『能登』物語   作:鋼鉄の咆哮

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超兵器と相対する武生。
勝負の行方はいかに。



※現在、ご指摘を受けて大幅に(もはや完全に)改稿しています。
頑張って改稿している(つもり)なので、もう一度見てもらえると嬉しいです。


海域その五 夕焼けを黒に染めて

尖閣諸島付近海域。

美しい海の上に、巨大戦艦2隻が睨み合う。

『インテゲルタイラント』の姿はどこか破滅的な美しさを感じさせた。

他の深海棲艦と似た白黒ベースの色がついた体。腕や足からは大量の長砲身砲『AGS』が伸びている。凹凸の大きい体を隠そうともしない露出。どこか艶やかにも見えるが、武生は生憎敵を鑑賞するような情趣は持ち合わせていなかった。

「副長、全門準備出来次第発砲よし、今回は自由射撃。復唱。」

「全門発砲よし、自由射撃」

副長が復唱の後に伝声管に叫ぶ声を聞いて再び武生は考え始めた。

(敵は50ノット出せる。こちらはせいぜい46ノット、どうしようか?)

しかし武生の思考は副長の絶叫にかき消された。

「艦長、敵発砲しました!敵弾多数、接近!」

反射的に彼は回避運動をとるため命じた。

「副長!両舷全速!」

(やはりな。避けきるのは無理ってか、誘導砲弾とは厄介なものを)

インテゲルタイラントは能登に向かってAGS(誘導砲)を発射。

この砲弾は敵を追尾して命中するのだ。

「艦長!回避不能!直撃します!」

「総員対ショック姿勢!」

当たっても損害などありはしない。能登の装甲は異様な厚さである。AGS程度の小口径弾で貫けるわけがないのだ。

「艦長!砲弾直撃なれど損害軽微!」

「どこがやられた?」

「対空/対潜ミサイルVLS、16番ハッチに微損傷!発射に影響なし!」

「よし!回避を続けろ!」

(なぜだ?俺の『艦』としての記憶では、もう少し威力が高かったはずだ。あくまで試射なのか?)

主砲塔射撃指揮所から連絡が入る。

「艦長!兵装1番、兵装7番全門発砲照準完了!撃てます!発砲許可を!」

「よし!全門開放!目標、敵超兵器『インテゲルタイラント』!」

「各門開放よし!」

「了解、一斉射、殺れ!射ぇーーーーーっ!」

その刹那、艦を激しい振動が襲う。

「艦長、全門一斉射撃」

「了解、砲弾の着弾予想時間!」

「五秒です!それ以上にはなりません!」

「弾着は?」たっぷり五秒待って武生は尋ねた。

「3発確実に命中を確認!2発不確実!」

大口径の砲弾が、超兵器を司る深海棲艦の足を引きちぎった。

「フッ…ソンナモノ、キカン!」

そう言ったかと思うと、たちまち『インテゲルタイラント』の右足付近が燐光に包まれる。

光が晴れた時には、既に右足が再び生えていた。

「回復能力ありか。よろしい、射撃を続けろ!」

(おかしい、奴が弱すぎるぞ。回復能力の代償としたとしても、2発や3発で足がなくなる?そんな雑魚ではないはずだ。)

武生もとい『能登』が言いようのない不安を感じるのをよそに、射撃は確実に行われていた。

 

 

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

敵が煙幕を張って退避したために視界が閉ざされ、射撃を一時中断した武生は副長に話しかけた。

「副長、どうだ?こちらの損傷は?」

「副砲一基にAGS弾が直撃、射撃不能です。それ以外は損傷ありません。」

「どう思う?敵があまりにも弱すぎないか?『前世』よりも速力が遅く、装甲も薄い。更に、攻撃力も弱いときている。本来ならそれは喜ばしいのかもしれないが…」

「そうですね。『裏がある』と言うことでしょう?」

「言ってしまえばそうだ。速力も攻撃力も装甲も犠牲にできる『何か』を敵が持っている。そんな気がしてならない。」

「それが回復能力だとすればある程度説明はつきます。しかも、そんなに大量の「隼星」は配備されてありませんし、探りようがありませんね。」

「航空戦艦の方の艤装の方が良かったかな?」

「今それを悔やんでもどうしようもありません。しかも、敵が一撃必殺の奥の手を持っているとすれば、航空戦艦の艤装では耐えきれない可能性があります。」

「どっちもどっちってか」

「そういう事です。今は煙が晴れるのを待つしかありません。」

「敵はレーダーに探知しているのか?」

「はい、今のところは。しかし、これが電波ジャマーだとすれば厄介な事になりますから、過信は禁物で…どうした。敵は見えないのだろう?今は何も」

突如飛び込んできた連絡妖精が会話を遮った。

「艦長!敵艦がレーダーから消失!」

「何だと?消失?」

「はい!突然、レーダーから消えました。」

「突然?突然消えたのか?」

(拙いぞ、これは拙い!姿をくらまして奇襲でもかける気か!)

