ポケの細道   作:柴猫侍

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第四十八話 愛憎は張り手で横に流しましょう

 

 

 セキタイタウン。

 静かな石は多いに語る。謎のキャッチコピーが掛かれている看板を一瞥したところで、ライト達は石のアーチを潜って町の中へ入っていく。

 カロスの中では田舎であるのか、コボクタウンに似た雰囲気を感じ取るものの、マサラタウンよりは活気に満ちている。

 

 キョロキョロと街の風景を見渡したところで、ライトは一言口にした。

 

「石が多いね」

「そりゃあセキタイタウンだからね。石が名物なの」

 

 何度か聞いたことはあったが、予想よりも石が多く目につく。それは石畳があるという意味ではなく、露店に並べられている商品のほとんどが石で作られたものであったり、休憩用のベンチが石で作られていたりと、『この街は石が名物です!』と言わんばかりの物が非常に多いという事だ。

 

 数十分前の出来事で精神的に疲れているライトであったが、物珍しい商品の数々に口をあんぐりと開けて露店の商品を眺める。

 特に面白いと思ったのは、石を削って作られたポケモンの小さな像だ。手乗りサイズでありながらかなり精巧に作られており、製作者の技量が窺えるものであった。

 

(二千円……高い)

 

 しかし、如何せん値が張る。

 観光で訪れていたのであれば記念に買っていただろうが、生憎今は旅の最中。石というある種デリケートな材料で作られている物を、この先ずっと持ち歩く訳にもいかない。

 さらに言えば、余り出費はしたくない。

 旅費以外にもお小遣いは託されているものの、物欲の欲するままに買い物を行ってしまえばすぐに金が底をつくのは目に見えている。

 その為、見て楽しむだけにしようとライトは心に決めるのであった。

 

「ライト、ほら! 進化の石専門店!」

「ストップストップ。引っ張らないで。靴底すり減るから。凄い音が鳴ってるから」

 

 とある店を指差しながらライトを力尽くで引っ張っていくコルニに、ライトは必死に制止の言葉を掛ける。

 ズリズリと明らかに削れている音が鳴り響くスニーカーに対し、額に汗を浮かべながら自分の足で歩き始めるライト。

 彼女の言う通り、店には『進化の石』と呼ばれているポケモンに使う事のできる道具がずらりと並んでいた。

 

 進化の石―――その名の通り、ポケモンの進化に関わる道具である。ポケモンに対応する石をポケモンに触れさせるだけで、ポケモンはすぐに進化するのだ。

 

「ブイ~?」

「触ったらダメだからボールに戻ってね、イーブイ」

 

 ショーケースに並んでいる石に興味津々で手を伸ばすイーブイを咄嗟にボールの中に戻す。

 触れるだけで進化するのだから、石による進化を三種類も有するイーブイが対応する物に触れて進化すれば、即刻買取決定だ。

 安い物でも二千円。高いものは一万円以上。先程の石像よりも値が張る。

 

「炎の石、雷の石、水の石、リーフの石……」

「太陽の石、月の石、目覚め石、光の石、闇の石……」

「「……氷の石?」」

 

 見たことのない石が一つだけポンと中央に置かれている。

 クリスタルのように透き通っている石の中には、雪の結晶を模った六花が埋め込まれている様であり、観賞用としても充分なほど美しい石に二人の視線は釘付けになった。

 だが一つだけしかないということもあり、値段は一番高い二万五千円だ。モンスターボールに換算すれば、百二十五個買える値段。

 

 物珍しい目で『氷の石』を眺める二人の様子を見た店主は、『お客さん、良い目してるねェ~』と言いながら歩み寄ってくる。

 

「その『氷の石』は先日アローラ地方から取り寄せた一品なんだよ」

「どのポケモンに使えるんですか?」

「ロコンだよ」

「ロコン? ロコンって、炎の石で進化するんじゃ……」

「そうだよ。普通のロコンならね」

「普通のロコンなら?」

 

 何やら、普通ではないロコンがいるような口ぶりにライトは思案を巡らせるように顎に手を当てる。

 そこで先日のアクロマの言葉が頭をよぎり、ポンと手を叩く。

 

