ポケの細道   作:柴猫侍

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第六十七話 爪切りって塩梅が大事

 

 

 カロス地方には、対となる二体のポケモンが居るとされている。

 

 一体目は生をもたらすポケモン―――『ゼルネアス』。

 

 もう一体は死をもたらすポケモン―――『イベルタル』。

 

 ゼルネアスは遠くから見れば『X』の形をしており、逆にイベルタルは『Y』の形をしていた。

 彼のポケモンの壁画が描かれる頃には、既にメガシンカも存在していると学者は考えている。

 そして、進化を超えた進化を果たしたポケモンの中で、特異とされる種類も居た。

 

 かえんポケモンのリザードンだ。

 

 リザードンのメガシンカは二通り存在していた。

 一方のメガシンカを果たしたリザードンは、橙色の皮膚を漆黒へと変貌させ、全体的に逞しい体つきになる。吐き出す炎は赤から青へと―――つまり、今迄よりも高温の炎を吐き出せるようになったのだ。

 もう一方のリザードンは、ツノがもう一本頭部から生え、背中の翼も通常時よりも大きくなる。全体的にスリムな体つきになった姿は、飛行能力を特化させたものと学者は考えた。

 

 他のメガシンカとは違い、異なるメガストーンによって二通りのメガシンカを果たすリザードン。

 この二種類の区別を付ける為にメガシンカの研究の第一人者は、その姿と色合いからこう区別した。

 

 黒い皮膚へと変貌し、青い炎を吐くようになったリザードンを『メガリザードンX』。

 

 姿を現した瞬間に、天気を晴れへと変化させるリザードンを『メガリザードンY』。

 

 生を司る伝説ポケモンを代名詞をその名に付けたメガリザードンX。だが、ある者はリザードンの発する青い炎が怒りを表すことから、こう言うのであった。

 

『メガリザードンXとは、リザードンが怒りを体現した姿である』と。

 

 

 

 ***

 

 

 

 熱い。

 自分の発する青い炎に自らの炎が焼き切れそうな感覚を覚えるリザードンであったが、何とか理性は留めていた。

 内側から溢れ出る力は凄まじいものの、その力の奔流に理性が呑み込まれそうになる。

 だが、そんな自分を叱咤するようにリザードンは咆哮を上げた。咆えると同時に口の両端から噴き出す炎は、周囲の気温を急激に高めていく。

 

「“だいもんじ”!!」

 

 遠くから響いてくるライトの指示。

 咄嗟にリザードンは、目の前で羽ばたいているサンダー目がけて“だいもんじ”を繰り出す。

 炎の色は温度を表す。赤から白へ、そして青へと変貌した炎の温度は倍という言葉では収まらない程熱くなっている。

 そんな青く変貌した爆炎を解き放つリザードンであったが、朦朧とする視界の中では上手く定まらず、サンダーに寸での所で回避されてしまった。

 

 同時にサンダーが繰り出す“10まんボルト”を真面に喰らってしまうリザードン。眩い閃光を放つ電撃をその身に受けるリザードンの姿に、地上で眺める者達は誰もが息を飲んだ。

 しかし、

 

「グォオオ!!」

「ア゛ッ!?」

 

 腕を大振りに振るうことによって、自身を包み込んでいた電撃を弾き飛ばすリザードン。本来であれば【ひこう】を有すリザードンに“10まんボルト”は効果が抜群であり、直撃を喰らえば一撃で倒されてしまうだろう。

 だが、メガシンカを果たしたリザードンはそれほど喰らった様子は見せていない。全く効いていないという訳でも無い為、効果がいまひとつといったところだろうか。

 

(【でんき】が余り効いてないってことは……【くさ】? ……違う。【でんき】もそんな見た目じゃないし違う筈だから……)

「―――【ドラゴン】タイプ!?」

 

 ライトはメガシンカについてはそれほど詳しくは無い。だが、姿が変わる事によってタイプが変化するポケモンが居る事は、以前研究者に見せてもらった『リージョンフォーム』によって知っていた。

