ポケの細道   作:柴猫侍

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第五十四話 折り返し地点突入

 

 

『ギャラドスなら海で元気に泳いでる。ジム戦の疲れもなさそうだし……心配しないで! もし何かあったら、私がポケモンセンターに連れてってあげるから』

「そっか。ありがとう、カノン。お蔭でジムバッジもゲットできたし……」

『バッジをゲットできたのはライトの実力でしょ? あと四個も頑張ってね。ポケモンリーグ、楽しみにしてるから』

「分かった。じゃあ、またね」

『うん、またね』

 

 そう言ってポケギアでの通話を終えるライト。昨日のジム戦の為に送ってきて貰ったギャラドスをポケモンセンターで回復させた後、少し戯れてからパソコンでアルトマーレのカノンに転送したのだが、元気でやっている様子を確認できてライトは安堵の息を吐く。

 ジム戦を終えて一日が経過した今、ライトは次なる街であるヒヨクシティに向かう為に準備をしていた。

 マスタータワーの一室で荷物のチェックを済ませたライトは、昨日シャラシティで買った黒と白が基調の帽子を被り、出口に向かって歩き出す。

 

「ブイ!」

「イーブイも元気?」

「ブイ~!」

「ははっ、そっか!」

 

 定位置に飛び込んでから顔を覗かせるイーブイの頭を撫でながら泊まった部屋から出る。

 

「お~い! おっはよぉ~!」

「おはよォ―――!」

 

 長い階段を下りた所に既に荷物を携えて待機しているコルニが、部屋から出てきたライトに向かって朝の挨拶をかける。

 軽快な足音を奏でながら階段を駆け下りていくライトは、ものの数十秒ほどで下の大広間までたどり着いた。

 大広間にはコルニの他にコンコンブルや彼の手持ち、そしてディアンシーなどが待機している。

 

「おはよう、ライト君。よく眠れたか?」

「はい! もうぐっすり!」

「それはよかった。君みたいなしっかりした子なら、コルニを任せられる。こんな奴だがこれからの旅もよろしくお願いしていいか?」

「ちょっとお爺ちゃん! それってどういう意味!?」

「お前は昔から色々と大雑把なんだ。女なんだから、もう少ししっかりしても……」

「ふ~んだ!」

「ははっ……」

 

 朝から祖父と孫の口論を目の当たりにして苦笑を浮かべるしかないライトは、とりあえず癒しを求めてイーブイの首元を撫でる。

 気持ちいいのかイーブイは『ブイ~』とだらけた声を上げた。

 それは兎も角、準備の整った二人の子供を前にして、マスタータワーの出入口である大きな扉がジムトレーナーによって開かれる。

 天窓からも充分に光が注いで明るかった広間は、出口からも溢れだす光によって更に明るく照らされ、思わず二人の目は細くなった。

 

 扉を開けたと同時に入ってきた心地よい風も感じながらグッと背伸びをするコルニ。対してライトは、後ろでにこやかに手を振っているディアンシーに向かって手を振りかえしていた。

 

「ディアンシーは君を気に入っているようだな。時間があれば、また来てくれると嬉しい」

「はい、勿論! またね、ディアンシー!」

「♪」

「ライト~、そろそろ行こぉ―――!」

「オッケー!」

 

 扉のすぐ手前でいつでも出発できるように身構えているコルニの声に、ライトは軽く駆けて共に出発しようとする。

 だがその時、コンコンブルが『コルニ、ちょっと待て』と制止の言葉をかけた。

 何事かと振り返る二人に対し、心配そうな顔を浮かべるコンコンブルは頭を掻きながら近づいてくる。

 

「本当に忘れ物はないんだな?」

「ないって! 確認したから!」

「あんまり金は使ったら駄目だぞ?」

「別にそんなに使わないし……」

「あと……そうだな。変な男に付いてったら駄目だぞ? 下手すると、強いポケモンよりも怖いからな」

「付いてかないって! それに、もし連れて行かれそうになったらルカリオも居るし!」

「うむぅ……そうか」

 