「艦長、これはまずいですよ。奇襲からの奥の手攻撃なんて喰らってしまえば、さすがに対応しきれません。」

「そうだな。煙は晴れてきたか?」

「少しずつ晴れてきました。視界はおおよそ10㌔」

「まだ狭いな。十分に警戒しつつ、しばらく巡航速度で搜索、様子を見よう。」

「了解。巡航速度に減速。」

その瞬間、武生は凄まじい絶叫を聞いた。

「敵機直上ーー!急降下ぁー!」

「何だと!対空機銃、パルスレーザー、撃てるか!」

「1番、敵機に照準!撃てます!」

「ガッ・・3・完・・・」

「どうした3番!はっきり答えろ!」

「4番よしです!撃てます!」

「よし!対空機銃、パルスレーザー、準備出来次第斉射!観測所、敵機の種類は?」

「深海機ですが、こちらの機に多少似ています!恐らくはTBDデバステーター、SBDドーントレス、ブルースター・バッファローです!一部F6F!」

「どう見ても難敵ではありませんな。」

「同感だよ副長。まぁ、慢心は禁物だがね。」

 

 

 

3番と呼ばれた機銃内部で、何人もの妖精が忙しく立ち回る。

彼らは発射用意を急いでいた。

「班長!一機、こちらに向かってきます!」

「照準したか!」

「照準完了!撃ちます!」

「了解、撃ち落とせ!」

凄まじい発射音と共に火線が上がり、上空の爆撃機に直撃。爆撃機の機体下面から一筋の炎の線が流れた。

「命中ーー!一機に重大な損し…」

「敵機、爆弾投下!」

「何だと!なぜ…」

機銃手妖精が言い終わる前に特大の800kg爆弾が降ってきた。

それを妖精が視認した刹那、妖精の意識は無になり、身体は痛みを認識する前に砕け散っていた。

 

 

しばらくの間、耳を圧倒する機銃の掃射音を武生が聴くともなく聴いていると、副長が報告にきた。

「艦長!敵機を多数撃墜!撤退していきます!」

「撤退する方向はどちらだ?」

「艦長、敵機はかなりの燃料を残して撤退したと思われますので、正確にどうかはわかりません」

「参考にはなるさ。どちらだ?」

「南です」

「真後ろか…まっすぐ撤退したのだとすれば恐ろしいことだな」

「撃ち方止めぇーー!」

そう呟く武生の横で副長が絶叫した。

それとともに耳を聾する機銃の連射音が止んでいく。

「各部署、被害状況知らせ」

「2番パルスレーザーに爆弾直撃、それ以外のパルスレーザーには損害なし」

「3番、4番対空機銃大破、使用不能」

「3番、4番対空機銃以外は損害なし」

「対空/対潜ミサイルVLS20番ハッチに爆弾直撃、ハッチ損壊、発射不可。それ以外は損害なし」

「よろしい。敵第二波に備え、対空警戒を厳にせよ。」

「了解。」

「艦長、煙がほぼ晴れました。やはり奴は火災の煙だけでなく煙幕を張っていたようです。」

「そこまでして何を隠したかったのだろう?」

「艦載機の発艦能力ではないでしょうか?元々は積めないはずですから。」

「それだけなら良いがね。やはり奴の姿が見えないというのは、いい気持ちはしないな。」

「それは向こうもでしょう。いくらレーダーの性能が高くても、肉眼で見えないのは同じです。」

「それはその通りだな、しかし奴の狙いは何だろう?」

「奇襲でしょうか。もしかすると撹乱で神経戦でも挑む気かも知れません。」

「忍耐力なんてくそくらえだ…」

「それは同感ですな」

その時、伝令妖精が再びCICに駆け込んできた。

「どうした?敵艦載機は撤退したん…」

「艦長!敵増援来襲!ヲ級改flagship2隻とレ級flagship3隻です!」

「ヲ級改flagship?じゃぁ艦載機を出したのはあいつか?」

「いえ、奴が艦載機を出したなら『タコヤキ』の筈です。艦長、どうされますか?先に増援を叩く手もありますが。」

「そうだな、ならやはり『インテゲルタイラント』が艦載機を出したのか。まぁ、どの道このままでは埒が明かん。よし、先にその増援を叩こう。全門、発射準備。」

「了解。」

副長が再び命令を怒鳴った。

 

