しかけた話を一旦止めに入る立江。

 

 またBGMが心なしか変わりそうな気がしたので立江はすかさず止めに入ったのだが、確かに真沙子が言う様にダケットがそれだとミサイルになるというのは納得できる。

 

 まさか、戦車道全国大会の場でダケットを組み立てて使用しようと考えるとは皆も思いつきもしなかった。

 

 

「とはいえ、ペットボトルロケットやけどなガチなやつやないで」

 

「え? ガチなやつじゃないの?」

 

「スパナとか持っていけば作れるけど?」

 

「いや、あんたら何なの? 宇宙開発業界の人?」

 

 

 真顔で答えてくる真沙子と多代子に顔を引きつらせてそう問いかける立江。

 

 確かに本気でダケットを試合中に部品から作ります宣言する2人の姿を見れば誰しもそう思っても致し方ない。

 

 宇宙というより、彼女達ならそのロケットに乗って火星まで行き、ジャガイモ畑から田んぼまで作るに至りそのまま開拓してしまう事だろう。

 

 ともあれ、とりあえず頓挫していた作戦については繁子の閃きによりこうして解決するに至った。

 

 そんな中、繁子達の話が綺麗に纏まったところで会議室の扉が勢いよく開き、中に絹代が飛び込んできた。

 

 

「繁子隊長!? 繁子隊長はいらっしゃいますか!」

 

「どうしたの? そんなに慌てて」

 

「緊急事態でして、なんと、車庫の前に大量の小麦が!?」

 

「あー…それねー」

 

「あ、注文したやつ届いたんや」

 

「…え?」

 

 

 そう言って、何にもない様に答える繁子達に目をまん丸くする絹代。

 

 普通ならなんの予兆もなく大量の小麦がトラックに乗せられて送り届けられれば何事かと驚くのが当たり前だ。

 

 だが、どうやらその大量に送り届けられた小麦、それの原因は言わずもがな彼女達だったらしい。だが、それにはちゃんとした理由があった。

 

 

「いやー、それわざわざ福島から取り寄せた小麦なんやけどねー」

 

「マジノさんから美味しいフランスパンが食べたいって言われてさー」

 

「どのレベルから作る? って話になって…」

 

「結果小麦から作ろうかって話になったんやけどね、そんで取り寄せたやつがそれやね」

 

「……こ、小麦からパンをつくるんですか!?」

 

「せやで、あ、あちゃー…。よう考えたらそうなると工房作らなあかんね」

 

「家庭科室おっきくしていいか理事長さんに聞いてみようか? 増築代タダで」

 

「おー、それいいね」

 

「前に部室直してって頼まれたからついでに色々と手を加えたらすごく喜ばれてさー、多分オーケーしてくれると思う」

 

「………………嘘でしょ…」

 

 

 そう言って、立江の言葉にあんぐりとする絹代。

 

 部室を直してと頼まれるのもそうだが、さらに、それを平然と遥かに超えてくる立江があまりに凄すぎである。

 

 本職が大工の棟梁だと言い切られればもはや何も言えない、というより、簡単に部室やら学校の増築やら平然とこなす彼女達にはこれが普通なのだろう。

 

 何せ、学園艦から作ろうと考える様な人達である。彼女達なら実現させれそうだと思うのがまた不思議で仕方ないと絹代は思った。

 

 

「私らの同期や先輩達も大体、大工さんばっかりやで?」

 

「まぁ、家は一軒建てれるよね」

 

「という訳や絹代、あんたらはまだまだやね」

 

「…はう…っ!? …し、精進します!」

 

「来年辺りには今の一年生だけで船1隻くらい作れるようになるから心配しなさんな」

 

 

 そう言って、絹代の肩をポンポンと優しく叩いて笑いかける立江。

 

 多分、他所の学校の生徒がそんな言葉をかけられれば『何言ってんのこの人達』となるところだろう、だが、不思議な事に今の知波単学園の栄えある生徒ならば。

 

 

「はい!! 嬉しき御言葉! 私は猛烈に感動致しました!」

 

 

 と涙ながらに歓喜するのである。

 

 根性と職人魂の融合、これこそが今の知波単学園なのだ。日本人の気質が職人気質である為に産んだ化学反応と言って良いだろう。

 

 伝統ある突撃と根性という知波単学園に新たに時御流が加わった事により、時御流が知波単学園に新たに吹き込んだ風なのだ。

 

 根性があれば家が一軒建てれる。根性があれば戦車が1輌作れる。

 

 そう、これが正しい根性の使い方、ある意味どんな理屈だと突っ込まれてもおかしくない。

 

 

「さてと、そんじゃ私はちょっくら家庭科室増築していいか聞いてくるわ」

 

「あ! 私もお伴します!」

 

「はーい、行ってらっしゃいー!」

 

「そんじゃ、多代子、私らもダケットの設計図と試作品を作りに行くわよ」

 

「了解!」

 

 

 そう言って、会議室から次々と出て行く立江と真沙子達。

 

 次の試合に向けてのダケットの試作品を作るのは確かに重要な事だ。今回の大事な作戦の要になってくるに違いない。

 

 それを見届けた後に、会議室にとり残された繁子は永瀬に向かいこう話をし始める。

 

 

「ほんじゃ、ウチらは戦車の整備の手伝い行こうか? 永瀬」

 

「そういや終わってなかったよね〜…まぁ、新しいエンジン積んだばかりだし仕方ないか」

 

「それが終わったら次の作戦に使う水鉄砲の概要と作戦を伝えて、水鉄砲の試作品製造に取り掛かりで」

 

「結構バタバタだねー、試合終わったばっかりなのに」

 

 

 永瀬は苦笑いをしながら繁子にそう告げると大きく背伸びをして背筋を伸ばす。

 

 確かに試合が終わったばかりだというのにもう次の試合に向けて皆が動き出している。約一名は違う案件であるのだが、それでも永瀬が言うように今回は色々とすることがありすぎて目が回りそうだ。

 

 しかし、繁子は笑っていた。しかも、楽しそうに。

 

 それは、今、心の底から自分の戦車道を楽しんであるからだろう、笑みを浮かべた繁子は実に充実した様子で永瀬にこう告げた。

 

 

「相手がミカ達やからな!」

 

 

 そう、相手が継続高校だから。

 

 自分が良く知る敵が目前に迫れば迫るほどワクワクする繁子の気持ちは永瀬には良くわかる。

 

 親愛なる相手だからこそ全力でぶつかることができるし、自分の全力以上のものが出せる。

 

 繁子のその言葉を聞いた永瀬は笑みを浮かべて静かに頷いた。

 

 

 戦車道全国大会二回戦、強敵、継続高校。

 

 

 果たして、繁子達は立ちはだかるこの難敵を倒す事が出来るのか? そして、プロジェクトJとは一体どんな作戦なのだろうか…。

 

 

 この続きは…。

 

 

 次回、鉄腕&パンツァーで!

 

 


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