 姿を変えてタイプが変わるポケモンが居るのであれば、メガシンカで姿を変えたポケモンもタイプが変わるのではないか。

 そういった考えに至るには、時間は掛からなかった。

 

 【でんき】を余り喰らわないタイプは、全く喰らわない【じめん】を除いて三つ。【くさ】と【でんき】、そして【ドラゴン】だ。

 今のリザードンは【ほのお】があることは身に纏う炎から確実だと判断し、残りのタイプを予想するのではあれば、最もしっくりくるのは【ドラゴン】である。

 あくまで仮定にしか過ぎない推測であるが、ライトは今のリザードンが【ほのお】・【ドラゴン】タイプであると仮定し、咄嗟に指示を出した。

 

「“ドラゴンクロー”!!」

 

 瞬時に巨大な爪を形成するリザードンは、大きく翼をはためかせてサンダーに突進していく。

 一方サンダーは、飛んで火に入る夏の虫と言わんばかりに、返り討ちにするべく“ドリルくちばし”を繰り出す。

 数分前にも見たような光景であり、リザードンの力があの時のままであれば、そのまま弾き飛ばされるのは必至だ。

 

 だが、メガシンカを果たした今は違った。

 

「ッ!?」

 

 『ガキンッ!』と音を立てて激突する爪と嘴。それと同時に視界が固まったサンダーは目を見開き、歯を食い縛るリザードンに対しての驚嘆の色を顔に浮かべる。

 数秒ほどの拮抗。だが、先にリザードンが上へと逃れるように飛び、サンダーの“ドリルくちばし”を受け流した。

 明らかに先程とは違う膂力。同時に、リザードンの爪の硬さにも驚くサンダー。タイプ一致による威力の上昇だけではない何かがリザードンに働いていることを、サンダーは密かに感じ取っていた。

 それはリザードンのトレーナーであるライトには与り知らぬことであったものの、サンダーの様子を見たライトはこう判断する。

 

「リザードン、“ドラゴンクロー”でガンガン攻めて!!」

 

 攻撃は最大の防御。

 サンダーに距離をとられ、遠距離から【でんき】技を喰らい続けるのは得策ではない。ライトが怖れていたのは【でんき】技のほとんどが有する追加効果の【まひ】だ。【まひ】に陥れば動きが緩慢になり、サンダーに対抗することができなくなってしまう。

 ならば、自ら攻めに入る反撃の余地を与えなくすればいい。

 

 空を疾走する火竜と雷鳥。

 

 二体のポケモンは、爪を振るい、嘴を突出し、炎を吐き出し、電撃を放ちながらミアレの上空を駆けまわる。

 何度か接近し、交錯する瞬間に甲高い衝突音が響き渡るものの、お互いに一歩も退かないポケモン達は死力を尽くして激突を繰り広げた。

 

 そして、リザードンがサンダーの頭上を位置取った時。

 

「ア゛アアアアアッ!!」

「ッ、“だいもんじ”!!!」

 

 頭上にリザードンに“10まんボルト”を繰り出すサンダーを見たライトは、その攻撃を相殺させるために“だいもんじ”を指示した。

 次の瞬間、電撃と爆炎が激突して宙で凄まじい爆発が起こる。

 大気を震わす程の爆発が起こった後、爆風を腕で防いでいたリザードンは何時サンダーの攻撃が来ても良いようにと鋭く眼光を光らせた。

 

 すると、宙で漂う黒煙を突き抜けて一直線に突進してくるサンダーが視界に映る。翼を大きく広げて突進するサンダーを見たリザードンは、今まさに相手が繰り出そうとする“ドリルくちばし”を喰らうまいと、サンダーの両翼を腕で掴んだ。

 何とか勢いを殺そうとしたリザードン。しかし、完全にリザードンの懐に入る前にサンダーは、目の前の火竜の腹部を脚で蹴り飛ばし、相手の拘束を解く。

 サンダーの蹴りを喰らったリザードンはそのまま上空に少し浮かび、その間にサンダーは宙返りを決めて体勢を整え、かつてない程その身から電光を放ち始める。

 