「あッ……アローラ地方の」

「おお、よく知ってるね! アローラのロコンは氷の石で進化するんだ!」

「ふぇ~……ロコン以外に氷の石で進化するのは居るんですか?」

「いや、そこまでは分からないんだけど……まあ、買う人も一応居るかなっていう考えで仕入れた物だから!」

 

 はははッ、と陽気に笑う店員にライトは苦笑いを返す。

 そのような特定の地域にしか生息していないようなポケモンに対応する石を、このような場所で売るとは中々のチャレンジャーだ。

 値段も張っている為、買うものもほとんどいないだろうというのは容易に想像できる。

 

「どうだい? 他にもいろいろあるけど、何か買っていくかい?」

「いや、進化の石で進化しそうなポケモンは……居ますけど遠慮しときます」

「あっちゃ~……そうかァ~……まっ、また気が向いたら来てくれればいいから! ミアレにも石屋はあるけど、こっちの方が値段は安いからね!」

「そうですか。じゃあ、また今度……」

「はい! またのお越しを~!」

 

 店を後にする二人に店員は営業スマイルを浮かべて見送る。

 珍しい物を見る事ができたと満足するライトは、他にも面白そうな店がないものかと探索を始めた。

 石のテーブルや石の椅子、石皿などの家で使えそうな物に始まり、実物大のポケモンの石像など偏った趣向の人物しか買わなそうな物まで売られている。

 

 特に、本物と見間違うようなイシツブテの像には―――。

 

「ラッシャイ!」

 

 本物だった。

 

「ラッシャイ! ラッシャイ!」

 

 ライトと目が合ってここぞとばかりに鳴き声を上げるイシツブテ。鳴き声のせいか、『いらっしゃい』という空耳が聞こえてくる。

 いかつい顔から直接腕が生えているような特徴的なフォルム。子供の頃は、実家のイシツブテをブルーと投げて遊んだものだと郷愁の想いに浸るライト。因みに今はもうゴローニャであり、毎年脱皮して結構大きくなっている。

 

 リピート再生するラジオのように何度も同じ鳴き声を上げるイシツブテに足を止める二人は、ふと上に掲げられている看板を眺めた。

 

「……定食屋さん」

 

 そう言えば、とポケギアの画面に映し出されている時刻を確認し、まだ昼食を食べていない事に気付くライト。

 途端に二人からは空腹を報せる音が鳴り響き、互いに顔を見つめ合う。

 

「ここでお昼にしよっか」

「うん、そうしよ!」

 

 意見が一致したところで、シックな色合いの店の中へ入っていく。扉を開けると共に漂ってくるいい匂いに、二人の空腹度はさらに加速していく。

 『店内ポケモンOK』という注意書きも確認したところで、普段から外に出しているイーブイをボールから出す。

 ようやくボールから解放され、更には店内に満ちる美味しそうな匂いにイーブイは幸せそうな顔を浮かべる。

 そんなイーブイを抱き上げ、二人は店内で食事をとろうとするのであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ふふっ、君もイーブイを連れているのね」

「も? 他にもイーブイを連れてる人が居たんですか?」

 

 カウンター席でナポリタンを口に運ぶライトは、店主である女性の言葉に反応する。昼食の時間帯であるにも拘わらず、それほど混雑していない店内。更に店内の広さに反比例する席の少なさも相まって、手持ちのポケモン達はゆったりとした空間でポケモンフーズをモグモグと食べ進めていた。

 ライトの食べているナポリタンは、シンプルな味付けであるものの隠し味のクラボの実によって、ちょうどいい辛味とコクが出ている。

 隣ではコルニもスパゲッティをフォークに絡め取って尋常ではない速さで食べ進めているも、ライトと店主の話に興味あり気に視線を向けてきた。

 

「そうねェ……一昨日くらいに紺色の髪のミディアムボブの女の子が連れてて……それよりもうちょい前には金髪の男の子が連れてたわ」

「へぇ~」

 

