レゾスの体は獣に近い物になっていた。爪は鋭く伸び、四肢を使って行動する。その姿は味方すらも動揺させるものだった。
「レゾス…いったいどうしちまったんだ…⁈」
カズマの目に見えたのは、今までに見たこともない異形。女神すらもその存在を知らない。気ままに生きていた彼は今、異形となって首無しと闘っている。
「あ…主…?」
「レゾス…?」
自らの主君、もしくは友人が獣に変化するのを彼女達は見ていた。彼女達が感じたのは怒りでもなければ哀しみでもなく、ただただ疑問と焦りを浮かべるだけだった。
「キサマァァ!!」
暴れだした獣は、獲物を狩るまで鎮まらない。そう、目の前の首の無い騎士は獲物なのだ。彼等ははっきりと狩る側と狩られる側で分かれていた。
「何故だ⁈何故自我を失っていながら…ッ!」
首無しの騎士は焦りを感じていた。魔王の配下であるこの自分が負けるはずが無い。そんな自信が、己を感じない異形に潰されそうになっていた。
「キサマガァァッ!」
異形の毛が逆立つ。渾身の一撃。首無しの剣は宙を舞う。飛んだ剣は、カズマの目の前に落ちる。
「この俺が負けるのか…⁈」
獣は顔を狙う。手に持つ頭に目を向け、飛びつく。
「しまった⁈」
獣は首無しの首を奪い、ヘッドを失くしたボディが動くことは、もうなかった。
呆気ない顚末で、この戦いの勝者は決まった。そして彼は首を離して…倒れ込んだ。
「…」
俺は今、ベッドの上で寝ている。どうやらここは診療所の様なものらしい。だが何故自分がここにいるのか、全く分からなかった。
「あれ…確か俺は…あの首無しに…」
「呼んだか?」
聞き覚えのある声。隣のテーブルを見るとボロボロの甲冑を被った首が置いてあった。
「おいおい、誰だよこれおいたの。首討ったんでその報告ですってか?」
「お前なぁ⁈数時間前に戦った相手すらも忘れたのか!」
あぁ、こいつは…
「…何でお前がここにいるんだ!」
「ハァ⁈ちょっとこの街に知り合いがいて、そいつに助けて貰ったからだっての!」
「首無しお前頭の中腐ってんじゃねぇのか⁈この街に魔王の幹部なんてどこにも…」
病室の扉が開く
「あの〜、起きてます?言い争いが聞こえたんで起きてると思いますけど…」
「ウィズさん!「ウィズか!」」
互いに見つめあう首と人間。
「そういえば、ウィズさんって魔王軍だったっけか…」
「あ、マスター。起きたの?」
レーヴァテインもウィズに続いて入ってくる。
「レーヴァか、よく来たな!この首持ってけ。んであわよくば事故に見せかけて浄化しろ。」
ズイと首を差し出す
「ちょっと…遠慮しとく。マスターには話があって来たの。」
「そうか…」
チラリと首を見ると、満足そうな顔を浮かべていた。
「…何があった?」
「いやぁ…素晴らしい胸だな!」
とりあえず俺とレーヴァテインは、ウィズに止められるまで首を殴り続けた。
闘いは終わりです。