 先程の威厳ある祖父の姿はそこにはなく、ただ純粋に孫の心配する老人の様子にライトは口元を手で抑えてクスクスと微笑む。

 どうやらそれはジムトレーナーやコンコンブルの手持ちも同じようであり、普段とのギャップに笑いを抑えられない者達が笑い声を必死に抑えていたが、突然コンコンブルに睨まれることによりピシッと姿勢を正した。

 コメディのようなやり取りが行われてから二人は、『ようやく』といった雰囲気で外に出ていこうとするが、またもやコンコンブルが声を上げる。

 

「ああ、ライト君。次はヒヨクシティのジムに挑むのかね?」

「えっ? あ、はい。そうですけど……」

「なら、次の相手はフクジだな。あ奴は【くさ】の使い手……君の手持ちには【くさ】に強いポケモンは居るな」

「言われてみれば……」

 

 【くさ】の弱点は【ほのお】、【むし】、【こおり】、【ひこう】、【どく】とかなりの数がある。その中でもライトは、【ほのお】タイプのリザードと、【むし】・【はがね】タイプのハッサムを有していることから、相性的にはかなり優位を誇れる筈だ。

 しかし、相性がいいだけであって絶対の勝利などは保障できない。何故ならば、相手はジムリーダーなのだから。

 

「だが、相性がいいからと侮ってはいけないぞ。ジムリーダーの中で一番歳がいっているのはあ奴だからな」

「そうなんですか?」

「ああ。カメックスの甲より年の功……長年培ってきたあ奴の戦い方には目を見張るものがある。次のジム戦は君にとっていい経験になる筈だ」

「……成程」

 

 コンコンブル以上の年齢の老人がジムリーダーを務めているというヒヨクジム。【くさ】の使い手というのも考慮すると、コンコンブルの言う通り長年培ってきた知識や戦法を扱い、巧みに相手を惑わす戦い方をするのだろうと予測できる。

 【くさ】の本領とは、その優秀な数々の補助技。それを巧みに操られれてしまえば、いくらタイプ相性で有利であっても完封されることだってあり得てしまうのが恐ろしいところだ。

 いい情報を耳にしたところでライトは『ありがとうございます!』と一礼してから、コルニが待機している外まで駆けて行く。

 

「コンコンブルさん、本当にお世話になりました!」

「お爺ちゃん、行ってきま~す!」

「ああ、達者でな!」

 

 仲良く並んで飛び出していく二人の子供を見送りながら、ふうっと溜め息を吐く。

 するとコンコンブルは、隣でしょんぼりと寂しそうな顔を浮かべているディアンシーに気が付いた。

 昨日町に繰り出し、何か二人と楽しいことでもしたのだろう。

 

「……お前さんも行ってみたかったのか?」

「……」

「だが、あまり人目に付いたりしたら、泥棒などがお前さんを狙って来るだろうな。それじゃあ二人の旅に支障をきたしてしまう。それは分かってくれるか?」

「……」

 

 終始無言で俯くディアンシー。

 メレシーの突然変異という個体である以上、自分はただのポケモンの中の一体として認識しているのだろう。

 だが現実は違う。幻のポケモンと聞けば、無理にでもゲットしようとする輩が現れる。そんな者達にいちいち突っかかられてしまえば、ただの子供にとっては迷惑極まりないことだ。

 

「―――もし」

「?」

「もし、ライト君がポケモンリーグのチャンピオンになって、それからも旅を続ける意向が在るのであれば、お前さんを彼に託してもいいと儂は考えている」

「!」

 

 コンコンブルの言葉に、先程まで俯いていたディアンシーは文字通り輝く瞳を彼に向けてきた。

 確率としてかなり低いものなのかもしれないが、それを知らないディアンシーは彼らと共に旅に出られるかもしれないという希望を目の当たりにし、嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。

 そんな純真無垢なお姫様のようなポケモンを前にしながら、コンコンブルは高らかに笑う。

 我ながら突拍子のないことを言ったものだと、自嘲気味になりながら。

 つまりはこういうことだ。

 

―――ライトが地方最強の騎士(トレーナー)になれば、(ディアンシー)を託す

 