―――“かみなり”

 

 【でんき】タイプの中でも特に強力とされている技であり、威力は“10まんボルト”よりも高い。

 必殺の威力を誇る技をリザードンに叩きこもうとするサンダーは、ジッとリザードンを見つめていた。

 

 

 

 故に、他方からやって来た相手に気付かなかった。

 

 

 

 バシャ。

 

 

 

「ッ!?」

「ペリ~」

 

 突如自分に降りかかった大量の水によって“みずびたし”になったサンダーは、自分の後方で呑気な鳴き声を上げるポケモンを目の当たりにする。

 巨大な嘴を有す鳥ポケモン―――『ペリッパー』。比較的多くの地方で見る事ができるポケモンであり、サンダーもかつて何度も見たことのあるポケモンだ。

 故に、自分が水浸しになったことに構わず充電が終わった体から、凄まじい威力を誇る電撃をリザードンに解き放った。

 

「リザードン!!」

 

 一瞬で電撃に包まれるリザードンを目の当たりにしたライト。だが、ライトもリザードンも、その顔には絶望などは浮かべていない。

 リザードンは今も電撃に包まれている。そうしている間にもリザードンは、右腕に力を込めて次の一撃を繰り出そうと身構えた。

 

 電気を帯びた右腕を。

 

 刹那、リザードンはその身に“かみなり”を受けながらも、サンダーに向かって滑空する。

 その光景に驚愕の色を浮かべるサンダー。まさか、自分の繰り出せる技の中でも大技に値する技を喰らっても尚動けるとは思いもしなかったのだ。

 だが、現に相手は動いている。

 そして、今現在大技を放っている自分は急に攻撃を止めることなど、できはしない。ただ、肉迫してくる火竜の接近を許すのみだ。

 

 そして、

 

「“ドラゴンクロー”ォオオオ!!!」

 

 

 

 電気を帯びた竜の爪。しかしそれは、“ドラゴンクロー”とは名ばかりの、疑似的な―――

 

 

 

 “かみなりパンチ”であった。

 

 

 

 文字通り“かみなり”を帯びた拳がサンダーの懐に叩き込まれた。同時に、サンダーの体が大きく九の字に曲がる。大気を震わすほどの轟音を轟かせる一撃に、見る者全てが息を飲む。

 だが、それでもリザードンは下降することを止めずに、そのままの勢いで地上まで滑空していく。

 どんどん加速する中でも放電し続けるサンダーと、拳を叩きこんだまま電撃を受け続けるリザードン。

 

 二体は取っ組み合っているような形で石畳に激突し、高さ数メートル程に及ぶ砂煙を巻き上げる。

 激突の衝撃で石畳は豪快に割れ、周囲には無数の石畳の破片が飛び散った。

 

「ッ……!」

 

 そんな中、腕で石畳の破片を防ぎながら砂煙の中を駆けて行くライトは、サンダーと共に地面に墜落したパートナーを探す。

 しかし、ライトがパートナーの名前を呼ぶよりも前に、砂煙は突然吹き荒ぶ風によって吹き飛ばされ、視界が一気に晴れた。

 

 誰もが固唾を飲んで見守る中、砂煙の中から姿を現したのは全身埃まみれのリザードンとサンダー。

 “かみなり”の直撃を受けたリザードンは勿論、リザードンの“ドラゴンクロー(疑似かみなりパンチ)”を喰らったサンダーも満身創痍といった様子を浮かべている。

 

「―――グゥォ……!」

「リ、リザードン! 大丈夫!?」

 

 次の瞬間、リザードンの体は一瞬光に包まれ、黒い体は元の橙色の皮膚へと戻り、刺々しい姿も元の肉体へと変貌した。

 メガシンカが解けたリザードンは事切れるようにその場に崩れ落ちるが、直前に奔り込んだライトがリザードンの体を全身で受け止める。

 

 一方でサンダーは未だ健在であり、まだ戦えると言わんばかりに闘志に―――否、敵意に満ちた表情を浮かべながら、目の前の人間とポケモンを睨みつけた。

 そのサンダーの視線に気付いたライトは、ハッサムのボールに手を掛け―――。

 