 瞬時に二人のトレーナーの顔が浮かび上がる。

 だが、本人に訊かなければ分からないことでもあるので、当たり障りの無いように『そうなんですかァ~』と答えるライト。

 イーブイは見た目の可愛さも相まって、トレーナーの間では非常に人気だ。特に野生は非常に珍しく、トレーナーなら見つけたら即ゲットするだろう。

 

 ジョウトで拾ったタマゴから孵って手に入れたライトのイーブイ。そう考えてみると、非常に運が良かったことが窺える。

 そのようなことを思いつつ振り返ると、コルニのアチャモと戯れているイーブイが見えた。

 ウザそうに目を細めるアチャモには一切気にせず追いかけるイーブイであったが、途中でリザードに尻尾を掴まれるように制止され、一瞬宙に浮かんだ後に派手に床に激突する。

 

 だが、次の瞬間には立ち上がり、リザードの制止を気にせずに再び新しい友達の下へと全力で駆けつけていく。

 

「……まあ、元気がいいからいいかな」

 

 そう言って、再び料理に目を移そうとした瞬間、とある光景が目に入った。

 

「グルルゥ……」

「……」

「……リザード? ハッサム?」

 

 ライトの手持ちのトップ2が、席に座ってコーヒーを啜っている客に向かって威嚇していたのである。

 客であろう女性は全く気にしていない様子であるが、明らかに店内の雰囲気にそぐわぬ態度をとっている二体を見かね、席を立って二体の下に近付く。

 

「コラッ! そんな知らない人に威嚇しないの」

「……その子達、君のポケモン?」

「あ……はい。すみません、普段はこんな子じゃないんですけど」

「……ふっ、()()()()()

「え? あっ……ありがとうございます?」

 

 コーヒーを飲み終えた女性は席を立ち、二体の事を何故か褒めてからレジに向かった。明らかに褒められるようなことはしていない筈なのだが、と首を傾げるライト。

 黒の本革を用いているようなジャケットを身に纏い、ぴっちりと張り付くような白いジーンズを穿いている女性。すらりとした美脚に違わぬ高身長の女性は、掛けているサングラスを少し整えてから店を後にする。

 『カランカラン』と扉に付属していた鈴が鳴り響くと、一瞬静寂が店内を支配した。

 

「……はぁ。二人共どうしたの? まださっきので警戒してるの?」

 

 ライトが示唆するのは、コルニのアチャモを奪い返そうとしてきた男の事。あの一件からまだ二体の警戒心が解けていないのだと推測したライトは、『もう大丈夫だから』と宥めるような声色で語りかけて、再び昼食の席に着く。

 主人の言葉を聞いた二体は渋々といった表情でポケモンフーズに手を掛ける。

 ハッサムに関しては、無言のまま同じく昼食に手を掛けていたルカリオに視線を向けた。するとルカリオは、コクンと小さく頷いて何かをハッサムと同意する旨の表す。

 

 そして、これ以上周囲に違和感を覚えさせないようにとハッサムも食事に戻るが、ハッサムとリザード、ルカリオは今の女性を目の前にし、とあることを感じていたのだ。

 波動によって相手の気持ちが解るルカリオは兎も角、ハッサムやリザードでさえも感じ取れてしまうもの。

 それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――吐き気を催すような悪意の気配。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……あの子達、私を睨むなんてね。憎たらし過ぎて逆に可愛く思えてきたわ……!」

 

 店の外を歩く女は、目尻にビキビキと血管を浮き上がらせ、自分のことを睨みつけていた二体のポケモンの事を思い出していた。

 彼女のサングラスの奥に輝く瞳は、業火の如く―――。

 

 

 

 ***

 

 

 

 次の日。

 セキタイの観光もほどほどに、次なる街であるシャラシティを目指すために二人は早起きして支度をしていた。

 乾燥機にかけた洗濯物を畳んでバッグに仕舞い、部屋に忘れ物がないかをしっかりと確認する。

 その間、ベッドの上では起きたばかりであるにも拘わらず元気そうに跳ねて遊んでいるイーブイ達が―――。

 

「もォ~……折角ベッド片付けたのに、シーツとかぐしゃぐしゃになっちゃうじゃん」

「そんな時は……カイリキー、お願い!」

「リッキィ!」

 