「こらぁ!新入り、装填急がんかぁ!」

主砲塔の中に怒鳴り声が木霊する。

「はい!装填完了しました!」

「よし!照準!」

「照準完了、いつでも撃てるよぉー」

「艦橋に伝えろ!『発射準備完了、射撃可能』」

「了解!」

 

「艦長、1番、7番兵装全門発砲準備完了しました。」

「よし、艦載機が出てくる前に空母を片付ける。」

「そうですね。うん、それでいいでしょう。」

「報告します!敵空母から艦載機発艦!数少なくとも200!」

「もう来よったか。よし、目標、ヲ級改flagship2隻!全門斉射!射ぇーーーーー!」

再び主砲の発射音が空気を引き裂く。

数発の砲弾が狙い違わず敵空母に吸い込まれていく。

それを見守っていた武生の目が、空母に広がる大きな爆発炎を捉えた。

空母ヲ級の脚がちぎれ飛び、更に腹が抉られて真っ赤な血が流れ出す。隻脚と化したヲ級を再び副砲弾が襲う。

心臓に五寸釘の如く砲弾を打ち込まれたヲ級が耐えきれず沈み始める。美しい海に悪魔の断末魔が響き渡る。それを助け起こそうとしたもう一隻のヲ級の足の付け根に主砲弾が着弾。両脚が吹き飛んだヲ級が血を吹き出しのたうち回る。

「艦長!敵空母一隻撃沈、一隻中破!両方とも艦載機発着艦は不可能なようです!」

「了解、これで敵の制空能力はなくなったな」

「艦長、『帰る船を無くした艦載機ほど怖いものはない』んですよ?」

「確かに死兵は強い。しかし、死兵はそれ以上に脆いんだ。よろしい、対空戦闘用意!」

「レ級はどうしますか?」

「捨てておけ。インテゲルタイラントを倒して余力があればレ級も喰ってやる。

「了解、インテゲルタイラントを搜索するのですな?」

「そうだ。」

「分かりました。」

「艦長!敵艦載機多数、本艦上空に出現!対空戦闘開始許可を!」

武生は伝令妖精の声にすぐ答えた。

「すぐに開始せよ!奴らを空の霧にしてしまえ!」

「了解!」

 

 

4番パルスレーザーの中で、妖精達が動き回る。

「射角調整よーし!照準よーし!」

「了解!発射よーい!」

「発射用意完了!」

「良いか、焦るなよ?近くに来たら撃つんだ、良いな?」

「はい!」

「距離、3200!」

「あと少しだ、もう少し待て…」

「距離、2800!」

「射ぇーーーーーっ!」

光の線が空に向かって撃ち出される。

上空の「タコヤキ」爆撃機のうちの一機がまともに火線に飛び込み、搭載爆弾に誘爆。たちまち機体が四散し、破片が海面に突っ込む。

「命中ーー!一機を確実に撃墜!」

「良いから次だ!仕留め続けろ!」

「了解!」

機銃手妖精は一声叫び、再び照準孔を覗いた。

 

 

「今のところこちらが優勢です。敵機を確実に撃墜し続けていますから。」

「そうか。ただ、数は向こうの方がはるかに上だ。数の優勢は向こうにある。」

「なんとか減らしたい所ですね。」

「艦長、少しずつ敵艦載機が押されています。対空戦闘は上手くいったかと」

「かと言って止めるわけにも行かないからな、撤退するまで撃つしかなかろう。」

「そうですね。」

「艦長!観測所です!敵艦載機を多数撃墜!残りは敗走していきます!その数50以下!」

「了解、撃ち方止めぇーー!」

「さぁ、いよいよ本番だ。インテゲルタイラントを全力で搜索!これを撃沈する!」

「了解!」

「艦長、今度は霧が出てきました。追撃は困難になるかもしれません。」

「自然の霧か?煙幕ではないのか?」

「どうも霧のようですね。ただ、奇襲の可能性は充分にあります。全方位警戒をさらに徹底するしかありません。」

「新型探信儀に反応は?」

「今のところほとんど反応はありません。」

「ほとんどとは?」

「南東から南西までの広い範囲に弱いノイズを観測していますが、弱すぎてとても判断はできません。」

「南東か南西なら、真正面か」

「はい。ただ、先ほども言ったとおりあまりにも弱いノイズなので信用はできません。」

既に『インテゲルタイラント』の随伴艦はほとんど沈み、超兵器は丸裸のはずである。しかし超兵器は姿を現さず、潜伏を続けているのだ。

突如────

 

