ポケの細道   作:柴猫侍

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第四十九話 『君の瞳に乾杯』という言葉

 

 

 

 

 

「メレ~」

『メレシー。ほうせきポケモン。地下深くの高温・高圧な環境で生まれた。頭の石からエネルギーを放つ』

 

 所々に煌びやかな宝石が埋め込まれた岩のようなポケモンに図鑑を翳していたライト。温厚な性格であるのか、特に敵意を見せるという事も無く眼前に立っている二人の人間に怯えるという様子も見せない。

 耳のような部分をぴょこぴょこと動かすメレシーに、フードから顔を覗かせていたイーブイも耳を動かす。

 

「口の周りにあるやつ髭みたい……」

「やっぱりそう思う?」

「メレ~」

 

 他愛ないことを話し合う二人に対し、洞窟の奥で屯している仲間を見つけたメレシーは、イシツブテ同様フワフワと謎の力で浮きながら群れに帰っていった。

 【いわ】タイプには珍しいカワイイ雰囲気のポケモンであった為、ほのぼのとした雰囲気で映し身の洞窟を進んでいくライト達。

 11番道路を抜けた先にある『映し身の洞窟』は、次なる目的地であるシャラシティに繋がっている。

 

 映し身の洞窟―――洞窟内に自然にできた鏡が無数に存在し、曲がり角を通った際に鏡に映る自分の姿に驚いたりしてしまうような場所だ。

 無数に存在する鏡によって、洞窟内であるにも拘わらず外で燦々と輝いている太陽の光が反射し、電灯を付けているように明るい。その明るさは、暗い場所が苦手なライトでも平気で進める程度だ。

 

 イーブイは終始、鏡に映る自分の姿に興味津々に前足を伸ばし、何度かフードの中から落下しそうになっていた。その度にライトが寸での所で受け止めるのだが、背中で落ちそうになるイーブイを瞬時に受け止めるとは、かなりの反射神経だ。

 それは兎も角、今回の洞窟でもコルニを先導にして突き進んでいる。理由としては、何度か通った事のあるコルニの方が道に詳しいという至ってシンプルな理由だ。

 

 洞窟ということもあって【いわ】が多く、【かくとう】タイプであったルカリオ(当時リオル)を鍛えるにはちょうど良かったらしい。

 それでも【いわ】・【フェアリー】のメレシーはその耐久も相まって中々倒せなかったという思い出話を聞き、ライトはカワイイ見た目をして結構強いのではないかとメレシーの評価を上げていた。

 だが、既に逃げてしまったものは仕方がない。

 今はシャラシティに向かうべく、足早に鏡張りのような洞窟を前へ前へと足を進めていくが―――。

 

「おッ、君はポケモントレーナーかな?」

「はい、そうですけど……」

「はっはっは、そうか! じゃあポケモントレーナー同士、目があったらすることは……」

 

 ライトと視線のあった大きなバッグを背負う山男の装いの男性は、モンスターボールを掲げてニヤリと微笑む。

 その意図を察したライトもベルトからボールを取り上げた。

 二人のトレーナーは笑みを浮かべながら、取り出したボールを放り投げてポケモンを繰り出す。

 

「行け、ホールド!」

「キモリ、君に決めた!」

 

 キモリを繰り出すライトに対し、山男の繰り出したのは恰幅のよく、腹巻をしているかのような体毛を有している兎のようなポケモン。他の兎のようなポケモンにはミミロルやミミロップが居るが、あっちと比べると大分腹回りが大きい。

 見たことのないポケモンを目の当たりにして図鑑をかざす。

 

『ホルード。あなほりポケモン。大きな耳は1トンを超える岩を楽に持ち上げるポケモン。工事現場で大活躍する』

「タイプは……【ノーマル】と【じめん】……よし! キモリ、相性では有利だよ!」

 

 臆病なキモリの背中を後押ししようと、自分達の方が若干有利であることを示す。勿論、ポケモンバトルは相性だけで決まるものではないが、それでも相性が有利であることに越したことはない。