 ボールから繰り出されるカイリキー。

 すると、ベッドの上で走る周るイーブイ、キモリ、ヤンチャム、アチャモを四本の腕で掴みあげ、宙ぶらりんの状態にする。

 逆さづりにされる四体。だが、意外と楽しそうにはしゃいでいた。

 

「どう!?」

「非常にコメントに困る」

「そう? アタシ、カイリキーの四本腕は便利だと思ってるんだけどなァ~」

「いや……まず、ポケモンが宙吊りにされてるの見せられて『どう?』っていうのも……」

「そっか! まあ、さっさとベッドメイキング終わらして、朝ご飯行こう!」

「うん、まあ……そうだね」

 

 洗濯物のように吊るされている手持ち達を一瞥してから、荒らされたベッドのシーツを再び整え始めるライト達。

 だが、その瞬間に床にビー玉のような物が落下する。

 コロコロと転がる球体の物体はライトの足元に転がり、それに気付いたライトは訝しげな顔で橙色の玉を拾い上げた。

 

「ッ! チャモ! チャモ!」

「え? これアチャモの?」

「チャモ!」

 

 ライトが拾い上げた物を目の当たりにして騒ぎ始めるアチャモ。眼前まで球を拾い上げても見せつけると、『寄越せ!』と言わんばかりに小さな嘴を開けたり閉めたりする。

 暴れるアチャモを前にして拾い上げた玉を観察してみた。

 透明度の高い橙色の宝石のような玉の中には、紅と黒がねじり合ったような形の物体が埋め込まれている。

 

「……何これ?」

「どしたの?」

「いや、アチャモがこれを持ってて……」

「ふ~ん……なんか、メガストーンみたいだね」

「これが?」

「うん」

 

 やけにあっけらかんとした口調でその玉を『メガストーン』であると口にするコルニに、思わずライトは眉をひそめた。

 メガストーンと言えば、メガシンカする際に対応するポケモンに持たせることにより、トレーナーのキーストーンと反応する物体だ。

 それを何故アチャモが有しているのかという疑問が浮かんでくるが、十中八九昨日の男が頭を過るライトは、あまり考えない方が良いだろうと勝手に結論を出し、メガストーンと思われる玉をアチャモに返す。

 

「ふぅ……そう言えば、次の街のシャラシティってコルニの住んでる所だよね?」

「うん、そーだよ。シャラサブレって言うお菓子が名物」

「……」

「どしたの?」

「……いや、つくづく地元に名物がないなァ~って思って……」

「なんか……ゴメン」

 

 寂しいオーラを纏う少年に何か申し訳ないことを口にしてしまったとコルニは謝るのであった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 歩く道の所々に水晶のようなものが一杯生えてる。

 例えるなら、タケノコみたいに地面からニョキって。コルニ曰く、11番道路の先にある映し身の洞窟っていう場所にある結晶と同じものらしんだけど、明らかに不自然な光景だ。

 道端に腰辺りまで高さがありそうな結晶が生えてるって、初めて見る人には不自然以外のなんでもないんだけど、コルニは昔から見てるらしいから『今更』っていう雰囲気をしてる。

 

 泥棒とかが掘り起こして持っていかないのかなとか思ってみるけど、意外と頑丈らしいので実際にやってみる人物は最近いないようだ。

 最近って言っている辺り、昔は居たんだなと思ってみたり。

 

「……ん?」

 

 フードの中でイーブイがもぞもぞしている最中、僕は林の奥で二体のポケモンが戦っている光景を目にした。

 ガタイのいい小さい体のポケモンと、細身で高身長のポケモン。エビワラーとかサワムラーを思い出すようなポケモンだけど、取っ組み合ってバトルしている。

 どんなポケモンなんだろうと、すぐに図鑑をっと……。

 

『ナゲキ。じゅうどうポケモン。自分より大きな相手と出会うと無性に投げたくなる。強くなると、帯を取り換える』

『ダゲキ。からてポケモン。帯を締めると気合いが入りパンチの威力が増す。修行の邪魔をすると怒る』

 

