『能登』物語   作:鋼鉄の咆哮

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お久しぶりです…鋼鉄の咆哮です。
大人じゃないけど辛い…夏休みってこんな短いのかよ(憤怒)



と、言うことでまぁ『能登』と『インテゲルタイラント』がしのぎを削っている間の鳳翔さんのお話です。


海域その六 絡みつく鎖の呪縛

ーーーーーside 鳳翔ーーーーー

 

 

私は、航空母艦「鳳翔」です。

小さい船だったので、ミッドウェーの後は練習母艦となり、終戦を迎えました。

運良く私は沈む事はありませんでしたが、私の知っている空母のみなさんは、次々に沈んでいきました。

 

 

実は私、今でも後悔しているんです。

 

 

国を守れなかった。

他の人を守れなかった。

 

 

無辜の人々を、守れなかった。

 

 

 

だから、私は決めました。

 

 

 

────今度こそ、守ってみせると。

 

 

 

 

 

 

今回私は、提督の艦隊からは漏れました。しかし、私には役割があります。

それは、この『柱島第五十八泊地』に所属している艦娘の実情を知って、提督に伝える事です。

提督はこの泊地を変える為に、ここに赴任してきたのですから。私達がしっかり提督をサポートしなければいけませんね。

 

 

さて、それでは何から始めましょうか。

提督の執務室はやたらと豪華な家具が並んでいます。

恐らくは、前任の提督が資金を着服して買ったのでしょう。

その為に罪のない艦娘が搾取されているのです。

そう思うと、さすがに私もイラッとくるものがありました。

極悪非道な提督に搾取されてきた艦娘達────

 

 

 

 

これまた豪華な執務机の上には、引き継ぎと思われる書類が置いてありました。

まずはこれを見てみましょう。

上の方には何枚か内容のない書類が置いてありましたが、まぁここには手掛かりは無さそうです。

私はほとんどその書類を見ないで脇にどけました。

その書類を退けた下を更に探ってみます。

 

 

 

────ありました。

 

 

 

乱雑に綴じられた冊子。表紙には、「柱島第五十八泊地所属艦娘一覧」と書いてあります。

まずはこの冊子からどの艦娘がいてどの艦娘がいないのかを把握し、その後艦娘の皆さんを呼び集めて誰か欠けている人がいないかを確かめねばなりません。

さっそく見てみます。

一通り中身を検めてみたところ、今現在この泊地にいないのは────

 

『未着任艦娘一覧』

重巡「愛宕」「利根」「筑摩」

戦艦「長門」「陸奥」「大和」「武蔵」

軽巡「名取」「由良」

駆逐「大潮」「朝潮」「霰」「磯風」「叢雲」

特務艦「あきつ丸」「速吸」

 

────どうやら前任は全員を揃えるところまではいかなかったようです。ただ、この数を除いたとしてもこの泊地には多くの艦娘がいるはず。なのに、ここの泊地を先程歩いた時にはほとんど艦娘を見る事はありませんでした。ならば、彼女らはいったいどこに?

しかし、いくら考えても分からないことは分かりません。私は仕方なく館内放送用のマイクを見つけて、皆さんを集めてみようと思いました。

 

スイッチを入れると、どこでも聞くようなチャイムが流れます。

そのチャイムが鳴り終わってからたっぷり二秒数えて、私は話し始めます。

「私は、航空母艦、『鳳翔』です。当泊地所属の艦娘に連絡があります。本日ヒトマルマルマルに、来ることができる艦娘の皆さんは、食堂に集合してください。繰り返します…」

その後もう一度繰り返して、私はスイッチを切りました。

上手く言えたでしょうか。皆さんがちゃんと来てくれると嬉しいのですが…

 

 

 

────マルキュウゴゴ 食堂

 

私は今、食堂の厨房内にいます。

正直に言って、怖いです。

さっきからひっきりなしに艦娘の皆さんが食堂に入ってきていますが、どの方の顔も一様に絶望して曇っていました。

でも、ほとんどの方は食堂にやって来てくれたようです。これなら、今現在どの艦娘がいて、どの艦娘がいないのかが分かるはずです。

 

 

 

 

────ヒトマルマルマル 食堂

 

 

私はゆっくり厨房から出ました。たまたま食事の受け取りカウンターの所が空いていたのでそこに立ちます。

緊張します。脚が震えているように感じます。

艦娘の皆さんの眼は、絶望に虚ろに染まっています。

それが更に私の中の恐怖を加速させます。

でも、私は「鳳翔」です。私も軍艦の端くれ、プレッシャーになどは負けていられません。

私はゆっくりと息を吸い込んでから、話し始めました。

「えっと、まずは皆さんの点呼を取りたいと思います。」

「お前が点呼をとるのか?」

軽巡「天龍」さんが私の話を遮って尋ねてきました。

私はしっかり声を出して答えます。

「はい。その通りです。」

「あの提督が出てこないとは…随分舐めた真似をするもんだな」

天龍さんが怒ったように呟きます。

私は説明しなければいけません。提督は今、ここにはいないのですから。

「提督はただいま出撃されています。遠征部隊の救援に向かわれ、現在は私がここに残っています。」

「なんだと!そんなのは嘘だ!たかが人間の提督が出撃するなんてありえない!しかも、遠征部隊の救援だと!ふざけた事を言うな!提督達が助けてくれるわけが無いだろう!俺達を騙すのもほどほどにしろ!」