 ライトの言葉に人間で言うところの親指を立ててグッドサインを出すキモリ。

 意気込みは充分。

 

「よーし、キモリ! “りゅうのいぶき”!」

「ホルード、“マッドショット”で迎え撃て!」

 

 背をのけ反り、直後に“りゅうのいぶき”を繰り出すキモリに対しホルードは、長い耳の間に生み出した泥の塊から無数の泥団子のような弾丸を放ち、“りゅうのいぶき”をかき消す。

 激突する二つの技は洞窟内の視界を急激に悪くするが、ライトは好機とばかりに指示を出した。

 

「“かげぶんしん”!」

「なにィッ!?」

 

 次の瞬間、無数の分身を生み出していくキモリ。それだけならば、まだ驚きは少なかっただろう。

 しかし、洞窟内に存在している自然の鏡によって、普通の“かげぶんしん”よりも分身を生み出している数が多くなっている様な錯覚を生み出す。

 “かげぶんしん”をして無数に増えたキモリの姿に、囲まれたホルードは目を見開いてどれを攻撃すればいいのかと困惑した顔を浮かべる。

 

(ハッサム直伝の“かげぶんしん”……上手くできてるみたい! ようし、なら……)

「“メガドレイン”で一気に決めちゃえ!」

「ああ、ホルード!?」

 

 “マッドショット”で分身を消そうと試みていたホルードであったが、どこからともなく繰り出されるメガドレインにより体力をどんどん吸われる。

 【じめん】を有すホルードには【くさ】の“メガドレイン”は効果が抜群であり、自ずと吸収される体力も多く、どんどん疲労したような顔を浮かべるホルード。

 一分も経たずとして体力を全て吸われてしまったホルードは、力なく地面に崩れ落ちる。

 

 そのすぐ近くでは本体のキモリが艶々となっており、勝ち取った勝利に満面の笑みを浮かべていた。

 だが、次の瞬間にキモリはピクリと痙攣し、回復した際の光とは違う神秘の輝きをその身に宿し始める。

 

「あッ……これって……!」

 

 歓喜の声を漏らすライトに対し、ブルブルと震えるキモリの体は徐々に大きくなっていく。

 キモリの時よりもシャープになった頭頂部からは長い一枚の葉が風に靡かれ、両腕の手首辺りからも三枚ほど鋭い葉が生える。

 肉厚だった尻尾も他の部位に生えた葉のように鋭い物へと変化し、全体的に鋭いという印象を受ける見た目になったポケモン。

 自ずと鋭い目つきになったポケモンにライトは興奮の赴くままに図鑑を翳してみる。

 

『ジュプトル。もりトカゲポケモン。発達した太ももの筋肉が、驚異的な瞬発力と跳躍力を生み出すぞ』

「へぇ~、ジュプトルって言うんだ!」

「カッコよくなったじゃん!」

 

 勝利を掴みとり、尚且つ進化を果たしたジュプトルに惜しみない賞賛を送るライトとコルニに、恥ずかしそうに頭を掻くジュプトルは幸せそうだ。

 同じく感心している山男は、ホルードをボールに戻した後に拍手をしながらライト達に近付いていく。

 

「凄いな、坊主! これならシャラジムのコンコンブルにも勝てるかもしれないな!」

「コンコンブルって……ジムリーダーの方ですか?」

「ああ。エイセツのウルップとカロスジムリーダー最強を争う男だ! なんでも、メガシンカ親父とも呼ばれてるらしいな!」

 

 メガシンカと聞き、一瞬緊張の走ったような顔を浮かべるライト。さらにカロス最強のジムリーダーを争うと呼ばれるほどの実力。どれほどのものであるのかと、畏怖を覚えてしまう。

 ジムリーダーは相手のジムバッジの数に合わせてくれるものの、それでも今のパーティで勝てるのかとライトは不安になる。

 だが、ストライクはハッサムに、キモリはジュプトルに進化した今、パーティの総合的な戦闘力はショウヨウの時とは比べ物にならないほどになっている筈。

 グッと拳を握ったライトは、やる気十分のジュプトルに視線を交わしてニっと笑ってみせる。

 