 明らかに服を着てる見た目なんだけど、そこら辺はどうなんだろう。

 帯を締めるって言っている辺り、帯は体とは別らしい。ゴーリキーのパンツは実は模様で、ベルト自体は外せるらしいけど、あの二体の柔道着みたいな服も模様なんだろうか。

 それと……。

 

「コルニ。あの二体、【かくとう】タイプらしいよ。捕まえないの?」

「う~ん……今はいいかな」

「へェ~」

 

 今日はその気分じゃないらしい。

 まあ、どんなポケモンを捕まえるかは本人の意思次第だから、僕があれこれ言う事じゃないんだろうけど。

 

―――バチンッ、バチンッ、バチンッ!!

 

「……なんの音?」

 

 不意に聞こえてくる乾いた音。掌で何かを叩くかのような音に気付いて辺りを見渡し視るが、特に何も見えない。

 だけど、その音は収まる気配が無い。自分達の見えない所から聞こえてくる音って言うのは恐ろしいもので、自然と僕とコルニの顔は険しくなってくる。

 でも、だんだん音は近くなってきた。接近してくると同時に、叩く音以外にも草木がガサガサと揺れる音も加わって、更には木が折れて薙ぎ倒される音も―――。

 

「ホントに何の音ッ――――!?」

 

 ふと振り返った瞬間、僕の目の前の紫色の巨体が通り過ぎて、後ろの木の幹に激突した。やってきた方向に目を遣ると、大きく抉られていたり果てには折れていたりする木も窺える。

 当然の事に、自分が何を言おうとしてたのかも忘れて、僕は先程の紫色の巨体へと目を向けた。

 

「ニ……ニドキング?」

「わッ……気絶してる……」

 

 カントーでも見たことがあったからすぐに名前は出てきた。横ではコルニが、戦闘不能になって倒れているニドキングを目の当たりにして唖然としている。

 ……危ない。あともうちょっと横に飛んできてたら、僕達も巻き込まれてた!?

 そう考えただけで、引き攣った笑いと冷や汗が止まらない。

 

「ッテヤマッ!」

 

 すると、茂みの中からゴソゴソと音を立てて姿を現す別の巨体が一つ。

 あのニドキングを吹き飛ばすだけの力を持ったポケモンなんて、一体―――!?

 

「……お相撲さん?」

 

 見たままの感想を口にした。

 うん、お相撲さんだ。恰幅のいい体格に、如何にも張り手を繰り出しそうな大きな手。これがお相撲さん以外に誰がいるだろうか。

 だけど、ポケモンなのは一目見て分かる。

 

「図鑑図鑑っと……」

『ハリテヤマ。つっぱりポケモン。体の大きなポケモンたちと力比べをするのが大好き。張り手でトラックをぶっ飛ばす』

「うわぁ……」

 

 トラックをぶっ飛ばす腕力って……。

 そりゃあ、意外と小さいニドキングも吹き飛ばされる訳だよ。だって、ニドキングの平均身長って百四十センチだから、十二歳男子の平均身長より小さいんだもん。

 体重は六十二キロだけど、トラックを吹き飛ばせるくらいの腕力だったら、簡単な筈だよね……。

 

 ハリテヤマの平均身長は二百三十センチ。……大きい。恰幅もあるから、体感として大きい岩石を目の前にしてる感じがする。

 

「わぁ~! お腹ぷよぷよ~!」

「何をしてるの、コルニさん?」

「ッテヤマ!」

「おおッ、今度はガチガチに硬くなったァ―――ッ!」

「コルニさん? 硬くなったじゃなくて」

 

 勇猛果敢。いや、ただの危険行為だ。

 ニドキングをぶっ飛ばしたハリテヤマに怯えることなく近付いて、あまつさえそのお腹を触るなんて常人の思考じゃ考えられないよ。

 思わず『さん』付けで呼んでしまったけど、意外とハリテヤマはコルニのスキンシップを受け入れている。

 

 力を込めれば岩石の様に硬くなる筋肉を持つハリテヤマ。その恰幅は伊達じゃないってことらしいけど……実際にお相撲さんも筋肉凄いって言うし。

 ペタペタ触れているコルニに対し、ハリテヤマは自分のお腹をパチンと叩いて四股を踏んでみせる。

 うん、凄い良い音が鳴ってる。太鼓叩いたみたい。

 