 

 

 

「マケナイ…ワタシハ、マケナイ…シズメ、シズメェェェェッ!!」

 

 

 

────歪な絶叫が、武生の脳内に直接響いた。

 

 

 

 

その瞬間、凄まじい振動が武生を、そして『能登』を襲った。砲の発射音は聞こえない。

反射的に目を閉じ、霞む意識を手繰り寄せる。

 

 

次の瞬間、武生は自分の体を見て絶句した。

左腕が跡形もなく吹き飛び、口から、右腕から、そして両脚からかなりの量の血が流れ、艤装の道着は真っ赤に染め上げられている。

喉に何かが絡みつく感触を覚えて咳き込むと、口から真っ赤な糸が引いた。

副長がそばに倒れている。

「副長!しっかりしろ!」

返答はない。

「副長!答えろ!」

やっとのことで副長が目を覚ました。

副長は幸いにも軽傷だった。よろけながらも椅子に座り直す。

伝令妖精が走ってくる。

「……」伝令妖精は武生の凄まじい姿を見て一瞬絶句したが、武生が頷いて報告を促した。

我に返ったように伝令妖精が話し始める。

「艦長、本艦は敵のレーザーによる奇襲を受け損傷。現在、安全確認の為6ノットで航行しています。」

「分かった。被害状況は」

「後艦橋圧壊。三番、四番主砲塔が損壊、使用不能。また、副砲塔も後向き三基が大破して使用不能です。また、7〜9番対空機銃、5番、6番パルスレーザーも損壊。使用不能です。対空/対潜ミサイルVLS17番、18番ハッチが衝撃によって故障。使用困難です。そして、船体の二ヶ所で浸水が起こりました。」伝令妖精はこの報告に一分もかけなかった。

「なんということだ…後ろから来るとは…しかも奴が『波動砲』を使ってくるなんて…いくら『電磁防壁』でも防ぎきれん…」武生はところどころで息を継ぎながら呟いた。

「同感です。ただ、このエネルギーの放出によって、奴を探知することに成功しました。超兵器『インテゲルタイラント』は本艦の北西約6km地点でこちらに向かって微速航行中。全速で追えば間違いなく捕捉できます。」

「了解。ならば、追おうではないか。本艦は全速力をもって敵超兵器『インテゲルタイラント』を追跡し、これを撃沈する!副長、現在の最高速は?」

「18ノット可能です。十五分ほどで追いつくかと」

「分かった。できる限り急ごうじゃないか。応急修理班は出来うる限りの修復を行ってくれ。」

「了解しました。」

(しかし、微速航行中ということは…波動砲を一度撃つとエネルギーが足りなくなるのか?それとも、もう一度撃つ気なのか?)

武生は再び考えに没入した。

 

 

「早くしろよ!十五分しか無いんだからな!」

「了解しました、隊長。」

「ほら手を動かせぇ!主砲だけでも直さないと!」

「三番主砲塔、応急修理完了!」

「よし!お前ら四番主砲塔の修復に回れ!」

「了解!」

艦内では修理班が汗を流して修復を行っていた。

「ここの換え部品はあるか?」

「いえ、先程使い切って…」

「早く取ってこい!」

「分かりました!」

「修理班、修理班、作業の進捗を報告せよ。」

「現在順調に修理中!主砲塔の損傷もまもなく回復します!艦長は大丈夫でありますか!」

「気遣いありがとう。こちらは大丈夫だ。必ず復旧させてくれ。」

「我々は職人です。どんな傷でも復旧するのが我らの務め!」

きびきびと答えた妖精に武生は頼もしさを感じた。

そして、報告を聞きながら再び武生の脳は作戦を考えつつあった。

 

 