「うん、滾ってきた! 次のジムも頑張ろう!」

「おう! その調子だ、坊主!」

「へへっ、ありがとうございます!」

「シャラシティまではこの奥を行ってすぐ右だぞ! 頑張れよ!」

「はい!」

 

 手を振って洞窟の奥へと消えていく山男に一礼した後、二人は再び旅路に着く。

 少し進んでいくと、山男の言った通り出口が近付いているのか反射してくる太陽の光も一層強くなっているように感じる。

 もうすぐシャラシティと言ったところであるが、そこで一つ思い出すライト。

 

「そう言えば、シャラジムのジムリーダーってコルニのお爺ちゃんなんだよね?」

「うん、そーだよ」

「やっぱり【かくとう】使いなの?」

「そうだね。アタシより滅茶苦茶強いよ。一度も勝てたことないもん」

「……一度もかぁ」

 

 コルニのルカリオの強さはライトも良く知っている。あの実力を持ってしても勝てないということは、それだけでコンコンブルというトレーナーの実力が窺える。

 コルニの祖父である以上、年齢が高いのは想像に難くない。長年磨き上げられた老練な技を見せつけてくるのではないか―――。

 

(……気を引き締めていこう)

 

 頬をパンパンと叩いて気合いを注入するライト。バッと顔を上げると、洞窟の出口―――そして、広大なシャラシティを望むことができた。

 海沿いの街。その中でも一際目につくのは、海の上にポツンとそびえ立っている巨大な塔だ。

 ミアレシティのプリズムタワーを思い出すかのような塔であるが、向こうが文明の発達を象徴とでも言うのであれば、視界に映る塔からは長い時の流れを象徴するかのような歴史を感じ取れる。

 

「あれは『マスタータワー』! お爺ちゃんはあそこで継承者っていうのもやってるんだけど……」

「継承者?」

「うん。メガシンカの継承に関して、アタシ達の一族でやってるんだけど……まあ詳しいことは解らないや!」

 

 溌剌とした声で言い切るコルニであるが、その傍らでライトは苦笑を浮かべる。それにしても、一族に関する事を腹に抱えている人物と一緒に居る事が多いライトだ。

 そんな少年に対し、ようやく戻ってきた故郷にテンションの上がっているコルニは、ライトの手を引いてグングン先へと進んでいく。

 

「早く行こうよ! ウチに連れてくからさ!」

 

 

 

 ***

 

 

 

「ここがウチだよ!」

 

 あの後、為されるがままに街を引き摺られてコルニの自宅まで連れて行かれたライト。眼前にそびえ立っている家は、カロスで何度も見たことのあるような雰囲気の家であり、特に目立った装飾がされていたりということはない。

 強いて言えば、周囲に建っている家よりも庭がかなり広いというところか。

 

 それよりも、街全体が海より高い場所に存在しており、更に言えば段々状になっている為、自然とオーシャンビューを望むことができるという羨ましいシチュエーションだ。

 だが、アルトマーレに住んでいるライトはオーシャンビューに対してそれほど羨望の眼差しを持っている訳でもなく、『空気が美味しいなァ~』と呑気に呟くだけである。

 

 その間にもコルニは門を押しのけ、玄関にあるインターホンを押す。

 ピンポーン、とありきたりな音が鳴り響いた後、間髪を入れずに玄関の扉を開けたコルニはそのまま家に入っていこうとする。

 自宅なのだから当たり前か、と心の中で納得するライトはそのまま付いていく。

 すると、廊下の奥からコルニによく似た風貌の女性がフライパンを手に持って顔を覗かせた。

 

「お母さん、ただいまァ~!」

「あら、コルニお帰り。ジムリーダーの一次試験はどうだったの……って、そっちの子はどうしたの?」

「あッ、始めまして。お邪魔します」

 

 丁寧に挨拶してから一礼するライトにコルニの母親も、『あらあら、こんにちは~』と穏やかな笑みを浮かべながら挨拶する。

 

「途中で会って、ここまで来るのに一緒に旅してきたの! まあ、つまりボーイフレンド!」

「「えッ?」」

 