 呆気にとられている僕だが、急にコルニはキラキラとした目を向けてきたことで正気に戻る。

 

「……どうしたの?」

「この子ゲットしていいかな!?」

「いや……どうぞ、お好きに」

「よ―――っし! 勝ってゲットする! カイリキー!」

 

 ゲットする気満々のコルニはカイリキーを繰り出す。すると、先程までの友好的な雰囲気だったのが嘘のように無くなり、戦意の滾った瞳をコルニのカイリキーに向けてきた。

 カイリキーは体が大きいから、ハリテヤマのターゲットにされたみたい。

 

 迫力は充分だけど……。

 

「ちょっと離れたところで観戦しよっか、イーブイ」

「ブイッ!」

 

 巻き込まれたらたまらないと、僕とイーブイは数メートル離れたところで観戦することにした。

 

 

 

 その後、いいバトルの後に僅差でカイリキーが勝って、コルニはハリテヤマを捕まえるのに成功した。

 これでめでたく、コルニの手持ちが六体揃いましたとさ。

 




全体で五十話行きました。皆さま、いつも読んで頂き誠にありがとうございます。

五十話に到達したということもあり、結構話数があるということもあるのでライトの手持ちの情報を整理したいと思います。

ハッサム♂ いじっぱりな性格
技:はがねのつばさ、きりさく、つばめがえし、かわらわり、かげぶんしん、etc…
 ライトの現エース。ライトの手持ちでは大黒柱のような存在であるポケモン。今のところジム戦では全試合選出(ハクダンでは選出されるものの出番はこなかった)。進化して素早さが下がったものの、その分攻撃力と防御力は上昇。ライトの十歳の誕生日に、ブルーがタマムシシティのゲームコーナーでコインと引き換えて来た。最初のころは全然懐いていなかったが、今ではすっかり懐いている。非常にストイックでありながらも、イーブイやキモリの保護者的な立ち位置。

リザード♂ いじっぱりな性格
技:ひのこ、ドラゴンクロー、えんまく、りゅうのいかり、がんせきふうじ、etc…
 コーヒー大好きな我らがリザさん。好きなのは深入りドリップ。冷静な性格と思いきや、実際は意地っ張りでありハッサムとよくメンチを切っている。ヒトカゲのころからやけに達観している。終始落ち着いているものの、バトルでは胸の内に秘めた闘志を全力で燃え上がらせる。オーキド研究所で過ごしていた頃は、博士の買いだめていたコーヒーをくすねて飲んでおり、問題児とされていたという経緯もあるが…。

ヒンバス♀ ひかえめな性格
技:ミラーコート、まもる、ひかりのかべ、どくどく、etc…
 アルトマーレで毒にやられているところを助け、手持ちになった一体。自己主張は控えめであるが、バトル中ではライトの指示に従って的確な動きができるポケモン。意外にある特防で耐えきってからのミラーコートが得意。半面、攻撃は苦手。食事をとる時はリザードに手伝ってもらっている。

イーブイ♂ わんぱくな性格
技:たいあたり、でんこうせっか、あなをほる、しっぽをふる、かみつく、etc…
 道中拾ったタマゴから孵った一体。ライトのフードの中がお気に入りで、常にちょこんと居座っている。まだまだレベルは低いものの、ガッツは一人前。ボールの外に常にいるが、必要な時なボールに戻されることをいとわない。好奇心旺盛であり、ある種トラブルメーカーであったりする。クール系のメスが好き。

キモリ♂ おくびょうな性格
技:でんこうせっか、メガドレイン、りゅうのいぶき、にらみつける、etc…
 トレーナーに捨てられ、ラコルザに保護されていたところをライトが引き取った。非常に臆病で、バトルでもその逃げ腰は遺憾なく発揮される。その為危機には敏く、回避をとればメンバー1。接近戦が苦手なため、基本は一撃離脱戦法をとる。イーブイと仲が良いが、振り回されることが多い。

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