「艦長!敵艦視認!」

霧が晴れた青い空の下を敵艦が静かに滑っている。

「来たか。超兵器め…」

「敵艦、超兵器『インテゲルタイラント』を確認!距離、25000!」

「警戒態勢!之字回頭…」

「艦長、早くないですか?まだ24000ですが。」

「AGSは射程が長いからな。早めに始めておいて損は無い。」

「っと!敵艦、発砲しました!」

「だろうな。多少の直撃は覚悟だ。突進しよう。」

「そうですな。あの程度の豆鉄砲で沈むこの船じゃあありませんし。もう少し近くないと撃ちにくいですからね。」

「艦長!観測所です!敵艦艦首部分に正体不明の光を視認!『インテゲルタイラント』も停止しました!」

「何だと!?もう一度撃つ気なのか!」

「そのようですね。これは早めに仕留めないと、次はどうなるか分かりませんよ。」

「よし!全速力で敵の射界から逃れろ!」

「了解!」

「観測所隊員、総員退避せよ!総員艦内に退避せよ!」

「どうしてですか!我々は敵の一挙手一投足を見届けるのが使命です!」

「あの敵の一挙手一投足なんて見てられるか!波動砲に焼き殺されるんだぞ!?早く、艦内に退避するんだ!」

「…っ、了解…」

「艦橋からでも外は見える。とにかく中に入るんだ。」

「了解。すぐに退避します。」

「艦長!距離、19000!一番、二番主砲塔射程内です!」

「よし、少しでも奴を削ろう。主砲塔、準備出来次第射撃を開始せよ。」

「了解。一番主砲塔、装填完了…射撃準備完了」

「了解。二番主砲塔、射撃準備完了!」

「よし!目標、超兵器『インテゲルタイラント』!距離、18000!全門開放、射ぇーーーーーっ!」

殷々と鳴り響く砲声が再び空気を切り裂く。

砲弾はほんの数発を除くほぼ全弾が敵艦に吸い込まれていった。

深海棲艦の足と腕がちぎれ、そこが再び燐光を発して再生する。

不気味な笑いを浮かべた『インテゲルタイラント』がのたまう。

「ムダダ…マダアガクカ…ハヤク、オマエモシンカイニコイ、オロカモノメ」

「弾着は!」

武生の問いに退避している観測妖精が答える。

「6弾中4発命中です。なかなかの命中精度ですね。」

「第二射、用意!」武生は観測妖精に答えを返すのを忘れていた。

「第二射用意完了!」

「撃て!」

再び砲声が空気を震わす。

6弾がもう一度発射され、反動で船体が僅かに揺れる。

今度の斉射は一発も外さず、まともに敵艦に命中した。

「命中確認!」

「よし!続けて撃て!」

「了解!」

「副長、敵の射界からは逃れられたか?」

「まだです、敵も旋回していますから…あと一分で射界から脱出します。」

(一分か…撃つなよ…まだ撃つなよ…)

その時、『インテゲルタイラント』が笑った。再び歪な絶叫を上げる。

「バカメ…ニゲキレルトデモ…オモッタカ!オロカナニンゲンドモメ!ハハハ、ハハハハハハハッ!!」

「敵艦首の光増大!発射用意と思われます!」

「くそっ!遅かったか!」

「艦長、やる気です!敵艦、波動砲発射の模様!」

「畜生、ここまでか。総員、対ショック姿勢!」

光の奔流が『インテゲルタイラント』艦首から迸る。

「クタバレェェェェッ!!」

その光は再び「能登」の船体を貫こうと空気を切り裂く。

 

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

 

────負ける?死ぬ?奴を残して?

 

 

 

 

 

ーー

ーーー

ーーーー

ーーーーー

 

ほんの数秒の静寂。武生は覚悟を決めて目を固く閉じていた。

しかし、衝撃は一向に訪れない。

「…長!艦長!」

副長の呼ぶ声が聞こえる。武生は恐る恐る目を開いた。喉から声を絞り出す。

「副長、殺られたか…」

「敵波動砲失中!波動砲は本艦を掠っただけです!」

「どうしてだ?逃げきれなかった、のに…」武生はそこまで言うと大きく息をついた。

「何者かが『インテゲルタイラント』に雷撃!敵艦は雷撃されて傾いた瞬間に波動砲を発射したので逸れたのです!」

「今何と言った?雷撃だと?」

「はい、間違いなく雷撃です!」

(来たか。あいつにギリギリで助けられるとはな)