 コルニの言葉に、戦慄するライトとコルニ母。

 訝しげな表情でコルニに視線を送るライトに対し、コルニの母親は衝撃を受けたような顔で慌てながら家の奥へと走り去っていく。

 

『大変よ、お父さん! あのコルニが! あのコルニがウチにボーイフレンド連れてきたわ!』

『な、なんだってェ―――ッ!?』

「……あの……コルニさん」

「ん、どーしたの?」

「ボーイフレンドの意味はご存じで?」

 

 あっけらかんとした表情のまま玄関で靴を脱いで上がろうとするコルニにライトは、頬をピクピクと引き攣らせながら問いかける。

 するとコルニは『うーん』と顎を指で押さえて考えた後、ニパッと笑いながら答えを返してきた。

 

「男の子の友達って意味じゃないの?」

「……コルニさん、違います」

「えッ!? 違うの!?」

「半分合ってるけど、ボーイフレンドだと恋人的な意味も含まれたりする場合もあります」

「恋びッ……!」

 

 丁寧な口調で説明するライト。

 対してボーイフレンドの残り半分の意味を知ったコルニは、珍しく動揺し、尚且つ頬を染めて恥じらいを見せながら唖然とした。

 恐らく、コルニの両親は恋人の方の意味をとってしまい、あれほど騒ぎ立てているのだろうと二人はすぐに理解する。

 

 気まずい空気になり見つめ合う二人。

 

「……とりあえず誤解を解こうか」

「……うん」

 

 

 

 この後、無事に誤解は解けた。

 その際に若干残念がられていたのが、やけに印象的だったという。

 

 

 

 ***

 

 

 

 コルニの家で少し休憩した後、二人はマスタータワーに向かっていた。コルニの話によると、マスタータワーの内部にジムがあるらしく、ジムリーダーであるコンコンブルも用事がない限り塔の中に居るという。

 祖父が自分にだけ厳格な態度であり、他の者に対しては気さくであるというギャップが若干気に入らないというコルニの文句を聞きながらライト達が進んでいるのは、潮の満ち引きで出来る砂の道だ。

 

 映し身の洞窟を出たばかりの時は海水に呑みこまれていた道であったが、一日に何度か引き潮で幅が二メートル程の砂浜が顔を現す為、ジムの挑戦者などはこの引き潮を見計らってこなければならないということらしい。

 無論、泳げるポケモンがいれば“なみのり”を行使して海を渡ると言う手段をとってもいいらしい。

 

 ギャラドスは今頃元気にしているのだろうか、と思ってみるライト。

 だが、恐らく近海の主のキングドラとドンパチをやっているか、自由気ままに周りを泳ぎ回っているどちらかだろう。

 どちらにせよ、元気だろうと結論付けてマスタータワーへと向かう足取りを広くしながら進んでいく。

 

「マスタータワーとプリズムタワー……どっちが大きいかな?」

「う~ん……多分プリズムタワーじゃない? でも、マスタータワーを上ってから外の景色眺めるとすっごい綺麗なんだよ! アタシ、小さい頃いっつも上ってはルカリオと一緒に眺めてたもん!」

「へぇ~! 見てみたいなァ……」

「えへへッ! じゃあ、ジム戦で勝ったら連れてったげるから!」

「分かった!」

 

 あれほどの高い建物の上から望む景色は、それは素晴らしいことだろう。カロスを全貌出来てしまうかのような建物。

 メガシンカの歴史を残す建物―――カロスの歴史を常に望んできた場所だ。

 他愛ない会話の中で交わした約束であるが、気合いを入れるには十分すぎるほどのものであったのは、戦意に満ちるライトの瞳を見れば一目瞭然であった。

 

「でも、今日は皆疲れてるからァ~……明日でも大丈夫かな?」

「いいんじゃない? 予約って形にすれば」

「じゃあ、そうしとくよ……ん?」

 

 コルニから視線を逸らし、マスタータワーへと続く砂浜の上で何かを探しているかのようなポケモンに気付く。

 メレシーのようにふわふわと漂い、ピンク色の輝きを放つ宝石を額やら体に付けており、腕があったりと人型に近いようなポケモン。

 