 

 

 

 

「ランターン、“でんじは”です」

 

 

 

 

 

「ア゛ァ!?」

 

 突如、サンダーの体に細い一条の電撃が襲いかかり、そのままサンダーは【まひ】状態に陥ったかのように痙攣しながら崩れ落ちた。

 

(な、なんで……? サンダーは【でんき】タイプで、【まひ】は……)

 

 サンダーが【まひ】した光景に疑問を覚えるライト。何故なら、【でんき】タイプのポケモンは【まひ】することがないのだ。それなのにも拘わらず、目の前で【まひ】に陥ったかのように痙攣するサンダーにライトは動揺を隠せない。

 だが答えは、すぐ近くまで歩み寄っていた。

 

「……どうでしょう? これまで生きてきた中で、自分が【まひ】になることなど想像もしなかったでしょう。ですが、貴方のタイプが変わったのであれば話は別」

「?」

「わたしのペリッパーが繰り出した“みずびたし”は、相手のタイプを【みず】へと変化させる技……故に貴方の“かみなり”は普段よりも威力が衰えた。単純な話です」

 

 ライトの向かい側から姿を現したのは、この場に似合わないシェフのような恰好をした三白眼の男性。

 彼が横に連れているのはランターンと、先程サンダーに水を大量に浴びせたペリッパー。

 どちらも威厳がある容姿であるとは言い難いが、得も言えぬような威圧感を周囲に放っており、彼らが只者ではないということを周囲に暗に示していた。

 

「し……四天王……!」

「ズミさんだ……!」

「……四天王?」

 

 周囲の警官たちの声を聞いたライト。

 成程、彼が四天王であればこの威圧感の説明はつく。静かに歩み寄ってくるズミという男は、サンダーへと近づいていき―――。

 

「あっ……」

 

 徐に懐から取り出したハイパーボールをサンダーへと投げた。ボールが命中したサンダーはそのまま中へと吸い込まれていく。

 その光景に思わず声を漏らしたライト。漁夫の利とでも言わんばかりの光景を見ての反応であったが、四天王ともあろう者が横入りで伝説のポケモンを自分の物にしようと捕獲するものか。

 

 そのようなコトを考えるライトであったが、『カチッ!』と音を立てて捕獲が完了した音を響かせたボールを手に取ったズミは、ボールの埃を手で払いながらライトに視線を向けた。

 

「……このサンダーの処遇はポケモンリーグに任せることにします。君には早くそのリザードンを回復させることをお勧め致しましょう」

「あ……は、はい!」

「それと……」

 

 リザードンをボールに戻すライトを見つめ続けるズミは、ライトの左腕で煌めくキーストーンを見て『ふう』と溜め息を吐く。

 

「……只の子供が危険に足を突っ込まないようにと忠告するつもりでしたが、そのメガリングを見る限り、只の子供でもなさそうですね。ですが、如何せん素材の良さを引き出せていない」

「へ?」

「まだまだ仕込みが足りないということです。わたしはこれだけを言って去る事に致しましょう」

 

 意味深な言葉を残したズミは、唖然とするライトを置き去りにどこかに去って行った。

 『まだまだ仕込みが足りない』とは一体どういうことであるのか。バトルに至る前の準備が不十分ということなのだろうか。

 だが、このバトルで傷だらけになったリザードンの姿を思い返した瞬間に、自分には明らかに何か足りないのだということは充分に理解できた。

 

 何とも言えない気分になりながら後ろを振り返ると、ユリーカと抱き合うシトロンの姿を見ることができ、少しばかり気持ちが楽になる。

 

「……ありがとう、リザードン。君のお蔭でユリーカちゃんが助かったよ」

 

―――カタカタッ

 

 答えは、手の中に収まっているボールが揺れ動くことによって返された。

 十二分に頑張ってくれたパートナーを心の中で褒め称え、回復した暁にはもっと褒め、感謝の言葉を伝えようと考えたライトはそのままボールをベルトに装着する。

 今は彼等の事はそっとしておき、自分はポケモンセンターへと―――。

 