「そうか、助かったか。被害状況は?」

「左舷の探照灯、機銃とパルスレーザーは衝撃波で全基故障、その中の1番対空機銃は圧壊しました。」

「嘘のように少ない損害だな。よし!ならば奴もしばらくの間波動砲は撃てないはずだ!敵を片付けるぞ!」

「了解!」

「距離は!」

「現在10500!主砲、副砲共に射程内です!」

「よし!射撃可能な砲は全て使え!目標、敵超兵器『インテゲルタイラント』。彼奴を、決して赦すな!生かして帰すな!」

武生の絶叫が響き渡る。

「了解!」

「一番主砲塔、砲撃用意完了」

「二番主砲塔、砲撃用意完了」

「副砲統括射撃指揮所より、副砲塔全門発砲準備完了!」

「了解!各門絶対に中てろ!一斉射、射ぇーーーーーっ!」

雷の声が響むように、空間すべてを焼き尽くすように、雄叫びの如く咆哮が起こり、砲弾は一直線に敵艦に向かっていく。

何かに導かれるかのように、砲弾は全て────一発たりとも外れなかった────『インテゲルタイラント』に突き刺さる。

その刹那、再び魚雷が海面直下を走り、艦底を深く、深く抉った。

突き刺さった砲弾は『インテゲルタイラント』の頭部を圧壊させ、弾薬庫に飛び込み、心臓の隔壁を吹き飛ばしていく。

艦底を抉った魚雷は両足を吹き飛ばし、船体を穿ち、水の奔流がそこから流れ込む。

『インテゲルタイラント』の航行が止まった。そして、弾薬庫が爆発したのか猛炎を吹き上げる。

しかし、『インテゲルタイラント』は耐えた。そして前進する。残ったすべてのAGSを。残ったすべての機関砲を。残ったすべての魚雷を。すべてを解き放ち、『能登』に最期の痛撃を与えんとする。

「貴様如きに沈められてたまるか!私は戦艦『能登』だ!貴様を沈め、真の不沈艦の怖さ、思い知らせる!全速前進!」

武生は艤装から顕現させた大剣を頭上に振りかざし、フルスロットルをかける。

瞬間、『インテゲルタイラント』が笑ったように見えた。そして呟く。

「ソウ、クルカ…ソノヤリカタ、キライデハナイゾ!」

すべてを悟ったかのように、『インテゲルタイラント』も大剣を振りかざして全速力で前に進み始める。お互いが正面衝突するような直撃コース。最後の勝負は、一度きりの一騎打ちに託された。

 

そして、二隻の影が交差する。

 

 

二隻ともが数秒間惰性で動き続ける。しかし、既に勝負は決していた。

 

 

『能登』の腹には大剣が突き立っている。しかし────

 

────『インテゲルタイラント』の左胸には大剣が、そして右胸には交錯寸前に顕現させた短刀が突き立っていた。

『能登』の大剣と短刀が『インテゲルタイラント』の心臓を貫通している。その衝撃は、そのまま『インテゲルタイラント』にとっての死亡宣告となった。

「フフッ…マケタ、カ…コンド、コソ…マケナイト、チカッタノニ…」

悟ったような声とともに、なお浮かんでいた『インテゲルタイラント』が次第に海面下に没していく。機関に海水が流れ込んで汽笛を数倍にしたような轟音を発し、一瞬で海底へと死出の航海に消えた。

沈没時刻は、午後五時二十九分。実に七時間半にも及ぶ死闘であった。

「んぐっ…」

武生はゆっくりと海上にしゃがみこんだ。今更ながら痛みが襲ってくる。腹を見れば、紅い血でてらてらと光っていた。

「もう、奴はいませんな。」

「終わったか…」

「はい、艦長。連合海軍南遣艦隊支隊旗艦超兵器『インテゲルタイラント』、撃沈に成功。こちらの損害は…大破相当ですかね?」

「そうだな。痛かったから大破ということにしておいてやろう。」

そこに一隻の異形の船が浮き上がってきた。

「……遅い」

「これでもフルスロットルなんだよ、勘弁してくれ。」

「ったく。ま、助かったから許してやる。」

「んだよ…どうすんのそれ?抜くのか?」

「抜いたら出血多量でいかんのじゃないかな。ま、そんなに痛くねえし突き刺さったまま帰るのもいいだろ。」

「動けんの?」

「当たり前だ、そこまでやられちゃいねぇ。」

「腹に剣ぶっ刺して言えるセリフじゃないぞそれ」

「まぁなんだ、」

武生がつぶやくとその異形の船の上の人影が振り向いた。

「ありがとうよ、時友」

「それはそれはどういたしまして、兄さん」




鋼鉄の咆哮ユーザーさんごめんなさいm(_ _)m
どう考えても『インテゲルタイラント』に波動砲なんて乗らないのですが…つい乗せてしまいました。後悔はしていません。


不自然な点(インテゲルタイラントの波動砲以外)でご指摘があればありがたいです。

次回は基地に残った鳳翔さんのお話(だと思う)です。
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