 昔のカロスではポケモントレーナーの事を『ナイト』と呼んでいた為、いい例えができたのではないかとコンコンブルは自画自賛するようにウンウンと頷く。

 そして、雲一つない青空を見上げた。

 

(ライト君……君に託したキーストーン。そしてこれから扱えるだろうメガシンカを存分に扱って、その腕を奮ってみてくれ)

 

 

 

 ***

 

 

 

「しりとり」

「リザード」

「ド……ドククラゲ」

「ゲ? ……ゲンガー」

「ガ? ア? どっち?」

「アで」

「ア~……アーボック!」

「クサイハナ」

「ナ……ナゾノクサ!」

「サンダー」

「またアァ!?」

「いや、『また』って……始まったばっかだけど」

 

 ゲートを通って12番道路にやってきた二人は、ポケモンしりとりをしていた。

 通称『フラージュ通り』と呼ばれる12番道路は、すぐ近くに海を望めるほどの距離にある道路である。

 しかし、コウジンタウンからショウヨウシティに行くためにある8番道路と違い、緑が豊かな道であった。

 多く生い立つ木々の間には様々な種類のポケモンを垣間見える事ができ、中でも―――。

 

「ヘラクロスが居る~!」

「カイロスも居るね……どれどれ」

『ヘラクロス。1ぽんヅノポケモン。自慢のツノを相手のお腹の下にねじ込み、一気に持ち上げてぶん投げてしまう力持ち』

『カイロス。くわがたポケモン。2本のツノで獲物を挟んで千切れるまで離さない。千切れないときは彼方まで投げ飛ばすのだ』

(八つ当たり……)

 

 カイロスの図鑑説明文を見て一言感想を心の中で呟くライト。その瞬間、カイロスがヘラクロスの“メガホーン”を喰らって吹き飛ばされ、近くの川に落とされてしまった。

 川と海の境目に当たる部分―――所謂汽水である場所に落水したカイロスは、なんとか岸まで泳いで辿り着くと、意気消沈して森の中へと消えていく。

 『逆に投げ飛ばされた……』と口にすると追い打ちをかけてしまうのではないかと気遣ったライトは、目を細めたままヘラクロスの方へと視線を向ける。

 

「伝家の宝刀スーパーボール!」

「いきなり!?」

 

 突然バッグからスーパーボールを取り出したコルニは、迷うことなくヘラクロスに向かって放り投げた。

 しかし、直線を描いて飛来してくるボールに対しヘラクロスは、ツノを野球のバットのように振るってボールを打ち返す。

 打ち返されたボールは、凄まじい速度で二人の方へと戻っていき―――。

 

▼ヘラクロスの カウンター!

 

▼ライトの額に命中!

 

「あ゛ぁんっ!?」

「ああ、ライト!? 心なしかオカマの人みたいになったけど大丈夫!?」

「ホント……とばっちりが……」

 

 ライトの額に当たるボール。ちょうどスイッチのある側が直撃したのか、額にはくっきりとスイッチの痕がつく。

 それよりも直撃した際の凄まじい音に戦慄したイーブイは、顎が外れるのではないかというほど口をあんぐりとさせていた。

 真っ赤に染まる額を抑えながらボールを拾い上げたライトは、そのまま慌てふためいているコルニに手渡す。

 

「はい……」

「ゴ……ゴメン……」

「いや、なんか前にもこういうことあって慣れてるけど……っていうか、コルニの手持ちってもう六体じゃなかったの?」

「あっ、カイリキーとハリテヤマは預けてきたの。だから今は四体」

「そうなんだ……それより、捕まえるなら弱らせないと」

「うん、まあ……イケるかなって……」

 

 それで自分に被害がくるのだから堪ったものではないと頭を抱えるライト。

 ポケモンの捕獲の時は、ポケモンを弱らせてからボールを投げるのが基本。トレーナーであればかなりの初心者でなければ知っている事項であるものの、時には弱らせずに一発で捕まえられる時もある。

 それに賭けてボールを投げたのだろうが、結果は案の定だ。

 