天龍さんが激怒して私に詰め寄ってきます。

でも、これは本当の事なんです。

本当に提督は榛名さん達を連れて、遠い尖閣の海へ出撃されているのです。

だから、それを伝えなくては。

「だいたい、俺達に提督など必要ない!資金を着服し、艦娘を強姦する様なクズに、俺達を指揮する権限があるものか!」

更にいきり立って叫ぶ天龍さん。

 

 

 

…提督さんが、クズ?いくら私でも、そんな事を提督が言われるのは断じて許せません。ちょっと怒らせてしまいましたね?とはいえ、仕方ないという思いも確かにありました。

 

 

 

しかし、天龍さんはまだ怒りが収まらないのか怒声を上げています。

そうなれば、話を聞いてもらうにはこの手しかありませんね。

私はさっきよりももっとゆっくり息を吸い込みました。

そして────

 

 

 

 

「話をお聞きなさいっ!!」

 

 

 

 

天龍さんがポカンとした顔で私を見つめています。

いや、天龍さんだけでなく食堂中の艦娘がみんな呆然とした顔でこちらを見ていました。

注意を引く事はできました。これで皆さんが聞いてくれます。

「信じてください。提督はただいま遠征部隊の救援の為に出撃されています。従って、私が点呼をとります。」

そう言うと、天龍さんは憮然とした表情で自らの椅子へ歩いていきました。

そして私は再び話し始めます。

「では点呼をとります。呼ばれた方は、返事と挙手をお願いします。」

私は短い時間でなんとか作り上げた「着任済み艦娘リスト」に目を落としました。

「秋月さん」

「は、はい!」

「吹雪さん」

「はい!」

「島風さん」

「…」

誰も答えません。

私は顔を上げてもう一度呼びました。

「島風さん?」

すると、ツインテールの駆逐艦の艦娘────天津風さんだったはずです────が、震える声で答えました。

「島風ちゃんは…ここに来ることはできませんでした。」

つまり島風さんは大破して動けないか、余程の精神的ダメージを受けて部屋から出られないか、そのどちらかなのでしょう。もしくは──

 

 

────最悪の想像もしておかなければならないでしょう。

 

 

 

私は頭を振って再び点呼を開始します。

「響さん」

「Да」

「長良さん」

「はい」・・・

 

 

 

 

ようやくの事で点呼が終わりました。

しかし、どう見ても艦娘の皆さんの様子がひどすぎます。

服は破れ放題、疲れ果てた顔つき、痩せこけた体格。

私には、これが戦う状態とは思えませんでした。

本当なら一刻も早く入渠するべきなのですが、私の一存では不可能です。

仕方なく私は、皆さんに解散してもらいました。

 

 

 

 

────ヒトヒトマルマル 執務室

点呼を済ませた私は、食堂に集まった艦娘の名前に丸を付けたリストを携えて執務室に帰ってきました。

そしてここからはまた、「着任済み艦娘リスト」から照合していきます。

 

 

 

 

三十分ほどの時間が経った頃に、照合が終わりました。

その結果、心に深い傷を負ったなどの理由で食堂に来ることができなかった艦娘は────

 

重巡「羽黒」「摩耶」「三隈」

戦艦「日向」「比叡」「山城」「扶桑」

軽巡「那珂」「川内」「木曽」「五十鈴」

駆逐「島風」「暁」「深雪」「白雪」「皐月」「如月」「朝潮」

空母「祥鳳」「翔鶴」「蒼龍」

 

 

 

実に二十一人の艦娘が、部屋から出られないような状態にありました。

正直に言って、信じたくありませんでした。

しかも、この「いない艦娘」の中には既に轟沈させられた艦娘もいるはずです。そう思うと吐き気まで私を襲いました。

立っていられないような心への打撃。恐ろしくて、悲しくて────耳をすませば、彼女らの怨嗟の声まで聞こえてきそうな気がします。

どうすれば良いのでしょうか。今は、ただただ提督の帰りを待つことしかできません。

少しだけ眩暈がして執務室の床に座り込んだ私の視界に、一枚の紙が入り込みました。どうやら机の下に落ちたまま気づかなかったようです。拾い上げたその紙は、何かの冊子の一部のようでした。

 

私は、つい何気なくその紙を裏返して見てしまったのです。

そこに書いてあったのは────

 

 

 

 

比叡・・・sex slave(性奴隷)

 

 

 

 

私は遂に耐えきれず、慌ててポリ袋を探し、ようやく見つけるとその中に顔を突っ込みました。

その中に吐瀉物がすえた臭いを撒き散らします。

私は何度も、何度も吐きました。

あまりにも凄惨な境遇が、自分のすぐ近くにある。それだけで耐性のない私は発狂しそうになりました。

 

 

 

 

やっと吐き気の治まった後、私はあることに気づきました。

性奴隷とその紙に書いてあった彼女らは、つまり普通の部屋にいるわけが無いのです。

 

 

 

そう、『監禁』されているのです。

だから、私たちはその監禁部屋を見つけるところからやらねばならないのです。

 

 

 

 

その部屋の凄惨さを想像して、私は再び身震いしました。




書いてて自分で胸糞悪いなぁと思いましたね…きついです
次回は『能登』が泊地に帰還しますよ!
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