「……あのポケモンは何?」

「なんだろうね……アタシも初めて見たけど……可愛くて綺麗!」

「?」

 

 コルニの声に気付き、振り向いてくるポケモン。クリンとした愛らしい瞳を投げかけ、二人に近付いてくるポケモンは笑顔でフヨフヨと近づいてくる。

 下半身を見る限り、メレシーの仲間ではないかと考えたライトはとりあえず図鑑を翳してみた。

 

『ディアンシー。ほうせきポケモン。メレシーの突然変異。ピンク色に輝く体は世界一美しいと言われている。両手のすきまで空気中の炭素を圧縮して、たくさんのダイヤを一瞬で生み出す』

「ディアンシー……メレシーの突然変異なんだね」

「?」

「ブイッ!」

「!」

 

 顎に手を当てて考え込むライトを不思議そうに見つめていたディアンシーであったが、フードから身を乗り出してきたイーブイに驚く。

 しかし、敵意のないイーブイの笑みを見て、ディアンシーもにっこりと微笑んで挨拶返す。

 ポケモン同士仲良くやっている最中、コルニは黙してしまうライトに何事かと問いかけてみる。

 

「どうしたの?」

「いや……メレシーの突然変異のポケモンなら、なんで映し身の洞窟にいないのかなって。わざわざこんな人里まで下りてきて、引き潮でできる道の上で漂ってるなんて不自然じゃない?」

「言われてみれば……確かに」

「それは、儂がその子を保護したからだよ」

 

 不意に聞こえた声に顔を上げると、眉毛が凄まじく長い老人が二人の前に立っていた。

 呆気にとられるライトに対し、目を見開くコルニ。

 

「お爺ちゃん!?」

「えッ、この人がコンコンブルさん?」

「ああ。儂がシャラジムの現ジムリーダーのコンコンブルだ。挑戦者かな?」

 

 装いは工事現場で働く人のような作業服であるが、特に汚れた様子はなく、単純に好き好んで身に纏っているのだろうと予測はつく。

 そして、何より目を惹くのは彼が左手に嵌めている指だしグローブであるが、手の甲に当たる部分に丸い宝石のようなものが埋め込まれている。

 見る角度によって色が不規則に変化し、その複雑な色合いは虹色に例えた方が良いというような美しさを持っていた。

 何より、玉の中心にはセキタイで見たアチャモの持っていた石のように、螺旋を描くような模様が刻まれている。

 

 暫し茫然とするも、『挑戦者かな?』と問いかけられていた事を思い出し、ハッとして答えを返す。

 

「はい、そうです! あ、でも挑戦自体は明日にしたいんですけれど……」

「ああ、予約かい。うむ、準備をするのはいいことだ。だが折角ここまで来たのだから、少しだけジムの中を……マスタータワーを案内しよう。構わないかね?」

「勿論です! メガシンカのこととかも色々聞きたいので……」

「おお、メガシンカの事を知っているのか。まあ、その話も中ですることにしよう……来なさい、ディアンシー。お前さんはあんまり人目に着く場所にいたら駄目だと言ったろうに……」

「?」

 

 溜め息を吐きながらディアンシーを呼ぶコンコンブルであるが、当のディアンシーはなんの事なのか分からずに首を傾げている。

 だが、ジェスチャーで招かれている事は理解したようであり、フヨフヨと漂いながらマスタータワーへと向かう一向に加わった。

 メレシーと比べると、風貌が『お姫様』というようなポケモンの挙動は可愛らしく、顔もはっきりと見えるため表情もよく見えて感情を読み取り易い。

 フッと振り返り、ルビーのような瞳で見つめられるライトは微笑みを向けてみる。するとディアンシーもにっこりと微笑み返してきた。

 

「ふふッ」

「♪」

 

 自然とほんわかとした雰囲気に包まれる場。

 しかしただ一人、真摯な眼差しでディアンシーのことをコンコンブルは一瞥するのであった。

 


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