 一方、ヘラクロスは近くにある木の幹の蜜を舐めている。コルニ達など眼中にないといったとこか。

 そのようなヘラクロスを指差しながらライトは、痛みに歪める顔をコルニに向ける。

 

「……全然イケてませんよ、コルニさん」

「っく……なら、アチャモ! 出番だよ!」

「チャモォ!」

 

 放り投げられたボールから繰り出されたのはアチャモ。【むし】・【かくとう】タイプであるヘラクロスには有利なポケモンであるが、パワーでは圧倒的に不利な筈だが―――。

 

「本当にアチャモで大丈夫なの? あのヘラクロス、結構強そうだけど……」

「ふふふっ、こんな時の為に用意していた道具が……これ!」

「……アメ?」

 

 不敵な笑みを浮かべるコルニは、バッグの中から一つアメを取り出した。どこかで見たことのあるような包装に包まれているアメだが、その中の透明のアメを取り出し、アチャモに食べさせ始める。

 

 ペロペロペロペロ。

 

 ペロペロペロペロ。

 

 ペロペロペロ―――。

 

「……なにこれぇ?」

 

 あっちでもこっちでも何かを舐めているという状況にライトは、呆気にとられたままコルニに問いかける。

 

「ふしぎなアメ!」

「あ~……」

 

 食べたポケモンのレベルが上がる道具の“ふしぎなアメ”。

 それを食べさせてアチャモのレベルを上げる事により、基本スペックを上昇させるというのが狙いなのだろう。

 すると突然、アチャモの体が青白い光に包み込まれていく。

 

「お、来た来たぁ!!」

「あ……これって……」

「シャモォオオオオ!!」

 

 次第に神秘の光に包まれながら大きくなっていくアチャモであったポケモンは、光と火の粉を振り払いながら新たな姿を露わにした。

 アチャモの時よりも頭身が増え、小さな翼の代わりには立派な腕が生える。そして何より、脚は更に強靭になったかのように太く延びた。

 

『ワカシャモ。わかどりポケモン。1秒間に10発のキックを繰り出す足技の持ち主。鋭い鳴き声で威嚇する』

「おぉ~!」

「昨日のジム戦で鍛えられたからね! これでヘラクロスにも対抗できるってスンポーだよ!」

 

 進化を果たしたワカシャモは、ステップを踏みながら今から相まみえるだろうヘラクロスに鋭い眼光を向けている。

 すると、ヘラクロスは樹液を舐めるのを止め、ノソノソと地面に降りてワカシャモを睨みつけ始めた。

 自分の苦手は火を感じ取ったのと、明確に相手が戦うだけの価値があると判断した故の行動だろう。

 堅い甲殻を有すヘラクロスは背中を開き、透明な翅を高速ではためかせて“とっしん”してくる。

 

「よーし、ワカシャモ! “ニトロチャージ”!!」

「シャモ!!」

 

 瞬間、炎に包まれた体で肉迫してくるヘラクロスに対して突進していくワカシャモ。パワーに分があるヘラクロスに対し、スピードで勝負をしかけていく。

 互いに肉迫していく二体は激突し、周囲に一陣の旋風を巻き起こす。

 

 数秒、拮抗した力を見せつける二体であったが、ヘラクロスのパワーに押し負けたワカシャモが宙に放り投げられた。

 だが宙で体勢を整えたワカシャモは、軽快な身のこなしで地面に着地する。

 

「新しい技を見せてあげて! “にどげり”!」

 

 拳を突きだして指示を出すコルニ。ワカシャモは強靭な脚力で大地を蹴り、一気にツノを振り上げた状態で硬直しているヘラクロスに向かって行く。

 

「ヘラッ!?」

「シャモ! シャアモ!」

(速い!)