「ラ~イト♪」

「びゃああっ!?」

 

 不意に肩を掴まれたライトは、ビクンと肩が跳ねる。そのまま瞬時に振り返ると、少しばかり髪が乱れているブルーが『はぁ~い~♪』と陽気に佇んでおり、暫し放心状態に陥った。

 そんな弟を目の当たりにしたブルーは、ムニムニとライトの頬を揉んでみせるが、途中で我に戻ったライトが姉の腕を押しのける。

 

「……どうしたの、姉さん」

「どうしたのって……私の大事な弟が怪我してないかって心配で、大急ぎで戻ってきたのよ?」

「フリーザーは?」

「うふふん、聞いて驚いて! 実は捕まえたんだけど、途中でズミっていう四天王の人が来たからあげちゃったわ。フリーザーも魅力的だけどぉ~……やっぱり今の手持ちの子たちの愛着があるじゃない!?」

(……一回捕まえたんだ)

 

 撃退ではなく捕獲を念頭において行動していた姉の言葉に唖然とするライト。とりあえず、ポケモンバトルの腕も胆力は鈍っていないようだ。

 ドヤ顔を浮かべるブルーであるが、サンダーとの戦闘で異様に疲労したライトは特にツッコむこともせず、じーっと立ち尽くしていた。

 すると突然、ブルーのバッグの中からポケギアの着信音が鳴り響き、『げっ!』とブルーは女優らしからぬ苦々しい顔を浮かべ、

 

「はーい、もしもし~」

『もしもしじゃありません! 今どこに居るんですか!? ミアレは今、厳戒態勢がしかれていて、私はブルーさんが巻き込まれてるのではないかと心配で……!』

 

 どうやらマネージャーからの電話のようであり、げんなりとした表情のままブルーは通話を続ける。

 

「ア、アハハハッ! そんな訳ないじゃな~い♪」

『……バトルしましたか?』

「え? なんのことぉ~?」

『グレイシアでバトルはしていませんよね!? あの子はポケウッドから借りてるポケモンなんですから!』

「大丈夫よぉ~! そこら辺はちゃんと分別つけてるつもりだからぁ!」

『そう言って、この前グレイシアでバトルしたって言ったじゃないですか! もし怪我でもしたら撮影の延期やら何やらで……あぁ~~~もうっ!』

 

 余りの声量に、ブルーはポケギアを直接耳に当てるのではなく、少し離した場所でマネージャーと通話を続ける。

 同時に漏れ出す音声は近くで待機しているライトにまで聞こえ、『あのグレイシア、借りてたんだ……』とちょっと罪悪感に苛まれたり。

 そこで、マネージャーの説教を受けるブルーはというと―――。

 

「……てへぺろ♪」

『『てへぺろ♪』じゃありません!! すぐに空港に戻ってきてください!!』

「え~、でもぉ~……」

『す・ぐ・に! 戻ってきてください!! いいですね!!? ブツッ、ツー……ツー……』

「……怒られちゃった♪」

「……早く行ってあげて」

「りょ! じゃ、ライト! バイビ~!」

 

 マネージャーの心労を思うと自分の胃も痛くなってくるのを感じたライトは、これ以上姉の付き人的な人に心労を与えない為、早く空港に行くよう姉に催促する。

 愛しの弟の催促を受けたブルーは、茶目っ気たっぷりに舌をチロリと出しながら、ダッシュで目の前から去って行く。

 

(……マネージャーさん、姉が迷惑をかけてすみません)

 

 顔も知らないマネージャーに謝りながら、今後会った際にはお茶菓子か何かを持っていって上げようと決意する。

 そんな他愛のないことを考えながら、ふとプリズムタワーの方を見上げると、ちょうど停電から復旧したのか塔の光が点り始めた。

 パパパッと地上の方から順々に点っている塔の光。

 

 それは間違いなく、この激戦の終わりを告げる光であった。

 

 

 

 

 


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