 

 アチャモの時の特性は“かそく”であった筈。それを考慮しても余りの動きの早さにライトは息を飲んだ。

 一度対峙した相手の動きに感嘆の息を飲みながらバトルを眺めていると、ワカシャモがヘラクロスの体を二回ほど蹴りつけているのが見えた。

 【かくとう】タイプの技である“にどげり”は【むし】タイプを有すヘラクロスには効果がいまひとつである筈だが、ヘラクロスは苦悶の表情のまま蹴られた勢いで後方に滑っていく。

 

「そのまま~……“つばめがえし”っ!!」

 

 “かそく”によって動きがどんどん高速化していくワカシャモは、後方に滑って距離が空いたヘラクロスへと駆け、瞬く間に懐に入った。

 そのまま力を込めた脚でヘラクロスの顔面を蹴り上げ、返す太刀ならぬ返す脚でヘラクロスに踵落としを決める。

 ビターンと地面に蹴倒されるヘラクロスは大分体力が減ったのか、『ぜぇぜぇ』と息を荒らしていた。

 それを見逃さなかったコルニは再びスーパーボールに手を掛け―――。

 

「今度こそ!」

 

 定価六百円のボールを放り投げると、弧を描きながら地面に倒れているヘラクロスの体に命中する。

 その際、ライトは自分の身に危険が及ばないようにと木の幹に隠れていたのは、以前の出来事からの教訓か。

 それは兎も角、既に二人の目の前には地面でカタカタと揺れているスーパーボールしか見えなくなっている。

 

 ゴクリと唾を飲んで見守るコルニ。

 すると最後に大きく揺れた後、『パチン☆』と捕獲が成功した音が鳴り響き、満面の笑みを浮かべるコルニがヘラクロスの入ったボールを拾い上げた。

 

「イェ~イ! ヘラクロス、ゲットォ!」

「やったね、コルニ。でも、あの“ニトロチャージ”って技……何か効果あるの?」

 

 嬉しそうにするコルニに問いかけるライト。

 彼の疑問とは、先程のワカシャモの異常な素早さであった。幾ら進化し、“かそく”で【すばやさ】の能力値が上がっていたとしても、あれだけの速さがでるのだろうか。

 その答えは、案外簡単に返ってきた。

 

「“ニトロチャージ”? 攻撃の後に、一段階【すばやさ】を上げる【ほのお】技だよ?」

「成程……だからあんなに速かったんだ」

「うん。技マシンで売ってるから、買えば何回でも使えるしね」

「え? 何回も?」

「うん、何回も。あれ? 地方によって仕様とか違うの?」

 

 なにやら、技マシンについて差異があることに気が付いた二人。

 ブルーが買ってきた技マシンは使い捨てであり、カントーとジョウトに売っている最新版の技マシンでも基本使い捨て。

 それに対してコルニは、技マシンが何回も使えると口にした。

 

「こっちだと“かわらわり”の技マシンは三千円だけど……」

「え―――ッ!? 安っ! カロス(こっち)じゃあ、その六倍くらいの値段はするよ!」

「う~ん……でも、僕の持ってるのは使い捨てだから、長い目で見ればコルニの持ってる技マシンの方が安いのかな……」

「ふぇ~」

 

 半永久的に使えるということであるのならば、カロス仕様の技マシンの方が得なのではないかと考えるライト。

 しかし、旅を続ける自分がそんなに高い物を買う訳にもいかないので、姉に購入してもらった物で我慢しようと心に決める。

 

「使いたいなら言ってくれればいいよ。貸してあげるから!」

「ホント!?」

「まあ、そんなに持ってないんだけどね。高いし」

 

 ごもっともな意見をコルニが口にしている間、何度も使えるという技マシンを耳にしてライトは興奮している様子だ。

 そんなライトを見てつられるように笑うコルニは、足早に次なる目的地への道へと戻る。

 

「さっ、ライト! 12番道路にはメェール牧場があって、メェークルがたくさんいる施設もあるんだ! そこで売ってるアイスが美味しいんだよねぇ~!」

「へぇ~……じゃあ、早くそこに着くように急いでみよっか」

「よーし、じゃあ張り切って行こぉ―――!」

 

 そう言ってローラースケートで駆け出しいくコルニを、走って追いかけるライト。アトラクションを楽しむかのように笑みを浮かべながらフードの中に佇まっているイーブイが落ちないよう気を付けながら、軽快に走っていくライト。

 

 

 

 得たジムバッジは四個。ポケモンリーグに出場に必要な個数は残り四個。

 ライトの旅は、後半戦に入るのであった。

 




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